聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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縁 4
こちらは、以前のHPで2003年11月16日にUPしたものです
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
5話完結 act.4
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
5話完結 act.4
既に、日は昇っていた。でも、まだ夜が明けたばかり。辺りは静かなものだった。
そんな時間でも、その玄関のドアを叩けば当然出て来るのは一名しかなかった。
「…はい?」
開かれたドアの向こうで…当然、驚いた表情を浮かべている姿。
「…エース様に…ゼノン様…」
「よぉ、レプリカ」
「………」
あんな風に出て行った俺が、まさかこんなに早く戻って来るとは、想像もしていなかったんだろう。目を丸くしているのは、唯一この屋敷に残っている使用魔レプリカ。
「ちょっと、御前に頼みがあってな」
「あ…とにかく、どうぞ御入り下さい」
状況がイマイチ掴めていないようだが…それでも使用魔としての役割はきちんと果たしていた。
リビングに通された俺たちは、御茶の用意を始めたレプリカをそのまま引き留めた。
そして、口を開いたのは当然エース。
「ゼノンが帰って来た経緯は、詳しく話している時間はないから、後で本魔に聞いて貰いたいんだが…」
そう言いながら、簡潔に状況を説明する。そして、驚いているレプリカをそのままに、本題に入った。
「レプリカに…いや、『仮面師レイティス』としての御前に、頼みがあるんだ」
「…仮面師としてのわたくしに…?」
レプリカが…いや、今はもう仮面師としてのレイティスであるが…怪訝そうに眉を潜めているのは当たり前、だ。いきなりそんなことを言われても、普通は戸惑う。
でも、エースは更に言葉を続けていた。
「ゼノンに、仮面を被せてくれないか?」
「…え…?」
「少しの間で良い。ゼノンを別魔にして貰いたい」
「…ちょっ…エース…っ」
何を言い出すのかと思えば…。
ここに至って、やっと声を上げた俺に向いた、琥珀色の眼差し。その色は、とてもふざけているとは思えない、真剣な色があった。
「取り戻したいんだろう?御前と言う存在が立入禁止になっているのなら、別の存在として入れば良いじゃないか。俺も一緒に雷神界へ行ってやる。俺が、上皇と会えるように許可を貰えば良いだろう?御前は、俺の御付として門を潜れば良い。上皇のところまで無事に辿り着けたら、後は御前の話を聞いて貰えるかどうか、上皇と直接交渉するしかないだろうけれどな。誰か、協力してくれる者がいれば良いんだが…この状況ではライデンの意に反することだ。そこまで高望みは出来ないだろうな」
「…ホントに無謀なこと考えるんだから…」
デーモンが溜め息を吐き出した気持ちが、今やっとわかった。多分デーモンは、そんなことじゃないかと察していたんだろうね。エースの行動を熟知しているデーモンならではの推察力だと、感心するよ。
まぁ、こんなに呑気に感心している場合じゃないんだけれど…。
「…と言うことで、どうだろうレイティス。御前が嫌だと言えば、別の方法を考えるしかないんだが…」
そんな言い方したら、レイティスだって断れないじゃない。
レイティスは、俺とエースの顔を交互に見つめていた。でも、ここで断ったらどうなるか、って言うことは察したらしい。小さく息を飲んで、頷いてみせた。
「もしも…全てが上手く行ったら…帰って来て、くださるんですよね…?」
不安げに尋ねる声。それは、昨日聞いたのと、同じ言葉。
ただ一つ違うことは…未来への確信が、僅かながらあると言うこと。
「…万事上手く運べばな。そうだろう、ゼノン?」
それ以外の答えは認めないと言わんばかりのエースの問いかけに、俺は小さく溜め息を吐き出した。
「それが…許されるならば、ね」
ゆっくりと紡いだ言葉に、レイティスは大きく息を吐き出した。
それは、安堵の溜め息、だったのかも知れない。その証拠に、不安げだったレイティスの表情が、幾分明るくなっているのだから。
「わかりました。ゼノン様が戻って来て下さるのなら…わたくしが出来る精一杯のことを致します」
「よし、頼んだぞ。準備が出来るまで、俺は雷神界との交渉だ。情報局に寄ってから屋敷に帰るから、支度が出来たら来てくれ。デーモンとルークも待ってるしな」
「わかったよ。そっちも頼むね」
「了解。必ず、雷神界に連れて行ってやるからな」
そう言うと、エースは機嫌良く屋敷を後にした。
俺は…その場に、レイティスと二名、残された訳だ。
「…ライデン様は…御自分が引けば、貴方様がきっと帰って来てくれるからと…」
小さくつぶやいたレイティスの言葉は、とても重く聞こえた。
「…そんなこと…ありませんよね?」
不安げに問いかけられた言葉に、俺は小さく笑った。
「そうだね。そんなことない。反省してるよ。みんなを…ライデンを、御前を…散々心配させて…迷惑かけて…その挙句、こうしてのこのこ戻って来てしまったけど…だからこそ、ちゃんとしないとね。ちゃんと…ライデンともう一度やり直す為に戻って来たんだから。頼むよ、レイティス」
「…では…もう一度、これを…受け取っていただけますか…?」
その声にレイティスへと視線を向けると、その手には真白な仮面があった。
「…レイティス…」
「わたくしの主は、ゼノン様だけです。エース様にはあのように言いましたが…これを受け取っていただけなければ、わたくしは貴方様の為に、仮面師の能力を使うことは出来ません」
真っ直ぐに向けられた眼差し。その真っ直ぐな眼差しは…昔と、何も変わらなかった。
「…わかったよ。仕方ない、俺は…御前の魔生を預かったんだものね。もう一度、御前を裏切る訳には行かないし…今は、御前に頼るしかないからね」
小さな溜め息を吐き出し、その仮面を受け取る。
「頼りにしてるよ、レイティス」
「…はい。御任せください」
にっこりと笑ったレイティス。
ここまで来たら、もう素直に、エースの案に従うしかないみたい。
そして俺は、すっかり乗り気になったレイティスによって、別悪魔へと仕立てられたのである。
その頃。エースの屋敷に残っていたデーモンとルークであったが、ルークはデーモンをそこに残し、一旦ダミアンの私邸へとやって来ていた。
明け方に尋ねて行ったので、てっきり眠っていると思っていたのだが…予想外に、こちらも眠ってはいなかった。
自室に通されると、ダミアンはまるでルークが来るのを見越していたかのように、笑って出迎えた。
「どうした?こんな時間に」
奇妙な時間に尋ねて来たルークに、ダミアンは様子を伺うように問いかけた。
「済みません、こんなに朝早くから。実は…御相談があって…」
申し訳なさそうにそう口を開いたルークに、ダミアンはくすくすと笑いを零した。
「こんな時間にやって来てする相談なんて、どうせとんでもないことだろう?」
「…まぁ…ぶっ飛んでる相談だとは思いますけどね…」
ルークも自分で切り出しておいて、思わず笑ってしまう。
「でも、ダミ様じゃないと、どうにもならないかな~と…」
「わたしを巻き込むとは良い度胸だ」
「ゼノンの為、ですから」
笑っていたルークの表情が、すっと変わった。その顔を見て、ダミアンも表情を変える。
「…で?何の相談だい?」
話を戻したダミアンに、ルークは一つ息を吐き出してから、その言葉を続けた。
「ライデン…婚約するんですよね?だから、その準備が、どの辺りまで進んでいるのかを確認していただきたくて。流石に、俺たちが口出し出来る問題ではないですし…ゼノンを連れて雷神界に行こうと画策した途端、ゼノンは雷神界に立ち入りを禁じられてしまったので…」
「立ち入りを禁じられた?」
「えぇ。上皇様と話がしたいとゼノンが言ったので、謁見の許可を取って貰おうと、デーさんに御願いしたんですけど…ゼノンが雷神界に入る許可さえ貰えませんでした。勿論…ライデン陛下の命、で」
「…なるほどね…」
ダミアンは、その指先でそっと唇を辿る。その仕草を見つめながら、ルークは小さな溜め息を一つ。
「すんなりと事が運んでいれば…婚約も決定前に白紙に戻せるかなとも思ったんですけどね…この分だと、ちょっと難しいかな…とは思います。でも…エースはまだ諦めていません。ゼノンを何とか雷神界へ連れて行くつもりで、今何やら準備をしているみたいですけど…」
「…そう…エースがねぇ…」
ダミアンは未だ、考え込んでいる。それは、唇を辿る指先が何往復か目に突入したことで察することは出来る。
「…わたしが聞いたところによると…」
暫くして、ダミアンがそう口を開いた。
「ライデンは、魔界に来る前から…自室に引き篭もりがちのようだ。体調云々と言うよりも…多分、現状にココロが着いて来ていないんだろうとね。前から決まっていたことだとは言え、雷帝を継いだことも、それに輪をかけているんじゃないかとね」
「…どなたからそんな話…」
話の様子から察するに、それはどう聞いても雷帝にとっては不利益な情報だろう。聞き出せる相手となると、限られるはずだが…。
「ん~?ライデンの父君から、ね」
「…それって、上皇様じゃないですか…」
最初から、ダミアンに頼んでおけば良かったんじゃないか…と思ってしまったルークだが…流石にそれはやり過ぎか…と思いを改める。そこは、仲魔同士の馴れ合いの繋がりではなく…国の上層部の繋がりなのだから、そこに口は出せない。
「ライデンは…今でも葛藤しているんだろう。ライデンと言う一個悪魔としての自分と、雷帝と言う一国の主としての自分。本音と建前の狭間で、どうして良いのか、答えが出せない状況だと思う。勿論、素直になるに越したことはないよ。だがね…雷帝と言う立場上、そう安直に答えが出せない。ライデンも…責任を感じているんだ。ゼノンが、行動に移す前に…どうして気付いてやれなかったのかと。どうして…自分が、護ってやれなかったのか、とね。そして、もし仮に引き止められたとして…本当に、ゼノンを伴侶として、説得しきれたかどうかをね」
「………」
「馴れ合いだけでは、国は護れない。ライデンは今それを実感しているんだと思う。だから、悩んでいるんだ。自分が決めた道が…本当に、正しいのかどうかをね」
ダミアンの言葉は、とても重かった。それは…ライデンだけではない。ダミアン自身にも、当て嵌まる事だから。
大きな溜め息を吐き出したルーク。
ライデンの葛藤がわからない訳ではない。でも今更…ゼノンを止めることも出来ない。
やっと、全てを取り戻す決心をしたゼノンを引き止めてしまったら…多分、もう一生元には戻らないだろう。
複雑な表情を浮かべているルークに、ダミアンは小さく微笑んだ。
「だがね…希望がない訳じゃない」
「…ダミアン様…?」
「信じる想いは…奇跡を呼ぶよ」
にっこりと微笑まれ、ルークも小さく笑いを零した。
そう。今自分がこうしてダミアンの傍にいられることも、昔から考えれば奇跡としか思えないのだから。
「上皇様には、一応わたしから連絡は入れておこう。まぁ後は…エースたちが何をするか、だね」
「俺は、信じます。きっと…奇跡が起きてくれることを」
その言葉に、くすっと笑って、ダミアンはルークの髪を掻き混ぜる。
そんな些細な仕草でも、ルークは何よりも安心出来た。
「…じゃあ…俺は戻ります。有難うございました」
「あぁ。ゼノンには…まぁ、余計なことは言わないようにね」
「はい」
ルークはダミアンに頭を下げ、その部屋を後にする。そして、再びエースの屋敷へと戻って行った。
エースが自分の屋敷に戻って来た時にはルークの姿はなく、残されていたデーモンが一名、ソファーでうとうととしていた。
日頃忙しい副大魔王なのだから、疲れが出ても仕方がない。そんな想いで、エースはそのままそっとしておくことにした。
そして自室へと戻ると、先程情報局の執務室で雷神界から得た許可を、改めて思い出していた。
上皇との謁見の許可は得られた。だが、それには条件がある。
それは、エース単独の謁見であること。そして、元文化局局長を、どんな理由があれ、雷神界へは踏み入らせないこと。
勿論、エースはその条件で納得してみせた。当然、ゼノンを別魔に仕立てて連れて行くことを目論んでいるなど、微塵も感じさせずに。
リビングで眠っているデーモン同様、一晩を寝ずに費やしたエースも、暫しの休息を得る為に椅子に凭れたまま目を閉じた。
そして、どれくらいが経った頃だろう。ドア越しにノックと使用魔たるティムの声が聞こえていることに気が付いた。
「…エース様、御客様がいらしておりますが…エース様?」
「ん…?あぁ、聞こえてる」
うとうとしていたのだろう。どれくらいの間、呼んでいたのかはわからないが、たった今、と言うことでもないようだ。エースが返した声に、僅かに安堵の色を乗せた声が届く。
「ゼノン様の御屋敷のレプリカ様と、御連れの方の二名様です。二階の客間で御待ちです」
「わかった。直ぐに行く」
リビングにはデーモンがまだ眠っているのだろう。起さないようにと、客間へ通したようだ。
手櫛で髪を整え、エースは客間へと向かう。そして、目的の部屋のドアをノックして相手を確認すると、そのドアを開けた。
「遅くなって悪かったな」
「いえ。こちらこそ、御待たせ致しました」
ソファーから立ち上がり、そう言葉を発したのは、レプリカ…否、レイティスであった。
「…と言うことは、これがゼノン…?」
もう一名、レイティスと並んで座っている悪魔に、自然と視線が向く。
「はい」
レイティスの声に応えるかのように、その姿はゆっくりと立ち上がった。そして、顔を上げた視線が、エースを捕えた。
ゼノンの碧の眼差しは、そこには見えなかった。あるのは、深い紫の瞳。そして、二本の角は相変わらずだが、腰まであった薄茶のその髪は肩までの漆黒に。赤い紋様は、色こそ変わらないものの、紋様はまるで別のモノだった。おまけに、服装もまるで違っており、情報局員らしいすっきりとした黒い軍服に。襟元の軍章もしっかり情報局のモノだった。
「"リーファ"と申します。以後、御見知り置きを…」
そう言って会釈をする。声まで、別魔だった。
「念の為、情報局員としてきちんと登録して、IDカードも用意させていただきました。勿論、元々存在しない者なので偽造と言われればそれまでですが、あくまでも"リーファ"が実際に存在することを証明する為です。御許し下さい」
何処までも完全に"リーファ"を存在させる為に、レイティスは細部にまで気を配ったようだ。だからこそ、尚更その存在がしっかりと確立して来る。
「では…わたくしはこれで。幸運を、願っております」
「あぁ、有難う」
任務を終えたレイティスは、そのまま深く一礼をすると踵を返して退出する。
その背中を見送ったエースは、改めて目の前の姿に視線を移した。
「…ホントにゼノンなのか…?」
提案したエースでさえ、思わず疑ってしまう程の変わり様。だが、その直後に、相手からくすくすと笑いが零れた。
「確かに俺だよ、エース。流石に角だけは隠せないけどね。でも、幸いにも鬼の種族は俺だけじゃないしね。レイティスの腕がそれだけ見事だと言うこと。声もまるで違うでしょ?」
「…バレたら大変なことになるようだからな、くれぐれも…」
「わかってる。そう簡単にボロは出さないよ。それよりも、そっちはどうだったの?バレたら云々って言うことは、許可は得られたの?」
声は違うものの、確かに口調はゼノンだった。それが尚更、違和感を感じさせるのだが…。
僅かに戸惑いながらも、エースは大きく息を吐き出した。
「あぁ。上皇に会う許可は得た。だが、謁見出来るのは、俺一名だ。だから、御前は隙を見て乗り込むしかなさそうだ。まさか、御前が俺に変装出来る訳もないしな」
「まぁ…それは幾らレイティスでも無理だね。仕方ない、なんとかするよ。とにかく、門を潜り抜けることが出来ればね」
「それから、気配はなるべく消して行け。姿は違うが、気配ばかりは変えられないようだからな。容易に見破られないとは思うが、鋭い奴は感付くかも知れないからな」
「わかってる」
大きく息を吐き出す"リーファ"。彼も、流石に覚悟を決めたようだ。つい先刻までの迷いは、もう何処にもなかった。
「さぁ、それじゃ、何処までその仮面が通用するか、彼奴で試してみるか」
エースはリーファを促し、リビングへと向かう。そして、そのソファーで未だ眠っているデーモンを起こしにかかった。
エースと共にリビングに戻って来た俺は、ソファーに座ったまま眠っている姿が一つであることに気が付いた。
「…ルークは?」
「あぁ、ティムの話だと、俺たちが出て行った後、ダミアン様の所へ行ったらしい。話が済んだら戻って来るらしいから、もう直来るんじゃないのか?」
「そう。じゃあ、まずデーモンから…」
再びデーモンに視線を向けると、思わず小さな溜め息を一つ吐き出した。
「…良く眠ってるね」
「疲れてるんだろう。忙しいからな、副大魔王も」
「ホントにね。御前も寝不足でしょう?御免ね…」
「ば~か。御互い様だろう?今更、そんな遠慮するな」
くすっと笑ったエースは、俺の肩を軽く叩くと、デーモンへと視線を向けた。
「…さて。それじゃ起すか」
そう零すと、エースはデーモンの肩を揺すった。
「おいデーモン、起きろ」
その声に、ふっと意識が戻ったように、デーモンはパッと目を開けた。
「あぁ…寝てしまっていたか…」
そう言って小さな欠伸を零す。そして。俺の姿に気が付いたようだ。
「…御客か?」
「…まぁな」
そう言って、エースは俺を促した。
「…"リーファ"と申します」
そう言って頭を下げると、じっと俺に視線を向けたデーモン。どうやら、俺の"正体"には気がついていないらしい。
デーモンは改めてソファーに座り直すと、俺の姿をじっくりと眺めていた。
「見たことがないが、情報局の新米か?」
そう察したのは、多分俺の襟元に付いている軍章と階級章からだろう。
「まぁな。これから、こいつと一緒に雷神界に行って来る。帰って来たら連絡を入れるから、職務に戻っていても差し支えはないだろうな」
エースがそう言った時。リビングの入り口から声が届いた。
「なぁ~に馬鹿なこと言ってんの。デーさん、こいつ、ゼノンだよ」
「…は?」
「…バレたか」
そう零した俺の声に、デーモンはきょとんとして目を丸くしている。
ルークは…と言うと呆れたように笑っている。
「御帰り。遅かったな」
時計を確認したデーモンは、ルークにそう声をかける。
「まぁね。色々話もあったし…何せ、皇太子宮は遠いんだからっ」
大きな欠伸を零すルークもまた、かなり御疲れの様子だった。
ソファーに腰を下ろしたルークは、改めて俺に視線を向けた。
「気付かなかった?普段よりはずっと弱いけれど、ゼノンの気配がするじゃない。まあ、鬼の種族はみんな近い気を持ってるんだろうけれど、今は鬼の種族はそんなに多くない。有り得ないことではないとは言え、今新米で入って来るだなんて、まず考えられないしね。そうやって纏めて行くと、ゼノンと同じ気を纏っている鬼はゼノン一名だと言うことは当然じゃない?」
「そこまで分析するとはな。考えもしなかった」
それは、デーモンらしくない失態。でも、寝起きだもの。しょうがないと言えばそれまで。別に、それが悪い訳じゃないし…何より、エースだって最初は気が付かなかったんだもんね。
「思わぬところで、良いことを分析して貰ったね。まさか、雷神界がそこまで魔界の情勢に詳しいとは思えないけれど、一応考慮した方が良いみたいだね?」
俺は、エースにそう提案する。
「そうだな。ルークの指摘の通り、今は鬼の種族も少なくなって来ている。新採用者に鬼の種族がいないのも確かだ。もう少し纏う気を強くして、せめて少しぐらいは身分を付けた方が良さそうだな。それに実際、俺の付き添いに新米が付くことはないしな」
「でしょ?もう少し考えてから出陣しなよ。ボロが出て、咎められるのは自分たちだよ」
「確かにね。絶対失敗は出来ないから」
「じゃあ、情報局に登録されている書類も、念の為少し手を加えておいた方が良さそうだな。雷神界に行く前に、一旦俺の執務室へ寄って行くか」
俺とエースとルークのやり取りを眺めていたデーモン。その表情は…決して不安そうではなかった。それが、寧ろホッとする。
「…で。御前とダミアン様の話は?」
問いかけたエースの声に、ルークはほんの少し俺を見つめて…そして、目を伏せた。
「正直…何処まで準備が進んでいるのかは、今の段階ではわからない。でも…ダミ様は言ってたよ。信じる想いは、奇跡を呼ぶよ、って」
ルークはそう言って、目を伏せたまま小さく笑った。
「運を…天に任せるしかない。俺たちに出来ることはここまでだと思う。後は…あんた自身が、道を切り開かないと」
顔を上げたルークは、真っ直ぐに俺を見つめた。言葉は少なかったけれど…ルークとダミアン様の話は、それだけじゃなかったと思う。敢えて言わなかった言葉を含め…多分…そこには、色んな意味が込められていたんだと思う。
「頑張れ、ゼノン」
「…うん。有難うね」
そんな俺たちのやりとりを、デーモンはただ黙って見つめていた。
「…じゃあ、のんびりしている暇はないしな。行くとするか」
エースは俺に、そう声をかける。
「留守番、頼むな」
踵を返しかけたエースが、ソファーに座っているデーモンを振り返った。そして、そう言葉を投げかけた直後。
「上手く、行くと良いな。魔界で…祈っているぞ」
「……うん。ゆっくり休んでてね」
小さく頷いた俺は、振りかえった先で微笑む仲魔を見た。
何事も無事に運ぶことが前提。それが希望。でも…その通りには、ならないかも知れない。油断せず、気を引き締めていかなければならないとの、無言の警告と、俺は受け取った。多分、デーモンもそのつもりなのだろう。微笑むだけで、それに関しては何も口にしなかった。
「気をつけてな」
デーモンとルークに見送られ、俺とエースは一旦情報局へと向かう。そこで俺…"リーファ"の資料を改竄したエース。
そして改めて、俺たちは雷神界へと向かった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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