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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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壇香 伽羅~鍵 1

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
3話完結 act.1

拍手[4回]


◇◆◇

 それは、エルが士官学校に入学してから、季節が一周した頃。
 同期の生徒たちは友達も増え、すっかり学生生活を満喫している頃だったが、エルの周囲に対しての態度は相変わらずであった。
 その頃のエルは、背も随分伸び、小柄なゼフィーとほぼ同じ。すらっとした体躯に加えて短かった髪の毛も肩につく程になり、入学したての頃よりも随分大人びて見えた。
 元々冷たいながらも整った顔立ちだった上に背も伸び、どうしても悪魔目を引く。だからこそ、極力目立たないように、口を閉ざしていたのだ。
 ゼフィーは根気強く相手をして、天狼は一歩引いたところから…それでも"仲魔"としての認識があるのか、気にはかけている様子だった。おかげでエルも、ゼフィーと天狼には他の同級生たちよりは多少心を開いていた。
 他悪魔と親しくすれば、それだけ自分のことも話さなければならなくなる。何もかもを秘密にしたまま親しくなるのは難しい。それは、エルには尚更のことだった。
 それでも、何の不自由もない。寧ろ、面倒な付き合いなどない方が良い。それは、エルの自論でもあった。
 独りで、気ままに。それが何よりの自由。
 一匹狼的に、エルはその生活で満足していたのかも知れない。
 勿論、"彼"に出会うまでは。

◇◆◇

 その日の放課後、エルは独りで図書館に立ち寄っていた。
 誰にも邪魔されずのんびりと好きな本を読めるし、授業の予習復習も出来る格好の場所だったので、エルの気に入っている場所だった。
 その日もいつもと同じく、予習の為に資料を探していくつもある本棚の間をうろうろしていたのだが、暫く探すうちに、本棚の一番上段に目的の物を見つけ、手を伸ばした。
 だが、ほんの少しだけ高さが足りない。伸ばした指先は上段の棚の縁に触れるものの、本の背表紙にまでは届かなかった。
「…もう少しなんだけど…」
 左手を棚に添え、更に右手を上に伸ばして背伸びをする。それでも指先は微かに背表紙に触れただけで、とても引っ張り出せそうにない。
 踏み台を持って来ようか…と思った瞬間、背後からすっと手が伸び、エルが取ろうとしていた本が簡単に引き抜かれる。
 そして。
「はい、どうぞ」
「……っ」
 気配など、何も感じなかった。それがまず最初の驚きだった。勿論、声の一つも漏らさなかったが。
「……ありがとうございます」
 振り返り、本を受け取る。相手の顔は自分よりも更に上にある。その所為もあってか、エルは相手の顔を見ることもなくお礼を言って頭を下げ、その場を立ち去ろうとした。
 だが、それは相手によって阻止される。
「あ……待って…っ」
 呼び止められ、思わず足を止めた。振り返ったその視界に、相手の姿が映る。
 背はすらりと高い。エルよりも、頭一つ以上高いだろう。そして、薄茶色の短い髪と、灰色の眼差し。青い紋様を頂いたその顔を見たことはなかったが、上級生だろう、と思っていると、相手は無邪気ににっこりと微笑んだ。
「良く、ここに来てるよね。本、好きなの?」
「…まぁ…」
 何故急に絡まれているのか。全く訳がわからない、と言った表情を浮かべたエルに、上級生はくすっと笑いを零す。
「俺も好き。本の匂い、良いよね」
「…資料本、ですけどね」
 相変わらず、上級生でも臆することのないエル。
 あくまでも、今手に持っているのは資料本。好みの問題ではない。だが、相手はそんなことは気にしていない様子。だが、時計へと目を向けると、笑った顔を少し、エルへと近づけた。
「御免ね。時間がないからもう行くけど…俺の顔、覚えて。俺、四階級のフレア、ね。次にまた会えたら、今度は資料じゃない本の話しようね」
 そう言うなり、手を振って踵を返す姿。そしてあっと言う間に姿を消す。
「…何、あれ…」
 意味がわからない。
 溜め息を吐き出したエルは、手に持った資料本へと視線を向ける。
「……これじゃなかった…」
 目的の本と、タイトルが良く似ていたから間違えた。
 二度手間になった、と思いながら、今度は素直に踏み台を持って来て、取って貰った本を戻すと、改めて目的の本を本棚から取り出し、中身を確認してから机へと向かう。そして漸く予習を始める。
 そんな一連の流れで、本を取ってくれた相手の顔も名前も、すっかり頭の中から消えていた。

 それから数日後。放課後、図書館へと向かう道すがら。
 見覚えのある女生徒が数名、窓から外を眺め、キャッキャとはしゃいでいる。良く目にするそんな姿に小さな溜め息を吐き出しながら、その背後を通り過ぎる。その途中、ふと目を向けた窓の外…外の練習場で、実技の練習をしている上級生が目に入る。
「………?」
 何処かで見たような姿が一名。だが、上級生など大勢いる訳で。特に気にも留めず図書館へと向かったエルだった。

 その日の図書館には、ゼフィー・ゼラルダの姿があった。
「早いですね」
 上級生であるゼフィーの方が先に来ている。滅多にないことに、エルが思わずそう声を零した。
「うん、ちょっとね…」
 些か急いでいるのだろう。本棚に向けた眼差しが、エルの方を向かない。
「…課題の再提出がね…」
 そう零しながら、上の方の資料本へと手を伸ばす。
「…ゼフィーさんの課題、ですか?」
 実技は苦手だが、勉強に関しては優秀…とは言えないまでも、平均的な成績だと聞いていたのだが…と思いながら、まさかの再提出の言葉に思わず問いかける。
 ゼフィーは…と言うと、その言葉を聞きながら、棚の上部の本に手を伸ばしている。
 あともう少しが届かない。つい先日、自分も同じことをした…と思いながら、エルは素直に踏み台を持って来ると、ゼフィーの足元に置いた。
「あ、有難うね」
 その気遣いに感謝の言葉を零しながら、目的の本を手にしたゼフィー。そこで漸く、エルの顔を見た。
「いや…天狼のね…」
「…天狼さんの課題の資料を、ゼフィーさんが探しているんですか…?」
「…急いでる、って言うから…ね。ほら、僕が探している間に、少しでも課題を進められたら良いでしょう?」
 くすっと笑うゼフィーに、エルは溜め息を一つ。
「…そうやって天狼さんを甘やかすから、再提出になるんですよ?」
「いや、でもね…ほら、天狼も元々勉強は出来るから…」
「学校の評価は、天狼さんの出来る、とはまた別ですよ」
 士官学校にいる以上、学校での課題が評価される。尤も…短期入学なのだから、必要がないと言えばそれまでだが…それでもあとどれくらいいるのかは、ゼフィーもエルも聞いていない。在学している以上は必要な評価だった。
 そんなやり取りをしていると、背後から声がかかる。
「やぁ。今日は楽しそうだね」
 そう言われ、思わず振り返る。そこには、走って来たのか…やや弾んだ呼吸を整えようと大きく息を吐きながら、にっこりと笑う顔。
「…えっと…知り合い?」
 きょとんとしつつ、ゼフィーがエルへと問いかける。すると、その相手がゼフィーへと視線を向けた。
「先輩、ですよね。御見かけしたことがあります。あ、俺は四階級のフレア、です」
 にっこりと笑った相手…フレアに、ゼフィーはちょっと様子を見つつも、軽く微笑む。
「五階級のゼフィー・ゼラルダです」
 階級が下の相手を見上げる。
「急いでいるみたいだけど…用事があるんじゃ…?」
 息を切らせてまで駆け込んで来たくらいなのだから…と、問いかけたゼフィーに、フレアはエルへと視線を向ける。
「…あぁ、彼女が学舎の廊下を歩いて行くのが見えたから。きっと、ここに来るんだろうと思って、急いで来たんです」
「……知り合い?」
 思わずもう一度同じことを問いかけるゼフィー。エルの方は…と言うと、かなり警戒しているようで…小さく首を横に振り、無意識にゼフィーの背後に入ろうとしている。最も、彼らは本棚を背にして立っていた訳で…幾つも本棚が並ぶ通路に、隠れられるだけの余裕はない。
「えっと…知り合いではないみたいだけど…」
 エルの様子に、ゼフィーが敢えてそう口を開く。けれど、フレアはにっこりと笑う。
「一度だけ、話をしました。またここで会えたら話をしようと伝えました。だから来たんです」
「…一度…ねぇ…」
 エルの様子を見るように、そっと視線を向けてみれば…当然、困惑した表情を浮かべている。ほぼほぼ初対面の相手にここまで一気に距離を縮められることが、エルにとっては苦手なはず。その証拠に…普段は基本他悪魔に触れないエルが、ゼフィーの腕をしっかり掴んでいる。
 その姿に、フレアは少しだけ笑うのをやめた。
「……先輩と彼女は…親しい間柄…ですか?」
 親し気な雰囲気は、間違いない。だが、そこから先は良くわからない。何せ、エルが他の同級生たちと馴れ合う姿など、誰も見たことがない訳で…一番親しいのがゼフィーなのだから。そう思われても不思議はない。尤も…彼ら自身には、恋愛感情的なものは一切ないことは言うまでもないのだが。
「…親しいと言えば親しいのかも知れないけど…君が思っているようなことは何もないよ。まぁ…強いて言えば……彼女はそう思わないかも知れないけど、僕にとってみれば妹的な…?」
 そう言いながら、ゼフィーはエルの様子を窺う。エルがゼフィーを兄のように慕っているかは別として…恋愛感情と言う点では、御互いの認識は間違っていないだろう、との確認として。
 そんな言葉を受けたエルは…と言うと、暫し考えを巡らせ…そして、ぐっとゼフィーの腕に自分の身体を寄せた。
「…ちょっ…?」
「…一番です。このヒトが…」
「…はい?」
 思いも寄らない言葉に、ゼフィーが一番驚いている…と思ったが、どうやらフレアもかなり驚いているようだった。
 だがエルは…真っ直ぐに口を結び、誰とも視線を合わせない。そこに、何らかの意思があることは間違いなかった。
「…えっと…」
 さて、どうフォローしようか…とゼフィーも困惑していると…フレアの背後から、声が届く。
「じゃ、俺が二番だな」
「…っ!?」
 驚いて振り返ったフレアの姿。その向こうに見えたのは、棚に寄り掛かる天狼。
「残念だね。御前はまだ、ランク外」
「…天狼…」
 本来なら、ここにはいない姿。当然、ゼフィーもエルも驚いている。そして、フレアも。
「俺たちの許可なく近付こうだなんて、以ての外。御前に彼女はまだ早い」
 そう言ってフレアの頭に手を置き、押し退ける天狼。
「ちょっ…」
 流石に困惑した表情のフレアを意にも留めず、天狼はゼフィーとエルの前までやって来る。
「何で天狼が?」
 思わずそう零したゼフィーに、天狼は溜め息を一つ。
「いつまで経っても御前が戻って来ないからだろう?課題は出したから。ほら、帰るぞ」
 そう言うと、ゼフィーの腕を取ってそのまま引っ張って行く。ゼフィーの腕にしがみついていたエルも、当然そのままくっついて来る。
 茫然とその姿を見ていたフレアだが、三名が目の前を通過していくと、ハッとして声を上げる。
「名前!君の名前、聞いてない…!」
 その声に振り返った天狼が、ニヤリと笑う。
「俺は天狼。ゼフィーと同じクラスだから。用があるならいつでも話を聞くぞ」
「…いや、先輩じゃなくて…」
「わかってて言ってんだよ」
 笑いながらさっさとその場を立ち去る一行。当然、フレアは狐につままれたような表情のまま、だった。

 図書館から出た彼らは、そのまま学舎の片隅へとやって来ていた。
 周りには、誰の姿もない。そこでやっと、溜め息を一つ吐き出したのは、天狼。
「…何やってんだよ、御前らは…」
「何やってんだよ、って言われても…急に来られたからね…」
 こちらも溜め息…恐らく安堵の方…を吐き出したゼフィーは、未だに自分の腕にしがみついてたエルへと視線を向けた。
「…大丈夫?」
 未だに、表情が強張っている。思いがけない状況に、困惑しているのは間違いない。
「……何とか…」
 まるで息継ぎでもするかのように大きく息を吐き出してから、そう言葉を零した。そして漸くゼフィーから離れると、呆れたような表情を浮かべている天狼に頭を下げる。
「…有難うございました…もう、大丈夫です…失礼します…」
「あ、ちょっ……」
 思わず手を差し出したものの、ゼフィーが引き止める間もなく、エルは踵を返して走るようにその場から離れた。
 その背中を茫然と見送ったゼフィーに、天狼は再び溜め息を一つ。
「…もういない、って。その手は引っ込めとけ」
「……うん…」
 役割を失ったその手を下げたゼフィー。
「取り敢えず…エルも行っちまったし、課題の再提出も終わったし、帰るぞ」
「…うん…」
 エルがいなくなった方向に目を向けたまま、心ここにあらずの返事を返すゼフィーに、天狼は溜め息を吐き出すしかなかった。


 寮まで戻って来た二名は、天狼の部屋へ入るとそのドアに念の為結界を張る。そこで漸く一息ついた。
「…それにしても、馬鹿だな、御前…あんなヤツ、放っておけば良いものを…」
 改めてそう零した天狼に、ゼフィーは大きな溜め息を吐き出す。
「僕だって予想外だったんだもの、仕方ないじゃない。エルはエルで、僕に隠れようとするし…」
「何なんだろうな、彼奴…」
 椅子に腰を下ろした天狼は、真面目な顔でゼフィーを見つめた。
「何なんだろうな、って…好きなんでしょ?エルのことが。そうでなければ、学舎の廊下歩いてるのが見えたぐらいで、追って来ないでしょ?」
「好き、ねぇ…」
 元々エルを目当てで無理やり士官学校に入学して来た天狼にしてみれば、恋愛感情は薄れたとは言えどうにも快諾は出来ない訳で。
「…気になる?」
 不機嫌そうな天狼の表情に、ゼフィーは小さな笑いと共にそう問いかける。
 ゼフィーが恋愛に興味がないことは知っている。その癖に、変に察しが良い。
「馬鹿言え。エルは俺の恋愛対象じゃないからな」
「そうだよね。天狼はエース長官一筋だもんね。でもエルの外見は閣下と良く似ているし、エース長官と同じなのは瞳の色だけだものね。そうそう、あの性格は昔のエース長官に良く似てるって、ルーク様が言ってたよ」
「…ルークと、何の話してるんだよ…って言うか、エースは関係ないだろう?大体、エースはデーモン一筋だろうが…俺の教育係を蹴ってまで、尽くしてるんだぞ?」
 ヒトの教育係と、誰にも言っていないはずの…箸にも棒にもかからなかった初恋を穿りやがって…と言う溜め息を吐き出しつつも、それ以上表情に出さないのは流石に天狼である。多分、ゼフィーならその表情に駄々漏れだろう。
「別に僕は、他悪魔を好きになることは悪いとは思わないけど…あのエルだしね。僕だって、やっと会話が成立するようになったくらいだから…エルにしてみれば、あの距離の詰め方は、多分迷惑なんだろうけど…」
 エルの表情を思い出しながら、ゼフィーはそう言葉を零す。
 あの時。ゼフィーの腕を掴み、最終手段だと言わんばかりに、このヒトが一番だ、と訴えたのエルの様子を考えれば…現段階ではすんなり受け入れるはずなどない。
「…何て言ったっけ?彼奴」
「名前?えっとね…確か、フレアとか言ってたかな。四階級だって」
「実技でキャーキャー言われてるのは見たことあるような気がするな…」
 記憶を辿りながら、そう零した天狼。その記憶が正しいのならば、尚のことエルは近寄らないだろうと思う。
 だがそれは、あくまでも…エル側からすれば、の話。フレアの様子からすれば…キャーキャー言われていることは我関せずで、エルに向かってきそうな気配がある。
「まぁ…取り敢えず、見守るしかないかな…」
 小さな溜め息と共に零した言葉に、天狼もまた溜め息を一つ。
「あんまり余計なことに首突っ込むなよ。俺の監視役のクセに、俺の方が気が気じゃない…」
「わかってるよ」
 その言葉に、ゼフィーはくすっと笑いを零した。
 口は悪いが、本心はとても優しい。そして、仲魔想い。そんな天狼の本性を知っているからこそ、ゼフィーも何でも打ち明けられるのだ。
 エルもそこに加わって貰いたいと思いつつも、追えば逃げていくタイプのエルの性格を把握し始めたゼフィーだからこそ、無理に深い付き合いに踏み込まなかったのだ。
 そのエルだからこそ、まさか恋愛に興味を持つとも思えないのだが…まぁ、暫く様子を見ることでゼフィーと天狼の話は付いたのだった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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