聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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壇香 伽羅~邂逅 3
第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")
こちらは、以前のHPで2008年04月29日にUPしたものです。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
3話完結 act.3
ルークと別れ、寮へと戻って来たエルは、薄暗いその入り口に立っている姿に思わず足を止めた。
そして、小さな溜め息を一つ。
その溜め息を聞きつけてか、待ち悪魔はエルへと顔を向けた。
「…御帰り」
小さく微笑みを零す相手。その相手が、何を考えているのか…わからない。
立ち止まったままのエルに、ゆっくりと近寄って来る姿。やがてその姿がはっきりと姿を現す。
「…ルーク様と…話していたんでしょう?御免ね、余計なことを言って…」
申し訳なさそうな表情を見せた相手…ゼフィーに、エルは小さな吐息を吐き出す。その脳裏には、先程ルークから言われた言葉が蘇っていた。
嫌いな訳ではない。顔を合わせた回数が少ないのだから、そこまで相手を理解出来ていない。ただ…エルの思考では、まだついていけない。
「…どうして、貴方が謝るんですか?」
問いかけた声に、ゼフィーはちょっと顔を曇らせる。
「…どうして、って…ちょっと、気になってたんだ。ルーク様に、告げ口したみたいで…」
曇った表情は、自己嫌悪、なのだろう。
「…謝ることなんかないのに…」
ポツリとつぶやいたエルの声に、ゼフィーは小さな吐息を吐き出す。
「…それは、僕自身の問題。それに、君に余計な時間を取らせたでしょう?多分、話が長かったんじゃないかな~、って思って…」
「…確かに、長かったですけど…父上たちみんな、話が長いから…」
「そっか。そう言えばウチもそうだった」
くすっと、笑いを零したゼフィー。けれど、エルの表情はちょっと柔らかくなっただけで、その表情に微笑みはない。
「…可笑しくないか…」
エルの表情を見て、ゼフィーは笑いを収める。
「いえ…」
そんなつもりではなかったのだが、エルがゼフィーのことをまだ良くわかっていないのと同じように、ゼフィーもまた、エルのことを良くわかっていなかった。
柔らかくなったその表情こそ、エルが笑っているつもりだと言うことを。
自分の不器用さを改めて感じたエルは、小さな溜め息をこっそりと吐き出す。
「…そう言えば…仮面師のレイティスさん、ってヒトに身を護る術を教わった、って言ってたよね?僕の面倒も見た、って…」
少し警戒する雰囲気が薄らいだところで、ゼフィーはそう話を切り出した。
「…はい。私は、そう聞きましたが…」
士官学校に入る条件として、身を護る術を身に着けること。その指南役として紹介されたのが、仮面師レイティス。紋様のない種族である彼には、何処か興味があった。そんなこともあってか、多分一番警戒心を抱かなかった相手だと思っていた。
そのレイティスから、嘗てゼフィーの面倒を見たこともある、と聞いていた。だからこそ話をしたのだが…ゼフィーは会ったことはないと言った。それは、エルも引っかかっていたこと。
信頼していたレイティスに…騙されたのか、と。
だが、ゼフィーは怪訝そうに眉を顰めたエルに、言葉を続けた。
「仮面師、って聞いたことなくて…少し調べたんだ。今は、活躍している仮面師はいない、っていう話なんだけど…ゼノン様の紹介でしょう?どんなヒトだったの…?」
ゼフィー自身も、ゼノンの屋敷にいた時間はあの休学していた時期だけ。そう考えると、出会う相手はかなり少なかったはず。その上、面倒を見て貰った、と言えば…心当たりはごくわずか。その中で、仮面師の"レイティス" と名乗るものはいなかったはずなのだ。
「肩までの茶色の髪に、茶色の瞳で…紋様のない顔でした…」
「………あぁ、わかった…」
暫く考えた末に、ゼフィーは小さく息を吐き出す。
「…確かに、僕も御世話になった。でも、名前が違う。僕が知ってるのは、ゼノン様の屋敷の使用魔の"レプリカ"と言う名前だった。文化局でも働いている、って言ってたけど…仮面師だとは言ってなかった」
「…使用魔…」
本当に、騙されたのだろうか…。そんな表情を見せたエルに、ゼフィーは小さく笑う。
「確かに、仮面師だとは聞いていないし、使用魔だけど…確かに強かったよ。きっと、名前を変えるにはそれなりの理由があったんだと思うよ。ゼノン様が傍に置いているくらいだもの。レプリカだろうが、レイティスだろうが…僕は、あのヒトが好きだしね。優しいし…ここだけの話、ゼノン様を窘められるくらい強いしね」
無邪気に、そう言って笑う。気負うことなく、それが当たり前のように、自然に。
そんな姿を前に、エルも小さな吐息を零す。
素直に笑えるゼフィーが羨ましい。多分、他悪魔に対してそんな風に思ったのは初めてだろう。
ルークの言葉が、ふと蘇った。
----心は、目に見えないから。
その笑顔の奥に…どれだけ、辛い想いがあったのか。顔を見ているだけでは、そんなことは微塵も感じさせない。
士官学校に入ってからずっと…自分だけが、傷ついていると…心に傷を負っていると、そう思っていた。だから、他悪魔が笑っているのを見ると…そうなれない自分が、嫌いになる。けれど…ゼフィーの笑顔を見ていると、何処か安心する。この笑顔の前に…自分が嫌いだなんて、そんな気持ちは薄くなる気がした。
正直なところ、エルはゼフィーから手を差し伸べて貰う必要はないと思っていた。彼に頼らずとも…独りで生きて行けると。彼にもはっきりとそう言ったはずだった。
今でも胸に抱いた想いは変わらないが…それでも…ここに来て、その思いがほんの少しだけ変わったような気がする。
頼ってみたら…吐き出してみたら、少しは、心が軽くなるのかも知れない。そう思えるようになったのは…やはり、この穏やかなゼフィーだから。決してめげない、しっかりとした心を持っているから。
ゼフィーを頼れと言った父親の言葉は、間違いではなかったのだろう。
「今度、機会があったら聞いてみるね」
そう言ったゼフィーに、エルは意を決したように口を開く。
「…有難う……ございます」
「…え?…あぁ……うん」
ほんのりと赤くなったエルの頬を見て、それがエルの精一杯であることを察したのだろう。ゼフィーもにっこりと微笑んだ。
ほんの少し…歩み寄れたような気がする。それが、とても嬉しかった。
「…これからも、宜しくね」
くすっと笑いを零したゼフィーは、手を差し出す。少し迷って…エルは、その手に触れる。
想いが、通じた。そう感じたゼフィーはにっこりと笑い、しっかりと握手をする。
「…はい」
ほんの少し、エルの口元が少しだけ綻んだ。
この悪魔だけは…特別な存在だと思った。
どんなことがあっても、裏切らない。きっと、力になってくれる。それが…"仲魔"なのだと言うこと。エルにもそれが、少しだがわかったような気がした。
そして、ゆっくりと穏やかに…時は流れる。
"子供たち"は、着実に成長しながら。
季節が少し巡り、士官学校の新入生たちもすっかり学校に慣れて、学生生活を楽しむ余裕も出て来た頃。
その嵐は、思いがけず飛び込んで来た。
その日、いつもと同じように放課後を図書館で過ごしていたエルは、そこにいた先客に声をかけられた。
「エルって…君だよね?」
「……どなたですか?」
士官学校の制服を着ているものの、今まで図書館では見たことのない顔、だった。
厘とした声。背はすらっと高く、柔らかそうな金色の緩いウエーブが肩にかかっている。紋様のないその顔立ちはとても聡明に見える。ぱっと見、性別も判断がつかない。
大きな窓に背を凭れ、エルからは逆光になって表情は良く見えない。けれど、その眼差しだけは、恐ろしい程冷たく見えた。
相手が纏う雰囲気は、只者ではない。
警戒の色を見せたエル。けれどその直後、背後から聞こえた聞き慣れた声。
「ちょっ…僕が迎えに行くまで、勝手に出歩いちゃいけないって言ったじゃない…っ!」
「……ゼフィーさん?」
思わず振り返ったエルだったが、ゼフィーの視線はエルには向いていない。
頬を膨らませ、明らかに怒っている様子。エルが初めて見るその姿。だがゼフィーはそのままエルの横を通り過ぎ、窓辺へと足早に進む。
その姿を目で追いながら、再び声をかけて来た相手へと視線を向ける。
気まずそうに顰めた顔は横を向き、ゼフィーとは視線を合わせないようにしているようだ。
「聞いてるの?!」
「……聞いてるよ…煩いな…」
小さな溜め息を吐き出す相手。向かい合って立つゼフィーよりも、背は頭一つ分以上高い。けれど、明らかにゼフィーの方が態度は上である。
「もしものことがあったらどうするつもりだったの?!」
「大丈夫だって。俺だって馬鹿じゃないんだから…」
「何を根拠に、大丈夫だって言うのさ…っ」
呆れたように溜め息を吐き出すゼフィー。そこでふと、呆然と立ち尽くすエルの姿に気が付いたようだ。
「…えっと……あぁ、御免ね。驚いたでしょう…?」
「……まぁ……」
何が起こっているのか、エルにはいまいち理解出来なかったのだが…どうやら、ゼフィーとこの背の高い相手は親しい間柄らしい。
「…ちょっとこっちに……」
ゼフィーはそう言うと、エルと、その相手の手を取ると、普段誰も来ない奥の資料室へと引っ張って行く。そしてそのドアに鍵をかけると、相手を見上げる。
「結界張って」
「…それぐらい自分でやれよ…」
「ほら、早く。誰か来たら大変なんだから」
「………わかったよ」
ゼフィーに言われるままに結界が張られる。その瞬間、エルは息を飲んだ。
張られた結界は…とてつもなく強い。まるで…彼女の父親たちが張ったぐらいの強さだった。
「…えっと、じゃあ、改めて…」
そんなエルの様子を横目に、ゼフィーは小さく咳払いをする。
「エルに紹介するね。こっちは"シリウス"。訳あって、短期入学することになってね」
「………"シリウス"…?」
何処かで聞いたことがある名前だった。
一体、何処で聞いたんだろう…?
そう考えた瞬間、ふと思い出した。
「……皇太子殿下…っ?!」
「…まぁ…そう言うこと」
答えたのはゼフィー。当の本魔は…と言うと、先程と同じように、壁に凭れかかったまま、横を向いている。
「…どうして…?殿下は、教育係がいるんじゃ……」
「そう。ルーク総参謀長が教育係。言ってしまえば、シリウスの我侭」
「我侭じゃない」
「じゃあ何さっ」
口を挟んだシリウスに、ゼフィーは口を尖らせて反論する。
「体験学習とでも言って貰いたいね。何も知らないまま入局するよりは余程良いだろう?」
「だからって、何も好き好んで危ない橋を渡らなくても…」
「安全な道の、何が楽しいんだよ。俺の趣味じゃないね」
「………んもぉ…」
どうやら、この押し問答の勝敗は、シリウスの方が勝ったようだ。ゼフィーは諦めにも似た溜め息を吐き出した。
「…まぁ、そう言うことだって。暫くの間、こんなこともあるけど宜しくね。あぁ、一応、名前は…」
「"天狼(そら)"、だってよ」
まるで他魔事のように、口を挟んだシリウス。まぁ、本名を堂々と名乗れる立場でも状況でもないのだから、別名が用意されていても、別段不思議はなかった。
「あぁ、別名と言えば…この間、ゼノン様に聞けたよ。"レイティス"さんのこと」
思い出したようにそう切り出したゼフィーに、エルの興味が向いた。
「…どちらが本当の名前なんですか…?」
思わず問いかけた声に、ゼフィーは言葉を返す。
「昔…ゼノン様と出会う前は、"レイティス"と言う名前の仮面師だったみたい。ゼノン様が仮面師の研究に関わったことで出会って…その後、ゼノン様を慕って、仮面師であることを捨てて、"レプリカ"の名前をゼノン様から貰ったんだって。今は仮面師の仕事は基本的にはしていないけど、仮面師を名乗る時は"レイティス"なんだって。君の指南役になる時は、使用魔って言うよりも仮面師を名乗った方が、受け入れられるんじゃないかって…父上様の意向だったらしいよ」
そんな話を聞き、シリウスが口を挟む。
「仮面師って、あれだろう?髪の毛一本あれば、その姿になれるってヤツ。絶滅危惧種だもんな。名前だって隠すよな」
「……そうなんですか…」
複雑な事情がその名前の裏にあったことは間違いないのだろう。そして何より…騙されてはいなかった。それは安堵の感情。
確かに、使用魔が指南役、と言われるよりは、仮面師が指南役、と言われる方が受け入れやすい。使用魔であれば…必ず主の息がかかっている。何をどう教育されているか、わかったものではないから、当然警戒もする。そんな思考を読み取っていた父親のおかげで、すんなり馴染めたことは感謝せざるを得ない。
「…詳しいね?」
意外だった、と言う表情を浮かべるゼフィーに、シリウスはニヤリと笑う。
「当たり前だろう?これでも、ルーク仕込みだからな」
「…素直に入局すれば良かったのに…」
小さな溜め息を吐き出したゼフィー。どうやらここにも、何かあったようだ。
尤も…それはエルの興味対象外、だが。
「…で、殿下のクラスは何処なんですか?」
横道に逸れそうな話を元に戻すべく、エルが口を挟む。
「あぁ、一応僕と同じクラス。本当は、僕らなんか比べ物にならないくらい、魔力は強いんだけどね。一応、僕は監視係。シリウスが暴走しないようにね」
「…はぁ…。それなら、私は関係ないですね?」
「…え?あぁ……まぁ……」
「では、これで失礼します」
きょとんとするゼフィーと、相変わらず壁に凭れたまま、横目で視線をエルに向けたシリウス。その二名に軽く頭を下げ、ドアへと向かうエル。
「…結界、解いて貰っても良いですか?」
「………」
マイペースと言うべきか、度胸が据わっていると言うべきか…流石と言えば流石のエル。
そんな姿に小さな溜め息を吐き出したのは、シリウス。
「……ほれ」
指先をくるくると回したかと思うと、その指先にふっと息を吹きかける。その途端、今までこの資料室を隔離していた結界はすっと消えた。
「…ごゆっくりどうぞ」
改めて頭を下げ、そう言葉を残してエルは資料室のドアを開けた。
後ろ手にドアを閉めると、もう二名の気配はない。再び、結界が張られたようだ。
「………何がしたいんだか…」
エルが零した溜め息混じりつぶやきは、誰にも届くことはなかった。
彼女にとって、また一名、余計な御世話焼きが増えることとなった。
勿論、それが自分の今後にどう影響して来るかなど、その時は誰も考えもしない。まぁ、考えたところで、全てその通りになる訳でもないのだが。
ただ、その先に待っているのが、何の面白味のない日々ではないと言う事だけは間違いなさそうである。
エルが出て行った後、資料室に残されたのはゼフィーと、天狼ことシリウス。
「…どう?」
再び結界を張ったシリウスに、ゼフィーは小さな溜め息と共に問いかける。
「どう?って言われてもな…もっとエースに似てるかと思ったけど、そうでもないな。同じなのは目の色ぐらいだしな。産まれた時ははっきりしなかったが、紋様も青だし、明らかに閣下に似てるんじゃないか?」
「…外見の話じゃなくて…」
溜め息を吐き出すゼフィーに、シリウスは小さな吐息を吐き出す。
「…わかってるよ。内面だろう?まぁ、中身はエースに似てるな。頑固なところと言い、融通が利かないところと言い……。多分、俺らが介入することすら、嫌なんだろうが、それでも会話が成立しているところから見て、多少は柔らかくなったんだろうな。俺よりも優秀じゃないか」
「…まぁ…ねぇ……」
相槌を打ちながらも、ゼフィーの眉間には皺が寄っている。
「で、御前は何を心配してる訳?」
ゼフィーのそんな表情を伺いながら、シリウスはそう問いかける。シリウスは、既に興味を失いつつある様子だった。
「何って……具体的に何かある訳じゃないんだけど……」
そう。特別、何かがあった訳じゃない。ただ…何となく気になって。
大きな溜め息を吐き出したシリウス。
「…ったく……御前みたいのを、余計な御世話って言うんだよ」
「……自分だって、エルの顔が見たいって、興味本位で無茶言って短期入学なんてして来たくせに…」
「煩いな~。体験学習だって言ったろ?」
そんなやり取りを繰り返しながら、彼らは彼らでずっと胸の奥に引っかかっていたのだろう。
ゼノン譲りの相手の変化を敏感に感じる感覚と、ダミアン譲りの先を数歩先を見透かす鋭い感覚。
彼らはまだそれを自分の能力として認識はしていない。けれど、確かに感じていたのだ。
遠い未来を暗示するかのような、モヤモヤとした正体の知れない何か。
それが判明するのは、まだ先のことだった。
大きな溜め息は、誰が吐き出したものか。
それは、吐き出した本魔にしかわからない。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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