聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Disaster 1
こちらは、以前のHPで2003年12月14日にUPしたものです
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
7話完結 act.1
※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
7話完結 act.1
何が起こったのか、良くわからなかった。
自分の前にいたフィードと共に突然突き飛ばされ、フィードの身体に隠されるように倒れた彼は、自分の視界に映った姿を、信じられずに見つめていた。
彼等を突き飛ばした悪魔は…確か、"リーファ"と名乗った。
深い紫の瞳に肩までの漆黒の髪。その頭上には、二本の角。そしてその顔に戴いた赤い紋様は、今まで見たことがなかった。
初めて会ったその悪魔。だが、それが偽りの姿であることは、彼にもわかっていた。
間違えるはずのない気。微かにだが、"リーファ"が纏う気は、とても懐かしいモノ。
だが、今彼の目の前にある"リーファ"の姿は、既に尋常ではない。
彼等が突き飛ばされた直後、背後…つまり、"リーファ"の真正面から飛んで来た一振りの剣が、その胸を貫いたのだ。
ゆらりとバランスを崩した"リーファ"の身体は、そのまま雪の中へと倒れ込む。その瞬間、何かがその顔から剥がれ落ちた。
それは、真白な仮面。そして、その仮面が剥がれ落ちた素顔は……彼の、最愛の悪魔。
「…ゼノン様…っ!!」
その姿に、慌てて起き上がったのはフィード。
茫然と見つめている彼とは対照的に、状況の異様さを察知したフィードは、悲鳴のような声を上げて医師を呼び、警護部隊も呼び込んでいた。
「ライデン…っ!!」
警護部隊の中に紛れていたエースが、そう声を上げて走り寄って来た。声は聞こえてはいるが、彼の思考はそれを認識していなかったかも知れない。ただ茫然と、ゼノンを見つめているだけ。
周りは何やら騒いでいるようだった。でも、彼の聴覚は、そんな雑音など既に除外している。
這うように雪の中に倒れた姿に近付くと、ゆっくりと震える指先を伸ばし、眼差しを閉ざした頬に触れる。
彼は、薄着の上に裸足だったはず。でもその身体を、足を冷やす雪の冷たさなど、まるで気にはならないのに…指先に触れた感覚だけが、異様に冷たく思えて…その背筋を這って行く。
それが、唯一の感覚であるかのように。
「…起きてよ…ねぇ、ゼノ……嘘、だよね…?」
はらりと、涙が零れた。
閉ざされた眼差しは、開くことがない。降り続く雪が、倒れ込んだ身体の上に積もり始めている。
その胸から背中にかけて、不自然に突き刺さったままの剣。
真白な雪を染める、深紅。その赤い染みは、徐々に広がって行く。
そして、本来なら有り得ない程の速さで、冷たくなって行く身体。血の気の失せた顔は…既に、生命が途絶えてしまったようで。
「…ヤダ……ヤダよ、ゼノ……ゼノン…っ!!」
思わず上げたのは、悲鳴のような声。
「ライデン!!」
もう一度、聞き慣れた声が耳に届いた。
その瞬間、彼の意識はぷつりと途切れた。
「……ライデン」
遠くで、誰かが自分の名前を呼んでいる。
その声に導かれるかのようにゆっくりと目蓋を押し上げると、そこに見えたのは白い天井。そして、心配そうに彼の顔を覗き込んでいるエースとフィード。
「大丈夫か?」
まず、エースがそう口を開いた。
彼は上体を起し、辺りを見回す。そこは間違いなく、彼の部屋。
「…俺…」
頭の中が、ごちゃごちゃになって…何がどうなって自分がここにいるのかがわからない。
「何で…あんたが…?」
エースが来るなんて、聞いてなかったはず。そう思いながら言葉を零した瞬間、エースは小さな溜め息を一つ吐き出した。
「覚えて…ないのか?」
「…え?」
そう言われても…。
エースの、一瞬曇った表情に、混濁する意識を懸命に探る。
そうだ。確か自分は…気分が優れなくて、ベッドに寝ていたはず。
そこから先の記憶は、酷く曖昧で………。
「…あ…れ?」
不意に、視界が歪む。それは…涙の所為。
「何で俺…泣いて……」
涙が溢れる訳がわからない。彼の意志とは裏腹に、溢れる涙ははらはらと絶え間なく零れ落ち、上掛けを握り締めた手の甲へと雫を零す。
「わかんない…何で…?」
理由もわからず、彼はただ涙を零した。
そんな姿に、エースは再び溜め息を一つ吐き出すと、彼の頭をゆっくりと引き寄せた。
触れた身体が、とても温かい。そんな当たり前のことが……とても、哀しいのは…どうしてだろう。
「…ゆっくり、休んだ方が良い。後は…俺たちがなんとかするから」
「…エース…?」
「フィード、ライデンを頼むな」
「…御意に…」
エースの言葉に、フィードは深く頭を下げる。だが、その表情も…何処か、悲しそうで。
一体、自分の周りで何が起こったんだろう。
それすらわからないまま、彼は、踵を返したエースの背中を見送った。
ライデンの自室を出たエースは、重い足を引き摺るように、上皇が待つ謁見の間へと足を向けた。
思いがけず起こった事件に、まだ神殿内はざわついている。
その乱雑とした雰囲気の中、エースはそのドアの前で立ち止まった。
「…エースです。宜しいですか?」
ドアをノックし、そう声をかける。
『どうぞ』
返事が聞こえると、僅かに躊躇しながらも、エースはそのドアを押し開けた。
状況は既に報告済みなのだろう。目の前には、表情を曇らせた上皇がいる。
「…ライデン陛下が御目覚めになられました」
そう告げた後…エースは上皇へ向け、深く頭を下げた。
「この度は…色々と御迷惑を御掛けしてしまい、申し訳ありませんでした…」
その言葉に、上皇はその口を開いた。
「そなたたちのことは…前以て、ダミアン殿下から非礼を詫びる言葉を貰っておる。そのことは、気にしなくても良い」
「…そうですか…ダミアン殿下が…」
思いがけない言葉に、エースは顔を上げ、小さな溜め息を吐き出した。
「今、重要なのは…ゼノン殿の容態と、ライデンのことだ」
そう言葉を零すと、上皇は僅かに目を細めた。
「ライデンは…どんな様子だった?」
「恐らく…意識が混濁しているのでしょう。意識を失う直前の事を思い出せないようです。ただ…理由もわからずに、泣いていました」
「…そうか」
重い溜め息が零れる。
「ゼノンは…どうなったのでしょうか…?」
不安に揺れる気持ちを引き締め、エースはそう問いかけた。
「先程、医師から報告があった。辛うじて、生命は取り留めたそうだ。しかし、意識が戻るかどうかの保障はないそうだ」
「そう…ですか」
エースも再び、小さな溜め息を吐き出す。
「詳しいことは、直接医師に聞くと良い。ゼノン殿と一緒に、医務室におるはずだ」
「わかりました。それでは、ゼノンの様子も確認してきます。ライデン陛下のことは、フィードに頼んで参りましたので」
「わかった。エース殿も御苦労であったな」
「いえ…それでは」
深く頭を下げ、エースは踵を返した。
恐らく、ライデンの記憶が混乱しているのは一時的なことだろう。やがて記憶がはっきりすれば…。
それをわかっているからこそ、エースも上皇も、深く溜め息を吐き出すしかなかった。
上皇に言われた通り、医務室を訪れたエースは、そこで出迎えた医師…ルーアンが神妙な顔をしていた。
「ゼノンの様子はどうですか?」
尋ねた声に、ルーアンは小さな溜め息を一つ吐き出した。
「先程、上皇様にも御報告したのですが…辛うじて、生命は取り留めました。今は、集中治療室で看護しております。ですが…」
「意識が戻るかどうかの保障はないと聞きましたが…?」
上皇からの話を思い出し、そう問いかけるエース。
「えぇ…そのことなのですが…」
「何か…あったのですか?」
どうも、ルーアンの口が重い。そこに言い難い何かがあるのだろうと感じたエースは、真っ直にルーアンの眼差しを見つめた。
エースのその眼差しの前には、ルーアンも何も隠し立ては出来ないと察したのだろう。大きな溜め息を一つ吐き出すと、ゆっくりとその口を開いた。
「実は…魂が、肉体から離れてしまったようで、行方不明なのです」
「…行方不明…?」
「そうです。傷の方は辛うじて急所を外れていたので、生命を取り留めることが出来ました。ですから、通常ならば魂が離れることはないはずなのですが…」
「……」
訳がわからないと言わんばかりに眉を寄せるルーアン。エースの表情も、同じように怪訝そうに眉を寄せている。
確かに、通常ならば死に至らない限り、魂が身体から離れることはないはずなのだが…
「…まてよ」
ふと、エースの脳裏に過ったのは、ゼノンを貫いたあの剣。
「剣は…どうしました?」
「剣…ですか?それなら、軍事部が犯人の手がかりとして保管していると思いますが…」
ルーアンの答えを聞くや否や、エースは頭を下げると踵を返して軍事部に向かっていた。
エースがその剣を見たのは、ほんの僅かな時間しかない。
ライデンの元へ駆けつけると直ぐに、ライデンは意識を失ってしまい、エースはライデンの方へと付き添っていたから、ゼノンの方は医師に任せきりにしてしまったのだ。
だが…その記憶の片隅に、ゼノンを貫いた剣が引っかかっていた。
ここにあるはずのない剣。それが、ここにあった理由。それが、エースの足を早めていた。
神殿の要である軍事部の本部へとやって来たエースは、そこで対応に出た若い兵士に向け、IDカードを提示した。
「わたしは地獄中央情報局長官のエースと言う者です。こちらの責任者を御願いしたいのだが…」
IDカードを確認した兵士は、エースに暫くそこで待つようにと言い残し、奥へと消えて行く。
中立区域で、戦いに賛同的ではない雷神界の軍事部は戦地に立つことはなく、唯一彼等だけが国の警護の名目で剣を携帯することを許されている。それ故に、流石のエースも未知の領域なのであった。
暫しの後、エースよりもかなり年配の兵士が現れた。
「わたしはこの軍事部の総統で、ラングレーと申します。貴君がエース長官ですね?」
「初めまして、エースです」
話には聞いたことはあるが、上皇の片腕として政権に加わって来たと言う総統を前に、エースもやや緊張気味に言葉を発した。そして軽く握手を交わし、エースは早速本題に入った。
「実は、ルーアン医師から伺ったのですが、先程、ゼノンが襲われた凶器である剣が、こちらに保管されているとのことですが」
「えぇ、こちらで保管してあります。ですが、それが何か…?」
怪訝そうに眉を寄せるラングレーに、エースは出来るだけ感情を込めずに、事務的に話を進めた。
「実は、その剣に見覚えがあるような気がするのです。確認させていただけないでしょうか?」
その申し出に、ラングレーは当然、奇妙な顔をする。だがそれは一瞬で、直ぐにその表情は引き締められた。
「見覚え…ですか?と言うことは、あの剣は魔界のモノ、と言うことですかな?」
「見覚えがあるような気がする、と言うことです。魔界のモノとは、確認してみるまでは断定出来ません。如何でしょうか?」
「…良いでしょう。こちらへどうぞ」
相手は、雷帝陛下の親友でもある魔界の情報局の長官。ラングレーも総統として雷神界では高位にいるとは言え…蔑ろにしても良いと言う相手ではない。小さく息を吐き出すと、エースを奥へと促した。
そして、エースが促された先の小さな部屋に、その剣はあった。
「…如何ですかな?」
じっくりと目を向けるエースに、ラングレーは興味深げに問いかける。事が事ならば、雷帝を狙った罪で、魔界との全面戦争にもなりかねない状況なのだから。
だが、そんな声も、エースの耳には半分程しか届いていなかった。
エースの目の前にある剣。それは未だ、ゼノンの血がこびり付いている。
正直…これが別物であると言う確証はない。エースにもそこまではっきりと言い切ることが出来なかった。
けれど…厳重に管理している剣が、そう簡単に盗まれるはずはない。そして何より…ライデンを狙う理由もわからない。
この剣が、別物だとしたら。どうして、良く似た剣が存在するのか。
そして…何故、今だったのか。
「狙われたのは…ライデンだったのか…それとも、ライデンを庇うことを予想して、ゼノンを狙ったのか…」
独言のようにつぶやいたエースの声に、ラングレーは眉を潜めた。
「"陛下"を狙ったに決まっているではないですか。何を目論んでいたのかは存じませんが、ゼノン殿は仮面を被って変装していたのだから、狙うのは筋違いなのでは?」
"陛下"を強調するところに、エースがライデンを呼び捨てたことが気に入らなかったらしい。だが、エースはそんな細かいことに気にしている場合ではなかった。
「残念ながら、この剣はわたしが認識している剣ではありません。御協力、有り難うございました」
そう言葉を残し、エースはそそくさと軍事部を後にする。そして、再びライデンの自室のある離れの皇太子宮へとやって来た。
その寝室のドアを軽くノックすると、フィードが顔を出す。
「エース様…何かわかりましたか?」
不安げに問いかける声に、エースは視線を部屋の中へと向けた。
「ライデンは…?」
「眠っておりますが…」
「あぁ、ならそのままで良い。ちょっと、書斎のコンピューターを貸して貰いたいんだが」
「えぇ、構わないと思います」
主ではないが、フィードの許可を得て、エースは数部屋先のライデンの書斎へと足を運ぶ。そして、そのコンピューターから、魔界の軍事局へと回線を繋いだ。
暫しの呼び出し音の後、液晶画面にルークが現れる。
『あぁ、エース。どうなった?』
魔界には、まだゼノンのことは伝わっていない。だからこそ、にこやかに問いかけるルーク。
「あぁ…実はな…」
あらましを簡潔に纏めながら、エースはルークに状況を説明した。話が進むにつれ、ルークの表情が険しくなる。
エースが全て話し終えると、ルークは悲痛そうな表情を浮かべながらも、その先の言葉を追求した。
『…そう。ゼノンが…それで?俺に連絡して来た理由は…?』
デーモンでもダミアンでもなく、まず第一にルークに連絡して来た理由。それを、ルークは知りたかった。
「御前に、"錬叛刀(れんまとう)"が持ち出されていないか、確認して貰いたいんだ」
『…それは良いけど…でも何で"錬叛刀"?』
エースが求める"錬叛刀"は、現在エースの管轄下に厳重に保管されている。
「まぁ…ちょっとな。確認次第、連絡をくれ。その後、詳しく話す」
『わかった。これから確認したら、折り返し連絡する』
ルークはそう言い残し、回線を切る。
大きな溜め息を吐き出したエースは、座っていた椅子に深く凭れた。
エースの管轄下…情報局に厳重に保管されている"錬叛刀"。それは、曰く付きの剣である。
魂の限定した部分だけを殺すことが出来る、唯一の剣。そう言われているのが"錬叛刀"だった。だが、魂の全てを傷の大きさにに関係なく殺すことも、当然出来る訳だ。それだけに、特殊能力を持つ"錬叛刀"は危険視され、以前デーモンが使用したのを最後に、そのまま情報局へと保管されることになった。
エースは剣を受けた当事者であり、本来ならその曰くに関わることが出来ないのだが…管理する以上、その剣の情報を認知しておく必要があった。だからこそ、覚えていたのだ。
しかし、どう言う訳か、今回ゼノンの胸を貫いた剣が、その"錬叛刀"ととても良く似ているのだ。
勿論、情報局に保管されている"錬叛刀"が盗まれた訳ではないはずである。
だとすれば、魂を限定して…もしくは丸ごと削除出来ると言う特殊能力を備えた剣が、もう一振り存在する、と言うことになるかも知れないのだ。
それならば、ゼノンの魂が行方不明だと言われる理由にも一致する。だが、本当に魂が消されてしまったのなら、最早元には戻らないのだ。
肉体が、魂を失ってから耐えられる時間は、三日が限度だと言われている。このまま魂が戻らなければ…折角一命を取り留めたとは言え、ゼノンはもう助からないと言っているようなモノだとの宣告を受けたも同じだった。
エースは、壁の時計に目を向ける。事件が起こってから…かれこれ二時間ほど。まだ、真実には辿り着けていない。
どうして、自分はゼノンから目を離してしまったのだろう。どうして…ゼノンを一名で行かせてしまったのだろう。
その後悔が、エースの胸を突く。
重い溜め息は、更に彼の胸を苦しめていた。
どれくらいの時間が過ぎたのかはわからなかった。
何も映っていない液晶をぼんやりと見つめるエースの耳に呼び出し音が届き、ルークの姿が写し出されると、エースはやっと我に返った。
『…エース?』
「あぁ、悪い。考え事をしていたんだ」
そう取り繕い、表情も引き締める。
「どうだった?」
問いかけたエースの声に、ルークは答えを返す。
『"錬叛刀"は、確かに情報局にあったよ。あれ以来、誰も持ち出してはいない。でも、どうしてあんたの頭の中に"錬叛刀"が出て来たの?』
「…ゼノンを貫いた剣が、"錬叛刀"とそっくりだったんだ」
ゆっくりと、そう言葉を紡ぐ。すると、ルークの表情が僅かに変わった。
『そっくりって…じゃあ、"錬叛刀"がもう一つあるってこと!?』
「…見た目は良く似ている。だが、それが何処まで同じに仕立てられているかはわからない。俺も、完全に別物だと言う確証は持てなかった。だから、御前に確認を頼んだんだ。魔界に"錬叛刀"があるのなら…ここにある剣は、完全に別物だ」
言葉を紡ぎながら、エースは小さく溜め息を吐き出す。
「どっちにしても…狙われたのがライデンだったのか、ゼノン…いや、"リーファ"だったのかもわからない。唯一の目撃者であるフィードの話では、見えたのは剣だけで、狙った相手はまるで見えなかったそうだ。遠隔操作だったのなら、それなりに能力のある者だろうが…」
それなりの能力を持つものなら、魔界、雷神界、天界にも数限りなくいる。勿論、三世界に限らず、他の世界にも山程いるだろう。一人ずつしらみ潰しに当たる訳にもいかないのが現状だ。
そして…エースの胸に過ぎったのは、"ターディル"の影。
その意を継いだ残党が、ゼノンを王都から追放してライデンを精神的にも追い詰めようとしている。それが、あのウイルスの件の発端であったのなら…もしかしたら、今回もそれに絡んでいるのかも知れない。
ルークも、"影"の遣い魔に取り付かれたりしたこともあったが、まだそれは魔界で留まっていた話だった。けれど今回のことがそうなら、本格的に雷神界に手を出し始めたことがはっきりしたのだ。
『ねぇ…ライデン…大丈夫…?』
その声にふと顔を上げてみれば…心配そうなルークの表情がある。
一時、頭に浮かんでいたことを押し留め、現実へと戻る。
「…あぁ…目の前でゼノンがやられているからな…ショックで、その時の記憶がない。まぁ…そのうち思い出すだろうが…記憶がないにも関わらず…泣いていた。意味もわからずにな。今は眠っているが…起きた時、どうだかな…」
思い出すだけで…胸が痛い。
取り戻す為に、ここへ来たと言うのに…これでは、何にもならない。
「取り敢えず…俺は暫くこちらに留まる。これからどうなるかわからない以上、ライデンを放っては置けない。ゼノンを連れて来たのは俺だからな。ダミアン様とデーモンには…御前から報告してくれないか?」
エースの表情で、彼もまた、酷く苦しいのだと言うことはわかっていた。
『…わかった。あんたも…無理しないでね』
「…あぁ。わかってる」
短く答えたエース。
『…ねぇ、エース…"錬叛刀"は、何処から来たのか知ってる?』
ふと、そう問いかけたルークの声。
「何処から、って…?」
問いかけられた意味が良くわからず、エースは眉を寄せた。
『だってそうでしょ?あんたは別だけど…俺たちは、デーさんから"錬叛刀"の話を聞いたんだ。そして、デーさんに頼まれて"錬叛刀"を取りに行ったのはこの俺。"錬叛刀"は…魔封じの塔の一室に、ひっそりと封じられていた。あの時の状況から察するに…随分長いこと、誰も近寄ってはいなかった。そんな、誰も知らなかった剣が、もう一度世に出て来たんだよ?誰かがもう一振り持っていたってことでしょう?普通なら、封印されるような危険な剣なら、二振り一緒に封印しない?それをしていないと言うことは、持ち主が別々だってことでしょ。だったら、そのヒトが雷帝かリーファを狙ったの?リーファの姿を見てライデンが外に出て来ることを推察して?思い通りにならないかも知れないのに?遠隔操作って言うことは、手がかりをそこに残して来ることになる。普通の剣だって、生命を狙うことは容易だよ。なのに、回収がほぼ不可能な状況で、あの剣を使った理由がわからない。遠隔操作をして危険を回避したのに、また危険を冒して回収に来るつもりだったの?それとも…あんなに珍しい剣を、手放しても良いと言うつもりだったの?』
「…若しくは…逆に、持ち主を確定させ、罪を着せる為…」
『…可能性は高いね』
ルークの話を聞いているうちに、エースもいつまでも落ち込んではいられないと思い始めていた。
確かに、ルークの言っていることは尤もである。そして、エースの憶測へと繋がるのだ。
もし、再び"奴等"が動き出したのだとしたら。何処かで見られているのは間違いない。
そして、魔界の上層部ですら、その存在を知らなかった"錬叛刀"。デーモンは何処で、その情報を聞き得ていたのだろう。そして…"錬叛刀"は、何処から持ち込まれたのだろうか。
エースは、壁の時計に再び目を向けた。
「…"錬叛刀"の出所を調べた方が良さそうだが…時間はないんだ。魂が肉体から離れて生きていられるのは三日。ゼノンがやられたのは…もう、四時間近く前だ。その間に、何とかなりそうか…?」
『なりそうか?じゃないでしょうよ。何とかするよ。取り敢えず、デーさんに聞いてみるところからかな。直ぐにわかるとは思えないけどね…』
「あぁ、そうだな。とにかく、御前に任せる。何かわかったら、また連絡を入れてくれ。それから…十分、気をつけて動け」
『……了解』
その意味深な言葉に、ルークはふっと表情を変えた。
そしてルークが回線を切ると、エースは大きく溜め息を吐き出した。
その溜め息は、エースの胸に蟠っている奇妙な重さの現れでもあった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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