聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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かがやきのつぼみ 絆 3
第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")
こちらは、以前のHPで2007年07月28日にUPしたものです。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.3
その日は、とても良く晴れていた。
ゼノンと一緒に士官学校の前までやって来たゼフィーは、正門の前で足を止めると、大きく息を吐き出して、その門を見上げた。
とても高い門扉。この先に入ってしまえば、もう簡単にゼノンの元へ帰ることは出来ないのだ。
小さく溜め息を吐き出したゼフィー。
その胸の中には、色々な思いがある。だが、やはり一番大きいのは不安。幾ら覚悟を決めて来たとは言え、その不安は完全には拭えない。ましてや、他の生徒よりもブランクはあるし、正直、トラウマもないとは言えない。
けれど…前へ進むと決めたはず。その為に、ここへ来ることを決めたはず。
大きく息を吐き出したゼフィー。それは、覚悟を決めた証拠。
そんな姿を横目に、ゼノンもまた、高い門扉を眺めていた。
自分が初めてここを通った時…どんな想いだっただろうか。
学生の頃は、とかく悩むことが多いのは誰もが同じこと。自分も、例外ではない。寧ろ…壁にぶつかり、かなり苦しい想いもした。勿論、卒業してからの方が、もっと色々な悩みが増えることは必至なのだが…学生の頃は、そんなことまで考えてはいなかったはず。目の前の問題しか見えておらず、その時その時を乗り越えるのが精一杯だったはず。
けれど、喉元過ぎれば何とやら。いつの間にか、悩んでいたことすら忘れてしまうこともある。高々あんなことで…と、その問題が意外に小さかったことに驚くこともある。若さとは、そう言うもの。
----俺も、年を取ったな……
ゼノンは、自分の思考に、思わず溜め息を吐き出したくなった。けれどゼフィーの手前、その溜め息は飲み込んだ。
そして、溜め息を吐き出すゼフィーの頭に、そっと手を乗せた。
「…今を乗り越えれば、きっと…楽しくなるよ」
「…父……ゼノン様……」
ついつい習慣になっていた父への呼び名も、もう修正しなくてはならない。
まだ何処か不安げに見上げたゼフィーへ、にっこりと微笑を返すゼノン。
「…抱っこ、しても良い?」
「…え?…あ…はい…」
突然、何を言われたのかと思いつつ返事を返すと、ゼノンはゼフィーの身体を正面から軽々と抱き上げる。そして、その温もりを堪能するように…しっかりと、抱き締めた。
「…ゼノン様…?」
肩口で、大きく吐き出された吐息。顔は見えない。けれど…その感覚は、わかった。
多分…泣いている。理由は、わからない。本当に泣いているのかも、わからない。けれど…多分、泣いているのだ。
暫しの沈黙。ゼフィーもされるがまま。そして、ゆっくりと身体を離して地面へと下した。
その顔は、いつもと変わらない。勿論、泣いてもいない。ただ、一瞬だけ見えたのは…寂しそうな色。
「ここから先は、一名で行けるね?」
口を開いたゼノンが、そう、問いかける。その問いかけに、ゼフィーは小さく頷いた。
これから先、どんな想いをしても…しっかり、歩いていきたい。その為に…その胸に、勇気を持って。
「…行って…来ます」
意を決して、ゼフィーは一歩、歩みを進めた。
「行っておいで。応援、しているからね」
背中に投げかけた言葉。けれど、ゼフィーはもう振り向かなかった。
自ら門を開け、士官学校の敷地へと足を踏み入れたゼフィー。
今度こそ…簡単に戻る訳にはいかない。自分を信じていてくれるヒトの為に。
そして、何より……自分の、為に。
次第に遠くなる背中は、以前よりも頼もしく思えた。そんな背中を、ゼノンは黙って見送っていた。
学長室で挨拶を終えたゼフィーは、迎えに来た績羅と共に廊下を歩いていた。
「…また、君とこうして歩くことになるとは思わなかったな」
先を行く績羅が、小さく言葉を発した。
「…済みません…御迷惑をおかけして…」
申し訳なさそうにつぶやいたゼフィーの声に、績羅は思わず足を止めた。そして、その後ろで同じように足を止めたゼフィーを振り返る。
「…いや…悪い意味ではない。君を責めている訳でもないし、迷惑と言うことではない」
「…はぁ…」
績羅の言わんとすることがいまいち良くわからなかったゼフィーは、思わずそんな言葉を零す。
そんな姿に、績羅はゼフィーの頭の上にそっと手を置くと、小さな笑いを零した。
そして。
「…良く、戻って来たな。臆せず戻って来られたのだから、大したものだ」
それは、績羅なりの歓迎の言葉、だった。
「…以前も…他の生徒とのトラブルで、休学する生徒は何名もいた。だが…君のように、もう一度戻って来る生徒は、殆どいなかった。皆、そこで挫折をして、自分の夢も諦めてしまったのだろう。残念なことだが…それも現実なのだ。この士官学校を卒業出来れば、それなりの根性もついているはずだ。何処の局に入ったとしても、そう簡単には折れないだろう」
そう言葉を零す績羅の表情は、かつてを思い出しているのだろう。とても、遠くを見ているようだった。
そんな表情を見つめながら、ゼフィーも言葉を零す。
「…僕も…本当は、まだ怖いです。でも…約束、したから…必ず強くなるって…約束、したヒトがいるから…負けられません」
その眼差しは、強い意志を覗かせていた。
「…そう、か。ならば大丈夫だろう。だが…無理はするな。他悪魔を頼ることも、時には必要だと言うことも覚えなさい」
目を細め、績羅はゼフィーの頭の上に置いた手で頭を撫でる。
その温もりは…彼を応援してくれている悪魔たちと、同じだった。
にっこりと微笑んだゼフィー。その姿は、以前よりもずっと強く見えた。
「今日は、このまま寮へ行くと良い。あぁ、その前に…医務室へ顔を出すと良いだろう。リン医師も、随分心配をしていたようだからな」
「…はい」
そう。ゼフィーも、ずっと気になってはいたのだ。
父たるゼノンからは、リンが心配していることは聞いていた。恐らく、かなり責任を感じているだろうと言うことも。
そのことを、まず謝らなければ。
勿論、ゼフィーに責任がある訳ではない。彼は、被害者なのだから。
けれど、ゼフィーにとっては、自分が誰かに心配をかけること自体が心苦しく思ってしまう。それも彼の性格故なのだが…その辺りが、気弱に見えなくもない。まぁ、心優しいと言えば聞こえが良いのだが。
それは扨置き。
績羅は医務室の近くでゼフィーと別れ、自分の仕事へと戻って行った。
残されたゼフィーは、そのままゆっくりと医務室の前へとやって来る。そしてそのドアの前に立つと、大きく息を吐き出す。
まず、何から話したら良いだろう?もし、休んでいた時のことをあれこれと聞かれたら、どう答えたら良いだろう…?
そんなことを考えながら、暫くドアの前で立ち尽くす。だが、いつまでもそうしていたところで、どうにもならない。
ゼフィーは大きく息を吐き出すと、そのドアをノックした。
「はい、どうぞ」
返事は直ぐに返って来る。ゼフィーはもう一つ大きく深呼吸をすると、ゆっくりとそのドアを開けた。
「…失礼します…」
その声に、ハッとしたように医師の視線が向けられる。
「…ゼフィー…?」
「…どうも…」
そんな、間抜けな言葉を返してしまった。どうも頭が回らない。
ゼフィーは気まずそうに顔を伏せた。けれど、リンはそんなゼフィーの姿に、小さな笑いを零した。
そして。
「…御帰りなさい、ゼフィー。待っていましたよ」
「…リン先生…」
優しい声と口調。その言葉に、ゼフィーの胸が熱くなった。
「あ…あの…」
リンに言わなければならないことを思い出したゼフィーは、意を決したように口を開いた。
「…ごめんなさい…」
そう言葉を発し、深く頭を下げる。
「ゼフィー?どうしたんです…?」
急に謝ったゼフィーの意図がわからず、首を傾げるリン。
「…僕…リン先生に、一杯心配かけました…リン先生だけじゃなくて…礫やアルや…リディさんにも…。リディさんが停学になったことは、僕もゼノン様から聞きました。全部…僕の所為です…僕が、気を付けていなかったから…みんなに、迷惑をかけて…」
胸に燻っている想いを解き放つかのように、一気にそう言葉を零す。
胸の奥が、熱い。思わず涙が零れそうになる。けれど、泣いている場合ではない。だから、唇をぎゅっと噛み締める。
そんなゼフィーの姿を前に、リンはそっと手を差し伸べると、彼の頭の上にそっと掌を置いた。
「貴方が…謝る必要はないんですよ。本来、謝らなければならないのは、わたしの方なんですから」
そう言うと、ゼフィーの前に跪き、顔を伏せたゼフィーと視線を合わせる。
「…ごめんなさい。貴方に、辛い思いを沢山させてしまって…」
「…リン先生…」
リンはゼフィーを安心させるかのように、小さく微笑んで見せた。
「私は…まだまだ、医師としては未熟者です。医師でありながら、貴方を助けることが出来なかった。本当に情けないことです。けれど…貴方をゼノン様に託したことは、正しかったと思っています。貴方がこうして…戻って来てくれたのですから」
医師として…本当ならば、そんなことを打ち明けるべきではないことは、リンにもわかっていた。けれど、それを打ち明けることで、自分の非を認め、自分自身への戒めにもするつもりだった。
「貴方がこれから生きて行く世界は、この学校の生徒など比にもならないくらいの沢山のヒトがいます。その中で生きて行くのは、一筋縄ではいかないかも知れません。けれど…努力は必ず認められます。その強い意志は、必ず評価されるはずです。ですから…負けないで下さい。ここへ戻って来る事が出来たのは、貴方に勇気があったからです。その勇気を忘れずにいれば、きっと貴方の目標は叶います」
リンの力強い言葉は、ゼフィーの心にもしっかり届いていた。
ここで、負ける訳にはいかない。その為に…戻って来たのだから。
「…私も、まだまだ勉強しなければならないことが沢山あります。貴方がきちんと士官学校を卒業していけるよう、見守っていきたいんです。ですから…一緒に、頑張りましょうね」
にっこりと微笑むリンの姿に、ゼフィーも小さく微笑んだ。
「…はい」
見守っていて貰える安堵感。ただ純粋に、それが嬉しかった。
「礫とアルフィードにも、その元気な顔を見せてあげて下さいね」
リンにそう言われ、頷いたゼフィー。けれど、ふと思ったこと。
「あの…リディさんは…?リディさんには、一杯心配かけたから…ちゃんと謝らないと…」
リディの名前を聞かなかったことが、ちょっと引っかかったゼフィーは、それをリンに問いかける。
「リディは今、研修中で学内にはいません。まだ暫くは帰って来ないみたいです」
リンはそう返す。勤めて、冷静に。
けれど、その冷静さがかえってゼフィーの意識をそこに留まらせた。勿論、リンには何も言わない。問いかけたところで、それ以上の答えはもう返って来ないだろうと思ったから。個体に対する情報には非常に厳しい。医師とは、そう言うものだと言うことをわかっているから。
「…そうですか…それなら、帰って来るまで待ってます」
奇妙な違和感を感じつつも、今は、そう言うしかなかった。
医務室を出た後、ゼフィーは績羅に言われた通り、授業には出ず、そのまま寮へと戻って来た。
久し振りに戻った自室。ここにいた時間と、休学していた時間は、どちらが長かっただろう?それすらも、もう良く覚えていなかった。
小さな溜め息を吐き出しつつ、窓を開けて部屋の空気を入れ替える。そして、ベッドに腰を降ろすと、胸元に下げていたペンダントを、服の中から引き出して手に取る。
それは、皇太子から貰ったもの。
そう言えば…と、ゼフィーは思い出したように机の引き出しの中を漁ると、小さな箱を一つ取り出した。
それは、雷神界から魔界へ降りる時に、父王から貰ったペンダントが入っている箱。
その二つのペンダントは、どちらも御守りとして貰ったもの。その二つを眺めながら、ゼフィーは小さく笑いを零す。
「…僕って、そんなに頼りないんだ」
改めて、そんなことを実感する。
今はまだ、心配ばかりかけてしまう。けれど、いつか…心配をかけなくても済むくらい、強くなれるだろうか…?
否。強くならなければ。雷神界で待っている…片割れの為にも。
小さな溜め息を吐き出し、父王から貰ったペンダントを箱の中に大切にしまう。そして、皇太子から貰ったペンダントも一緒に箱の中に入れ、蓋を閉めた。
その絆を、忘れないように。そして、支えとなるように。
いつか…その望みを、叶える為に。
夕方になり、寮に戻って来た礫とアルフィード。彼らは、績羅からゼフィーが寮に戻って来たことを聞いていた。そこで、歓迎の意味も込めてゼフィーを驚かせてやろうと思い、一緒に戻って来たのだ。
しかし。部屋の中は静まり返り、誰もいないようにさえ感じる。
「…ゼゼ、帰って来てるんだよね…?」
様子を伺いながら問いかけるアルフィード。
「…そのはずだけど…」
礫も怪訝そうに眉を寄せながら、そっと足を進める。そして、ゼフィーの部屋の前まで来ると、そのドアに耳を寄せる。けれど、何の物音もない。そこで、そのドアをそっと開けてみる。
「…ゼゼ、いた?」
礫の後ろから、そっと問いかけるアルフィード。礫の身体が邪魔をして、部屋の中の様子を見ることは出来なかったのだ。けれど、問いかけた瞬間、礫が"静かにしろ"とばかりに、人差し指を自分の唇に押し当てた。
「…しっ……寝てる」
「…はい?」
礫にそう言われ、その身体の影からそっと部屋の中を覗いて見れば、確かにベッドに横になっている姿が見える。
「…久し振りに学校に戻って来て、疲れたのかな…?」
「…そうかもね」
ゼゼを起こさないように、小声で囁くような会話。けれど、二名ともその顔は綻んでいる。
ただ純粋に、嬉しいと思う。そんな気持ちを抱きつつ、眠るゼフィーを部屋の外から見つめる二名。
そして、どのくらいそうしていただろう。ふと、眠っていたゼフィーの身体が小さく動いた。そしてその次の瞬間、ハッとしたようにベッドから飛び起きる。
「…っ!?」
「…ぁ…」
目が合った。一瞬、御互いにどうして良いのかわからず、息を飲んで御互いを見つめていた。そして。
「…おはよう」
くすっと、小さく笑いを零したのは礫。そう声をかけると、ゼフィーは大きく深呼吸をしたようだった。
そして。
「…お…はよう…………ただいま…」
ゆっくりと口を開き、言葉を発する。そして次の瞬間、ゼフィーの身体に飛びついたアルフィード。
「うわっ!」
アルフィードと一緒に、再びベッドに倒れ込むゼフィー。
「アル…っ!」
突然のことに慌てふためくゼフィー。けれど、アルフィードは声を上げて笑っていた。
「良かった~!ホントにゼゼだ~!」
とても、嬉しそうな声。それだけで、アルフィードがどれだけ心配して、待っていてくれたのかがわかった。
「…ごめんね……心配かけて…」
「…ホント、心配したんだよ…もう、帰って来ないんじゃないかって思ってた。でも…帰って来てくれて良かった」
にっこりと微笑むアルフィード。礫も、同じように微笑んでいる。
沢山、心配をかけてしまった。迷惑を、かけてしまった。でも、それでも…待っていてくれた仲魔。
自分は、何て倖せ者なのだろうか。
そう思うと…胸が一杯で。
「……ありがとう…」
そう、つぶやくのが精一杯だった。
「元気になって帰って来たのなら、何も言うことはないよ」
----良く、戻って来たね。
礫の掌が、ゼフィーの頭をぽんぽんと軽く叩く。その暖かさが、とても嬉しかった。
けれど、感慨にばかり浸ってもいられないのが実情。これからが、ゼフィーの試練ともなるのだから。
「…そう言えば…リディさん、研修に行ってるって聞いたけど…」
アルフィードを身体から引き剥がし、やっと起き上がったゼフィーは、礫にそう尋ねる。
「……そう。研修に行ってるよ」
ふと、礫の顔が微かに曇ったような気がした。隣のアルフィードに視線を向けると、アルフィードも表情が曇っている。
「…リディさん…何かあったの…?リン先生に聞いても教えてくれなかったけど…」
思わずそう問いかけたゼフィー。
自分が休学になって、一番迷惑と心配をかけたのは、多分リディに対して。だからこそ…何だか居たたまれなくて。
ゼフィーの問いかけに、礫は小さく溜め息を吐き出した。
リディのことを、ゼフィーに言うべきだろうか。
それは、ゼフィーが帰って来る、とリンから聞いた時から思っていたこと。
リンには、リディに対しての口止めはしたものの…ゼフィーには説明した方が良いのだろうか…?
けれど、今のリディの様子をゼフィーに伝えたところで、ゼフィーを不安にする材料しかないのが実情なのだ。
だからこそ、礫は口を噤むことを決めた。そして、アルフィードにもそうして貰うよう話をした。
そして、今。予想通りの展開になっている。
「…別に…何もないと思うよ。研修、みんな大変だっていう噂だから…研修のことは、今は誰も触れたがらないだけの話だよ。研修が終わって帰って来たら会いに行けば良いよ」
にっこりと微笑み、礫はゼフィーにそう告げた。
「…そうだよ。どっちみち研修中には会えないんだし…帰って来るまで待ってるしかないんだから。ね?礫」
アルフィードも、笑って礫に同意を求める。その姿は何処かぎこちないのだが…。
「…とにかく。明日からまた学校だよ。頑張ろうね」
ゼフィーのベッドから降りたアルフィードが、ゼフィーににっこりと微笑んでみせる。
「…うん。ちょっと不安もあるけどね…」
それは、ゼフィーの本音。否。本音は、ちょっとの不安どころの話ではないだろう。
いつまた、この間と同じことが起こらないとも限らない。そして、そうならない為に、常に気を張っていなければならない。
だが、それに負けてしまっては元も子もない。
強くなる為に、魔界へ降りたのだ。その為には、尻込みをしている場合ではない。足を、踏み出さなければ。
大きく息を吐き出したゼフィー。その姿を心配そうに見つめていた二名であったが、その後ゼフィーの表情が柔らかく変わる。
「…気合、入れないとね」
自分自身に言い聞かせる言葉。その言葉に、礫は小さく息を吐き出した。
「…あのさぁ…その……無理する必要は、ないんじゃないかな…?」
「…え?」
礫の言っている言葉の意味が良くわからず、思わず零した言葉。ゼフィーが見上げた礫の顔は、とても穏やかで。
「俺も良くわからないけど…無理はしなくても良いと思うよ。辛ければ辛いって言っても良いんじゃないかな?そりゃ、頑張らなきゃいけないのは確かだけどさぁ、たまには頑張らなくても良いと思うよ。気が抜ける場所って言うのかな…ほっと出来る場所って言うの?そう言う場所を求めても良いんじゃないのかな…?俺もアルも、御前が帰って来るのを本当に待っていたし、リン先生だってずっと心配してた。だから、俺たちやリン先生には、ホントの気持ち、吐き出してくれよ。愚痴を零すだけでも気分転換にはなるし…不安や辛いことがあったら、ちゃんと話してくれよ。俺たちに出来ないことなら、先生たちが助けてくれる。だから、何でも一名で無理して、抱え込まないで」
「…礫…」
「…折角帰って来たんだ。同じことを繰り返すつもりはないだろう?だったら、俺たちのことも信用してくれよ。そりゃ…相談相手としては、まだまだそんなたいした力量はないけどさぁ…これでも、仲魔なんだから。な?」
そう言って、礫はちょっと照れくさそうに背中を向けた。
確かに…出生のことや種族のことで、ゼフィーにはどうしても他魔に話せないことがある。その所為もあって、心から全てを打ち明けることが出来なかった。
けれど、今回の件で、ゼフィーは全てを打ち明けることが出来るシリウスに出会えた。そして、仲魔の存在価値も、身を以って感じることが出来た。
今なら…もう少し、歩み寄れるだろう。勿論、秘密にしておかなければならないことはある。けれど、そのことと全てを黙することとは違う。
素直に、なれば良いのだ。
怖ければ怖いと言っても良い。辛ければ辛いと言っても良い。そう口にすることも勇気がいること。それを、改めて思い知らされた。
勇気を、出そう。
「…ありがとう」
改めて、そう口にする。その言葉の重さに…ほんの少し、涙が出た。
「…頑張ろうね」
もう一度、アルフィードがそう口にする。そして、ゼフィーの手をそっと握り締めた。
「…うん」
大切な、仲魔たち。彼らの存在が、とても心強い。
「さ。それじゃあ、食事にしよう!」
にっこりと微笑んだ礫が振り返る。
「御腹空いた~!」
アルフィードもそう声をあげ、ゼフィーのベッドから降りると、繋いだままの手をそっと引っ張った。
「行こう」
にっこり微笑むアルフィード。その表情に、ゼフィーもにっこりと微笑んだ。
「うん。僕も御腹空いた!」
そう言葉を放ち、アルフィードと一緒に声を上げて笑う。
そんな些細なことが、とても嬉しい。
----戻って来て良かった。
それが、今のゼフィーの素直な気持ち、だった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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