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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのめ 2

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは、以前のHPで2004年09月04日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.2

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◇◆◇

 彼は、ただ我武者羅に走っていた。彼の住居たる皇太子宮を抜け、王宮の本殿に向って走り続けていた。
 一体、何の為に走っているのか、良くわからない。ただ…自分の居場所を失いつつある、と言う恐怖感と、彼を追いかけて来る父親の足音から逃げ出したかったのかも知れない。
 けれど、懸命に走る彼の行く手を阻んだのは…廊下で躓いた自分の足。
「…ぁっ!」
 よろけた身体を慌てて立て直そうとしても、そう簡単に行くはずもなく…彼の身体は、廊下に投げ出され、床にぶつけた身体に強い痛みを感じた時、追いついた父親に抱き締められた。
「…ゼゼ…っ」
 彼に向け、そう発せられた声は、酷く掠れていた。荒い呼吸も、懸命に彼を追いかけて来た証。
 彼は、再び泣き声を上げた。
 追い着かれたのが悔しくて…彼を包み込んだ不安が、とてつもない恐怖感に感じて。  けれど、父親は、ただ彼を抱き締めていた。
 彼の不安が和らぐまで。
 転んでぶつけた身体の痛みが、和らぐまで。
「…御免な…」
 そう、呟いた父親の声も、震えていた。
 彼は…この国で尤も偉大な父親が泣いているのを、初めて見た。

「…落ち着いた?」
 問いかけられ、彼は小さく頷いた。
 廊下の壁に凭れたまま座り込み、その膝の上に向かい合うように抱かれた彼。その彼が泣き止むまで、ライデンはずっとその身体を抱き締め、背中をさすっていた。
 ずっと知っている、温かな温もり。それは、彼の不安と恐怖を、ほんの少しだけ和らげてくれた。
「話…聞いてくれる?」
 控えめに、問いかけた声。
 彼は、どう答えて良いのかわからなかった。自分のこれからのことを話されると思うと、不安で堪らない。けれど…変わらないライデンの温もりを、信じてみようと思った。
 小さく頷いた姿に、ライデンは大きく息を吐き出す。
 問いかけたものの、ライデン自身もどう切り出して良いのかわからない。だが、伝えなければならないのだ。
 再び呼吸を整えたライデンは、ゆっくりと彼の背中を撫でる。そして、意を決して言葉を紡ぎ始めた。
「…驚いたと思うよ。急に、ゼゼは雷神界にはいられない、だなんて聞けばね」
 彼は、何も答えなかった。ただ、微かに震えているように思えて。
「…御前には、まだ難しい話かも知れない。でも、ちゃんと聞いてね。御前の将来に関わる、大事なことだから」
 ライデンのその言葉に、彼はほんの少し、顔を上げた。
 碧色の眼差しは、とても不安そうだった。けれど、聞かなければならないと言う彼の意思もまた、そこに浮かんでいた。
「雷神族には…稲妻の紋様がある。それが、将来、この雷神界を継ぐのに必要な印なんだ。でも…御前には、その紋様がない。それは、わかるよね?」
「…わかる…」
 そう。それは、彼も気になっていたことだった。
 双子だと言われている彼と、彼の片割れ。けれど、雷神界の王たるライデンと同じ紋様は、その片割れにしかなかったこと。彼は、そのことに気付いてはいたものの…それが、自分の将来まで左右するとは思ってもいなかったのだ。
 ただ、片割れは父王に、自分は魔界の父親に、似ているのだと言う思いだけ。それ以上は考えもしなかった。
 ライデンは、再びゆっくりと言葉を続けた。
 紋様が成せる意味と、彼が雷神界で育てられた理由を。
 ゆっくり、ゆっくり。それは、ライデンも色々と言葉を選んでの結果だったのだと思う。けれどゼゼにとって、自分の置かれた運命を噛み砕いて理解していくには、その時間はそれでも短く感じていた。
「…俺は、御前もララも、同じくらい大切なんだ。勿論それは、ゼノンも同じことだと思うよ。でも…これ以上、御前をこの場所で育てることが、御前の為にはならないんだ。御前の将来を護る為には…ここは、適した場所じゃない。だから………」
----魔界へ、降りるべきだ。
 そうは思うものの、ライデンはその言葉を口にすることが出来なかった。
 何れは魔界に降りなければならないことは、最初からわかっていたこと。それを引き伸ばしたのは、他ならぬライデン自身。けれど、そうやって引き伸ばしてしまったからこそ…手放すことが切なくて。こんなカタチで彼に伝わったことが、遣り切れなくて。
 けれど、魔界へ降りることが彼の将来を護ることになることは確かなことなのだ。
 雷神界で暮らす時間が長ければ長いほど…何れそれは、彼自身を不必要に孤立させる。
 雷神界に、雷帝の血を引く子供は一名で良いのだと。彼にそのつもりがなくても、嫡子以外は危険因子と見做される。その事実が針の筵となることはわかりきっていた。
 ライデンは、ただぎゅっと、彼を抱き締めていた。
 彼は、ライデンに抱かれたまま、その胸の鼓動を黙って聞いていた。
 僅かに視線を上げて見れば、自分を抱き締める父親の顔が見える。
 その顔は…酷く、苦しそうで。
 大好きな父上。その父王を苦しめているのは、自分なのだろう。
 彼の脳裏を過った、そんな意識。
 けれど彼もまた、自分から魔界へ降りるとは言えなかった。
 未知の世界への扉を開ける勇気は、まだない。彼はまだ自分の身を守ることも出来ないくらい、小さな子供なのだ。
「…今すぐ、魔界へ降りなければならない訳じゃない。御前の気持ちが落ち着くまで、少し時間を置いて貰えるように、ゼノンにも話はするから。だから、心配しないで」
 彼の背中を撫でながら、ライデンはそう呟いた。
 彼も黙って、その言葉を聞いていた。
 今は、何も考えられない。ただ、ライデンの温もりを信じるしかなかった。

 彼を抱きかかえて皇太子宮に戻って来たライデンは、そのまま彼らの寝室へと彼を運んだ。
 先程起きて来た双子の片割れは、ゼノンが既に寝かしつけていた。
 ライデンも彼の傍に付いて眠らせると、暫しその寝顔を見つめてから、自分の寝室へと戻って来た。
「…御帰り。ゼゼは寝たの?」
 ベッドに座って待っていたゼノン。その表情は、とても心配そうだった。
「うん。やっと落ち着いたから」
 小さく微笑み、そう答えたライデン。けれど、その表情が浮かないのは当然のこと。
「…御免ね」
 そう口を開いたのはゼノンだった。
「…あんたの所為じゃない。元はと言えば、俺が二名ともここで育てるって言い出したんだもんね。いつかはゼゼにも話さなきゃいけなかったことだし…」
 何とか微笑んで見せたものの、その胸の重さは変わらない。
 こんなことなら、最初からゼノンの言う通りにしておけば良かったのかも知れない。
 ふと、そんな思いが脳裏を過った。けれど、やはりそんな後悔をしたところで現状は何も変わりはないのだ。
 小さな溜め息を一つ吐き出すライデン。その身体を、腕を伸ばしたゼノンがそっと抱き締める。
「…御免」
 再び、その口から零れた言葉。
「…だから…あんたの所為じゃないって…」
「俺の、所為。御前がどう反論しようが…結局、最初から魔界へ連れて行かなかったのは俺、だもの。何とかなると高を括った俺が…浅はかだった」
「…ゼノ…」
 抱き締められているライデンから、肩口に伏せたゼノンの表情は伺えない。けれど、その沈んだ声で、平生ではないことぐらいわかっていた。
 暫し、言葉を発しない二名。
 ライデンはゼノンの背中へと腕を回し、その背中にそっと触れた。
 苦しいのは、ゼノンも同じこと。けれど、ライデンはゼノンを責めるつもりは毛頭ない。
 魔界へ連れて行くことを拒否したのは、自分なのだから。だからこそ…一緒に落ち込んでいる訳にはいかない。それが、ライデンの出した答えだった。
「…ねぇ、ゼノ…親父、起こしてみようか…?」
「……ライ?」
 思いがけない言葉に、ゼノンはライデンを抱き締めていた腕を緩め、その顔を見つめた。
「…だって、上皇様は…もう眠りに着いて…」
「うん。だけど、起こせば起きるかも知れないじゃん」
「ちょっ…」
 あっけらかんと言って退けるライデンに、ゼノンは目を丸くする。
 彼らの言う"眠り"とは、常時の睡眠のことではないのだから。
 ライデンとゼノンの婚姻の後、その準備を始めていた。そして世継ぎが生まれてから間もなく、その先の幸福を願いながら、上皇たるライデンの父王は深い眠りへと着いた。通常ならばその後起きることはなく、長い眠りの末に寿命を全うする。言わば、永遠の眠りと称しても可笑しくはないのだ。
 その上皇を起こそうと言い出すのだから、ゼノンにとっては驚き以外の何モノでもない。
「起こすって…簡単なことじゃないんだよ?」
「そりゃ、半分死んだみたいな状態だからね、そう簡単には起きないだろうけどさ。だけど、折角のチャンスじゃない?親父だって、成長した子供らに会ったこともないんだし、あの子達だって親父のことは覚えてないと思うよ?今ならまだ間に合うと思うんだ」
 眠りについてからの年数を指折り数えるライデン。確かに、まだ生命は尽きていないはずだが、到底ゼノンには信じられない台詞である。
「でも、だからって…」
 そう口を開いた瞬間、ライデンが小さな吐息を吐き出す。
「…親父なら、わかると思うんだ。子供を手放す時の、親の気持ち」
「……ライ…」
「俺が、魔界へ行くって言った時…別に反対もされなかったし、寧ろ応援してくれた。簡単に戻って来ないことはわかってただろうし、これでも親父の一粒種だったからね、心配もしただろうよ。俺だって戦地にも立ったし、地球なんて所にも任務で出かけたりもした。何より…あんたに出会って、恋に落ちるだなんてことも想像しなかっただろうよ。そんな先の不安のこと、どう受け留めてたのかな、って…聞いてみたいんだ」
 そう言葉を吐き出すライデンの口元に浮かんだ、小さな笑み。
 生まれて直ぐに母親をなくしたライデンにとって、父王は唯一血の繋がりのある大切な存在。その絆の深さは、ゼノンにも良くわかっていた。だからこそ、ライデンは聞いてみたかったのかも知れない。
 親として、彼らが一人前になる為に。必要最低限の責任を果たす為に。
「…間に合う…よね?」
 上目遣いにゼノンを見上げるライデン。昔から変わらないその無邪気な姿に、ゼノンも思わず小さな溜め息を吐き出した。
「…多分ね。でも、やるなら早い方が良い…かな?」
 途端に、ライデンから零れた微笑。つられてゼノンも笑いを零す。
「行こう」
 ゼノンが差し出した手を、ライデンはしっかりと握り締めた。
 そして、偉大だった父王が眠る深い地下へと向ったのだった。

◇◆◇

 目が覚めた時、気分は最悪だった。
 ぼんやりと天井を見上げていた彼は、隣のベッドへと視線を向ける。片割れはまだ眠っているのだろう。規則正しく動く上掛けに、彼は思わず溜め息を吐き出していた。
 自分は、いつまでここにいられるのだろう。
 その、不確かな不安が何よりも重い。けれど、彼を思う父親たちのことを思うと、頑なに拒む訳にもいかないのだ。
 再び小さな溜め息を零した彼は、そっとベッドから抜け出すと、服を着替えて部屋を抜け出す。
 皇太子宮は、いつも通り動き出していた。けれど、何かが違うような気がする。
 奇妙な緊張感と、圧迫感を感じた彼は、その気配の方へと、無意識に足を進めていた。
 いつしか彼は皇太子宮を抜け、王宮へと向っていた。
 そして辿りついたのは…王宮の最奥。そこは、彼も初めて来る場所だった。
「…そこは、先代の雷帝の寝室、だよ」
 背後から声をかけられ、ドキッとして振り向く。その視線の先には、父親たるゼノンが立っていた。
「…あの…」
 拙いと感じたのだろう。表情を強張らせた彼であったが、ゼノンは軽く微笑んでいた。  そして。
「大丈夫だよ。入ってみる?」
「…え…?」
 いつもと違う気配は、その部屋からだった。だからこそ、促されてもすんなり頷けなかった訳で…それでも父親たるゼノンは平然として、そのドアをノックした。
「ゼノンです」
『どうぞ』
 聞こえた声は、ライデンの声。その声に促されるように、ゼノンはドアを開ける。けれどその徒ならぬ気配に、彼は思わずゼノンの影に隠れてしまった。
「ゼゼ、入るよ」
 背後に隠れる彼の背中に手を添え、一緒に、ゆっくりと部屋の中に入るゼノン。そして、父親の影から広い部屋の奥にあるベッドの影が見えた時、そのベッドの中に上体を起こして座っている姿と、その隣に寄り添うように立つ父王の姿が見えた。
「あぁ、ゼゼも来たんだ。おはよう。こっちにおいで」
 ライデンがそう声をかける。ゼノンの影から恐る恐る顔を出した彼は、にっこりと微笑むライデンと、自分を見つめる年老いた柔らかい微笑を見つめた。
「上皇様、だよ。ライデンの父上様で…御前の、御爺様」
 ゼノンがそう言って、彼の背中を押した。
「…おじぃ…様?」
 上皇様。そう言われた相手が、徒ならぬ気配を発していたのだとわかった。けれど、彼を見つめるその眼差しはとても優しい。彼が察した気配は、警戒を強めるものではなく、その威厳を称えた気配だったのだ。
「君の…名前は?」
 彼がベッドの傍へと辿りつくと、そう問いかけられる。その声は、とても低い。けれど、優しい響きだった。
「…ゼフィー…ゼラルダ、です…」
 震える声で答えた彼の手は、共に歩んで来たゼノンの服の裾をしっかりと掴んでいた。
「そうか。君がゼフィーか。大きくなったな」
 上皇は、にっこりと笑った。そして手を伸ばすと、彼の頭をそっと撫でた。
 父親とは違う感覚。それは、彼にとっては不思議な感覚、だった。
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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