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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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壇香 伽羅~suggestion 2

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.2

拍手[3回]


◇◆◇

 武術大会当日。当然と言えば当然、出場者も応援者も、朝から活気が溢れている。
 エルの応援に…と、アルフィードと連れ立って控室にやって来たゼフィーは、活気に溢れるその控室の一角で、ひっそりと準備をするエルの姿を見つけた。
 応援やセコンドが取り囲む他の出場者と違って…エルはたった一名。黙々と準備をするその姿が、とても不憫に見えて。
「…エル」
 声をかけると、準備の手を止めたエルが顔を上げる。
「ゼフィーさん…アルフィードさんも…」
「応援に来たよ」
 そう言いながら、当たりの様子を窺う。やはり、エルのクラスの生徒の姿は何処にもない。
「誰も…いないの?クラスの子…」
 先に声を上げたのはアルフィード。流石に様子が可笑しいと気がついたようだった。
「いません。応援、されていませんから」
 淡々と答えるエルに、ゼフィーは小さな溜め息が零れる。
 どう、フォローしようか…そう考えていると、アルフィードはにっこり笑った。
「じゃあ、俺たちが手伝うよ。ねぇ、ゼゼ?どうせ、エルの応援に来たんだし、セコンドぐらいなら幾らでも」
「………」
 突然のアルフィードの提案に、エルは唖然としていたが…その思い切りの良さに、ゼフィーも小さく笑った。
「そうだね。僕たちで良ければ、幾らでも手伝うよ。一名じゃ、大変でしょう?決勝までちゃんと戦えるように、サポートするから」
「ゼフィーさん…」
 武術大会、と名を打っているだけあって、魔力の使用は禁止。使用出来るのは平等に普段剣術の授業で使っている剣一本。相手の攻撃で気を失ったり、大怪我をするなど、明らかに続行不能と見做された場合に勝負がつくのは当然だが、剣が手を離れて下に落ちた時点でも続行不能と見做され、負けが決まるほど厳しい判定。気を抜く訳にはいかない。
 そして剣一本で戦わなくてはならないので、一つ試合が終わるごとに身体のケアと剣の手入れをするのは必然。確かに、一名では十分なケアは出来ない。だからこそ、セコンドが必要になるのだ。
 にっこりと笑うゼフィーとアルフィードに、少し考えてから…エルは小さく頷いた。
「…御願いします…」
 人見知りのエルにしては、盛大な進歩。まぁ、ゼフィーと一緒にいることの多いアルフィードだから、と言うこともあるのだろう。
「さぁ、そうと決まれば準備準備!ちょっと、対戦相手の偵察に行って来るから。こっちはゼゼの方が安心でしょう?」
 笑顔でそう言い残して、アルフィードは偵察に出かけた。その背中を見送ったゼフィーとエル。
「…ちょっと強引だけど、頼りになるから安心して」
 くすっと笑いを零したゼフィーに、エルは小さく息を吐き出す。
「…知ってますから。一応…信頼はしてます」
 信頼出来ることも知っている。とても頼りになることも。ただ、それが自分に向けられるとは思っていなかったので、ちょっと考えてしまっただけ。
 そんなエルの内心を垣間見たゼフィーは、改めて感慨深く思う。けれど今は、暢気にその想いに浸っている場合でもない。
「じゃあ準備しよう」
 ゼフィーの言葉に、エルも頷いて準備に戻る。
 そして準備が終わる頃戻って来たアルフィードから対戦相手の様子を聞き、三名で作戦を練る。
 準備は万端。負けることなど一つも考えないまま、試合は始まったのだった。

 持前の実力と勝負強さも合わせ、半ばあっさりと勝ち進んでいくエル。
 だが、あと二つ勝ち抜けば優勝、と言う準決勝を前に、偵察に行っていたアルフィードが顔を曇らせて帰って来た。
「次の試合の対戦相手だけど…」
 そう切り出したアルフィードに、エルもゼフィーも視線を向けた。
「次の…って言うと、ベイル…だっけ?確か、前回決勝まで行ったんだよね?」
 ゼフィーの言葉に、アルフィードは頷きを返す。
「そう。校内一の巨体で、力も強い。前回はフレアが勝ったけど、なかなかの曲者らしくてね。フレアでもすんなりとはいかなかったらしいよ」
 今回も、フレアは圧倒的な強さで勝ち上がっているらしい。そのフレアがすんなりと勝てなかった相手。そうなると、エルもすんなり勝てるとは限らないのだ。
「曲者って、どんな風に?身体が丈夫過ぎて、攻撃が効きにくいとか…?」
 心配そうに尋ねるゼフィーに、アルフィードは眉を寄せる。
「普段から、あんまり良い噂は聞かないらしいよ。違反ギリギリを攻めて来るって。エルとは身体の大きさが随分違うから、力業で押して来られたらかなり危険」
 その言葉に、エルの表情が少し変わる。
 真剣さを増した…戦いに向かう顔。その眼差しは、父親たるエースと良く似ていた。
「…フレアも戦って勝ったんですよね?」
 問いかけた声に、アルフィードは小さく頷く。
「まぁね。ただ、さっきも言った通り、すんなりとは勝てなかった。正統派で戦って勝てなくはないだろうけど、綿密な作戦が必要かも知れないよ」
 そう言われ…エルは少し考える。
 こんな時…有能な参謀なら、どんな作戦を考えるだろう、と。
 その時。
「御前がエルか?」
 遠くからそう声をかけられ、視線を向けてみれば…巨体を揺らしながら近寄って来る姿。その顔には、薄ら笑いが浮かんでいる。
「こんなちっさい子供が次の相手だって?笑わせんな」
 嘲笑を零す相手に、エルは小さく溜め息を零す。
 どうやら、この相手が次の対戦相手…ベイルらしい。そう思いながら、相手の挙動を観察する。
 確かにエルより縦にも横にも随分大きい。力が強いと言うもの確かだろう。
 何処から攻めたら、相手の動きを封じられるだろう?
 黙って観察するエルの姿は、相手には臆していると見えたようだ。更に笑いを零すと、口を開く。
「尻尾巻いて逃げるなら今のうちだぜ?おチビちゃん」
 にやにやと笑うその顔に…エルは思わず言葉を返す。
「そのおチビちゃんの負けたら、恥ずかしいですよね?」
「負ける?俺が?そんな馬鹿な。冗談言うなよ」
 エルの言葉を本気にしていないベイルは、笑いながら去って行く。その背中を見送りながら、ゼフィーとアルフィードは溜め息を一つ。
「…何しに来たんだろう?彼奴…」
 そう零したアルフィードに、ゼフィーが言葉を返す。
「一応…偵察、だろうね。上級生相手に圧勝で勝ち進んで来たエルを警戒しているんだと思うよ。まぁ、彼に比べたら小柄だから、負ける気がしないんだろうけど…」
 エルを小柄だと言ったが、それはあくまでも相手に対したら、と言うこと。アルフィードよりは少し背は低いが、ゼフィーより頭一つ大きい。ゼフィーが隣に並んだら、もっと小柄に見えるだろう。
「まぁ、気を抜かないに越したことはないから。慌てないで、落ち着いて。そして十分気を付けて」
 エルに向けてそう言ったゼフィー。
 端っから負けるつもりはなかったが、今まで戦った相手よりも用心するに越したことはない。そう思いながら、頷くエル。
 そして改めて作戦の相談を…と思ったのも束の間。ゼフィーがふと気がつく。
「…ねぇ、そう言えば…さっきから遠巻きに見てる子たちがいるんだけど…知ってる?」
 エルがゼフィーの視線の先へと目を向けると、控室のドアの影に隠れるようにしてこちらを見ている数名の生徒がいた。
 暫く考えて…それから小さく答える。
「多分……同級生、です。名前は知らないですけど…見たことがあるので」
 周囲への興味の薄いエルらしい言葉。思わず小さく笑いを零したゼフィーだが…エルは、勝手に申し込まれた上に、誰にも応援されてはいないと言っていた。そう考えると、その遠巻き具合には、微妙な派閥を感じざるを得ない。
 本当は、気になって仕方がないのではないか。でもそれはクラスの派閥からはみ出すことになる。エルのように心根が強ければ気にしないのだろうが、心根の弱い彼らは自ら応援の声を上げることが出来ない。恐らく、そう思っている生徒は一名や二名ではない。
 同級生たちに恵まれていたゼフィーにしてみれば、エルも彼らも何とかしてあげたいとは思う。ただ…今はそれどころではない。
 小さく息を吐き出したゼフィーは、作戦会議へと意識を戻すしかなかった。

◇◆◇

 歓声の沸く、闘技場のフィールド。剣を携えた両名が出揃い、共に一礼をして剣を構えた。
 試合開始の合図と共に、ベイルが飛び出す。剣を構えていたエルは、てっきり剣を交えると思っていた。だがベイルは交えた剣を押すように、身体ごとエルに突っ込んで来た。
「…っ!?」
 巨体で押し込まれたら、剣一本では防ぎきれない。そのまま押されるように壁際まで追いやられる。けれどベイルは更に力を入れ、エルは壁とベイルの間に挟まれるカタチになった。
「エル…っ!!」
 身体が壁にぶつかる鈍い音が聞こえ、ゼフィーとアルフィードが思わず声を上げる。観客席からも、悲鳴のような声も聞こえた。
 ベイルの大きな背中に隠れて、エルの姿は見えない。それが尚の事、不安を煽る。
 その時。エルの頭上の観客席から声が届いた。
「エル!頑張れっ!エル…っ!!」
 思いがけない声に、ゼフィーとアルフィードが視線を向ける。そこには、観客席から身を乗り出すように下を覗き込む数名の姿。
「あの子たち…」
 試合が始まる少し前。遠巻きにエルを見ていた数名の生徒。それは、エルの同級生だったはず。その彼らが必死な顔で声を張り上げていたのだった。
「エル…っ!頑張って!!」
「エルっ!!」
 その必死な声が届いたのか…一瞬、ベイルの身体が押し返される。そしてその僅かな隙間でしゃがみ込んだエルに、支えをなくしたベイルが勢い余って頭から壁に激突する。崩れるように倒れるその隙に足元から抜け出して来たエルは、ベイルから距離を取ったところまで離れると、漸く体勢を立て直す。
 けれど…その表情が、酷く険しい。そして先ほどまでとは違って、両手で剣を持って構えている。
「…ねぇ、もしかして…エル、怪我してない…?」
 まるで、利き腕を庇うような体勢にゼフィーが隣のアルフィードに囁くと、アルフィードも小さく頷く。
「肩か肘かな…剣持ったまま押し込まれたからね…」
 幾ら剣術に優れていても、それ以外で…特に体格勝負で来られてしまったら、相手よりも身体の小さいエルにはかなり不利になる。敢えてそこを狙って来るところが、良い噂を聞かないと言われるところなのだろう。
「エル!頑張れっ!!」
 声を張り上げる同級生たちが、漸くエルの視界に入る。けれどその直ぐ下に、頭を押さえて立ち上がったベイルの姿も目に入った。
「この野郎…っ!!」
 剣を片手に、怒りの表情を浮かべて走って来るベイル。先ほどは半ば不意打ちだったので成す術もなかったが、二度目ともなれば同じ手は通用しない。しかも相手は怒りに任せて向かって来ているので、冷静ではない。
----慌てないで…落ち着いて。
 呼吸を整え、その一部始終から目を離さない。
 そして、相手が振り下ろした剣をギリギリのところで交わすと、両手で握った剣で、思い切り相手の剣を払い退けた。
 乾いた音と共に、ベイルの剣が地面へと落ちる。その瞬間、勝負が決まった。
「エルが勝った…っ!!」
 体格差を跳ね除けての勝利に、大きな歓声が上がる。
 両膝を着き、悔しがるベイルの姿に、大きく息を吐き出したエルが口を開く。
「…間違えないで。私は"野郎"、じゃないから」
 そう言い残すと、一礼をして踵を返し、フィールドを後にした。

 控室に戻って来ると、心配そうに眉を寄せたゼフィーとアルフィードが出迎えた。
「エル…大丈夫?腕、怪我したんじゃ…」
 思わずそう問いかけると…エルは剣を置いて、左手で右腕を擦る。
「ちょっと…捻っただけです。少し休めば…これぐらいなら大丈夫です…」
 壁とベイルの間に挟まれた時の衝撃と体勢は、エルにしかわからない。けれど、自分が剣で怪我をしないようにと取っていた体勢と、押し退けた時の力の入れ方が予想外の結果だったのではないか。そう、推察出来た。
「…駄目だよ、そのままにしてたら。今、リン先生呼んで来るから…」
 慌てて踵を返すゼフィー。アルフィードも応急処置の準備をしている。
 折角ここまで来たのだから…このまま、試合に出られなくなることだけは避けたい。そんな表情を浮かべたエルに、アルフィードは小さく笑う。
「腕、動かせる?」
「…一応…」
「なら、試合は出られると思うよ。テーピングして貰えば随分痛みも引くだろうし、何より動かしやすくなるから。ゼフィーだって、君を止めるつもりでリン先生を呼びに行ったんじゃないよ。誰よりも沢山怪我をしたから、きちんと対処した方が良いと思っただけだから」
 そう言いながら、片手でアイシングをしながら、もう片方の手でエルの右腕を擦る。手慣れたその動きは、ゼフィーと長い付き合いだから身に付いたのだろうか。ふと、そんなことが頭を過ぎる。
 そうしているうちに、ゼフィーが校医たるリンを連れて戻って来る。
 リンはエルの様子を確認すると、心配そうに見守るゼフィーとアルフィードを振り返った。
「ぶつかった弾みで肩を痛めたようです。軽くマッサージをしてテーピングをしますので…一旦医務室へ行きますね。決勝には間に合うように戻って来ますから」
「ここでは…無理なんですか…?」
 何だか大事のような気がして問いかけたゼフィーに、リンはにっこりと笑う。
「肩のテーピングは、服を脱がないといけませんから。女の子、ですよ?」
 そう言われ…思わずアルフィードと顔を見合わせるゼフィー。
 士官学校にいる以上、男女の認識は余り考えないが…確かに異性であることには変わりない。そして何より…武術大会に出るのは年頃の生徒ばかり。あらぬ心配をするよりは、最初から場所を変えた方が無難。そこに辿り着かなかったのは…既に相手がいるアルフィードと、恋愛に無関係のゼフィーだったから、だろうか。
「…済みません、気が回らなくて…御願いします」
 少し赤くなって頭を下げるゼフィーと苦笑するアルフィードに笑いを零し、リンはエルを連れて医務室へと向かった。
 無事に、決勝に参加出来るように。
 そう願いながら、ゼフィーはその背中を見送っていた。
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