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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのつぼみ 水端(前半) 4

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは、以前のHPで2005年09月19日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話(前半) act.4

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◇◆◇

 翌日。リディたちの処分が決まったとの連絡が、リンの元にも届いた。
 主犯の三名は三ヶ月の停学処分。そしてリディは、一ヶ月の停学処分、と言うことだった。
 その報告を受けたリンは、ゼノンの執務室を訪れていた。そして、ゼノンに状況を全て説明した。
「…そう」
 話を全て聞き終えたゼノンが返した答えは、それだけだった。
「…少し…厳し過ぎるとは思いませんか?主犯の三名はともかく、リディはただ、ゼフィーの為に…」
「教師と言うのは、厳しいものだよ」
「…ゼノン様…」
 思いがけないゼノンの言葉に、リンは思わず眉を顰めた。けれど、ゼノンは表情を変えることもなく、リンに言葉を返す。
「ヒトを指導する立場なら、同じ結論を出すと思うよ。学長も績羅主任も、彼らの将来をきちんと考えているから。だから、同じ過ちを起こさないように、きちんと処罰したんだと思うよ。彼らが士官学校を卒業して、何処かの局に入局してもきちんとやっていけるように。学力や実技力を鍛えるだけではなく、常識や礼儀も叩き込まれるのが士官学校でしょう?だから俺は、その判断は間違ってはいないと思うけれど?」
「それはそうですが…わたしは、もっと別の方法もあったのではないかと思います」
「確かに、あったかも知れない。でも、彼らにもゆっくり考える時間が必要なんだと思うよ。自分たちのやったことを、どう捕らえるか。その結果が、きっと停学明けに見えるんじゃないかな。その為の期間だと思えば良いと思うよ」
「…そう言うものですか…?」
「そう言うものだよ」
 ゼノンにまでそう言われてしまったら、最早反論することも出来ない。小さな溜め息を吐き出したリンを、ゼノンはくすっと小さく笑った。
「御前にとっても試練なのかも知れないね」
 そっと笑うゼノン。その前で、溜め息を吐き出すリン。
 ゼノンの言葉は、リンにどのように届いたのだろう。
 その言葉は、やがて現実になるのだった。

◇◆◇

 ゼフィーが入院してから一週間程が経ったその日。ゼノンは執務が終わってから、面会に訪れていた。
「調子はどう?」
 そう問いかけた声に、ゼフィーは小さく頷きを返すだけ。言葉は、なかった。
 足の怪我は、もう完治している。けれど…未だ、その声は戻っていないのだ。
 日に日に表情も暗くなるゼフィー。気落ちするだけの日々に、ゼノンもその処置を考え始めていた。
 ゼフィーの回復にとって、良い環境とは。それが、目下の課題だった。
 ゼフィーの心を蝕んでいるのは、精神的なモノ。それを癒す場所と言われても、魔界に降りてからほんの数日、ゼノンの屋敷にいた以外はずっと士官学校にいたゼフィーにしてみれば、該当する場所は殆どないのだ。
「…ゼゼが安心していられる場所、ねぇ…」
 病院から屋敷に戻ってリビングで寛いでいる時に、無意識に零れた言葉。すると、御茶を運んで来たレプリカが、その呟きを聞いていたようだった。
「…こちらでは、駄目なのですか…?」
「は?」
 不意に問いかけられた言葉に、ゼノンは奇妙な声を零した。
「ですから、若様をこの御屋敷で御世話することは出来ないのですか?」
 めげずに改めてそう言い直したレプリカ。
「…別に、出来ないことはないけれど…御前たちの負担にはならない?ゼゼも、そう慣れている訳でもないし…」
 眉根を寄せ、小さく首を傾げるゼノンに、レプリカは小さく微笑む。
「少なくとも、誰ともわからない病院の看護師や医師たちよりは、若様のことを存じているつもりです。勿論、病院の環境の批判をする訳でもありませんし、ゼノン様が御迷惑なら、今の発言はなかったことにしていただいても構いません。ただ、わたくしどもは、若様が苦しんでおられるのなら、手助けをして差し上げたいだけですので」
「…迷惑ではないけど…」
 今一つ、踏ん切りが付かないと言う表情のゼノン。勿論、自分の目の届く所にいてくれるのなら、何の心配もないのだが…ほんの僅かな時間しか過ごしていないこの屋敷が、果たしてゼフィーが安息を得られる場所になるかどうかの想像が付かないのが現実なのだ。
「…本当なら、ライデンの所に帰すのが一番良いんだろうけれど…ララもいるから、ゆっくり療養出来る訳でもないしね…やっぱり、ここが一番良いのかな…」
 小さな溜め息を吐き出すゼノン。
 父親として、護らなければならない気持ちは大きい。けれど、迷う心もある。
 ゼフィーが独りで生きて行く為に必要な力を身に付けさせる為に、士官学校へ入れたのだから。今、手を差し伸べることは、ゼノン自身も、その決断が揺らぐのではないかと言う迷い。
 けれど、その迷いを打ち切ったのは、レプリカの言葉だった。
「…わたくしは、甘やかすことと護ることは、別物だと思います。甘やかす為ではなく、護る為の手段ですから。今手を差し伸べなければ、若様はもっと辛い思いをするかも知れません。ずっと、一名で苦しみ続けるかも知れません。それを救って差し上げるのが、父親の役目ではないのですか?何も心配はいらないのだと…ここが、安息の地で良いのだと、教えて差し上げるのが、ゼノン様の役目ではないのですか?」
「…言ってくれるね…」
「必要な時には言わせていただきます」
 にっこりと微笑むレプリカに、ゼノンも小さく笑いを零した。
 そう。迷うことなど何もなかったのに。父親として、自然に手を差し伸べてやれば、それで良いのだから。
 それで、ゼフィーが救われるのなら。
「…これから忙しくなるよ」
 くすっと笑いを零して、ソファーから立ち上がるゼノンに、レプリカは微笑みを返す。
「心しております」
 その返事を聞いた瞬間、ゼノンは外套を手に、踵を返していた。
 そしてその夜のうちに、ゼフィーはゼノンの屋敷へと連れて来られたのだった。

 翌日の夕方。
 ゼノンの執務室に駆け込んで来た姿が一つ。
「ゼフィーを退院させたと言うのは、どう言うことなんですか…っ!?」
 肩で息をしながら、いつになく興奮しているのは、士官学校の医師たるリン。
「…あぁ、そのこと。俺が、保護しているから、心配はいらないよ」
「保護って…一体、何処に保護したと言うのですか?まだ、退院には早いのでは…っ」
 ゼフィーの状態を考えれば、そう答えを出すことも当然。だが、ゼノンは敢えてそれを口にした。
「足の怪我はもうとっくに治っているよ。退院しても問題はない」
「ですが、失声症の方は…っ」
「病院にいる状態では…ゼゼの心の傷は、癒されないんだよ」
 ゼノンのその言葉に、リンは口を噤んだ。
 未だ険しい表情は、それだけゼフィーを心配している証拠。
「…御前が心配している気持ちはわかるよ。けれど、ゼゼには安息の場と時間が必要なんだ。確かに病院の設備ならば、安心出来るかも知れない。でも、そこが安息の場として認識されなければ、気持ちは安定しない。だから、退院させた。俺の保護下に置くことで、じっくり時間をかけて心の傷を癒すことを目的として、ね」
 それは、医師としての眼差し。リンよりも遥かに数多くの経験を経て身に付いた、有無を言わさぬ医師の瞳、だった。
「…もしも…時間をかけても癒されなければ…どうするおつもりですか…?」
 思わず問いかけた声は、未だ不服の色を乗せている。
「癒されなければ?そうなれば、答えは一つ、だよ。無理に社会に出る必要はない。俺が引き取って、彼に合った生き方をすれば良い。これでも俺は、ゼゼの"保護者"だから、ね。それだけの責任はあるから」
 その言葉を、リンは複雑な表情で見つめていた。
 ゼノンが発した"保護者"と言う言葉。勿論、ゼノンは"親としての保護者"と言う意味も含めているが、リンは当然のことながらその事実は知らない。単なる、"保護した者としての保護者"と言う意味でしか捉えられないのだ。
「…彼の為に…そこまでする必要性が、ゼノン様にはあるのですか…?」
 思わず問いかけた言葉。それは、ゼノンが下した決断を否定するかのようで。
「…医師として…彼を癒せない自分が、実力不足だと言うことは重々承知しています。けれど…彼の一生を左右する決断を、そんなに簡単に下す理由がわかりません。どうして、彼の為にそこまで…」
 確かにリンの言うことは理解出来た。医師としての見解ならば、確かにゼフィーの一生をゼノンが背負う必要はない。自力で生きて行くことが、魔界で生き延びる為の術なのだから。
 けれど、今のゼノンは医師ではなく、一名の親。だからこそ、ゼフィーの一生を護ってやることが出来るのだ。
 それをリンにどう説明したら良いだろう。それを考えながら、ゼノンは大きく息を吐き出した。
「…勿論ね、医師としてならば、そこまで背負い込む必要はないと思うよ。けれど…さっきも言ったけれど、俺は、ゼゼの"保護者"だから。彼を魔界へ連れて来たのは俺だもの。彼が士官学校を卒業して、独り立ちするまでは、俺が責任を持って世話をするのは当然のことだよ。ゼゼにはまだ、護ってやるべき存在が必要なんだと思う。その為に俺は、ゼゼを退院させて保護しようと思った。勿論、それがゼゼの今後にどう影響するかはわからないけれど…今は、それが最善だと思うから」
 リンには、ゼノンとゼフィーの関係はまだわからない。単なる"保護者"としての発言として受け取るのならば、ただ保護しただけでそこまで背負う必要があるのかと疑いたくなる気持ちもある。けれど、相手はゼノンなのだ。医師として、とても尊敬している師の言葉を前に、リンはそれ以上反論することは出来なかった。
 ゼノンがこうと決めた以上…全てをゼノンに託してしまった以上、もう自分が勝手に口を挟むことも出来ないのだと。
 きつく唇を噛み締めたリン。その表情を見つめながら、納得はしていないな、とゼノンは思っていた。それでも、今はそれを通すしかない。
 全ては、ゼフィーの為に。
「…君は…親がいるんだよね?」
 ふと、問いかけたゼノンの言葉。
「…えぇ、一応…ですが、直ぐに一族から離れてしまったので…今は関わりは…」
 不意に問いかけられた意味がわからず、困惑した表情のリン。けれどゼノンは、そのまま言葉を続けた。
「俺は、親はいない。だから、子供の頃から護られた記憶なんかなかった。一族の性ってモノもあって、ライデンと出逢うまで、愛することも、愛されることも知らなかった。だからって言う訳じゃないけれど…その分、精一杯の愛情を与えてあげたいと思ったんだ。勿論、俺に出来ることは限られているけれど…必要とされた時に、いつでも手を差し伸べてあげられる。護られているって言う安心感を与えてあげたい。それが、甘いと言われるならば仕方がないと思っているよ。でも…俺には、それしか出来ないから」
 そう、言葉を紡ぐゼノンを、リンは真っ直ぐに見つめていた。けれど、その眼差しは困惑の色を隠し切れない。
 ゼノンの言葉は、まさに"親"としての言葉。それが、ゼフィーに向けられる意味を、リンは問いかけずにはいられなかった。
「…わたしには…ゼノン様がそこまでゼフィーに入れ込む気持ちがわかりません。愛情を向けるのなら、その想いは…雷神界の若君に注がれるべきではないのですか?若君は陛下に任せ切りで、保護しただけのゼフィーに入れ込むのは筋違いではないのですか?幾ら、ゼノン様が保護したからと言って…魔界へ連れて降りたからと言って、そこまで背負い込む気持ちがわかりません。どうして…ゼフィーなのですか?どうして、そこまで…深入りするのですか?」
 それは、困惑を通り越して既に怒りにも似た表情。
 リンの気持ちはとても良くわかる。だからこそ…ゼノンは、言葉を返すことが出来なかった。
 ただ、悲しそうに歪んだ表情が、全ての答え。
 滅多に見せないゼノンのそんな表情を目の当たりにして、リンは自分が言ってはいけないことを口にしてしまったような気がした。
「…言い過ぎました…済みません…」
 胸が痛い。それは、どちらも感じた思い。
 リンは頭を下げると、そのまま踵を返した。
 リンが執務室から出て行くと、ゼノンは大きな溜め息を一つ。
「…全てを吐き出せたら…どんなに楽になるだろうね…」
 それは、自らが背負った枷。ゼフィーを魔界へ連れて降りることを決めた時、明かすことは出来ないと決めた想い。
 せめて、ゼフィーが独り立ちするまで。生涯の伴侶を見つけるまで。
 苦しい思いをすることは、最初からわかっていたはず。だから、前向きに行かなければ。
 ゼノンは再び大きく息を吐き出すと、首を小さく横に振って、悩み過ぎる自分を戒めた。
 全ては、自らの血を分けたゼフィーを護る為に。

◇◆◇

 ゼノンの執務室を出たリンは、どうにも消化出来ない思いを抱えたまま、士官学校の医務室に戻って来ていた。するとそこには、久し振りに見た瀞瀾の姿があった。
「久し振りだな。元気ないじゃないか?」
 このところの事情を全く知らない瀞瀾は暢気に笑っている。その姿に、リンは溜め息を吐き出す。
「…元気でいられるはずがないでしょう?こんなに、悩みが多いのに…」
「…リン?」
 いつになく沈んだ表情のリンに、瀞瀾も何かを感じ取ったのだろう。その表情は引き締められ、真剣な光がその瞳に宿る。
「…聞いてやろうか?」
 問いかけると、リンは暫く考えてから小さく頷く。そして、事のあらましを全て瀞瀾に吐き出した。
 ゼフィーの身に起こったこと。そして、今の状況。ゼノンとの間に出来てしまった溝のことも。
 その全てを聞き終える頃、瀞瀾の表情は酷く神妙になっていた。
「…成る程ね。ゼノン様がね…」
 ゼフィーに入れ込むゼノンの様子を不安げに語るリンに、瀞瀾は暫く目を閉じて、思いを巡らせているようだった。
 暫しの後。瀞瀾はゆっくりと息を吐き出すと、その眼差しが真っ直ぐにリンを見つめた。
「なぁ…随分前になるが、ゼゼの成長が遅いことについて、御前と話したことがあったよな?覚えてるか?」
「…えぇ、覚えていますよ。ゼノン様は、彼の出生を知っている。それも、他悪魔には言えない事情がある って…」
 目を伏せ、溜め息を吐き出しつつ、リンはそう口にする。そしてその次の瞬間、ハッとして顔を上げた。
「…まさか…それが関係しているって言うんですか…?」
「この状況は、そうとしか思えないだろう?もしかしたら…本当に自分の子供なのかも知れない。だとしたら、ゼノン様が言う"保護者"の意味合いが変わって来る。全てがしっくり来るんじゃないのか…?」
「………」
 目の前にある瀞瀾の眼差しはとても真剣だった。だからこそ、リンは戸惑いを隠しきれない。
 確かに、ゼフィーがゼノンと血の繋がった子供だと考えるのなら、話は簡単である。ゼフィーを護る為に、彼の生涯を背負い込むことも、当然と言えば当然。
「…けれど…それならどうして、"子供"として届けていないんですか?あくまでも、ゼフィーの"保護者"としての届け出しか…」
「"保護者"の意味は、未成年者を保護する役割の者、と言う意味だ。それが、"本当の親"であろうとも、"保護した者"であるとしても、"保護者"には変わりない。ある意味、便利な言葉だよな」
「…瀞瀾…」
「"子供"として届け出をしていない理由は、"ゼノンの子供"と言う枷を背負わせたくなかったから、とも考えられるだろう?有力者の子供なら、当然期待も大きくなるだろうし、それ以上に生命を狙われる言だってあるだろう。そう言う例は幾つもある。それを回避する為に、そう言う手段を取ったのだとしたら…ゼノン様の意図もわからなくもない。ゼゼを護る為に、その生涯を背負うことだって苦じゃないはずだ」
 瀞瀾の言葉を聞きながら、リンはそれが真実ではないかと思い始めていた。
 そうだとしたら、ゼノンの行動の意味は全て正当である。子を護る親として、当たり前のことをしているだけなのだから。
「…それなら…雷神界にいる若君は…ゼフィーと兄弟、とも考えられる訳ですよね…?」
 口を開いたリンに、瀞瀾は頷きを返す。
「そうだな。ゼゼが雷帝と血が繋がっているかはわからないが、その可能性はなくもない。言葉は悪いが…ゼノン様が、雷帝を裏切っても平気なくらい冷酷でない限りは…な」
 勿論、それが全て真実ではない。それはリンにもわかってはいるが…今は、ゼノンがゼフィーの"実の親"であると言う仮定が一番しっくり来るのだ。
 親としての立場。それを、当たり前に口にしたゼノン。それを、頭から否定した自分。だからこそ、リンは胸が痛かった。
 ゼノンは…リンの言葉を、どんな気持ちで聞いたのだろう。
「わたしが…間違っていたんでしょうか…」
 俯き、口を吐いて出た言葉。その言葉を前に、瀞瀾はぽんぽんとリンの背中を軽く叩いた。
「あくまでも、今の話は仮定だ。一つ引っかかっているのは、雷神族は必ずその血筋を残せると言うだろう?そう考えたら、ゼフィーは当て嵌まらない。彼奴は雷神族じゃない。魔族であり、"鬼"の種族だろう?その辺のことはやっぱり良くわからないが…何かの事情があるのは確かなんじゃないかと思う。勿論、それを雷帝も承知の上で」
「…ライデン陛下も、承知の上で…」
 もしもそれが真実なのだとしたら…一体、そこに何があったのか。
「さっきも言ったが…ゼノン様が雷帝を裏切っても平気なくらい冷酷なのか…まぁ、そんなことはないとは思うが…そうだとしたら、ますますゼゼの出生はわからない。最初から、俺たちが…安易に立ち入って良い話ではなかったんだろう。幾ら、俺たちが医者だって言ったって、あくまでも御前は士官学校の校医で、俺は軍事局の軍医だ。今はゼゼの担当医でもない。だから、ゼノン様に任せるしかない。どんな結果が出ようと…あの方の判断に任せるしかない」
 ゼフィーの過去は、彼らにとっては全くの暗闇。踏み込んだところで…何も、見えないのだから。
「とにかく、ゼノン様がどう受け留めていようと、御前は自分の気持ちを正直に話しただけのこと。責任を感じることなんかないさ」
「…でも…」
 何かを言いかけたリンを、瀞瀾は自分の言葉で制した。
「前向きになれよ。医師としてゼゼの回復を望むのなら、ゼノン様に任せれば良い。ゼノン様だって、御前の気持ちはわかっているはずだ」
「…瀞瀾…」
「大丈夫。だから、そんな顔するなよ」
 にっこりと微笑んで見せる瀞瀾。その微笑みは、リンの気持ちを多少なりとも落ち着けてくれた。
 そう。前向きにならなければ。
「…わかりました。とにかく、暫く様子を見ます。わたしは…わたしに科せられた仕事を熟さなければ」
「そうそう。しっかりな」
 くすっと笑いを零す瀞瀾に、リンも小さく微笑んで見せる。
 今はただ、ゼノンに全てを託すしかない。自分が信頼して来た師を、信じるしかない。
 それが、自分に出来る全てのことならば。

◇◆◇

 季節は、ゆっくりと…けれど、確実に、進んでいく。
 決して、立ち止まってはくれない。
 取り残された心は…今でも、足踏み状態のまま、その場から動けずにいた。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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