聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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かがやきのつぼみ 乖離 4
第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")
こちらは本日UPの新作です。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.4
エルがエースの元を訪ねた数日後。その日は軍事局の入局試験の日だった。
身体が小さくて魔力が低い分、実技試験は他の受験者よりも不利ではあった。けれどその分、懸命に勉強して、筆記試験と面接でフォロー出来るよう頑張って来た。
その結果が、報われるように。ただ、その想いだけ。
誰もがピリピリとした雰囲気を纏いながら…試験は終わった。
そして数日後、その結果が合否通知として目に見えるカタチとなる。
「…やり切ったな」
試験会場たる軍事局からの帰り道。他の受験者と混ざって帰るその道すがら。隣を歩くアルフィードの言葉に、ゼフィーは小さな溜め息を一つ。
「まだ入局試験だけどね。もし入れたとしても、研修が待ってるでしょ?そこで入局を認められないと、本当に受かったとは言えないじゃない」
「まぁ、そうなんだけど…」
ゼフィーの言うことは尤も。だが、入局試験をパスした者が受ける研修はあくまでも新採用者の研修であり、基本的には研修が終われば入局を認められる。
あくまでも…基本的には、だが。
「…面接で何か言われた…?」
ゼフィーの機嫌が余り良くないのは、最近では当たり前となりつつある。だが今日は明らかにいつもよりも表情が暗い。それはいつも見ているアルフィードには感じ取れた。
面接は軍事局の各部の主任クラスが担当することが殆どで、彼らも例外ではなかった。アルフィードの担当はゼフィーとは違っていたが…確か、ゼフィーの面接担当は参謀部実行班総長。よりによって、総参謀長たるルークの懐刀とも言われるほどの相手。ゼフィーでなくても臆するのは当然だった。
問いかけられてから暫し…考えるように口を噤んでいたゼフィーだったが、ぽつりと言葉を零す。
「…例え試験に受かっても、成体にならないと、本採用は厳しい、って…」
「……そっか…」
他に、どんな言葉を返したら良いのか…付き合いの長いアルフィードにも、答えが浮かばなかった。
ゼフィーが成体にならない理由は聞いている。それをフォローするように、実技よりも勉学で頑張っていたことも。だが、成体にならないなら採用は厳しいと、試験の合否が出る前に言われてしまうと言うことは…合格も難しいのではないか、と思わざるを得ない。
「…でもさ、軍事局だって技術力だけじゃないじゃない?頭を使う部署だって多いじゃない。ほら、参謀部だって頭脳派でしょ?そう言うところを目指せばさ…」
「…本採用にならないと、目指しようがない」
「…ゼゼ…」
暗く、沈んだ顔。いつも穏やかに笑っていたゼフィーの顔は…もう随分見ていない。多分、未だ嘗てないくらい…その心は浮上する術を見つけられないのだろう。
共に歩きながら、その横顔を見つめていたアルフィードは…その想いを、口にした。
「じゃあ…こうしよう。もし、御前が軍事局の試験に受かって、研修が終わるまでに御前が納得する相手が現れなくて…それでも軍事局に残りたいなら、俺が相手になるから」
「…アル…」
思いがけないその提案に、ゼフィーは思わず足を止める。
「…だって、アルには礫がいるのに…」
そう。士官学校に入学した時、寮でアルフィードと共に同室だった先輩の礫。アルフィードは仄かな恋心を抱いていたらしく…礫が儀式を迎える時に自ら相手を申し出て、そのまま恋悪魔の座を手に入れたのだった。それは礫が卒業してからも継続している。だからこそ…ゼフィーにしてみれば、恋悪魔がいる身で…との思いがあったのだ。
アルフィードはゼフィーの少し先で足を止める。そして、少し後ろにいるゼフィーを振り返った。
「だって後がない状態になったらさ、成体になるか、入局を諦めるか、選択肢はそのどちらかしかない訳じゃない?別に、恋愛感情がなくても成体にはなれるじゃん。礫なら、相手がゼゼなら事情がわかれば納得してくれる。全く知らない相手より、一番付き合いの長い俺なら、御前も何とか妥協出来るんじゃないかと思うんだけど。それにほら、最終手段、だから」
唖然とするゼフィーを前に、アルフィードはそう言って屈託のない笑顔で笑う。
確かに、アルフィードの言う通り。選択肢は二つだけ。そのどちらかを選ばなければならないのなら…どちらかを妥協するしかない。まだ先の話だとは言え…背水の陣となった時に選択肢があれば少しは気も楽になる。
ゼフィーには思いがけない提案だったとは言え…アルフィードの思い切りの良さには感謝しかない。
「…わかった。その時が来るかわからないけど…最終手段として…御願いします…」
それは、あくまでも最後の切り札として。そんな思いを込めて、頭を下げる。そんなゼフィーの姿に、アルフィードは笑った。
「何を今更。一番長く一緒にいる仲じゃない」
そう、一番一緒にいる相手。だからこそ…自分が、話さなければ。
そんな想いで、アルフィードは笑いを収め、改めて口を開いた。
「…ねぇ、ゼゼ…試験の結果が出たらさ…リン先生に、会いに行かない…?」
「……どうして?」
すっと、ゼフィーの表情が変わった気がした。
リンの話になると、このところずっと機嫌が悪い。と言うか…消化不良、と言う表現が相応しいのかも知れない。
勿論、自分の中だけで消化出来るなら、口出しはしない。だが…既に、周りを大幅に巻き込んでいる。この状態では、誰もが消化不良のまま。だからこそ、試験の終わったこのタイミングで口を開いたのだった。
「どうして、って…はっきり聞いた方が良いでしょ?士官学校を辞めた理由をさ…」
その言葉に…ゼフィーは暫し、口を噤む。
そして、少し考えた後…ゆっくりと口を開いた。
「…リン先生には…会わないよ」
「ゼゼ…」
真っ直ぐに、前だけを見つめるその眼差し。けれど、そこに固い意志があることはわかった。
「…御免ね、アル。でも…この先ずっと、リン先生に頼っていく訳にはいかないでしょう?リン先生もきっと…そう思ってるはず。だから僕は…もう、リン先生には会わない」
確かに、ゼフィーの言うことは間違ってはいない。彼らはいつまでも士官学校の生徒ではないし、リンももう医務室の医師ではない。その関係が卒業までだとわかっているから…何処かで割り切らなければならない想いなのだろう。
けれど…今のゼフィーは、とても不安定に見える。成体になっていないことも恐らくその要因の一つなのだろうが…あの穏やかだったゼフィーの姿ではない。
それも、無事に入局出来れば変わるだろうか…?
頑なに強張ったゼフィーの心を解く方法は、アルフィードにはわからないことだった。
数日後。合格発表のその日。
夕方、宿舎に戻って来ると、その入り口にエルの姿があった。
「…ゼフィーさん…御帰りなさい…」
結果を知らないエル。その表情は、とても心配そうだった。
「あの…試験の結果は…」
「…うん。受かったよ。僕も、アルも」
かなりの心配をかけたのだろう。そう察したゼフィーは、ほんの少しだけ表情を和らげて、そう告げた。途端にエルから安堵の溜め息が零れた。
「…良かった…」
安堵する気持ちはわかる。普通なら、試験に受かることは入局を意味する。だが…ゼフィーにはそれが当てはまらない。エルはまだ、そのことを知らないのだ。だから、普通に安堵の表情を見せる。
そんな姿が…ちょっとだけ棘のように胸に刺さる。
今日はアルフィードは別行動。フォローしてくれる相手はいない。そう思いながら、久し振りに…本当に久し振りに、エルの顔をきちんと見た。そんな気がした。
久し振りのエルは…その記憶の中の彼女より、大人びて見えた。
初めて会ったのは…彼女が生まれたその日。そして次に会ったのは、彼女が士官学校に入ったばかりの頃。まだ自分よりも小さな姿だったはず。
それがいつの頃からか、彼女に背丈を抜かれ…そして今も。多分…彼女は自分よりも先に、成体になっている。それはゼフィーの直感だった。
勿論、それが悪い訳ではない。アルフィードも彼らの同期の中では早い段階で成体になっていた。相手がいるのなら、良くある話だった。だから、否定する訳でもない。
ただ…それが今は…少し苦しい。
表情の冴えないゼフィーの姿に気がついたエルは、やはり心配そうな表情で彼を見つめていた。
そして…その言葉を切り出した。
「……あの…御免なさい。私…リン先生の事…父様に、聞きました…」
「…聞いた、って…何を?」
問い返した声に、エルは少し視線を落とす。
「リン先生がここを辞めた理由、です。情報局の医務室にいるって、フレアに聞いたから…それに、アルフィードさんが、リン先生が辞めたこと…ゼフィーさんが自分の所為だと思ってるかも、って言っていたから…それを確かめたくて。それで父様に…確認して貰いました。その入局には、何も疑うところはない。たまたま、募集の時期が研修の間だっただけだ、って…」
エルの父親は、士官学校にいる訳ではない。だから、その話を聞くには、わざわざ訪ねて行ったのだろう。
自分と…同じように。
小さな溜め息を吐き出したゼフィー。そして、言葉を選びつつ…ゆっくりと、言葉を続けた。
「…うん。知ってたよ。その募集を逃したら、次はいつ募集が出るかはわからない。だから相当な倍率だったみたいだけど、ちゃんとリン先生の実力で受かった、って。僕も…父様からそう聞いたから」
「…だったら、どうして…」
思いがけない言葉に、エルは顔を上げ、そう言葉を零す。
けれどゼフィーは相変わらず。そしてその眼差しが…再び、エルから外れた。
「理由がわかったから、って…結果は何も変わらないじゃない。リン先生は誰にも理由を言わないでいなくなった。一々、生徒たちにそんなことを説明する理由はないから。そして、新しくレヴィ先生が来て、医務室の医師は補充された。それで何も困ることなんかないじゃない。医務室の医師は、リン先生じゃなくても問題ない。僕たちはただの生徒で…それ以上でも以下でもない。それを、僕が認識していなかっただけ。それを…その現実を、突き付けられただけ。それだけ、でしょう?」
「でも…」
「でも、何?僕は、リン先生がいないと生きて行けない訳じゃない。もし仮に、リン先生がずっとここにいたとしても…僕が卒業すれば、もう関りはなくなる。それが少し早くなっただけでしょう?それをどうにかしようとは、普通思わないでしょう?それとも、どうにかしなきゃいけないの?僕が…他悪魔よりも劣ってるから…頼って生きて行かなきゃいけないとでも…?」
思わず口走った言葉に、エルは溜め息を吐き出して首を横に振る。
「…違う。私は、そんなこと思ってない」
「なら、何?」
いつになく感情的。ただ…その感情の矛先は、誰が見ても自分を貶めているようで。
ただ、その想いが…切なくて。
「私はただ…ゼフィーさんに、前みたいに笑って欲しくて…思い詰めた表情を見るのが辛くて…昔の自分みたいで…」
「………」
「私…ゼフィーさんに出会えていなかったら…多分、もっと違う魔生だったと思います。ゼフィーさんが笑っていてくれたから…ゼフィーさんと天狼さんが見守っていてくれたから…私は、色々乗り越えることが出来たんです。"仲魔"の大切さを教えて貰ったんです。だから…ゼフィーさんには、笑っていて欲しい。それが、貴方の強さだと思っているから。だから……」
どう、言葉にして良いのかわからない。それでも、その想いを伝えたくて。
そんな純粋な想いを前に…ゼフィーも溜め息を一つ。そして…その腕を伸ばし、自分よりもすっかり背が高くなったエルの頭を、そっと撫でた。
「…御免ね、エル。僕は意地悪なこと言ったよね。でも…さっきの言葉は、僕の本心なんだ。僕は…強くなんかない。僕が笑うことで、癒されるって…良くそう言われたけど、それがいつでも出来る訳じゃない。笑ったって、自分の心は癒されない。どうしたら笑えるようになるのか…僕にもわからない。どうやって笑っていたのかも思い出せない。だから…今は笑えない。ホントに、御免ね…」
「ゼフィーさん…」
はらりと、エルの頬に零れた涙。それを指先で拭うその仕草は、とても優しい。それでも…そこに、昔のような無垢な笑顔はなかった。
「心配してくれて、有難うね」
目を細め、そう零した言葉。
エルはただ、ゼフィーのその想いを受け留めるしかなかった。
ただただ…その心の安定を願いながら。
士官学校の卒業式の日。その日は、入局式の日でもあった。
卒業式が終わると、そのまま配属先の局に入局するのが通例となっている。そしてゼフィーもまた、不安な想いを抱えたまま、仲魔たちと共に入局式に向かっていた。
結局、あの日以来エルとは会っていない。
ゼフィー自身も、どうして笑えなくなったのか、それがわからないまま。そしてその胸の内を、初めて全部吐き出した。それでも、胸の奥に痞えている何かは、すっきりしない。
儀式を迎え、成体になることが出来たら…そんな悩みもすっきりするのだろうか。そう思いながらも、やはり成体になる確固とした理由にはならなかった。
いつか…また、笑える日が来るのだろうか。
ゼフィーの心は、霧の中に迷い込んだまま。
そしてそのまま…いつまで軍事局にいられるのだろう。それもまだ、わからない。
けれど、迷っている暇はない。これからがゼフィーの正念場。精一杯、やるしかないのだ。
「…ゼゼ、大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込んだのは、アルフィード。昔から変わらないその眼差しに、ゼフィーは小さく息を吐き出した。
「大丈夫」
零した声に、小さな笑いが返る。そしてその背中に手が添えられる。
「頑張ろうね」
「…うん」
誰よりも小さい、その背中。けれど、前へ進むしかない。
彼らは、社会への一歩を踏み出したのだった。
いつか…強くなれることを、願って。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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