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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのつぼみ 乖離 2

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.2

拍手[2回]


◇◆◇

 最上級生たちの研修が終わり、士官学校にはまた大勢の賑やかな声が戻って来ていた。
 誰もが四苦八苦する研修の課題も皆と同じ期限に何とか提出し終えたゼフィーは、上機嫌で医務室に向かっていた。
 確かに、研修自体はとても大変だった。けれど、大きな怪我もなく、例えギリギリの評価だったとしても、皆と同じにやり終えた。それだけでも十分自信に繋がっていたのだった。
 その報告をする為に医務室へとやって来て、そのドアをノックする。
『どうぞ』
 中から帰って来た声。今までとは違った声だったのだが、上機嫌のゼフィーはそれに気が付かなかった。
「失礼します」
 ドアを開けつつ、既に気持ちは急いていたので、姿を見るよりも先に言葉を発していた。
「リン先生!研修終わりました!」
 けれど、その声に答えたのは…見たこともない相手。
「入室したら、クラスと名前と用件を言いなさい」
「……あ…れ?えっと……」
 自分を見据える、濃紺の瞳。赤の紋様のある顔は、呆れたように溜め息を吐き出していた。
「クラスと名前と用件」
 もう一度同じことを言われ、思わず口を噤む。そして…今の状況を考える。
「…七階級Fクラスの…ゼフィー・ゼラルダです…」
「用件は?」
「…あの…リン先生は……」
 改めてそう問い返すと、大きな溜め息が返って来る。
「七階級と言うことは、研修上がりですね。なら仕方ないですが、一度しか言いませんよ。リン医師は、士官学校を辞めました。リン医師を訪ねてここへ来ても無駄です」
 その言葉に、ドキッとする。
「え…?リン先生が辞めた、って…どう言う…」
 思わず問い返すと、その冷たい眼差しがゼフィーへと向けられた。
「リン医師の都合は知りません。揃いも揃って、リン医師のことをわたしに聞きに来るのは迷惑です」
 きっぱりとそう言われてしまい、ゼフィーもそれ以上問うことは出来ず…口を噤むしかなかった。

 すっかり意気消沈のゼフィーが教室へと戻って来る。けれど、既に放課後。教室には、誰の姿もなかった。
 大きな溜め息を吐き出しつつ、荷物を持って帰ろうとした時、廊下から覗いた姿が声をかけた。
「…ゼフィーさん」
「…エル?」
 声をかけて来たのは、エル。暫く見ない間に、また少し背が伸びたようで、もうゼフィーより頭一つ以上大きくなっている。
「研修、終わって戻って来たと聞いたので…」
 誰もいないことを確認しつつ、教室の中へと入って来たエルに、再び机の上に荷物を置いたゼフィーが少しだけ笑みを零す。
「うん、何とかね」
 務めて、いつものように。たった一言返すだけ。けれど、エルは心配そうに小さな吐息を吐き出した。
「あの…リン先生のこと…聞きましたか…?」
 躊躇いがちに問いかけた声。
 ゼフィーがリンを慕っていたことは、エルも良く知っていた。そしてリンも、ゼフィーを随分気にかけていた。それは、ゼフィーの周りにいる者はみんな知っていることだった。だからこそ…今回のことは、エルも心配していたのだ。
「…今さっき…医務室行って来た。リン先生…辞めたんだってね…」
 そう零した途端、ゼフィーの表情が変わる。
 暗く、沈んだ表情。エルがゼフィーのそんな表情を見るのは、初めてだった。
「…ゼフィーさんたちが研修に出て、半分ぐらい過ぎた頃に、急にいなくなってしまわれて…誰も、理由を知らないみたいで…レヴィ先生も、知らないと教えてくれないそうです。来たばかりの頃、フレアが研修に必要な書類を取りに行った時、リン先生のことを聞いたら機嫌が悪かった、って…」
「…僕も、迷惑だって言われた……そう、レヴィ先生って言うんだ…」
 名前を聞く余裕もなかった。そう思いながら、研修前に会ったリンの姿を思い出す。
 ゼフィーが最上級生になった頃から…考え事をしていることが増えたような気がしていた。何処かぼんやりとして…ゼフィーの話を聞いているのか、いないのか…若しかしたら、迷惑だったのだろうか…。
 自分が卒業するまで、見守っていてくれる。そう思っていたのは自分だけで…研修中に辞めるくらいなのだから、最初からそんなつもりはなかったのかも知れない。
 そう思えば思うほど…リンがいなくなった原因は、自分が用もないのに毎日医務室を訪れ、迷惑をかけた所為だったのかも知れない。そんな気にさえなって来る。
「…ゼフィーさん…大丈夫ですか…?」
 ゼフィーの余りの落ち込みように、エルが声をかける。
「…大丈夫…」
 そう言いながら、大きく息を吐き出す。
 エルが士官学校に入り、ゼフィーを傍で見るようになってから…どんな時でも、弱音を吐く姿など見たことはなかった。いつも穏やかに微笑み、何に対しても前向き。周りとの接触を極力避けていたエルにとって、ゼフィーの存在に救われたと言っても過言ではなかった。
「…きっと…何か、事情があったんだと…そうでなければ、あのリン先生が黙っていなくなるはずは…」
 せめて、そうであって欲しい。そんな想いで零したエルの言葉に、ゼフィーは首を横に振った。
「レヴィ先生が言ってた。リン先生の都合は知らない、って。確かに…そうだと思う。僕たちは…ただの生徒で…リン先生は医務室の先生、だっただけ。僕たちに一々事情を説明する必要はないんだ。多分…瀞瀾先生だったら違うだろうけど…辞める理由だとか、何処に行っただとか、新しい仕事は何かとか…そんなプライベートなことを、全部説明する理由はないじゃない。そこまで追いかけられても…迷惑、なんだと思う。だから…」
「…ゼフィーさん…」
 士官学校に入学してからずっと、一番傍で見守っていてくれた。だから…贔屓、と言ったら可笑しいかも知れないが…特別感を感じていたところも、正直あった。けれど…そんな想いは、全部自分の思い上がり。現実は…ただの、一生徒に過ぎない。
 勝手なその思い上がりが…何より、情けなかった。
「…御免ね、エル。もう、そんなに怪我もしないし…レヴィ先生にも、迷惑かけない。心配しなくても良いから…」
 大きく息を吐き出すと、エルに笑って見せる。けれど実際は…ちっとも、笑えてはいなかった。
 それに気付かないゼフィーは、戸惑うエルを残し、足早に教室を出て行く。
 何も出来ないエルは…溜め息を吐き出すだけ、だった。

◇◆◇

 最上級生たちが研修から戻って来て間もなく。フレアたち一学年下の研修も終わり、士官学校へと戻って来た。
 課題を出し終えたフレアは、いつものように図書館へと向かう。そしてそこで待っていたエルを見つけた。
「エル、ただいま」
 久し振りの、大好きな相手。当然、満面の笑みのフレアだったが…エルの表情は、酷く暗い。
「…えっと…どうした?」
 余りに暗い表情に、フレアも流石に浮かれている場合ではない、と察したのだろう。笑顔を押さえ、神妙な表情で問いかけると…大きな溜め息が零れた。
「ゼフィーさんがかなり落ち込んでいて…」
「…研修のことで?それとも…リン先生のことで…?」
 多分、後者だろう…と思いつつ、一応問いかけてみる。するとエルはもう一つ、溜め息を零した。
「リン先生のこと。やっぱり、ショックだったみたいで…」
「そう…でも、リン先生…情報局で見かけたんだけど…」
「…情報局?」
 フレアの思わぬ言葉に、エルは驚いた表情を浮かべた。
 フレアの研修先は、情報局だった。それは知っていたが、そこで見かけた、という理由がわからなかった。
「どうして情報局に?」
 問いかけたエルに、フレアは少しだけ首を傾げた。
「俺もちらっと見かけただけだから、話はしていないんだけど…あの姿は見間違えないよ。聞いた話だと、どうやら軍医として入局したらしいよ。丁度、ここを辞めたのと同時期に。それも、内勤じゃなくて外回りだって。だから、殆ど局にはいないみたいだって」
 何処で何をしているのか…それは、思わぬところから判明した。
 外勤の軍医は外回りと称され、局内に留まらない…要は遠征に同行する医師、と言うこと。局内の医務室にいる医師は内勤と言われ、瀞瀾は内勤として働いている。
 医師としては何ら変わらないのだが、仕事量を考えれば、限られた人数で、設備も器具も揃っていない外勤の方が数段過酷な環境であることは言うまでもない。
 居場所はわかったものの…リンがそこに移った理由まではわからない。
「情報局に研修に行った先輩たちなら、見かけてるかも知れない。その筋で、ゼフィーさんも話は聞いてるかも。そうだったら、安心してるんじゃないかな…?」
 フレアは御気楽にそう言うものの…実際にゼフィーと話をしたエルにしてみれば、そんな簡単な話ではない。そんな気もした。
「一応…ゼフィーさんに話す…?」
 悩んでいる様子のエルにそう問いかけると、エルは小さな溜め息を吐き出して首を横に振った。
「多分…不用意に話さない方が良いと思う。ちょっと…様子を見てから…」
 少なくとも…ゼフィーの様子は、今までと何か違う。だからこそ、即断は避けたいところだった。
 だが…そこから暫く、ゼフィーは図書館には来なかった。そして、エルが幾度か教室へ様子を見て行っても…まるで避けられているかのように、一度も会うことは出来なかった。
 エルが、あの時の判断を間違えたと…直ぐにでもゼフィーの様子を確認するべきだったと…そう後悔したのは、それから季節が幾度か変わり…入局の試験が間近に迫ってから、だった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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