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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのつぼみ 乖離 3

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.3

拍手[3回]


◇◆◇

 入局試験を目前にしたある日。エルは久し振りに放課後の図書館でゼフィーの姿を見つけた。
 仲の良い仲魔…アルフィードと一緒に資料を探しているゼフィー。隣に立つアルフィードが成体になっている為、より一層小柄に見えるその背中を見つめながら、どう声をかけようか…と、一時考える。
 けれど、考えても仕方がない。そう思い、いつものように声をかけた。
「…ゼフィーさん」
 その声に、先に振り返って視線を向けたのはアルフィードだった。
「あぁ、エルだ。久し振りだね」
 変わらない、無邪気な笑顔。ゼフィーの親友、と言う言葉が相応しいくらいだった。
 エルは小さく頭を下げる。けれど、ゼフィーは…こちらを見ない。
「…エル。御免ね、今ちょっと…時間がないから」
 そう言うと、棚から何冊か資料本を抜き取り、エルの顔も見ずにさっさと行ってしまった。
 その一部始終を見ていたアルフィードは、小さな溜め息を一つ。そして、困惑顔のエルに視線を向けた。
「えっと…御免ね。研修終わってから、ずっとあんな感じで…」
「…研修終わってから、ずっと…ですか?」
 思わず息を飲んだエル。
「そう。ほら…リン先生、俺たちの研修中に学校辞めちゃったじゃない?それが堪えてるみたいで…何か、その反動みたいな感じで、試験勉強に打ち込んでるんだけど…」
 少し声を潜めてそう言ったアルフィードに、エルは眉を寄せる。
「リン先生、情報局の軍医になった、って…聞いてませんか?」
「あぁ、そうみたいだね。情報局に研修に行った仲魔に聞いたよ。でも…俺たちが研修に出ている間に、黙って辞めたことには変わりないじゃない?ゼゼは…自分の所為だったんじゃないか、って…」
「…ゼフィーさんの…?どうしてですか?だって、軍医は士官学校の医師よりもずっと上位で…昇格したのに自責の念、って…」
 リンが士官学校を辞める理由がゼフィーにあるとは、到底思えない。ただの生徒と医務室の医師。それ以上のナニモノでもなかったはず。そこに後悔とも言える自責の念を背負う必要性がわからなかった。
 眉を顰めたままのエルに、アルフィードは小さな溜め息を吐き出した。
「…普通は、そうだよね。ゼゼに、責任なんかあるはずがない。情報局の軍医になってるんだったら、普通に上を目指しているって思うよね。でも…問題はそこじゃない。さっきも言ったけど、黙って辞められてしまったことに対する自責の念、だと思う。俺たちが研修に出ていない間だったから、若しかしたら自分が迷惑かけてたんじゃないか、って…そう言うことなんだと思うよ」
「…そんな…」
 些か大袈裟な気がしなくもないが…それでも、誰よりもリンを慕っていたのなら、わからなくもない。
 迷惑をかけていたから…だから、自分たちがいない時に黙って辞めたのかも知れない。そんな意識に苛まれてしまったのだろう。
 エルも色々と考え始めてしまい…話したアルフィードの方はちょっとバツの悪そうな表情を浮かべていた。
「…御免ね、こんな話して…ほら、エルってゼゼと親しいから…全部話さないと、ゼゼの態度が悪い、って変に誤解されても困るじゃん?リン先生と話が出来れば良かったのかも知れないけど…勝手に情報局に行く訳にもいかないから、そのまま時間だけが過ぎちゃってね…」
「…情報局…」
 リンについての情報を得るのなら、情報局を頼るのが一番。そして使うつもりは全くなかったが…エルにはその伝がある訳で。
「…そうですか。わかりました…済みませんでした、御時間を取っていただいて…」
 頭を下げたエルに、アルフィードは慌てて手を横に振った。
「違う違う。俺が勝手に話しただけだから。もしゼゼに何か言われたら、俺が勝手に話しかけた、って言ってよね。だから気にしないで」
 苦笑するアルフィードに、エルも少しだけ表情を和らげた。
 自分が心配しなくても、ゼフィーには頼れる仲魔が他にもちゃんといる。それは安心すべきことだった。
「じゃあ、またね」
 アルフィードはそう言い残し、とっくにいなくなってしまったゼフィーを追いかけて行った。
 その背中を見送ったエルは…暫く考えた後、意を決したように宿舎へと戻って行った。

◇◆◇

 同じ日の夕方。職務時間が終わったばかりの頃。
 情報局のエースの執務室に、連絡が入った。だが運の悪いことに、エースはまだ外回りから戻っていなかった。
 そして漸くエースが帰って来たのは、それから一時間ばかり過ぎてから、だった。

「エース長官、御屋敷のティム様から連絡がありました。御戻りになられたら、至急御屋敷に御戻りください、とのことでしたよ」
 エースが戻って来るなり、副官のリエラがそう声をかけた。
「ティム?アイラではなくて…ウチか?」
「はい。間違いなくティム様、でしたよ」
 デーモンの屋敷の使用魔たるアイラであれば、デーモンの体調が悪いと言う可能性は考えられる。けれど、自分の屋敷から呼び出されることはそうそうなく…思い当たる理由もないので、眉を顰めたまま考え込んでいると、それを眺めていたリエラが苦笑する。
「理由を考えているのであれば、御帰りになられるのが一番早いのでは?残りの仕事もありませんし、何の問題もありませんよ?」
 エースの扱いを心得ているリエラならではの言葉に、エースも尤もだ…と溜め息を一つ。
「わかった。じゃあ、今日はこれで帰るから。もし何かあれば屋敷に…」
「余程の事でなければ明日御確認を。問題ありません」
 にっこりと笑ってエースの言葉を遮るリエラ。その姿にエースも苦笑する。
「あぁ、わかった。じゃあ、また明日」
「はい、御気を付けて」
 リエラに見送られ、エースは外套を脱ぐ暇もなく…そのまま屋敷へと戻ることとなった。

 屋敷へと戻って来たエースは、玄関のドアを開けるなり、出迎えたティムに問いかける。
「急用、か?」
 その問いかけに、ティムはにっこりと笑いを零す。
「はい。リビングへどうぞ」
「………」
 多くを語らない時は、何かがある。それはどの屋敷の使用魔でも同じ。
 呼び出された理由を改めて考えつつ…外套をティムに渡すと、そこに何があるのかわからないままリビングへと向かう。
 そしてリビングのドアを開けると…そこにいた姿に、一瞬息を飲んだ。
「……エル…?」
「…御帰りなさい…」
 そこにいたのは、士官学校にいるはずの愛娘エル、だった。
「…どうして御前がここに…?」
 士官学校の長期休暇はまだ先。長期休暇でもエースの屋敷には滅多に戻って来ないエルなのだから、休日でもない日に戻って来ている理由がわからない。そして、デーモンのところではなくエースのところ、と言う理由もわからなかった。
 驚きつつソファーへと座るエース。その反応は予測済みのエルは、小さな溜め息を一つ吐き出すと、その口を開く。
「…忙しいところ、御免なさい。訪ねて来たら、ティムが情報局に連絡を入れてくれたので…」
「あぁ…それは良いんだが…寧ろ、待たせてしまって悪かったな。それで、どうしてここに…?」
 改めて問いかけると、少し何かを考え…エルが言葉を続けた。
「ちょっと…聞きたいことがあって…」
「聞きたいこと?」
「…情報局の軍医として、リン医師が入局しているはずなんですが…入局の経緯を知りたくて…」
「…入局の経緯?」
 突然そう聞かれても、エースも一から十まで直ぐに思い出せるものでもない。しかも、医局の方はほぼ把握はしていない。
 だがしかし。愛娘がわざわざ戻って来るだけの理由があるのなら…と、ソファーに深く背を預け、様子を窺う。
「リン医師……聞いたことあるな…あぁ、昔関わったことがあったな…」
 記憶を辿りながら、その名前を思い出す。
 エルが生まれるよりもずっと前。あの頃はまだ、臨職の当直医だったはず。
「リン医師が…何か?」
 もう一度問いかけると、エルの表情が少し強張る。
「…ゼフィーさんが…ショックを受けているみたいだから…」
「…ゼゼ…?」
 思いがけない名前に、首を傾げる。
「…リン先生…士官学校の医務室の先生だったんです。ゼフィーさん、凄くリン先生のこと信頼していて…でも、研修中に、黙って辞めてしまって…若しかしたら、自分が迷惑かけたんじゃないか、って…そうしたら、情報局の軍医として入局したことを聞いたので…それで…」
「…成程な。それで、俺、だった訳か」
 訪ねて来た理由はわかった。エルにしてみれば、わざわざ足を運ぶだけの想いがそこにあるのだろう。だとしたら…きちんと向かい合うべきだと、エースも感じた。
 そして、ソファーから立ち上がる。
「ちょっと待ってろ」
 そう言い残し、リビングを後にする。
 その背中を神妙な顔で見送ったエル。
 どんな答えがそこに待っているのか、まだ何もわからない。けれど…ここまで来たからには、何か少しぐらいはわかるだろう。そう願うしかなかった。

 ティムが用意した御茶を飲みながら十分ほど待っていると…漸くエースがリビングへと戻って来た。
「ウチの医局に連絡入れて聞いて来た。リン医師は確かに入局している。だが、その入局の経緯は、特に不審なところはなかった。普通に募集が出て、普通に応募し、普通に面接と試験を受け、普通に合格して、普通に入局した。募集から入局まで、時期的に偶然ゼゼたちの研修の真っ只中だった、と言うだけだな。だから、顔を合わせることがなかった…そう言うことらしい」
「…そう、ですか…」
 エースの報告に、溜め息が一つ。
 エースの話が正しいなら、リンが士官学校を辞めた理由にゼフィーは関係ない。それは、間違いない。ただ…ゼフィーから離れようと、別の仕事を探していたのでなければ。
 浮かない表情のエルに、エースは言葉を続ける。
「…ゼゼが、リンが士官学校を辞めた理由が自分だと思ってるなら…多分、それは違う。リンのことは、昔少し関わったから多少知っているが…当てつけみたいに黙って辞める程不誠実な奴じゃない。彼奴は医師としては真っ直ぐで、ゼノンの折り紙付きだ。疑うようなところは何もないから」
「…父様…」
 少しだけ、不安が和らいだ。そんな表情を見せたエルに、エースは小さく吐息を吐き出す。
「ゼゼの心の中は、俺たちにはわからないが…たまたま今までそんな状況がなかっただけで、これから先、そんなことは幾らでも出て来る。それを、何処まで自分で消化出来るか…それは、ゼゼ次第だ。心配なら、手を差し伸べることも出来るかも知れない。だが、ゼゼがそれを受け入れなければ、その手助けは成立しない。乗り越えるのは、彼奴自身だから。御前も、それを受け入れなければいけないことを、忘れるなよ」
 エースの言葉に、エルは小さく頷きを返す。
 ゼフィーの心の中に今ある想いは、自分たちには全て見ることは出来ない。だからこそ心配なのだが…余計な口出しをすることも考えなければならない。
 すっきりとしない想いは相変わらず。けれど、リンに関しては疑うところはない。エースのその言葉は、訪ねて来て良かったと、思わせるものであった。
「…さて。今日は…どうするんだ?泊まるなら、部屋は大丈夫だが…」
 まだ遅い時間ではないが、日は落ちている。親として…一名で帰すのは流石に心配で。
 そんな想いを知ってか知らずか…エルは小さく首を横に振る。
「明日も朝から授業があるから、帰ります」
「なら、送って行く。それぐらいは…許されるだろう…?」
 多分、言い出したら聞かないだろう。それぐらいはエルにもわかっていた。
 小さな溜め息を吐き出すと、頷いて見せる。
 その姿に安堵の吐息を零し、エースはにっこりと笑う。
 そして、エースに送られ、エルは再び士官学校へと戻ったのだった。
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