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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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BLUE 4
こちらは、以前のHPで2001年12月24日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(基本DxAですが、色々複雑です…スミマセン…/苦笑)
4話完結 act.4

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◇◆◇

 吹き抜ける風がルークの髪を攫い、捲き上げる。風に嬲られる髪をそのままにルークは拳を握り、爪の食い込んだ掌から流れ落ちる鮮血。
「…エース…馬鹿だよね。前のエースだったら、自分を切り捨てようなんて、考えもしなかったと思う。でも…エースを変えたのは、デーさんだよ。デーさんが…棘だらけだったエースを、あんなに優しくした。デーさんを…傷つけないように。それだけ……愛してたんだよね、デーさんのこと…」
 ルークはうつむいた顔を上げ、デーモンを見つめた。
「…デーさん、俺…デーさんのこと、好きだよ。だから…魔界に帰って来て欲しい…でもそれって、俺の我儘かな…?」
「…ルーク…」
「…御免ね、変なこと言って…でも、俺は…エースみたいには出来ない。自分に…嘘はつけないよ」
 小さく笑うと、ルークは落ちていた二本の剣を拾いあげると、デーモンに背を向けた。
「…待ってる、から…ね」
 そして、エースとライデンが向かった方に駆け出した。

 ルークの背を見つめたまま、デーモンはその場に立ち尽くしていた。そんなデーモンの手をそっと取り、ジーナは小さくつぶやく。
「…御面なさい…私の所為で…」
「ジーナ…」
 その表情を、罪悪感で一杯にして。
「御前の所為ではない」
 小さくつぶやいて、デーモンはジーナの身体をそっと引き寄せる。
「…悪いのは、吾輩だ…大切なモノを二つ、同時に護ろうとした罰だ…どちらかを切り捨てられなかった吾輩の…」
 ジーナの背中に、暖かい雫が零れ落ちる。
「閣下…やっぱり…魔界へ戻ってください」
 つぶやいたジーナの声に、デーモンはその身体を引き離す。
「閣下が長官を切り捨てるなんてこと…きっと無理です。手放してしまったら、もう二度と手には戻らないと思います。ガイアも私も…閣下の記憶の中に生きています。今まで、気の遠くなるくらい長い間、ガイアと共にいたんですもの。これからだって、独りで大丈夫です。だから…行ってあげて下さい、長官の所に…」
「…ジーナ…」
 酷く胸が痛んだ。自分の我儘で大勢を傷付け、また元の鞘に納まるなど、都合が良過ぎる。本来ならば、切り捨てられるべきは自分であるはずなのに。
「吾輩は…エースの元へは帰れない。彼奴はきっと…吾輩を許してはくれない」
 誰よりも傷付けたのは、エース。その引き金になった自分を、どうして許してくれよう。愛しているとは言っても、裏切ったのは自分なのだから。
「許されるか拒否されるかは、もう一度長官に問いかけるしかないのでは…?閣下が唯一と思っているのは…長官でしょう?」
「……」
 ジーナの微笑みを前に、デーモンが歩むべき道は一つしかないことを思い知らされた気がした。
 誰よりも、失うことを恐れたのは誰だったのか。
「…済まなかった。そして……有難う…」
 そっとその身体を抱き寄せると、暖かな温もりが返って来る。
「御元気で」
 その言葉を背中に、デーモンは駆け出していた。

◇◆◇

 結界を張った魔法陣の中で、天界の気にやられ意識をなくしたエースを抱えるようにライデンは座り込んでいた。
 やがて、その遠くに見えた影。ウエーブのかかった漆黒の髪を風に任せ、走って来る見慣れた姿。
「ルーク…」
 やって来たその姿に、ライデンは小さくつぶやく。だが影は一つだけ。
「…デーさんは?…」
 恐る恐る、そう尋ねる。
「…わかんない」
 先の見えない不安さを露にした、ルークの口調。
「…ぎりぎりまで…待ってても良いかな…デーさん、きっと来るよ…だから…」
 目を伏せ、ライデンはつぶやく。その姿を、ルークは目を細めて見つめていた。
「…エースの具合は?」
 手当を施されているエースを見て、そう尋ねる。
「…うん…あんまり良いとは…天界の気が強過ぎて…」
 その声に、ルークは溜め息を一つ。そして、エースの腰から剣の鞘と外すと、手に持っていたエースの剣をしまう。そして、ライデンの隣に座り込んだ。
「…デーさんにとって…ガイアへの想いが大きかったことは良くわかるよ。でもホントに護るべきだったのはどっちだったんだろう…そんなこと、聞くまでもないと思ってたのにね…」
 かつて、各々その手で護ってやらなければならないモノがあった。
 それぞれの想いが大き過ぎて、迷ったのは一度ではないはず。そして、何度も迷った末に見つけたモノはとても大きくて。
 だからこそ、失うのはとても辛い。みんな、その気持ちをわかり過ぎる程わかっていたからこそ…切なくて。
「…やっぱ俺、デーさんのこと…好きだよ」
 ルークは顔を伏せ、小さくつぶやく。
「…俺も。それに地球(ガイア)だって…好きだったよ。昔っから。でも…だからこそ…今は、辛いね…」
 答えるように、ライデンもつぶやく。
 彼等にとって失うのはとても辛い存在。待ってはいるものの、来ると言う保証はないことはわかっていた。
 不安に押し潰されそうな心を、辛うじて支えていたその時。
「…ルー…ク…」
「ん…?」
 顔を上げたルークは、目を見開いたライデンが遠くを指差すのを見た。
「来たっ!来たよ…っ!!」
 こちらに走って来る一つの影。
「デーさんっ!!」
 ルークは結界を飛び出し、デーモンの首にしがみ付く。
「ホントだよね…?帰って来たんだよね…っ?」
 涙声で吐き出すルークに、デーモンは小さく微笑んで、その髪を一混ぜする。
「当たり前だろう?吾輩は、魔界の…副大魔王だ。吾輩が、魔界にいなくてどうする?」
 その優しい口調に涙は止まらない。しっかりと腕を回したルークの背中を軽く叩き、結界に目を向ける。ライデンもエースを抱えていなければ、ルークと同じことをしていただろう。持て余す腕で、しっかりとエースを抱き締めていた。
「…御帰り、デーさん」
 頬に伝う涙をそのままに、ライデンは微笑んでつぶやいた。
「あぁ…ただいま」
 微笑んで答えるデーモン。やっとデーモンの首から腕を離したルークは、涙を拭ってにっこり笑った。
 そんな健気な姿にくすくすと小さな笑いを零したデーモンは、結界を潜り抜け、ライデンの頬も拭ってやる。
「帰ろうか。魔界に」
「御意に」
 デーモンの声に、ルークもライデンも微笑んだ。

◇◆◇

 脇腹が燃えるように熱く、痛みの所為で呼吸が苦しい。
 大きく息を吐き、うっすらと目を開ける。
「…何処…だ?」
 柔らかな枕に埋もれている頭を僅かに巡らせる。映るのは、真白な壁。
 身体を動かした所為で傷が痛み、エースは僅かに顔を歪める。目を閉じて気配を探ってみるが何も感じない。
「……何も感じやしねぇ…それ程弱っているってことか…」
 しかしその場所が気になり、僅かに身体を浮かせて枕元の窓から外に目を向ける。
 そこにあったのは、いつか見た緑の鮮やかな草地。溜め息を吐き、再び枕に頭を埋める。
「…雷神界ってことは…ライデンの屋敷、か…」
 エースは小さくつぶやき、枕に顔を埋める。
 募る想いに出るのは溜め息ばかり。彼が失ったと思っているモノが、どれだけ大きな存在だったかと言うことを、改めて感じていた。
 自由にならない身体を実感しながら、どうやって寝返りを打っていたのかすら思い出せなかったが…何とか痛みを堪えて身体の向きを変え、仰向けになって部屋の全体に視線を巡らせた時。そこに一つの影があることに気付く。
 一瞬、互いの視線が行き合う。エースは不意に顔を横に向け、真白な壁を見つめる。
「…ん…?」
 再び、その姿を追って、視線を巡らせる。間違いない。
「…デー…モン…!?ちょっ…御前何で…っ!」
 ガバッと起き上がった瞬間、痛みに顔を歪める。
「急に動くと、折角塞がりかけてる傷口が開くぞ」
 デーモンはそう言うと、エースの背にクッションを置いて、そっと凭れさせてやる。
「どうして…っ!!ジーナはどうした!?地球(ガイア)は…っ!?」
 エースは痛みも忘れ、デーモンの胸元を掴み上げた。
「どう言うことだっ!?」
 叫びながらも傷の痛みに顔を歪めたエースに、デーモンはゆっくり口を開いた。
「御前の言いたいことはわかっている」
「…なら…」
 エースは腕を伸ばし、デーモンの頬にそっと触れる。
「文句はないなっ!?」
 刹那、鈍い音がしてデーモンはエースに殴り飛ばされる。それと同時にエースもバランスを崩してベッドから転げ落ちる。
「つっ…!!」
 殴られた頬を押さえながらも、言い返すことは出来ない。振り返った視界の端に、ベッドから落ち、うずくまっているエースの姿が映る。
「…エース…?」
 その姿に、デーモンは慌てて駆け寄る。
「…傍に…来るな…あっち行けよ…っ…」
 顔を伏せ、エースは声を上げた。
「しかし…」
「見るなっ…あっち行けってば…!!」
 悲鳴に近い声を上げたエースの手の隙間から、流れ落ちる、赤い雫。
「傷が開いたんだろう?無茶、するから…」
「触るなっ!!」
 そっと差し延べられた手を、エースは血に濡れた手で振り払った。弾みでデーモンの手に飛び散った真紅を見つめた顔が、酷く強張っている。
 自分は、エースを傷付けた。それをあからさまな形で見せ付けられ、デーモンは居たたまれなくなり、その腕を伸ばした。
「…済まん…」
 その腕は強引に、エースの身を抱き寄せる。
「…離…せっ!!」
「…嫌だ…」
 抵抗するエースを、デーモンはしっかりとその腕の中に抱き締めていた。
「…地球(ガイア)は…ジーナはどうする…」
 体力の落ちた状態では到底適わないと察したのか、エースは抵抗を止め、吐き出すように零した声。その声に、デーモンはふと眉を潜める。
「…御前は、自分を切り捨て、吾輩を地球に留めようとした。それ程迄に、吾輩は御前を追い詰めてしまったんだ。簡単に許して貰えるとは思っていない。だが…ここに戻って来たのは、吾輩の意志であり、ジーナの意志だ」
「そんな勝手なこと…」
「勝手だろうが何だろうが、そうせざるを得ないだろう?」
 エースの言葉を遮り、デーモンはじっとその瞳を覗き込んだ。
「大切なモノは、二つ同時には護れない…そう言ったな?その通りだと思う。吾輩は…ガイアを失うより…御前一悪魔を失うことの方が、その数倍辛い。だから戻って来たんだ」
 一瞬その瞳の奥に見えたのは、果たして本当の決断だったのだろうか。
「第一、御前に吾輩が忘れられるのか?」
 冗談めかしに、笑いの含んだ声。その声に、エースは大きな溜め息を吐き出す。
「…自惚れ過ぎだ…御前は。その気になれば、忘れられる。どれくらいかかるかは、わからないけどな」
「そうかも…知れん。だが、自惚れも時には必要だ。みすみす、御前を失ってしまうよりは」
 デーモンはそう言うと、エースを抱く腕の力を緩めた。
 その手が頬に触れる。されるがままのエースはただ、デーモンを見つめるだけで。
「護りたいのは…求めたいのは、御前だけだ」
 そっと抱き締めそう言ったデーモンの声に、エースは小さな溜め息を吐き出す。
 何かがまだ、胸の奥に引っかかっているような気がして。胸の奥底で、燻っているような気がして。それが気になって仕方がない。
「本当に…それで良いのか?」
 改めて問い返す声にも、デーモンは小さく微笑んだ。
「吾輩は、御前と共に生きると決めたんだ。だから…もう、そんな顔、しないでくれ」
「デーモン…」
 何処か不安げな、エースの表情。それが、デーモンの胸の中に、罪悪感を刻み込んでいた。
 その罪悪感と言う傷は、今はまだ小さい。だが何れ、それが彼を傷付けることになるとは、まだ想像すらしていなかった。
 今はただ、目の前のエースを、失わないように。それだけで、精一杯で。
「エース」
 見つめ合ったまま、背けない眼差し。顔を傾け、頬を寄せる。今まで、それはどんな言葉よりも確かなモノであるはずだった。
「傷が癒えたら…一緒に魔界に戻ろう」
 自分の不安が、気の所為であってくれることを祈る。
 一緒に、魔界へ。
 今のエースには、その言葉が唯一の安らぎだった。

◇◆◇

 遠い記憶が…心の何処かに、残っていた気がした。
 どうしても、取り戻せない何か。
 その、何かが見つからない。
 いつから…それが、心にあったのだろう。
 不安と言う、不確かな記憶。それが……その心を、蝕み始めていた。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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