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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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影従 4
こちらは、本日UPの新作です
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
6話完結 act.4

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◇◆◇

 サラが戻って来てから別れを告げ、王都へと戻り始めたエースとゼノン。双方とも背中に翼を構え、上空を飛んでいたのだが…その帰り道は、どちらとも何となく口が重い。
 だが、そんな中口を開いたのはエースの方、だった。
「…御前さぁ…本当は知ってたんだろう?サラが王都に来た理由」
「うん?」
 僅かに飛ぶ速度を緩めたエース。ゼノンも同様に速度を落とすと、エースのその視線がゼノンを捕らえていた。
「サラがわざわざ王都に出て来た理由、だよ。俺が戻るまで御前が相手をしていたんだから…気付いていたんだろう?」
 改めてそう問いかけられ…ゼノンは思わず苦笑する。
「だったらどうだって言うの?黙ってライデンに会わせろ、って?」
「…ゼノン…」
 進むのを止めたゼノンを、少し先で止まったエースが振り返る。
 顔は笑っているが…エースを見据えたその眼差しは、とても鋭い。
「俺は善魔にはなれないって、実感してるよ。明らかに好意を向けている相手を、自分の婚約者にわざわざ引き合わせる必要は何処にある訳?申し訳ないけど、俺はそんな思いには賛同出来ないし、回避出来るなら全力で回避させるからね」
「…別に、サラだって何をしようって訳じゃないって言ってたぞ?ただ、ライデンに恩返ししたいって…」
 慌ててそう繕うエースに、ゼノンは溜め息を一つ。
「…そんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょう?今、"魔界防衛軍"が何処から見ているかもわからない状況で、恩返しだからって闇雲に雷神界に連れて行けると思う?もしそこから何かあったら、どうするつもりなの?これから雷神界との関わりが深くなる以上、俺はそこまで無責任に受け入れることは出来ないよ」
「…あぁ、わかったわかった。俺が悪かったよ」
 流石に、ここまで正論を言われてしまったら、エースもこれ以上弁明は出来ない。素直に謝るしかない。
「そんな投げやりな言い方して…」
「しょうがないだろう?俺が、サラの気持ちを完全に無視出来るとでも?勿論、サラは御前との関係を聞いたら深入りせず引いてくれた。別に、無理やり雷神界に行こうとか、ライデンとどうこうなりたいとかは全くないんだ。それはわかって貰わないと」
「わかってるよ。わかっているからこそ、言ったんだよ」
 大きな溜め息を吐き出しながら、ゼノンはそう言葉を零す。
「確かにね。昔だったら、会わせるくらいは妥協はしたよ。でも今は状況が違う。"魔界防衛軍"のこともあるけど…俺は婚約者の立場としてね、流石に良い気分はしない。御前だってそうでしょう?デーモンを好きだ、って言う奴を、わざわざ紹介はしないでしょう?」
「…まぁ、な。徹底的に妨害するな。奪われたら敵わないからな…」
 確かに、ゼノンの言う通り。自分がその立場なら、絶対に妥協などしない。そう考えれば、ゼノンとて同じことなのだ。
「…悪かったよ」
 溜め息を吐き出しつつ、エースもそう零す。それは、先ほどの投げやりな言葉とは違い、酷く神妙だった。
「それにしても…御前がそこまで嫉妬してるとは思わなかったな」
 そう言ったエースに、ゼノンは小さな溜め息と共に苦笑する。
「さっき言ったでしょ?俺は、善魔にはなれないって。低俗な嫉妬もする。当たり前じゃない。前から言ってるでしょ?俺だって嫉妬するんだ、って」
「…そう見えないんだよな。いつも冷静な姿ばっかり見ているからな。嫉妬ばっかりしている俺やルークとは大違いなんだぞ?」
 引き合いに出されたルークには申し訳ないが…と思いつつも、確かにダミアン相手に右往左往するルークの姿は容易に想像出来る。エースも自分で言っていて、思わず笑ってしまった。
「とにかく…サラは、ライデンには近付かないから安心しろ。それよりも、早く王都へ戻って話をしないとな。御前だって、まだ名前の話はしてないんだろう?」
「まぁね。雷神界から戻って来て、直ぐに御前を追いかけて来たからね。デーモンにもルークにも、まだ何も話してないよ」
「だったら、急いで帰るぞ。のんびりしている暇はないんだから」
 改めて仕切り直したエースに、ゼノンも気持ちを切り替えて頷く。
 そして再び、王都へ向けて出発したのだった。

◇◆◇

 日も落ちて職務時間が終了した頃、デーモンとルークの元へエースから連絡が入った。
 そして呼ばれるまま、彼らはエースの屋敷へと向かった。

 デーモンがルークと共にエースの屋敷へと到着すると、そこには主たるエースと、ゼノンも一緒に待ち構えていた。
「あぁ、帰ってたのか?」
 ゼノンが雷神界に行ったのは、デーモンも知っていた。だが、わざわざ行ったのだから、数日向こうにいると思っていたのだ。だからこそ、日帰りと言う慌しさは意外だった。
「うん、用事があったからすぐ戻って来たんだ。昼前には魔界に戻ってたよ。それで、エースと一緒にサラを家まで送って…ディール元長官と話をして来た」
「ディール元長官と…?」
「そう。"アデル"の正体がわかったから、ね」
 そう言って笑うゼノンを、デーモンとルークは驚いた表情で見つめた。
「正体、って…昨日の今日じゃん。何でそんな直ぐに…?」
 ルークの言葉に、エースとゼノンは少し顔を見合わせ、小さく笑った。
「取り敢えず…デーモンとルークの発想力を試してみようか」
 ゼノンはそう言ってエースが用意した紙に、まず"アリス"と"エリカ"の名を書いた。そしてもう一つ、"ジュリアン"とラン=ジュイ"の名を書くと、デーモンに渡した。
「まぁ…謎解きをしたのはライデンなんだけど…それを見たら、エースもわかったよ」
「これで…?ただ、名前が書いてあるだけじゃないのか…?」
 そう言いながら、デーモンとルークは揃って紙を覗き込む。
 そして、暫し。
「……あ」
「わかった?」
 声を上げたデーモンに、ゼノンが問いかける。
「デーさんわかったの?」
 眉を寄せるルークに、デーモンは苦笑する。
「何となく…な。あれだろう?ほら、文字の並びを変えるヤツ。何て言ったっけ…?」
「あぁ…何だっけ?」
 デーモンの言葉に、ルークは腕を組んで天井を見上げる。だが、その言葉が思い出せないようだ。
「アナグラム、だろう?」
 苦笑するエースがそう口を挟むと、ルークはポンッと手を叩いた。
「そうそう、それ。ってことは、他の名前もみんなそうだってこと?」
「一応、俺たちが知る限りは…な」
 そう言って、紙に"アデル"の名と"ディール"の名を書いた。そして、もう一名。
「…"オズウェル"が…"ウェスロー"…」
 その名前に、デーモンもルークも小さく息を飲んだ。
「捜したって、見つからないはずだよな。元々、"オズウェル"なんて名前の奴は存在していないんだから。だが、"ウェスロー"も実名じゃない。同じ文字の、違う並びの奴を捜さなきゃいけないんだが…何にもないところから捜すよりは、多少は見つけやすくなったんじゃないかとは思う。恐らく、枢密院にいるんだろうから…その中で、チェックしていくしかないな…」
 エースはそう言って、大きく息を吐き出す。
「御前のところに、まだメモリファイルを預けているよな?」
「あるけど…まさか、俺に全部押し付けるつもり?何万もいる枢密院の局員の中から、見つけ出せって?」
 再び眉を寄せたルークに、エースは小さく首を振る。
「全員を対象にする必要はないだろう?"ウェスロー"は隠密使を集めた最初の時からいるってことだからな。そう考えると、ダミアン様よりも年上だ。まぁ、あの方も俺たちよりも早く入局しているからな。最低ラインはダミアン様よりももう少し上で良いはずだ。そう考えれば、そんなには多くないはずだ。一応、他の局の分も検索をかけたとしても、びっくりするほどはいないはずだ。まぁ…各々、自分の局は自分で捜す方が、早いかも知れないな。明らかに下っ端、って訳でもないだろうから。顔に覚えがあるかも知れない」
「まぁ…そうだな…」
 デーモンも腕を組み、ソファーに深く背を凭れた。
「やっぱり、"アデル"は"ディール"元長官、だったか…だとすると…その頃の上層部…軍事局だと…ルシフェル参謀長、か…」
「………」
 僅かに、ルークの表情が変わった気がした。
「…この際だから…各々、知っていることを全部吐き出すか。エースも、ルークも…吾輩も、だが…まだ、言えていないことがあるだろう?ゼノンはどうかわからないが…今回のことは、秘密にしていても前へは進めない。今は、情報の共有が優先だ。どうせエースの屋敷だ。執務室じゃないから、ここから他へ洩れることもない」
「…確かに、な。ウチから外に漏れることはないからな…」
 仕事柄、誰よりも使用魔の口も堅い。忠誠心も強いので、例え聞いていたとしても確かに外に漏れることはまずないのだ。
 そう思いながら、エースは少しルークへと視線を向ける。未だ、口を噤んだままで険しい表情を浮かべているルーク。何かを考えているのだろうが…すんなり口を開くようには思えなかった。
 それは、デーモンも同じ事を察したのだろう。出された御茶で口を潤すと、自ら口火を切った。
「言い出しっぺだからな、まず吾輩から…な。吾輩が知っていることは…まぁ、大したことじゃないんだが…ジュリアンに"ラン=ジュイ"の名をつけたのはダミアン様だ。そしてその頃、一時だが…私用の伝達に"マッド=イアン"と言う名を使っていたことがある。ダミアン様の茶目っ気だったんだろう」
「…"マッド=イアン"…昼間、エースも言ってたよ。それも、アナグラムだよね。でも、どうして直ぐに使わなくなったの?」
 紙に名前を書き、ルークへとその紙を渡して確認を促したゼノンは、使わなくなった理由をデーモンに問いかける。エースも"マッド=イアン"の名前は聞いていたが、使わなくなった理由までは聞いていない。その視線は、当然デーモンへと向けられていた。
「…亡くなったから、だ。ルシフェル参謀長が…な」
「………」
 育ての親であり、教育係であり…そして、常に盾となって自分を護ってくれたその最愛の悪魔。最後まで変わらなかったその偉大な存在。だからこそ…今でも、隠密使たちにその名を残していたのかも知れない。
 大きく息を吐き出したのは、誰と限定出来なかった。
「ルシフェル参謀長は…ダミアン様を護る為に、本当に必死だったんだろうな。だからこそ…彼の君を護る為に、隠密使を集めた。そして、"アデル"と"ウェスロー"の名をつけたのはルシフェル参謀長だ。そこに潜めた茶目っ気は…ダミアン様にも引き継がれている。俺は…ディールにそう聞いた…」
 そう言葉を吐き出したエース。
「必死に護ろうとして集めた隠密使が…どうして、反旗を翻すようなことを…一体、その転機は何だったんだろう…」
 ゼノンもまた、想いを巡らせるようにそう言葉を零していた。
 全ての鍵は、恐らく"ウェスロー"が握っているはず。それは、誰もがわかっていた。けれど、その理由は何もわからない。
「…転機は…恐らく、あの"革命"、だろうな。あの革命で、"魔界防衛軍"の名を初めて聞いただろう?つまりは、やはり"ウェスロー"は"ターディル"の意を継いだ者だ、と言う我々の考えは間違っていない。"魔界防衛軍"の名を使っている以上、それは確定だと思う」
「"ターディル"と"ウェスロー"か……」
 デーモンの言葉に、エースはちょっと何かを考えていた。そしてそのまま、席を立つと部屋から出て行った。
「…何か、思いついたのかな…?」
 その背中を見送りながら、デーモンとゼノンは顔を見合わせて首を傾げる。
 そして、その一部始終に口を挟まず、ずっと目を伏せていたルークは…大きな溜め息を吐き出した。
「"特別警備隊"の内部事情は…かなり複雑だと思うよ。ダミ様に反旗を翻しているのが何名いるのかは知らないけど…全員が反旗を翻した訳じゃない。純粋に、ダミ様を護ろうとしている奴もいるんだ。だから…こんな面倒なことになってるんだと思うよ」
「…ルーク…?」
 今まで口を噤んでいたルークの、突然のその言葉。当然、デーモンとゼノンの視線もルークへと向けられる。
「"特別警備隊"が"魔界防衛軍"と名乗ってることは間違いない。ただ、ジュリアンに、魔界に対する悪意はない。彼奴はただ純粋にダミ様を護ろうとしている。ただ、その手段は…まぁ、かなりエグイけどね」
「…エグイ?何が、だ…?」
 怪訝そうに眉を寄せるデーモンに、ルークは御茶のカップに手を伸ばす。
「見張られてんだよ、俺たち。皇太子宮にも、諜報員がいるし。俺とダミ様が何をしてるかってことも、ジュリアンは把握してるしね。まぁ…彼奴も只者じゃない、ってことは確定ね」
「…は?諜報員、って…」
「いるらしいよ。あの使用魔の中に…ね。ダミ様が知っているのかどうかはわからないけど…ジュリアンの態度を見る限り、ダミ様には内緒みたいだね。となると…もう、何処にいても不思議じゃない。この屋敷にだって、いるかも知れないよ?勿論…ウチの使用魔の中にも…ね」
「………」
 その言葉は、既に脅威でしかない。
「だから…なのか?我々がピンポイントで狙われているのは…」
「多分ね。そう考えると納得行くんだよ。勿論…俺たちの誰かが諜報員だ、って可能性もある。一度は嫌疑を解いたけど…結局、何とも言えない。まぁ、ここまで来たら、あんたたちを疑うつもりはないけどね」
 ルークはそこまで言って、カップに口を付ける。
 当然、デーモンとゼノンは奇妙な顔をしている訳で…そんな二名を前に、ルークは息を吐き出した。
「ただ…ダミ様の屋敷の使用魔が、ダミ様の失脚を望んでいるとは思えない。勿論、ジュリアンだってそのつもりはないようだし、ただ純粋にダミ様を護る為の手段なんだと思う。だから、さっきも言ったじゃん。"特別警備隊"の内部事情は、かなり複雑だと思う、って。反旗を翻した奴と、翻していない奴と。何名いるのかもわからない隠し部署で、それが誰なのかもわからない。そんな奇妙な部署が存在している、って事自体が、そもそも可笑しいってことなんだよね」
「確かに、それはそうなんだが…」
 ルークの言っている意味は、確かに正当である。勿論、隠密使を集めた当初は、ダミアンの失脚を望むなどと言うことはなかったはず。何処かで捩れてしまったからこそ…の結果、なのだ。
「…でね、色々考えたんだけどさ…」
 ルークはそこで一旦言葉を切る。そして、改めて口を開く。
「ダミ様に…隠密使を廃止して貰うように話してみようと思うんだ」
「…隠密使を廃止、って…」
「だって、元々そこが諸悪の根源な訳でしょう?だったら、まずそこを何とかすれば良い話じゃないの?」
「いやいや、ちょっと待てよ…」
 突然のその言葉に、デーモンは大きく息を吐き出す。
「それは余りに唐突な提案だぞ?曲がりなりにも、隠密使はダミアン様を護る為に必要な役割を担っているんだ。そこを突然廃止しろと言ったところで、すんなり通る話じゃない。幾ら御前の提案だとしても、ダミアン様はそこでOKは出さないと思うが?」
「…そうかなぁ…」
 不服そうな表情を見せるルークだが、デーモンも、そしてゼノンもまた、その思いには賛同出来なかった。
「俺も、今提案するべきではないと思うよ。御前には不服なんだと思うけど、下手に騒ぎ立てない方が良いと思う」
 ダメ押しするようなゼノンの言葉に、ルークは大きな溜め息を吐き出す。
 と、その時エースが再び部屋へと戻って来た。
「……どした?」
 その異様な雰囲気に、思わず眉を寄せてそう問いかけたエース。だが、ルークは口を噤んだまま。仕方なく、デーモンが口を開いた。
「まぁ…ルークの事は後で説明するから。で、御前は何をして来たんだ…?」
 今はまず、先に進まねば。そんな思いも込めて、デーモンはエースに問いかける。
 するとエースは、怪訝そうな顔をしながらも、再びソファーへと腰を下ろした。そして、手に持って来た紙をテーブルの上に置いた。
「ちょっと調べて来たんだが…恐らく、"オズウェル"だろう、と言う奴の目星はついた」
「…は?」
 その唐突な展開に、当然三名とも目を丸くする。
「何で、そんな直ぐに…?名簿は、俺が持ってるんだけど…?」
 余りに早いその仕事っぷりに眉を寄せるルークに、エースは小さく息を吐き出した。
「別に、メモリファイルの名簿から見つけて来た訳じゃない。あれがないと何も出来ない訳じゃないからな。ウチの局の資料の中を調べて来たんだが…それが、これだ」
 そう言って、テーブルに置いた紙を指差した。
 当然、視線を向ける三名を横目に、エースは言葉を続ける。
「"オズウェル"が"ターディル"の意思を継ぐ者だとしたら…その繋がりは何か、と考えたんだ。そう考えると、一番強いのは血族、だろう?もしかしたら…と思って調べて来たんだが…そうしたら、"ターディル"の子供が枢密院にいることがわかった。登録されている正式な名前は"ソウェル=ラヴォイ"。今の枢密院の名簿には"ソウェル"としか登録されていない。どうやら、"ターディル"が殺された後、登録名を変えたようだ。そこだけを探っていたのなら、見つけられなかったと思う。上位ではないが…遠縁とは言え、今皇族の血を引くのはダミアン様と"ソウェル"だけだ。その辺は調べれば直ぐにわかる。そして、"ソウェル"の名を入れ替えると、"オズウェル"にも"ウェスロー"にも変える事が出来る。それが…今一番の答えじゃないか、と思う」
「…"ソウェル"、か…」
 デーモンは腕を組んで大きく息を吐き出すと、ソファーに背を凭れた。
「俺は聞いたことないけど…デーモン知ってる?」
 問いかけるゼノンの声に、再び大きな吐息が零れる。
「…聞いた記憶はないな…それが上位ではない、と言うだけの理由なら良いんだが…」
「どう言う事?」
 意味深な言葉に、今度はルークが問いかける。
「つまりな、敢えて上位に行かないようにしていた可能性が強い、って言うことだ。隠密使として選ばれた以上、それなりの実力があることは間違いない。だが、上位を取れば、必然的に名前も顔も知れ渡る。それが、隠密使としての為に抑えていたのならまだしも、その先の事まで考えていたのだとしたら…登録名をわざわざ変えた理由も深く読み取ればそうなのかも知れない」
「"魔界防衛軍"として暗躍する為の、隠れ蓑だった…とも考えられる、って言うことだな」
「…成程ね…」
 デーモンの言葉を補うように付け加えたエースに、ルークもゼノンも眉を寄せる。
 そう言われると、すんなり納得出来た。
「確かに、ジュリアンもアリスもそれなりに実力があるのは確かだけど、だからと言って上層部にいるか、って言ったら話は別だからね。アリスなんか、登録されていたのは下っ端の部署だったしね。ジュリアンは何処にいるのかは調べてないけど、名前を知らない時点で下っ端の部署にいる可能性が高いもんね」
 小さな溜め息と共に吐き出されたルークの言葉。
「まぁ、少し様子を伺った方が良いかも知れないな。取り敢えず、"ソウェル"がいる部署を重点的に見ていく必要があるな。吾輩もダミアン様の周りにはなるべく注意する。それで良いか?」
「了解」
 デーモンの言葉を、三名とも了承する。まず、そこから始めるしかないのだ。
「…で、さっきのルークの件は…?俺がいない間に、何の話を?」
「あぁ、それな…」
 エースに問いかけられ、デーモンは当のルークへと視線を向ける。
 ルークは…と言うと、大きな溜め息を吐き出していた。
「つまりね、隠密使がいること自体がどうか、って言うこと。ダミ様の屋敷にも諜報員がいるらしいし、俺たちの行動は何処で見張られていても不思議はない、ってこと。だったらいっそ、隠密使自体を廃止する方が良いんじゃないか、ってことをダミ様に提案しようとしたら、デーさんとゼノンに止められた、ってことよ」
「…隠密使を廃止?」
 当然、エースもその言葉には奇妙な顔をした。
「そ。だってさ、ダミ様の屋敷ですら監視されているんだよ?俺とダミ様の関係も全部筒抜けってことじゃない?幾らダミ様の身を護る為の隠密使だからって言っても、流石にそれはどうかと思うでしょ?プライバシーも何もあったもんじゃない」
「まぁ…気持ちはわかるけどな…」
 少し考えてから、エースは小さく苦笑した。
「だが、確かに俺も止めるな。御前の気持ちもわかるが、今隠密使を廃止したら、かえって彼奴等の動きがわからなくなるだろう?その件に関しては、今は大人しくしていた方が無難だと思うぞ?」
「わかってるよ。あんただけじゃない、デーさんにだってゼノンにだって、止められたからね。今は大人しくしてる。でも、何れは…とも思うよ。俺のことだけじゃなくて…元々の存在意義と変わって来ている訳だからね。その辺は、考え直して貰おうとは思う」
「まぁ、何れは…な。それは、吾輩からも打診はしてみるから」
 ルークの意に同意するデーモンに、少しだけルークの表情も柔らかくなった。
 正妻ではないが、恋悪魔としてダミアンの傍にいることを許されているルークにしてみれば、唯一身位を忘れられるダミアンの私邸でさえ、監視されていると言うことは当然面白い話ではない。勿論、それは誰にでもわかる話だった。
「今は大人しくしてるよ。俺だって馬鹿じゃないからね。その辺はわかってる。取り敢えず、"ソウェル"の所在の確認が第一だからね。それからそいつの出方を少し見るつもりではいるよ」
 溜め息混じりに吐き出したルークの言葉。
 今は、そうすることが第一。自分の感情など、後回しにしかならない。そんな思いの断片は、その吐き出された溜め息で察することが出来た。
「今日帰ってから、メモリファイルの確認をしてみる。"ソウェル"と"ラン=ジュイ"の部署の確認、ね」
 そう言うと、ルークは大きく伸びをしてソファーから立ち上がる。
「御免ね、ちょっと色々疲れたから御先に」
 そう言い残し、ルークは軽く手を振って一足先に帰って行った。
「大丈夫かな…」
 その後姿を見送ったゼノンが、一言そう言葉を零す。
「まぁ…ルークに聞けば、大丈夫、としか言わないだろうな。気を張り詰めている時は、みんな同じ答えだ」
 少し前。雷帝を継いだその日。どう考えても大丈夫ではない姿のライデンもまた、大丈夫、の言葉を繰り返していたことを思い出し、デーモンは溜め息を一つ。
「吾輩は、闇雲に動くことも出来ないからな。フォローの方に回るとしようか。まぁ、細かいことは御前たちに任せるから。頼むな」
 デーモンもまた、疲れた表情で一つ欠伸を零す。
「俺たちもあちこち移動したから、今日はゆっくり休もうよ。疲れたままじゃ、頭も身体も働かないからね」
「…そうだな」
 ゼノンにそう言われ、エースも自分が疲れていることを改めて自覚した。
 確かに、ゼノンも朝から雷神界へ行き、魔界へ戻って来ても、王都とサラの家のある郊外を往復しているのだから、疲れていないはずはない。エースは王都と郊外の往復だけだが、それでも片道はサラに合わせて歩いたのだから、身体は確実に疲れていた。
「じゃ、俺も御邪魔にならないうちに帰るよ。まぁ、ごゆっくり。じゃあまた明日ね」
 何を想像しているのか…くすっと笑いを零したゼノンもまた、ソファーから立ち上がると、そそくさと帰って行く。
 その背中を見送ったエースとデーモンは…思わず顔を見合わせ、くすっと笑いを零した。
「何だか…気を使われたか?」
「…恐らく」
「……じゃあ、期待に応えた方が良いのか?」
 くすくすと笑うデーモンに、エースも再び笑いを零す。
「そうしておこうか」
 こんな状況でありながら、実に穏やかな時間。
 ささやかな一時は、疲れ切っていた神経を鎮めてくれたのだった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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