聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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壇香 伽羅~suggestion 3
第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")
こちらは本日UPの新作です。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.3
リンと一緒に医務室までやって来たエル。大人しく手当てを受け、全て終わると、漸く大きく息を吐き出した。
「痛みますか?」
問いかけられた声に、少し肩を回して感覚を確かめる。それから口を開いた。
「…少し。でも、これくらいなら大丈夫です…」
答えた声に、リンはエルの正面に座る。そして、その顔を真っ直ぐに見つめた。
「…言っておきますが、あくまでもこれは応急処置です。わたしは校医として…本来なら、この状態での出場は賛成出来ません。ですが、折角決勝まで来たのだから、何とかしてあげて欲しい…とゼフィーに言われましてね…」
「ゼフィーさんが…」
神妙な顔つきで戻って来たゼフィーの姿を思い出す。
「貴女には、きちんと話した方が良いと判断しました。だから、はっきり言いますよ。動かせるからと言って、安心してはいけません。応急処置は、あくまでもこれ以上悪化しない為の処置です。出来ることなら…極力動かさないことが無難です。片手で剣を持ってはいけません。必ず両手で持つように。そして、無茶をしない。多分、試合が始まれば痛みは忘れてしまうと思います。だからこそ、今言っておきます。試合が終わったら、どんな状態であれ、暫く安静にしてください。それが、貴女が今後、戦士になるつもりなら必要なことです。それが守れないのなら、試合には参加させられません」
その言葉は、エルにとって考えさせられる言葉だった。
単なる授業の延長ではない。将来のこともきちんと考え、自分の身体のケアをする。その勉強でもあるのだと。
「…わかりました。言われたことは守ります」
エルの返事に、リンはにっこりと微笑んだ。
「では、そろそろ戻りましょうか。ゼフィーも心配しているでしょうから」
怪我の手当てをするだけではなく…心のケアも大切に。そんな姿を見ていると、ふと記憶が蘇る。
医者として…そして仲魔として、父の傍にいたゼノンの姿。
子供の頃はどちらかと言えば苦手であったが…ゼフィーの心配性は、多分良く似ているのだろう。ここに来て、漸く…医者の有難味をわかった気がした。
リンに促され、医務室を後にする。幾分柔らかくなったその表情に、リンも少しホッとした表情を浮かべていた。
リンと一緒に控室に戻って来ると、ゼフィーとアルフィードが待っていた。その表情は、医務室に向かった時と寸分違わず…のままで。
「エル、もうあんまり時間がないから、直ぐ準備しないと」
「…はい」
アルフィードに声をかけられ、エルは準備に向かう。その背中をじっと見つめるゼフィー。
「リン先生、エル…大丈夫ですか?」
問いかけたゼフィーに、リンはエルへと視線を向けながら口を開く。
「手当はきちんとしてありますから。後は…信じてみるしかありません」
「…信じる…」
怪我をした以上、勝算はほぼないに等しい。それでも万に一つの可能性を信じるのか…それとも、もっと他に、信じるべき何かがあるのか。ゼフィーには、そこまではわからない。
ただ、見守るしかない。
そうしている間に、決勝戦の始まる時間となった。
「行ってらっしゃい」
「…行って来ます」
大きく息を吐き出したエルは、見送る三名にそう告げ、足を踏み出した。
フィールドに立つエルと、今回も勝ち上がって来た前回の優勝者たるフレア。彼はまだ、エルが負傷していることを知らない。
御互いに一礼をし、剣を構える。リンに言われた通り、両手で剣を構えるエルに…ふと、フレアが眉を顰めた。
試合開始の合図。けれど、二名とも直ぐには動かない。御互いに相手の出方を窺っているのは明らか。
その緊張感に、観客席の誰もが息を飲む。そんな中…先に動いたのはフレアだった。
様子を見るように剣を繰り出す。その剣を受け留める動きは…何処かぎこちない。
それで確証を得たフレアは、エルにだけ聞こえるように小さく口を開く。
「…御免」
その瞬間、一瞬の隙を突いてエルの剣が弾かれる。
「…っ!!」
思わず、天を仰ぐ。視界の端に、地面に落ちる剣が見えた。
「そこまで!勝者、フレア!」
観客席で歓声が上がる。大きく息を吐き出したエルは、剣を拾いに行く。そして居住まいを糺すと一礼をし、フィールドを後にする。
その間…どう言う訳か、エルは顔を上げることが出来なかった。だから、フレアがどんな顔をしていたのかもわからない。
背中越しに聞こえる歓声は、エルがフィールドを去っても尚、途切れなかった。
控室に戻って来ると、ゼフィーとアルフィードが出迎えた。
「エル、御疲れ様。良く頑張ったね。ホント、凄いよ」
にっこりと微笑んでそう言ったゼフィーに、エルは大きく息を吐き出す。
元々勝手に申し込まれたのだから、興味があった訳ではなかった。勝負に執着していた訳でもなかったはず。けれど…負けてしまった今、とても悔しい。
怪我をしたことで、本気を出せなかったこと。応援してくれた悪魔たちの期待に応えられなかったこと。手当てをしてくれたリンに対しても、本気で戦えなかったフレアに対しても…とても申し訳ない。
そんな想いが渦巻いて…顔を上げることが出来ない。吐き出す吐息が、震える。
「…御免なさい…応援してくれたのに…勝てなかった……」
いつにないそんな姿に…ゼフィーは両手を広げると、頭一つ背の高いエルの身体をそっと抱き寄せた。
「凄く、カッコ良かったよ。最後まで戦えたんだもの、凄いことだよ。だから、謝らないで」
笑いながらそう言ってエルの背中を擦るゼフィー。そんな姿を前に、アルフィードもゼフィーの身体ごと、エルを抱き寄せた。
「そうそう。俺たちなんて、決勝戦までも辿り着けないんだから。あれだけ頑張ったんだから、謝る必要はなし!エルはまだ何回も優勝のチャンスはあるんだから、そんなに落ち込まないで」
温かいゼフィーとアルフィードの抱擁に、はらりと零れた涙。
出逢った頃は、感情など殆ど表さなかったエル。けれど少しずつ感情が見えるようになって来たものの、こうして悔しさを表したのは初めてだった。
いつもならきっと、自分の努力が足りなかったと諦めてしまっていただろう。勿論、今回もそれは感じている。だがそれだけではなかったのは…きっと、色々な悪魔たちの想いに触れたから。
自分は一名ではない。それを、痛感したから。
「…有難うございます」
頬を拭い、漸く顔を上げる。そこには、柔らかく微笑む二名がいる。そしてその向こうに…遠慮がちに近寄って来たのは、声援を送ってくれた同級生たち。
「あの……」
声をかけられ、ゼフィーとアルフィードがエルから離れる。
「えっと…決勝、残念だったね……でも、凄かったよ。凄く強くて…今まで同じクラスにいたのに、こんな凄いとは思わなくて……驚いた…」
語彙力が些か乏しいのは、多分未だ興奮が抜けないのだろう。誰もが上気した頬に目を輝かせている。
反感以外で自分がこんなに影響を与えることになったとは、エル自身も驚きだった。
「…有難う。応援してくれて。準決勝での声援、ちゃんと聞こえていたから」
「エル…」
「今回は勝てなかったけど…次は負けないから」
そう言って小さく微笑む。その笑顔に…その場にいた誰もが、ドキッとして目を奪われる。
「…お……応援、するからっ!あの子たちがどんなに不条理なこと言って来たって、俺たちはエルの味方だからっ!全力で、応援するっ」
真っ赤になってすっかり舞い上がる同級生たちの姿に、ゼフィーもアルフィードも苦笑する。
「まぁ…あんな笑顔見せられたら、惚れちゃうよね」
「ホントに。フレアは気が気じゃないね」
こっそりとそんな会話をするゼフィーとアルフィード。流石に彼らがエルに惚れることはないものの、柔らかく笑った姿は見惚れてしまうくらい。父親譲りの魅惑的な姿だと、ゼフィーは思っていたりする。
勝手に盛り上がっている同級生たちに囲まれてしまったエルは、流石に困惑気味だったが…その場から救ってくれたのは、リンの声、だった。
「貴方たち、少し落ち着いて。エルは手当がありますから連れて行きますよ」
「手当って…エル、怪我してたの?いつ?もしかして、あの準決勝で…?」
途端に表情を曇らせる彼らに、リンはそっと言葉を続ける。
「武術大会では、怪我をすることは珍しくはありません。でも、そこで挫けない心が大事なんですよ。これから先、きっとその心が自分の強さになります。貴方たちも、その心を育ててくださいね」
そう言い残し、リンはエルを連れて医務室へと向かう。
「挫けない心、だって。御前の為の言葉みたいだね」
アルフィードにそう囁かれ…ゼフィーは思わず口を噤む。
今まで生きて来た中で…挫けそうになったことは、一度や二度ではない。毎日のように怪我をして、毎日のように医務室で手当てを受けていた。それでも前へ進むことを諦めなかったのは…仲魔たちに、支えられて来たから。
その想いを、信じられたから。それが何より力になるから。
リンが言っていた"信じる"の意味が、漸くわかった気がした。
「エルは…ずっと、一名で生きて行くつもりでいたんだ。でも、僕たちと出逢って、関わって…少しずつ変わって来たと思う。準決勝で諦めずに最後まで戦えたのは、君たちの声援があったからだと思うよ。応援してくれる…支えてくれるヒトがいる。エルが怪我にも負けず、最後まで戦えたのは…応援してくれる君たちがいて、手当てをしてくれたリン先生がいて…サポートしてくれたアルがいてくれたからだと思う。だから、これからもエルを見ていてあげて。何かしてあげなきゃ、って気負う必要はないんだ。ちゃんと自分を見ていてくれる。それがわかれば十分だから」
残された同級生たちに、にっこりと笑ってそう声をかけたゼフィー。
「…先輩…」
そう。自分たちが士官学校に在籍出来るのはあと僅か。自分たちがいなくなってしまう前に、同級生の彼らと関われたのは、幸いだった。
フレアや彼らを含め…一名でも多く、エルを理解してくれる仲魔が増えるように。
「御前が一番心配してたからね。でも大丈夫だよ。みんなちゃんと、成長してるから」
アルフィードの声に、同級生の彼らも小さく笑いを零す。勿論、ゼフィーも。
とても穏やかな雰囲気。大抵は決勝で負けた者がとげとげしい雰囲気を醸し出すものなのだが…今回の武術大会の終焉は、珍しいほど穏やかだった。
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HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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