聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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縁 3
こちらは、以前のHPで2003年11月09日にUPしたものです
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
5話完結 act.3
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
5話完結 act.3
気が付いた時には、俺は簡易ベッドの上に寝かされていた。
「大丈夫か?悪かったな、ちょっと無茶したな」
顔を覗き込むエース。だが、その表情に、悪びれたところはない。エースにとっては、当然の行為だったんだろう。
「…大丈夫。ちょっと眩暈がしただけ」
「自業自得だ。溜め込んだ感情がそれだけ多かった、ってことじゃないか」
小さな溜め息を吐き出し、エースは俺の左耳に手を翳した。
「大人しくしてろよ。傷は塞いでやるから」
そう言うなり、左耳が熱くなる。それは、傷が塞がっていく証拠だった。
「何で、こんな無茶をしたんだ?ピアスを増やしてまで、無理やり感情を制御する必要が本当にあったのか?」
耳朶の傷を治し終わると、徐ろにエースがそう口を開いた。
俺が辞職願を出してから今までの間、感情を封印して来たピアスを引き千切られてしまったのだから、今の俺には、もう気持ちを押さえることが出来ない。
つまりは…昔の俺に戻ってしまった、と言うことだ。
「さっきも言ったじゃない。ライデンを、護る為だよ」
「…ゼノン…」
ベッドから起き上がると、自然とエースの眼差しと視線が合う。
「俺は、罪魔だよ。咎められなかったからと言って、そのままにして良いってことじゃない」
「…だったら、ちゃんと話せよ。あの事件のこと。御前が何処まで、真実を知っているのか。みんな、それを心配していたんだぞ?」
そう言われ…俺は、深い溜め息を一つ吐き出した。
「…心配かけたことは謝るよ。でも…何が真実か、なんて…見方一つで幾らでも変わるんだ。ロイドに全ての罪があるのかどうか、俺にはわからなかった。証拠は、何もないんだ。仮説だけでは罪を問うことは出来ない。ただ一つだけはっきりしているのは…俺が、ロイドの行動を見逃したと言うことだけ。研究室の主任として…局長として、その責任を取らなければならない。最初から、俺が背負うべき罪なんだよ。それに、あのまま俺がライデンとの関係を続けていたら、何れライデンが雷帝を継ぐ時に、きっと全部蒸し返される。俺の過去は、洗いざらい調べられるんだ。局長として…研究材料の管理も、部下の管理も出来ない。ましてや、そのウイルスが原因で魔界を震撼させた。そんな奴を、誰が好き好んで大事な雷帝の伴侶として受け入れられる?勿論、自分で撒いた種だから、俺はそれでも平気だよ。でも…そうなったらその時に咎められるのは、そんな相手を選んだライデンなんだ。幾ら、俺を護ると必死になってくれたって…俺は、ライデンが周囲から反感を買うことは望まない。そんなこと、望んで良いことじゃない。俺が彼奴の為に出来ることは、それだけなんだ。だから俺は…」
「自分から、切り捨てた、と」
「……」
大きな溜め息が、エースの口から零れた。
「暗いなぁ、御前は」
「…どう言う意味だよ…」
暫く会わないうちに、エースの思考を読み取ることが苦手になったみたい。エースが何を言おうとしているのか、まるで理解出来ないなんて。
「どうして、前向きに生きようとしないんだ?確かに、あの事件は、魔界全土を震撼させたことには違いない。ウイルスの盗難を見逃した御前が、罪魔の械を背負うことを決めた心中もわかるさ。だが、それを終結させたのも御前なんだぞ?雷神界に咎められるのがなんだ。自分が終結させたと、どうして胸を張れない?ライデンなら、絶対にそう言って反対意見なんて突っ撥ねるに決まってるだろう?そんなことで、負ける訳がないだろう…?ライデンを護りたいのなら、どうして目の届くところにいてやらない?どうして、自分の手でしっかり捕まえていない…?」
「…御前らしい考えだね。でも、俺は御前じゃないんだ。自分の力量は自分が一番良くわかってる」
無理やりと言うか、強引と言うか、何と言うか…。無謀な策を実行させようって言うのは、ホントにエースらしい。同じことなんか…出来るはずはないのに。
俺の表情で、そんな思考を読み取ったのか…エースは溜め息を一つ。
「御前がそんな後ろ向きだから……ライデンが、不毛な結論を急ぐんじゃないか」
ぽつりと零れたエースの言葉。それだけは、今までの口調と少し違う。
「…不毛な結論…?」
そう問いかけながら、鼓動が早くなる。久しく感じなかった、それは"不安"の感情。
「俺はデーモンから聞いたんだが…彼奴、御前との関係にけじめを付けたら、婚約するって言ってたらしいぞ」
「……」
ドキッとした。その直後から、更に鼓動は激しくなる。
「彼奴の中で御前との関係は、もう終わったのだとしたら…彼奴、そのまま結婚するぞ。御前が望んだ、雷神界の平穏の為、だ。自分を偽ったまま、彼奴が本当に倖せになれるとでも?」
エースが、問いかける。
「…ライデンが、納得して出した結論でしょう…?」
そう答える声が、微かに震えている。
「ライデンがそんな結論を、本当に望んでいたと…御前は本気でそう思うのか?彼奴は今だって、御前のことが一番大事なんだ。だが、御前が自分との関係があるから王都に戻って来ないのなら…自分から離れれば良い。御前が何の心配もなく戻って来られるように、自分が諦めれば良い。それが、彼奴が出した本当の答えだったんだ。それに、雷帝たる者が、いつまでも帰らない恋悪魔の為に、時間を無駄には出来ない。周囲の言葉に反論することに、疲れたのかも知れない。今の彼奴は…すっかり生気を削がれちまってる」
あの時…ライデンが俺に言った、"解放"とは…そう言う意味だったんだ。それを今更教えられても…どうにもならないと言うのに…。
小さな溜め息を吐き出した俺に、エースは更に言葉を続けた。
「上皇は…ライデンの親父さんは、ライデンの本心を知っているからこそ、納得していないらしい。だが、ライデンが承諾してしまったんだ。それは仕方がない。もう直…正式に婚約して、婚姻の儀の準備が始まるだろうな」
「………」
「さぁ、どうする?このまま、黙って見守っているか?」
「…ホント…意地悪だよね…」
横目でエースを睨むと、エースはくすっと笑いを零した。
ピアスを外した今…それ以上、強がれる訳ないじゃない。
「…今更…戻れないよ」
溜め息を吐き出しつつ、俺はそう零す。
「全部を、否定して来たんだよ?王都へ戻ることも、職務に戻ることも…ライデンとのことも、全て。なのに、今更それを全部取り戻すだなんて、到底無理な話でしょ?そんな強引な話、許されるはずがないじゃない」
そう。今更戻るなんて…。
でもエースは、そんな俺を、目を細めて笑った。
「なら、ライデンを諦めるんだな。尤も、俺が知ってる"ゼノン"は…そんなに簡単にライデンを諦められないと思うんだがな。それに…その気になれば、取り戻す為の方法はあるはずだ。その為に、今まで俺たちが御前の"居場所"を護って来たんだぞ?そう言う時は、素直に頭を下げて頼れば良いじゃないか」
「…取り戻す方法って…また無謀なこと考えてるでしょ…」
こう言う時のエースは……きっと怖いこと考えているんだろうな…。
溜め息を吐き出す俺に、エースも溜め息で返す。
「馬鹿言うな。俺は真面目に考えてるぞ?御前がライデンを想う気持ちが強ければ強い程、それが御前の力になる。そうだろう?」
「でもそれは、俺の単なる独占欲だよ。ライデンを傷付けるかも知れない」
「それは、時には必要な欲望だろう?今更、何を遠慮してるんだよ」
エースは煙草を取り出すと、火を付けてその紫煙を燻らせる。勿論、俺に煙が届かないように、ちゃんと配慮してくれている。
「独占欲がなくなったら、大事なモノなんか何も護れないだろう?必要だから求めるんだ。だから、俺はそれを肯定する。大事なモノは、自分自身の手で護ってみせる。それの、何処がいけないって言うんだ?」
それは、エースなりの正論。エースもそうやって、デーモンを護って来たのだろう。
誰にも、手渡したくはないから。
「…全く…酷い理屈だよね」
大きな溜め息を一つ零し、俺はベッドから立ち上がった。
「…わかったよ。俺が無茶すれば良いんでしょ?」
「やっとその気になったな」
小さく笑いを零したエースは、携帯用の灰皿に煙草を押しつけて火を消すと、再びそれをポケットへと仕舞い込み、俺の外套を手に取って渡した。
「まずは、王都へ戻ろう。元の役職を取り戻すことが先決だ」
「…はいはい」
ここまで来たら…もう何も逆らわないことにしよう。逆らったところで、得られるものは何もないことはわかりきっているんだから。だから、流されるだけ流されて…あとは野となれ山となれ…だ。
渡された外套を羽織り、荷物を手に取ると、俺はエースと共に再び王都へと戻ることになった。
全ては、ライデンを取り戻す為に。
王都に戻って来た俺たちは、真夜中にも関わらず、そのまま皇太子の執務室へと直行した。
「失礼します」
エースがドアをノックして、そのドアを開ける。
『あぁ、エースか。どうぞ』
ドアの向こうから、ダミアン様の声が聞こえた。
勿論エースが先に入り、ちょっと振り返ると、俺を促す。
ここまで来て何だけど…足が重いよ。まぁ…当然か。
「…失礼します」
やっとで足を踏み入れた、皇太子の執務室。その向こうには、こちらを見つめるエースと、そしてこの部屋の主…ダミアン様の視線がある。
「おや…これはこれは」
一瞬目を丸くしたダミアンだが、その表情は直ぐに柔らかくなり、くすっと小さな笑いが零れた。
「御帰り…と、迎えても良いのかな?」
そう問いかけられ、俺は暫し口を噤んだ。
エースは黙って、俺を見つめている。
俺は、覚悟を決めて大きく息を吐き出した。
「…はい。申し訳ありませんでした。御迷惑を…御掛け致しました…」
深く頭を下げ、そう口にする。
「御帰り、ゼノン。待っていたよ」
その声に顔を上げてみれば、にっこりと微笑むダミアン様がいる。
俺は、王都に戻って来てしまった。
一番大切な悪魔を、取り戻す為。ただ…それだけの、為に。
「さて、それじゃあ、御前が素直に戻って来た経緯でも聞かせて貰おうか?エースに一体、何を諭されたんだい?」
…はぁ。
思わず零れた、小さな溜め息。
全ての経緯を話すまで、きっと納得はしてくれないんだろうな…。こう言うことに関しては、エースは絶対に口を挟まないだろうし…。
言葉を選びながら、俺は筋道を辿って話を始めた。
ロイドのこと、王都を出た理由、それからピアスを付けた理由も。そして、再びここへ戻って来た理由も。
俺が口を噤むまで、ダミアン様は俺の顔を観察しながら、黙って聞いていた。
そして、俺の言葉が途切れた時、大きく息を吐き出した。
「…そう。御前の言い分は良くわかった。ロイドのことはどうしようもないが…まぁ、ライデンのことは何とかなるかも知れないね」
「……ですが…」
「ですが?」
思わず口を挟んだ言葉に対して問い返されても、上手く言葉が見つからない。
今の気持ちを、どう言葉にして良いのかがわからないんだから…説明のしようもない。
頭の中で気持ちを整理しながら、俺はゆっくりと言葉を紡いだ。
「…ライデンが…俺を必要としないと言うのなら…俺は、素直に身を退きます。その時には…王都に留まるつもりはありません。元々、もう一度ライデンと出逢う為に戻って来たのですから」
一応…心が伴っているかいないかは別にして…ライデンは婚約を決めたと言うのだから、無理強いをする訳にはいかない。
最初から最後まで、俺の我儘が招いたことなのだから。
するとダミアン様は、軽く微笑んだ。
「そうか。そこまで覚悟を決めたのなら、口出しはするまい。ただ、今のライデンは素直じゃないからね。一筋縄ではいかないだろうね。だが、本当の気持ちはいつまでも隠し通せるモノでもない。御前がもう一度ライデンの本心を見つけられるよう…もう一度、きちんと巡り逢えるよう、精一杯頑張っておいで。流石に、立場上表立ってどうこうする訳にはいかないが…わたしも、陰ながら応援しているから」
ダミアン様の気持ちは、良くわかっていた。
「…我儘ばかり言ってしまって…申し訳ありません」
「時には我儘も必要だろう。それくらいの度量がないと、王都ではやっていけないさ。まぁ、魔界側の心配はしなくても良いから」
「…はい」
俺は、素直に頷いた。
今は、とにかく前へ進しかない。
それが、今の俺が後悔しない為に選んだ道ならば。
皇太子の執務室を出た俺とエースは、とりあえずエースの屋敷へとやって来ていた。
リビングに通されると、エースから連絡を受けていたんだろう。デーモンとルークも、既に腰を落ち着けていた。
直に夜も明けると言う時間帯なのに…彼等は、当然のようにそこに納まっていた。
「久し振りだな。元気そうじゃないか」
にこやかに、そう俺を迎えてくれたのはデーモン。その隣にいるルークの表情は、何とも言えずに複雑窮まりない。
「その…何と言ったら良いか……とにかく、御免…」
深く、頭を下げる。それ以上、返す言葉さえ見つからない。
勝手に逃げ出して、見つかってもまた勝手にいなくなって…そして、今度は都合良く戻って来ている。ホント、身勝手窮まりないよね。
小さく溜め息を吐き出す俺を、三名は黙って見つめていた。だが、最初にその口を開いたのはルーク、だった。
「…今度こそ…消えたりしないだろうな…?」
ふと顔を上げてみれば、そこに見えるのは不安。
「誰も…あんたがいなくても良いだなんて、思ってないんだから。あんたが色んなものを背負って王都から出て行ったのはわかる。でも、それはあんた一名の都合であって…俺たちにちゃんと言ってくれさえすれば、そんな必要がなかったかも知れない。何より…ライデンを、傷つけなくても済んだかも知れない。仲魔なんだから…遠慮なんかするなよ…」
「…うん。御免ね…ホントに……」
みんなに心配をかけたことはわかっている。だからこそ…今度こそ、しっかりしなければ。
そんな想いを込めた言葉を察してくれたのか、ルークの表情が柔らかくなる。
「…ライデンに、会いに行こうね」
にっこりと、微笑んだルーク。それが、想いの全てだったんだろう。
「…うん。そうだね」
今は、素直にそう言える。
俺には勿体無いくらい…とても大切な仲魔たち。俺は、一時でもそれを裏切ってしまった。
だからこそ…今度だけは、もう一歩も譲れないのだ。
ぐっと、想いを飲み込んだ。
そこからもう一度、歩き出す為に。
「さて。それでは、ライデン奪回の対策を練ろうか」
にっこりと微笑むデーモン。
ホントに…どうしてみんな、こう御節介なんだろうね。
でも今は…その想いが、嬉しかった。
「…雷帝陛下に……いや、違うか。今はライデンが雷帝を継いだから、もう上皇様だね。とにかく、ライデンの父上様に…会いたいんだけど…」
「…は?」
ぽつりとつぶやいた俺の声に、デーモンもルークも、目を丸くした。
唯一、表情の変わらないエース。多分エースは…俺の気持ちをわかっている。だからこそ、表情一つ変えずに、俺を見つめていられるんだと思う。
「上皇様に?」
改めて問い返したデーモンに、俺は小さく頷いた。
「連絡、取ってやれよ。副大魔王の権限で」
エースは、淡々とそう言う。
「…またそうやって、無謀なことを…」
「無謀じゃないだろう?ここからは実力行使だからな。ここにいる誰よりも高位な御前が連絡を付ければ、一番確率が高いじゃないか」
「…ったく…言うだけなら簡単だが、こっちは大変なんだぞ…」
エースの言葉に、デーモンは小さく溜め息を吐き出していた。
「俺からも…御願い。何とかならないかな…」
口を挟んだ俺に、デーモンは暫く俺の顔を見つめた。そして、小さくその言葉を零した。
「まぁ、御前がそうしたいと言うのなら、何とか話は切り出してみるが…正直、難しいぞ?御前の身位がどうのと言う問題以前に、今雷神界の王はライデンだからな。今の彼奴なら…簡単に許可は出さないと思う。その覚悟はしておけよ」
「わかってるよ。最初から、それは承知だもの」
「じゃあ…ちょっと待ってろよ」
そう言い残し、デーモンはエースの屋敷のコンピューターを借りに、部屋を出て行った。早朝にも関わらず、何とも行動的だこと。相手もこんな朝早くから、良い迷惑だろうけれど…そんなことは、今は頭にないらしい。
「…何で、ライデンじゃなくて上皇様な訳?」
俺が、ライデンではなく最初に上皇様を指名したことが疑問だったようで、ルークがそう問いかけて来る。
「何でって…」
そう問いかけられても、上手く説明出来ない。それでも言葉を選びながら、俺はルークにその想いを伝えた。
「…今、一番話したいと思った相手だから…としか言えないんだけど…あの方は、最初からずっと、俺を信頼してくれていたんだ。でも、俺はそれを裏切ってしまったから…弁解する訳じゃないけど、正直な気持ちを伝えたいと思ったんだ。今更受け入れて貰えるかどうかもわからないけど…きちんと、話をしたくて。俺が巻き起こした全てのことも…ライデンとのことも。咎められるのは百も承知。どんな答えが返って来ても良いんだ。話を、聞いて貰いたいだけ」
俺の想いを、彼等がどれくらいの大きさで受け留めてくれたかはわからない。でも、今は何よりも、上皇様に話を聞いて貰いたい。俺の気持ちは、それだけだった。
「まぁ…あんたの気持ちはわかったよ。でも、上皇様と話が出来るかどうかは、デーさんの交渉次第だけどね。それよりも、ライデンの方はどうなってんだろうね?」
ふと、ルークが思い出したようにエースに問いかけた。多分、婚約云々のことだろう。当然、ルークもそれを聞いていたらしい。
「さぁな。デーモンの様子からすると、まだ話が出たばかりみたいだからな。そう簡単に話は進まないと思うんだが…」
「じゃあ、白紙に戻すのはまだ可能な訳だ」
ルークはそう言うと、何かを考えているようだった。
「ライデンが納得すれば、の話だろうけどな」
エースは煙草に火をつけ、紫煙を吐き出しながらそう言葉を零した。
「納得していただけるように、まずは穏便に話を通すのさ。まぁ、その辺は俺たちがあんまり口出しするのも何だから…ダミ様にちょっと相談してみるけど」
「まぁ、焦らなくても大丈夫だろうが、早めに手は打った方が良いな。婚約して直ぐ結婚、って言う訳じゃないが、準備にかかる時間だって並じゃない。曲がりなりにも、雷帝陛下の結婚の儀、だからな。婚約が決定的になれば、準備だって直ぐに始まるだろうからな」
「なるべく早い段階で確認は取って貰うよ」
そう言って、ルークの視線が僅かに俺を捕えた。
「…全部…あんたの為だよ。その為なら、俺たちはどんなことも協力する。わかってる?」
「…わかってる。感謝してるよ。有難う」
にっこりと笑ってみせると、ルークも小さく笑った。
「まず、誤解を解かないとね。ライデン、まだあんたのこと、誤解してるだろうから」
「…まぁ…ね」
そう。それは正直に話さねば。誤解されたままでは、話も進まない。そこから先の進展が何も期待出来ないのだから。
ただ問題は、ダミアン様も言っていた通り…ライデンがそれを素直に聞いてくれるか、と言うこと。会えるかどうかも定かではないのに…。
とにかく今は、上皇様に会いたい。まずは、そこがスタート地点だ。
俺が、そんな思いを抱いていたその時。デーモンが隣の部屋から戻って来た。
「どうだった?」
問いかけるルークの声に、エースと俺の視線もデーモンへと注がれる。
しかし…デーモンの表情は優れない。結果は、良くないのかも知れない。
そんな思いを抱かせたデーモンは、ソファーに腰を降ろすと、小さく首を横に振り、その核心に触れた。
「却下、だ」
「…どう言うこと?やっぱり上皇様には会えない、ってこと?」
思いがけない切り出し方に、表情を強ばらせたのは俺だけじゃなかった。ルークもまた、眉間に皺を寄せ、デーモンに詰め寄っている。エースは…と言うと、相変わらずポーカーフェイスだが。
「会うどころか、門を潜ることも、雷神界に立ち入ることも出来ない」
デーモンの声も、重い。
「…ちょっ…何でそこまで…」
声を上げるルーク。俺は…と言うと、言葉を紡ぐことが出来ない。
「まぁ…ライデンは帰って来たゼノンと一旦会っているからな。用心して、予め予防線を張っていたようだ。ゼノンと言う存在自体が、あの神殿に近付くことが許されていない。そう言うことだ」
デーモンの視線が、俺を捕えた。
「覚悟は…していたよな?これが、現実なんだ」
切ない色を浮かべるその金色の眼差しの意味は…俺もわかっていた。
「…ライデンは…もう俺に会うつもりはない…ってことだよね?」
やっとで紡いだ俺の言葉に、ルークが息を飲んだ。
「…そう、だ。今や、ライデンの言葉は絶対だ。雷帝陛下の言葉には、誰も逆らえない」
「…そんな…」
無情の宣告に、一番落胆の色を見せたのはルーク。
俺は…何処かで予想していたその結果に、やはりと言う気持ちの方が大きくなった。
ライデンは、完全に俺を切り捨てたのだ。
口を噤んで目を伏せた俺の様子をずっと見つめていたエースは、二本目の煙草を取り出した。
徐ろに口に銜えて火を付ける。そして、大きく紫煙を吐き出すと、その視線を、俺へと向けた。
「まぁ…予想はついていたけれどな。御前が取り戻そうとしているモノは、簡単には取り戻せない。それは、わかったよな?」
「…わかっているよ」
「それでも、取り戻したいんだろう?」
「…エース…」
エースが問いかけている言葉の意味は、察することが出来た。
エースは…俺の胸のうちに燻っているコトバを、待っているんだ。
「…諦めないよ。どんな壁があったって…俺は、ライデンのこと…」
----愛して、いるんだもの。
小さな、つぶやき。それでも、静まり返った部屋の中では、全員の耳に届くには十分だった。
「なら、結論は簡単だ」
そう言うなり、エースは銜えていた煙草を灰皿に押しつけると、ソファーから立ち上がって俺の腕を取った。
「…エース?」
怪訝そうに眉を潜める俺たちに、エースはさらっと言って退ける。
「まだ間に合う。雷神界に行くぞ」
「行くぞ、って…立入禁止じゃない!?」
慌ててソファーから立ち上がるルークに、エースは小さく溜め息を吐き出す。
「何も、妨害されるのを覚悟で正面から突破しようって訳じゃない。考えがある」
「…また、無茶なこと考えてるんだろう…」
呆れたような溜め息を吐き出すデーモン。
俺はと言うと…エースが考えているであろう"策略"の見当もつかず、ただ眉を潜めるだけだった。
「要は、ゼノンでなければ良いんだろう?なら、良い方法があるじゃないか」
「…ちょっと…?」
「良いから来いって」
エースは、俺の腕を引っ張って立ち上がらせると、茫然としているデーモンとルークをそこに残したまま、元の俺の屋敷へと向かった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
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