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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのつぼみ 絆 2

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは、以前のHPで2007年06月23日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.2

拍手[1回]


◇◆◇

 ゼフィーがゼノンに復学の意思を告げた翌日。ゼノンは早速士官学校の学長室を訪れていた。そして、無事に学長に話をつけた後、医務室へと足を運んだ。
 ドアをノックすると、中から返事が聞こえる。その声に促されて医務室の中へと足を踏み入れた。
「こんにちは」
「…っ!…ゼノン様…どうなされたのですか?」
 医務室の主たる医師のリンは、思いがけない訪問者に思わず息を飲む。
「ちょっと学長に用があったからね。そのついでに、御前にも話しておこうと思って」
「…と…とにかく、どうぞ」
 ゼノンに椅子を勧め、その正面で姿勢を正すリン。それが良い話なのか、悪い話なのか見当もつかなかったこともあったのだろう。師たるゼノンの訪問を前に、緊張しているようだった。
「…あの…御話とは…」
 リンの方からそう切り出すと、ゼノンはくすっと小さく笑って見せた。
「そんなに硬くならないで。御前にとっては…まぁ、良い話の部類だろうから」
「…と、言いますと…」
「ゼゼが、来週から復学することになったから。今日は、そのことを学長に伝えに来たんだ。御前にも知らせておいた方が良いと思ってね」
 そう口を開くと、一瞬息を飲んだリン。
「ゼフィーが…ですか?」
「そう。まだちょっと不安はあるみたいだけれどね、自分の意思だから。御前にも色々心配はかけたけど…俺は、保護して良かったと思っているよ。ゼゼはゼゼなりに、色々考える時間も持てたと思う。その上での結論だと思っている。だから、後は彼の判断に任せるつもりだよ。ここへ戻ると決めた以上、もう俺は手出しはしない。これからは…また、御前に頼むことになるだろうから。宜しく頼むね」
 ゼノンの言葉に、リンは僅かに視線を伏せた。
「わたしは…貴方様が思っている程…冷静沈着で優秀な医師ではないのです。まだまだ未熟者です。貴方様が望むだけのことを出来るかどうかはわかりません。今のわたしには…はい、わかりました、と…快く受け止めることが出来ないのです…」
 それは、ゼノンが過保護なまでにゼフィーを保護したことに繋がっている。
 あの時から…リンの胸の奥では、もやもやとした想いが絶えず燻っていた。
 今でもそれを引きずっている。消化出来ない気持ちのまま、ゼフィーと向き合うことが怖いのだ。
 リンもまた、駆け出しの医師としての壁にぶつかったままだった。
 それを感じ取ったゼノンは、大きく息を吐き出す。
「…俺は…彼の"親"でありたいと、ずっと思っていたんだ。雷神界には、ライデンとの子供がいる。でも、俺は…魔界で仕事をすることを選んだ。雷神界の平穏の為に、それが最善だった。だからと言ったら批判を買うかも知れないけれど…子育てには殆ど関わって来なかった。俺が、余計な知識を与える訳にはいかないからね。だから、尚更…"親"として、頼られたかったのかも知れない。苦しい時にはいつでも手を差し伸べてあげられる。彼の苦しみの全てを受け止めてあげられる。そんな、理想的な"親"であることを夢見ていたのかも知れない。でも、俺には…それが出来なかった。手を差し伸べても、ゼゼはそれに掴まれない。御互いに不慣れな関係に、俺もゼゼも…気持ちだけが焦っていたんだと思う」
 リンはゼノンの言葉を聞きながら、上げた眼差しで真っ直ぐゼノンを見つめていた。
「実際、俺は何もしていないのかも知れない。ただ、安心して暮らせる環境を提供しただけに過ぎないのかも知れない。でも…それでも…精一杯、頑張ろうとするゼゼの想いは、俺の想像以上だったと思うよ。医者がしてやれることなんて、限られている。でも…誰かを想う気持ちって言うものは、無限だと思う。だから…無理をする必要はないと思うんだ。無理して背伸びをする必要はない。自分に出来ることをやっていけば良い。俺は、今回のことでそれを教わった。"親"としても…医者としても、ね。今更、って感じだけれど…良い経験だったと思うよ」
「ゼノン様…」
 未だに顔つきの険しいリンに向け、軽く微笑んでみせるゼノン。
「誰も、完璧になんかなれないよ。でも、それでも良いんだ。足りない部分を補える仲魔がいる。ゼゼは…今回のことで、それを学んだんだと思うよ。支えてくれる誰かがいる。それに気が付いたことは、彼にとっては大きな収穫になると思う。ここから先は、俺の出番はないよ。彼を心配して、待っていてくれる仲魔が…ゼゼを支えてくれると思っている。勿論…今でもゼゼを忘れないで、待っていてくれれば…の話だけれど」
 その言葉を放ちながら、ゼノンは少なからずの不安は抱いていた。
 果たして…ゼフィーを待っていてくれる仲魔は、まだいるだろうか…?
 もしかしたら…もう、ゼフィーは忘れられてしまっているのではないだろうか?誰も、彼を待っていてはくれないのではないだろうか…?そして何より…復学を、煙たがられやしないだろうか?と。
 そんな不安を感じつつ発した言葉に、リンは小さく首を横に振った。
「…忘れられるはずはありません…礫もアルフィードも…ずっと、ゼフィーが帰って来ることを待っています。それに…リディも…ずっと…待っているんです。勿論、わたしだって……。でも…当然、彼の復学を煙たがっていたり…うっとうしく思っている者もいるとは思います。誰もが諸手をあげて待っていてくれるとは限らない環境がここにはあるのです。ゼフィーが休学している間…授業は待ってはくれません。学力面でも、技術面でも…正直、遅れは大きいと思います。その中で…ゼフィーがどれだけ頑張れるかも…わたしにはわかりません。この場所が…彼の居場所になれるかどうか…わたしには……」
 ゼノンはくすっと小さな笑いを零した。
「それでも良いんだよ。最初から、全てを万全に整えておく必要はない。遅れるのは当たり前のこと。それが、当然でしょう?特別扱いなんかしなくて良い。乗り越えられるかどうかは、ゼゼ次第だから。それは、学長にも話して来ているから。ただ…御前には、それを見守ってやって欲しいんだ。どんな姿でも良い。ゼゼが…ゼゼでいられるように。ただ、医師兼カウンセラーとして、ここにいて、話を聞いてやるだけで良い。それ以上の何かを押し付けるつもりはないし、御前も必要以上に手を出す必要はないんだよ」
「………」
 未だ、困惑したままのリン。けれど、ゼノンは微笑んで見せた。
「いつも…同じ場所に、同じヒトがいてくれる。それだけで、安心出来る場所なんだと思うよ。特別何かをしなきゃいけない訳じゃない。そこに、いてくれるだけで良い。俺は…医者なんて、そんな役割で良いんだと思う。確かに、医療的な処置をすることも必要だよ。だけど、医者ってそれだけじゃないでしょう?心を癒すことも大切な仕事だと思う。だから、まず……」
----御前が、笑ってごらん。
 ゼノンはにっこりと微笑んで、リンの頭にそっと手を置く。
 それだけで…心が、すっと軽くなるような気がして。それが…自分がずっと憧れ続けて来た、偉大なる医師の姿なのだと。
「わたしは……」
 言葉が、出て来ない。
 自分の子供を見ずに、どうして保護したゼフィーばかり気にするのか。ずっと、心の中に残っていたそのモヤモヤも、ゼノンの言葉に…そしてその姿に、漸く腑に落ちた。
 ゼノンの伴侶たるライデンは、今や一国の王。中立を守る立場として、魔界だけと懇意になる訳にはいかない。だからこそゼノンも、思うように子供と関われなかったのではないか。ゼフィーに対する態度が、"親"としてのあるべき姿を求めていたのではないか、と。
 医者として…自分に足りないもの。勿論、技術的なものは当然まだまだ敵わないが…何よりも足りないのは、医者であると言う自覚。士官学校と言う場で、一名の"オトナ"として、子供たちを見守る役目を背負っている、と言う自覚。感情で、ではなく…冷静な目で、状況を正しく見極める意識が、根本的に足りていなかった。
 苦しくても…辛くても。それを、ヒトの前で表に出してはいけない。患者を、不安にさせてはいけない。自分には…その医師としての自覚がまだ足りないのだと。
 ゼノンに比べれば、まだまだ自分は未熟なのだと、リンは改めてそう思った。
「みんな、同じだよ。沢山の経験を経て、オトナになるんだから。少なくとも、ここでは御前も師の一名なんだからね。大丈夫、自信を持って」
 微笑みながら、ゼノンはリンの頭をくしゃっと掻き混ぜた。
「…はい…」
 躊躇っている場合ではない。自分も、オトナにならなければ。
 リンは、顔を上げてにっこりと微笑んで見せた。それが、医師としてのプライドでもある。
「…頼んだよ」
「…御意に」
 リンも、覚悟を決めた。こうなったら、医師として、自分に出来ることを精一杯やるしかないのだから。

◇◆◇

 ゼノンから、ゼフィーが復学すると言う話を聞いた翌日。医務室に、寮でゼフィーと同室の礫とアルフィードの姿があった。
「あの…御話って…」
 呼び出された理由を知らない二名は、怪訝そうな表情で、身を硬くして椅子に腰を降ろしている。その緊張した表情に、リンは小さく微笑んで見せた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。悪い話ではないですから」
 それが、前日自分も言われた台詞であることを思い出し、くすっと笑いを零す。そんなリンを、礫とアルフィードは顔を見合わせて、怪訝そうにしていたのだが…。
 それは扨置き。
 自分も椅子に腰を降ろすと、小さな咳払いを一つ。そして、すっと表情を引き締めた。
「実は…わたしも昨日聞いたのですが…ゼフィーが、復学するそうですよ」
「…え…?」
「昨日、彼の保護者が学長のところに話をしに行ったそうです。多分、一週間後ぐらいには戻って来るかと思います」
 そう、言葉を続けながら、二名の様子を伺う。
 彼らは、どんな反応を示すだろうか。その反応如何では、ゼフィーの復学を喜んでいるか否かがわかるのだから。
 だがしかし。リンの想像を裏切るかのように、目の前の二名の表情は相変わらずパッとしない。
「…嬉しくは…ないのですか…?」
 待っていたのなら、もっと嬉しそうな表情を見せるはず。けれど、目の前の表情はどう見ても戸惑っている。
 てっきり素直に喜ぶものだと思っていたリンも、全くの想定外の反応だった。
「いえ…そういう訳じゃ…」
 困ったように顔を見合わせていた礫とアルフィード。
「…嬉しいです…よ…。ね、礫。嬉しいよね?ずっと、心配してたし…戻って来てくれるの、待ってたし…ね?礫?」
 リンを気遣ってか、アルフィードは無理に笑おうと試みる。当然、その表情は引き攣っているが。
 その姿に、リンの心は複雑だった。けれど、それを表情には出さないように心がけていた。それが、医師としての勤めだとして。
 だが、その重たい雰囲気は誰もが感じていたこと。それを断ち切るかのように、礫がゆっくりと口を開いた。
「あの…リディさんにも…このことを話しましたか…?」
「…いいえ。彼は今、研修中でしょう?研修が終わるまでは、黙っているつもりですが…それがどうかしたのですか?」
 リディの学年は、暫く前から研修に出ている。順調ならば、もう直終了するはずである。だが、研修中に私用の連絡を入れることは出来ないのだから、当然リディには何の連絡もしていない。
 リンのその答えに、礫は小さく息を吐き出す。そして、改めてアルフィードの顔を見ると、再び口を開いた。
「…あの…リディさんには…暫く、ゼゼのことは黙っていて貰えませんか…?」
「…どう言うことですか?」
 思わず問い返した声に、礫は再び小さな吐息を吐き出す。
「俺たちが口を挟むことではないかも知れませんけど……研修に出る前のリディさん、前と…何かが違うような気がして。多分、ゼゼのことが心配なのはあると思うんですけど…ずっと、気が荒立っていて…みんなに、ヒトが変わったみたいだって言われてるんです。勿論、ゼゼが戻って来るって言うことが良い方向に進めば良いのですけど…それが逆に作用すると、危険かな、って…だから、ちょっと様子を見てからの方が良いかと思って…」
 その言葉に、リンは小さな溜め息を飲み込んだ。
 気にかけているつもりではいた。けれど、医務室に来ない生徒の様子を常に把握することは極めて難しいことでもある。リンが把握し切れなかったことは仕方のないことなのだが…それでも、責任の一端を感じずにはいられない。
「…そうですか…仕方ありませんね。少し、様子を見ましょう」
 気持ち、声も重い。
「貴方たちは…どうですか?ゼフィーの復学は…」
 そう問いかけると、アルフィードが即座に口を開く。
「勿論、嬉しいです。ね、礫?」
 先程と同じように、礫に問いかけるアルフィード。今度は礫も小さく笑いを零した。
「勿論。俺たちは、ずっと待っていたんだし…でも…周りがどう思うか…」
 ふと、曇った表情。それは、リンと同じ思いだったのだろう。流石にアルフィードよりも年上なこともあって、もう少し先のことまで考えていたようである。
「周りって…どう言うこと?」
 きょとんとしたアルフィードの言葉に、礫は小さく溜め息を吐く。
「つまり、みんながみんな、俺たちみたいに待っているとは限らないってこと。前みたいに…嫌なことも起こる可能性も高い。そんな時に…俺たちは、何処までゼゼを助けてやれるか…。この前みたいに、何も出来ずに見ているだけだなんて…もう…嫌だろう…?」
「…そりゃ…」
 礫に言われてみて、アルフィードが初めて感じた不安。
 けれど、リンは敢えて微笑んだ。
 それは…師であるゼノンが、そうだったように。
「きっと…大丈夫です。ゼフィーも覚悟を決めて来るようですし…何より、彼も色々なことを学んだようです。必要な時は仲魔に手を差し延べ、頼っても良いことも。ですから…貴方たちは、今まで通り、彼の仲魔でいてあげて下さい。どうしても駄目な時は、また別の誰かが手を貸してくれます。それで、良いのではないですか…?それが、仲魔として、貴方たちが出来ることだと思いますよ」
「…リン先生…」
「全てを護ってあげることが、仲魔ではないんです。御互いに協力して、助け合うこと。一悪魔では出来ないことも、仲魔と一緒なら出来ることもあります。助けて貰うだけではなく、仲魔が困っている時には手を貸してあげられることも、必要なことです。そうやって…強くなって行くのだと思います」
 言葉を紡ぎながら、リンは微笑んで見せた。
 師であるゼノンを見習って…医師としての、あるべき姿として。
「最初から出来るヒトなんていません。少しずつ…覚えて行くのですよ。今は、その練習期間です。士官学校は、その訓練には丁度良い場所でしょう?貴方たちの後ろには、頼りになる先生たちが沢山います。どうしても、自分たちの手に負えないと思ったら、いつでも頼って良いのですよ。勿論…わたしも、ここにいます。いつでもここで、待っていますから」
 微笑むリンの姿に、礫が小さく笑った。
「…そう、ですね。今しか経験出来ないことが…あるんですよね」
 そう。学校で学ぶべきことは、学業や実技だけではない。他悪魔との繋がりを覚えて行くことも大切な勉強になるのだ。それが、将来の糧となる。
「迎えて…あげて下さいね」
 にっこりと微笑むリン。礫もアルフィードも、満面の笑みを浮かべた。
 周りはどうあれ、少なくともゼフィーの居場所はここにはあるようだった。

◇◆◇

 ゼフィーがゼノンに復学を告げた数日後。彼は、とある場所に来ていた。
 木々が生い茂り、周囲の景色を緑一色に染めている。一見するとただの森のように思えるその場所に立つ、古い大きな屋敷。
 そう。そこは皇太子宮だった。
 執事に通され、皇太子の自室の前までやって来たゼフィー。その扉の前に立つと、大きく息を吐き出した。そして、覚悟を決めてドアをノックする。
「…どうぞ」
 その声に促され、ドアを開ける。そして、部屋の中にゆっくりと足を踏み入れた。
 いつもの場所に、いつものように座っている皇太子、シリウス。
「…失礼します…」
 そう言葉を放ち、歩みを進める。
 ゼフィーがいつも外を眺めていた窓辺。そこへやって来ると、いつものように窓の外へと視線を向ける。
 木々の緑が眩しかった。
 この場所にいる間は、まるで時間が止まっているような感覚を覚えていた。けれど、彼は元の時間の流れに戻ろうとしている。
 この先、どうなるかはまだわからない。けれど…もう立ち止まれない。進まなければ…未来は開けないのだ。
「僕…士官学校に戻ります。父様が…学長にそう伝えてくれました。多分…来週には、戻ることになると思います」
 窓の外に目を向けたまま、そう口を開く。
「…そう」
 短く帰って来た答え。そこから、シリウスの感情を読み取ることは出来ない。
「士官学校に戻ったら……もう、会えないかも知れません。貴殿とは…身分が違うから。でも…それでも……仲魔だと、思っていても良いですか…?」
 問いかけた声に、答えはなかなか返って来ない。シリウスの長い沈黙が、彼の鼓動を早くさせた。
「…僕…貴殿に出会えて、ホントに良かったと思っています。いつも…年上なのに、って言われるくらい、情けないけど…いつも…貴殿に助けられてばかりだったけど……でも…楽しかったです。貴殿といると、僕も自然でいられる。ホントの自分でいられる。魔界へ降りてから…そんな風に感じることが出来たのは、ホントに初めてでした。ホントに…感謝しています。だから……」
 そこまで言葉を紡いだ時、大きな溜め息が聞こえた。
 そして。
「…馬鹿だな、御前は」
「…シリウス様…」
 徐ろに椅子から立ち上がったシリウス。そして、つかつかと彼に歩み寄ると、突然その胸倉を掴み上げた。
「今更、何言ってんだよ。情けねぇだろうがっ」
「………」
 突然の豹変振りに、唖然としているゼフィー。その表情に、再び溜め息を吐き出したシリウスは、ゼフィーの胸倉を掴み上げていた手を下ろし、彼の薄い胸板を軽く叩いた。
 そして。
「…心配するな。御前がそう望むのなら、俺はずっと…御前の仲魔だから」
「……シリウス様…」
「やり直し」
 ゼフィーの言葉に、彼の鼻先に指先を向け、眉を寄せるシリウス。
 その言葉の意味するところを思い出し、改めて口を開く。
「……シリウス…」
「そう。それで良い」
 口の端を僅かに上げたシリウス。多分、笑っているのだろう。ゼフィーはシリウスにばれないように、小さな溜め息を吐き出す。
 それでも…余り嫌な気にならないのは、どうしてだろう?
 少しずつ、御互いの距離が縮まる。そして、御互いをもっと知っていく。そうして、少しずつ相手の行動パターンを認識していくことで、仲魔として深く相手を思いやることが出来る。彼らは、今その出発点にいるのだ。
 シリウスは小さく息を吐き出し、再びその表情を引き締める。
 そして、ゼフィーの顔を覗き込み、言葉を放つ。
「何か困ったことがあっても、一名で抱え込むなよ。それだけ約束しろ。回りに言い辛いことだったら、俺のところに連絡して来たって良い。とにかく、誰かに話をしろ。良いな?」
「…うん…わかった」
 本気で心配をしてくれているシリウスの姿が、何より嬉しかった。
「…行って、来るね」
「あぁ。頑張れよ」
 にっこりと微笑み合う。
 二度目の旅立ちは、もう目前だった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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