聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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かがやきのつぼみ 絆 4
第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")
こちらは、以前のHPで2007年09月21日にUPしたものです。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.4
ゼフィーが戻って来た翌日。
ゼフィーがアルフィードと一緒に登校して来ると、同じクラスの生徒たちは一様にゼフィーの姿に驚いているようだった。そして、その眼差しはどうみても、歓迎しているそれではない。
「…想像はしていたけど…揃いも揃って、この眼差しだもんね…」
小さな溜め息を吐き出すアルフィードに、ゼフィーは小さく笑って見せた。
「僕は大丈夫だよ。元々、そんなに歓迎されていた訳じゃないし」
それを、全く気にしていない訳ではなかった。けれど、身体も小さく、魔力も平均以下で、いつも周りから置いていかれる立場のゼフィーとしては、そんなことを気にしている余裕はなかった。ただ、追いかけて行くのが精一杯で。
せめて、下手に注目されない方が良い。その方が、自分の秘密も暴かれないで済むし、目立たない方が安全だと思ったから。それが、最終的に出した結論だった。
けれど、ひょんなことからこうして注目を浴びてしまうことになろうとは…当初の予定ではなかった。まぁ…戻って来ることを決めたのは自分なのだから、仕方のないことなのだが。
心配そうな表情を浮かべるアルフィードを宥めつつ、笑ってみせるゼフィー。
そして、そんな彼らに思いもよらず声がかかる。
「おい、ゼゼ」
背後から声をかけられ、ドキッとして振り返る。そこに立っていたのは、クラスでも中心にいるホリスと言う生徒。その眼差しはとても険しい。
「…何…?」
恐る恐る言葉を返すと、相変わらずの眼差しを保ったまま、ホリスは腕組みをした仁王立ちのまま、口を開く。
「戻って来たからって、良い気になるなよ。俺たちは、御前なんかに構っている暇はないんだ。何をやろうが御前の勝手だけどな、俺たちに迷惑だけはかけるなよな」
「…うん…」
ホリスの気迫に押され、思わず頷いたゼフィー。勿論、誰に迷惑をかけるつもりもなかったのだが…。
ゼフィーに背を向け、すたすたと去って行く背中を唖然とした表情で眺めていたゼフィーの耳元で、アルフィードが小さい声で囁く。
「…あぁ見えてね…みんな、心配してたんだよ。一応…同じクラスの"仲魔"だからね…」
「…え?」
くすっと笑うアルフィード。
多分、ホリスの態度も、心配の裏返しだったのだろう。それを知らされ、何だか胸の奥が熱くなった。
「…みんな…ごめんね…心配かけて…」
「別に、心配なんかしてねぇよ」
恐る恐る言葉を発したゼフィーに帰って来たのは、そんな言葉。けれど、そんな言葉も何処か嬉しかった。
「さ、ゼゼ。授業が始まるよ」
「うん」
アルフィードの声に、ゼフィーは自分の席へと向かう。
慌しい日々は、再び動き出した。
ゼフィーが士官学校に復帰してから数日後。その日は、リディが研修から帰って来る日だった。
ゼフィーがリディと接触する前に…その様子を確かめておかなければ。そんな気持ちで、礫は授業が終わると直ぐにリディの教室を訪れていた。
けれど、そこにリディの姿はない。見回してみても、リディの姿は何処にもなかった。
「…あれ……?」
研修後は課題の提出と報告が義務化されているので、今日学校に来ていないはずはない。そして、まだ帰っているはずもない。ちょっと席を外しているにしても、戻るのが遅過ぎる。
首を傾げ、怪訝に思った礫は、近くにいた生徒に声をかけた。
「あの…リディ先輩は…」
「リディ?あぁ、そう言えば…さっきふらっと出て行ったきりだな。もう直ぐ先生が来るって言うのに、何処行ったんだろう…?」
声をかけた先輩も、辺りを見回しながらそう答える。
「…ありがとうございます。ちょっと、辺りを見て来ます」
礫は答えてくれた先輩に頭を下げ、踵を返す。
とにかく、ゼフィーより先にリディに会わなければ。
そんな思いで、礫はリディを探し始めていた。
あちらこちらと探して周り、辿り着いたのは屋上。
そこに、ぼんやりと空を見上げて寝転んでいるリディを見つけた時には、既に探し始めてから数時間が経っていた。
「…リディさん…」
声をかけると、ゆっくりと頭を巡らせ、声の主を確認する。
「…あの…俺、ゼフィーと同じ部屋の…」
「知っているよ。礫、だろう?彼から聞いているよ」
身体を起こし、礫に軽く微笑んで見せたリディ。そこに噂されていたような荒れた感じはない。けれど、その表情に生気はない。
「…あの……ずっとここにいたんですか…?研修の報告に行かなくて良いんですか…?」
言って良いものかどうか迷ったが、報告を怠れば成績に響くことは明らかである。だから、そう問いかけた。
けれど…リディは、笑っていた。
「良いんだよ、別に。もう…関係ないから」
「…リディさん…?」
怪訝そうに眉を寄せた礫。
もう関係ないとは、どう言うことだろう…?
そんなことを考えていると、リディは立ち上がって屋上の手摺まで歩いて行った。
「わたしに、何か用だったのかな?」
不意に、そう問いかけられた。
「…そうでした……」
本来の目的を思い出し、礫は一つ呼吸を置くと、気持ちを整える。
「ゼフィーが…帰って来ました。それを、伝えようと思って」
そう、口を開いた。
「…そう。もう…大丈夫なの?」
そう返すも…視線は、合わない。
「はい。声もちゃんと出るし、前よりも…精神的にも強くなったみたいです」
「そう…良かった。なら…もう、思い残すことはないね」
「…何を…考えているんですか…?」
何だか、良くない方向へ進んでいるのではないだろうか。そんな不安が過ぎり、礫は思わずそう問いかける。
「知りたい?」
顔を上げたリディが、礫に問い返す。
「……はい…」
ごくり、と、小さく息を飲んで返事を返す。
「そう…なら、教えてあげるよ」
くすりと笑いを零したリディは、礫へと歩み寄る。そして彼の前に立つと、にっこりと微笑んだ。
「"ここ"は…居心地が良いね。でも…わたしは、その居心地の良さが…酷く苦しく思うようになった。居心地が良いからこそ、はみ出し者は目立つ。目立てば叩かれる。その繰り返し。わかっていても、どうすることも出来ない。だから…ゼフィーが戻って来たのなら、思い残すことは何もない。卑怯なようだが…わたしは、自分の意を遂げることにした。それだけのことだよ」
「…それって……士官学校を辞める、と言うことですか…?」
息を飲み、思わずそう問いかけた言葉に、リディは何も答えなかった。
微笑んだまま、礫の頭を一撫ですると、そのまま彼の横をすり抜けて校舎の中へと戻って行く。
「リディさん…っ!」
悲鳴のような声。けれど、その呼びかけに答える声はなかった。
何だか、無性に腹が立つ。そして…酷く、悲しい。
胸の中に渦巻く感情を堪える為に、礫はただ、唇を噛み締めることしか出来なかった。
既に日は落ちて、学内の生徒は殆ど帰ってしまった。
今日は早く帰れそうだと、帰る支度を始めたリンだったが、小さなノックの音が聞こえ、その手を止めた。
「どうぞ」
声をかけると、ゆっくりと開いたドアから顔を覗かせたのは礫だった。
「…どうしたんですか?」
元気のない表情で入って来た礫に、リンはそう声をかける。
「…話が…あるんですけど……良いですか?」
「…えぇ、良いですよ。どうぞ」
リンは片付け始めていた荷物を戻すと、礫に椅子を勧める。素直にそこに座った礫の表情は、酷く思い詰めているようで。
「…一体、どうしたんですか?」
リンは、もう一度そう問いかける。
礫は、暫く何も答えない。自分の中で、言葉を整理しているようにも見える。礫が口を開くまで、リンはじっと待っていた。
「…実は…」
暫くして、礫が口を開いた。
「さっき…リディさんに会いました。ゼフィーに接触する前に、話をしたいと思って…。ゼフィーが帰って来たことは伝えました。そうしたら…もう、思い残すことはない、って…」
「…どう言う、ことですか…?」
何だか嫌な予感の過ぎる言葉に、思わず問い返したリン。
「リディさん…学校、辞める気です…引き留めようと思ったんだけど…何って言って良いのかわからなくて…結局、何も言えなかった…」
ぎゅっと唇を噛み締めて俯き、両の掌をきつく握り締める礫の姿に、リンは小さく吐息を吐き出す。
「そうですか…でも、リディが決めたことなら…仕方がないのではないですか…?」
「…リン先生…」
一瞬、礫にはリンが何を言ったのかわからなかった。
引き止めてくれると思っていたのに。何か、手立てを考えてくれると思っていたのに。けれど、リンの考えは、礫の想像通りではなかったのだ。
「…どうして、ですか…?リディさんのこと、放っておくって言うんですか?どうして、引き留めないんですか…っ?!」
思わず声を上げる礫に、リンは小さく吐息を吐き出した。
礫の気持ちもわからないではない。ただ、これはリディの気持ちの問題であって、周りがとやかく口を挟むことではないはず。
多分それは、どの識者に聞いても同じはず。
「他の先生には、相談しましたか?」
試しに、そう聞いてみる。
「…いえ……まだ…」
そう、口を濁す礫。
「でしたら、聞いてみると良いですよ。きっと…どの先生に聞いても、帰って来る答えは同じだと思います。それが、リディが自分で選んだ選択肢であるのならば」
「………」
そう。授業でも幾度も言われていたはず。自分の運命は、自分で決めること。他悪魔に頼って生きることは、命取りになるのだと。
「リディは、ただ闇雲に逃げ出す訳ではないと思います。彼は彼なりに、自分の将来を考えているはずです。士官学校を卒業して軍にはいることだけが全てではありません。選択肢は悪魔それぞれに、色々あるのです。ですから、リディを責めないであげてください。貴方もいつか…その想いがわかるはずですから」
穏やかに、ゆっくりとそう語りかけるリン。
多分、士官学校を卒業してしまえば、そう簡単に自分の意を押し通すことは難しくなる。それが出来るのは、様々な選択肢がある今のうちだけなのだ。
リンは、礫にそれを伝えたかった。逃げ出す訳ではない。だから、今は納得出来なくても、それを見守ってやって欲しいと。
暫く唇を噛み締めていた礫であったが、リンの想いが伝わったのだろう。小さく溜め息を吐き出すと、諦めたように頷いた。
その姿に、リンはにっこりと微笑むと、礫の頭をそっと撫でた。
「時には、苦しい選択肢を受け入れなければならない時もあるのです。みんな…そうやって、オトナになっていくのですよ。今は辛くても…いつか、それを笑って話せる時が来ますから」
「…ゼゼも…乗り越えられるのかな…」
ポツリとつぶやいた言葉に、リンは笑った。
「大丈夫ですよ。彼は…強いですから。リディの選んだ道を、きっと理解してくれますよ」
「…だと良いけど…」
それは、礫が自分自身で乗り越えなければいけない、胸の痛み。
その痛みは、礫を少しだけ強くしてくれた。
その同じ頃。寮に戻って来たリディを待っていたのは、ゼフィーだった。
入り口のドアの前に立つゼフィーは、帰って来たリディの前に姿を現すと、緊張した表情で頭を下げた。
「…戻って来ました…心配をかけてしまって、ごめんなさい…」
リディは、どんな反応を示すだろう。心配をかけたのだから、それ相応の反応が返って来るだろう。そう思っていたのだが…リディから返って来たのは、小さな笑い、だった。
「…あぁ、御帰り」
「……?」
予想外の小さい反応に、顔を上げたゼフィーはきょとんとしている。
「…あの……」
もしかして、帰って来たことが迷惑だっただろうか…?そんな想いも過ぎる中、ゼフィーの表情でそれを察したのだろう。リディはにっこりと微笑んだ。
「あぁ、ごめん。夕方、礫に会ったんだ。君が元気になって帰って来たことを教えてくれたよ。だから、すっかり安心してしまってね。君には、物足りない反応だったかな?」
くすくすと笑うリディの前、ゼフィーはほっとしたように小さな吐息を零した。
「なぁんだ…てっきり、帰って来なくても良いと思ってたかな、って…」
そう言葉を零し、ゼフィーも笑いを零す。そして、リディに視線を向ける。勿論、顔は笑っている。けれど…その眼差しを見た瞬間、ゼフィーは笑うのをやめた。
リディの目は、笑っていなかった。そして…とても、冷めているように思えて。
急に不安になり、表情の固まったゼフィー。リディも直ぐにゼフィーの変化に気が付くと、その表情をすっと引き締める。
その表情は、酷く苦しそうに見えた。
「…ごめんなさい……」
やっぱり、リディを苦しめたのは自分なのだ。ゼフィーはそんな想いで、再び頭を下げる。だが、リディはそんなゼフィーの頭の上にそっと手を置き、軽く撫でる。
「…違うよ。君の所為じゃない。君は…被害者、だ。謝る必要はないよ」
「でも…」
「悪かった。君に、辛い思いをさせて…。本来、そんな辛い思いをする必要などなかったはずなのに…それを防げなかったわたしに、落ち度があった。だから…もう、謝らないでくれ。悪いのは…君を傷つけた"彼奴ら"と…このわたし、だ」
「…リディさん…」
済まなそうに頭を下げるリディを前に、ゼフィーはもうどうして良いのかわからなかった。
けれど…何かが違う。
「…リディさん、やめて下さい」
ゼフィーは意を決したようにそう口にする。
「僕は、誰の所為だなんて思っていません。リン先生も、リディさんと同じように僕に謝って…頭を下げました。でも、僕はそんなことを望んだ訳じゃないし…謝って欲しかった訳でもないです。僕はただ…"僕の片割れ"との約束を、無碍にしたくなかっただけです。もう一度やり直せるのなら…一からやり直して、強くなりたかっただけです。だから…やめて下さい。僕に、謝らないで下さい…御願いします…リン先生やリディさんや…礫やアルが、そんな悲しそうな顔をする方が…僕は辛いです…」
「…ゼフィー…」
思いがけないゼフィーの言葉に、リディはゼフィーへと視線を向けた。
真っ直ぐに自分に向けられた、碧色の眼差しは…自分が知っている眼差しよりも、ずっと力強く思えた。
小さく吐息を吐き出したリディ。今の彼ならば…もう、自分が世話を焼く必要はないだろう。だから…心置きなく。
「…君は…暫く会わない間に、随分成長したね。もう、わたしの出番はないよ。寧ろ…傍に、いない方が良い。それが、君の為だ」
微笑んだリディの笑顔は、何処か儚くて。
「…リディさん…何を…」
リディの言葉の意味が良くわからなくて、怪訝そうな表情を浮かべるゼフィー。けれどリディは、微笑んでいた。
「君は…わたしよりも、ある意味オトナだよ。誰の責任だとか、確かにそんなことはもうどうでも良いのかも知れない。でも…わたしは、そう簡単に切り替えることが出来ないんだ。融通が利かなくて…頑固で、我侭で……わたしは、そんな自分自身が大嫌いだ。全てを水に流せる君のように、寛大にはなれない。だから、彼らをわたしの手で罰した。そして…わたしもまた、学長から、謹慎と言う罰を受けた。けれど胸の中で燻っている罪の意識は…そう簡単には消えやしない。それは、わたしが一番良くわかっていることだ。だから、わたしは…君が戻って来る事が出来たら、自分の想いを遂げるつもりだった。そして今日、礫から君が帰って来たことを聞いた。それで、決心がついたんだ」
「…決心、って…」
それまで黙ってリディの話を聞いていたゼフィーは、やっとでそう口を挟む。
勿論、想像出来る結論は、ゼフィーが望んでいるような平和なものではないだろう。
そして、返ってきた答えも…やはり、その予想通りだった。
「士官学校…辞めたよ。さっき、学長に直接退学届けを出して来た」
「…リディさん…」
突然のその決断に、驚かないはずはない。けれど、リディはけろっとした表情をしている。
「学校を辞めて、全て終わりじゃない。そこから先どう生きるかが本当の試練だと思っている。だから、まずその第一歩として、学校を辞めた。いつか、もう一度…君と、笑顔で出会う為に」
「………」
ゼフィーの瞳から、涙が溢れそうになる。けれど、唇を噛み締めてその涙を堪えた。
そんなゼフィーを柔らかな眼差しで見つめているリディは、穏やかな表情になっていた。
やっと、胸の痞えが取れた。そんな、柔らかな微笑み。
「…自分を、責めるんじゃないよ。これは、わたしの身勝手な決断だ。士官学校を卒業しなくても、入局出来る機会はある。勿論、簡単な道ではないけれどね。でも…わたしが、それを選んだんだ。だから…笑って」
ゼフィーの頭をぽんぽんと軽く叩き、そしてくしゃっと掻き混ぜる。
「本当に……また……会えますか…?」
潤んだ眼差しでリディを見上げ、そう問いかける。
「あぁ……いつか、きっとね」
にっこりと微笑むリディ。少しも悲観した様子のないその笑顔に、ゼフィーも心を決めた。
大きく息を吐き出し、心を落ち着かせる。そして…リディに向け、にっこりと微笑んで見せた。
「…頑張ってください。僕も…強くなれるように、頑張ります。だから……いつかもう一度、僕を見てください。僕が…強くなったところを」
「…楽しみにしているよ」
くすっと笑いを零したリディ。
「さて、これから荷造りだ。明日には寮を出ないとね」
そう言って、ゼフィーの横をすり抜けて寮の中に足を踏み入れたリディ。その背中に、ゼフィーは問いかけた。
「一つだけ…教えてくれませんか?」
「…何?」
振り返ったリディに、ゼフィーはずっと疑問に思っていたことを口にした。
「どうして…そんなに、僕の為に一生懸命になってくれたんですか…?」
出会ったのは、偶然のはず。剣術の教えを請うことになったのも、成り行きだったはず。それなのに、リディが自分を退学に向かわせるまでに至った理由がわからない。それを、知りたかったのだ。
「…知りたい?」
くすっと笑いを零して、リディは問い返す。
「はい」
頷いたゼフィーに、リディは僅かに間を置く。そして。
「君が、好きだから」
にっこりと微笑みながら告げた答え。勿論、軽い意味ではなく。けれど…
「僕も、リディさんが好きです」
そう、即答するゼフィー。にっこりと微笑んだ、その無垢な笑顔は……深い意味ではない。
それを即座に感じ取ったリディは、軽く笑った。
本心を告げるのは…次に出会った時にしよう。
「ありがとう。じゃあ…またね」
そう言い残し、踵を返したリディ。その背中に、ゼフィーも声をかける。
「…さようなら…」
その言葉に、背を向けたまま片手を上げて答えるリディ。ゼフィーは、その背中が視界から消えるまで、その場に立ち尽くしていた。
胸の中の何かが、ぽっかりと抜け落ちてしまった。そんな感覚。
けれど、悲観している訳ではなかった。いつかまた、リディに会える。そう、信じていたから。
「…また…いつか…」
にっこりと微笑み、そうつぶやいたゼフィー。そして彼も踵を返し、自分の寮へと戻って行った。
翌日、ゼフィーたちが授業を終えて寮に戻って来た時には、もうリディの姿はなかった。
リディ、礫、ゼフィー。それぞれの胸の中にある想い。けれどそれは、彼らがオトナになる為には避けて通れない選択肢だったのかも知れない。
彼らは、自分たちの目指す道を歩き始めたのだった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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