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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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壇香 伽羅~suggestion 4

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.4

拍手[2回]


◇◆◇

 エルが医務室で手当てを終えて帰路に着く頃には、ざわめきはすっかり落ち着いていた。
 控室に置いてあった荷物を医務室まで届けに来たゼフィーと共に、寮への道を歩く。
 同級生たちの話をしながら歩いていると…いつもの図書館の前に、心配そうな顔をしたフレアが立っていた。
「エル…やっぱり怪我して…」
 片腕を吊った姿。多少大袈裟だが、リンに言われた通り、少しの間安静にする為には、それが一番好都合だったのだ。
「両手で剣を構えていたから可笑しいとは思ってたんだけど、試合の後アルフィードさんに聞いて驚いて…」
 エルの怪我を知らないまま戦っていたフレア。だが様子が可笑しいと気付いたのは流石だった。
「えっと…僕、先に帰ろうか…?」
 口を噤んだままのエルの顔を覗きながら思わず口を開いたゼフィー。気拙そうなフレアの様子を見れば…ゼフィーも流石に、察する。
「エルの荷物、御願いね。じゃあ、エル。安静にね」
 フレアの手の中にエルの荷物を押し込み、エルにそう声をかけ、足早にその場を去る。
 その背中を見送ったエルとフレア。そして、エルの口から零れた小さな溜め息に…フレアは増々気拙い。
「…えっと……怪我、大丈夫…?」
 フレアはアルフィードから、準決勝でベイルと戦った時に壁とベイルの間に挟まれて負傷したらしいと聞いていた。リンに手当てをして貰って、決勝に出たことも。事後報告だったが、些か強引に試合を切り上げて良かったと、フレア自身は思っていたのだ。
 ただ…エルの精神状態はどうだろうか?フレアの心配はそこにもあった。
 口を噤んでいたエルは、フレアの心配そうな表情の前…漸く口を開いた。
「…御免なさい…ちゃんと…戦えなくて…」
「何で謝るの?」
 やはり、先程のゼフィーやアルフィードの反応と同じ。精一杯頑張ったエルに、謝る理由はない。そんな反応。けれどやはり、エルの中で何かがしこりのように残っている。
 どんな言葉にしたら、その想いは伝わるだろう?
「…ゼフィーさんもアルフィードさんも…謝らなくても良い、って…」
「そうだよ!謝る必要なんか…」
「違う。私の…気持ちの問題…」
「エル…」
 眉根を寄せた、辛そうな表情。
「…悔しかったの…途中で怪我をしたことも…その所為で、ちゃんと試合で戦えなかったことも。怪我をしたのは、私の不注意。ベイルの体当たりを回避出来なかったから。誰の所為でもない、私の所為。だから…悔しかったの…」
 ぽつりぽつりと零れる言葉。そして、溢れる涙。
「…また、次があるじゃない…次回もベイルはまだ出るだろうから、その時にリベンジすれば…」
 どう、言葉を返したら良いのか。困惑気味に…それでも精一杯の返事をする。
 けれどエルは、首を横に振る。
「違う。そう言うことじゃない」
「…じゃあ…」
 次がある。それは、単なる常套句に過ぎない。
「…貴方と、戦いたかった。ちゃんと…万全の状態で。手加減なんかしなくても良いくらい、御互い精一杯戦いたかった…」
「………」
 思わず…吐息が零れる。
 次の大会では、フレアは最高学年になる。直ぐ後に長期研修が控えているので、普通は参加しない。つまり、エルがフレアと戦えるのは、実質今回が最初で最後だった。
 エルは…負けたことが悔しかったのではない。戦えなかったことが悔しかったのだ。フレアの顔を見て、エル自身も初めてそれに気がついた。
 それは、フレアも同じ。
 フレアはその手を伸ばし、エルの涙を拭う。
「…次も、出るよ」
「…フレア…」
 思いがけない言葉に、少し顔を上げる。そこには、柔らかな笑顔。
「研修が控えているから普通は出ない、って言うだけで、出られない訳じゃない。エルが戦いたい、って言うなら、絶対出るから。だから…まず怪我を治して、それから次に備えて頑張ろう?勿論、御互いにね」
 慰められるより、共に戦おうと言ってくれた。それが現実になるかどうかはわからないが…少なくとも、エルの意を汲んでくれたことには間違いない。
「負けないからね?手加減もしないし」
 そう言って笑うフレアに、エルも漸く落ち着いたように大きく息を吐き出す。
「…有難う。でも、無理しなくても良いから。そう思ってくれただけで」
「大丈夫だって!大会に出るくらいで研修に影響しないし!俺はそんなに柔じゃないから!」
 エルの願いを断れない。そう言わんばかりの必死な姿に、ちょっとだけ癒される。
 一方的に想いを向けられ、顔見知りから始めた関係。勿論、様子を見ながら…そして遠慮しながら、顔見知りからはほんの少しだけ前進したのだろう。勿論、フレアにしてみれば…あと一歩進みたいところだが。
 気持ちも落ち着き、前を向くことが出来たエル。だがふと、あることを思い出す。
「…そう言えば…大会の前に、賭けをしましたよね…?勝った方の御願いを一つ聞く、って…」
「あぁ…あれね……でも、エル怪我してたし…別に……」
 何処か気拙そうに言葉を零したフレアだが…エルは引かない。
「でも、勝ったのはフレアだから。ちゃんと言ってください」
「えっと……」
 そこまで生真面目にならなくても…そう思いながらも、そんなエルだから、フレアは惚れたのであって…そう考えたら、言うしかない。
「…あくまでも、俺が勝手に言うことだから、嫌だったら嫌で良いんだけど………ハグ、したいな…と…」
「…ハグ…?……それで良いんですか?」
 きょとんとするエル。まぁ、エルにしてみれば、士官学校に入る前は日常的に見ていた光景であるし、特別感は然程感じていない。現に、先程ゼフィーともアルフィードともしている訳で。尤も、それはフレアは見ていないが。
 そして、そんなエルの言葉に、フレアの方が赤くなる。
「…え?だって、ハグだよ?手を握ったのもつい最近なのに…っ」
 そう言えばそんな状態だった。周りからキャーキャー言われていることにも気がつかず、手首を掴まれたことはあっても、手を握ったこともなかった。つい先日、やっと握手をしたばかり。あれは握ったと言うよりも、正々堂々と戦おうとの誓いなので、甘いものでもなかった。エルやゼフィーは両親が未だにラブラブなこともあり、ハグやキスぐらいでは驚くこともない。親は見せるつもりはなかっただろうが…それ以上のことも、知ってはいる。そんな環境で育った二名に比べれば、フレアは実はかなり初心なんじゃないか…と思わざるを得ない。
「…じゃあ…」
 見兼ねたエルが、フレアに歩み寄る。そして、半ばパニック状態のフレアへと寄り添うと、動く方の腕をその背中へと回した。
「…エル…」
 それなりに想像はしていただろうが、その顔は朱に染まっている。
 そっと回した腕の中に感じる呼吸も温もりも、全て現実。何とも言えず…緊張しまくっている。
 エルもだいぶ背が伸びたとは言え、まだ背の高いフレア。その顔を見上げたエルは…思い出したように口を開いた。
「…そう言えば…まだ言ってなかった…」
「…え?何を……??」
 未だ、赤い顔のフレア。何を言われるのか…と緊張するその顔に目を細めたエルは、軽く踵を上げる。
「…優勝、おめでとうございます」
 そう言って、そっと頬に唇を寄せる。
「…っ!!」
 思いがけない言葉と行動に、目を丸くしてエルを見つめる。エルは…と言うと、まるで鳩が豆鉄砲を食ったような表情を前に、小さな笑みが零れた。
「…えっと…これは、期待しても良いと…」
 思わずそう問いかけると、エルは少し首を傾げた。
「一番はゼフィーさんですよ?」
「え…じゃあ、二番…?それとも三番……?」
 出逢った最初の頃に、一番はゼフィーだと宣言されていたことを思い出す。あの時は二番は天狼だと(天狼が自分で)言っていたのだが…果たして今、自分がどの辺りにいるのか…そう思いながら問いかける。するとエルは首を傾げたまま、少し考えて…そして口を開く。
「今のところ…一番はゼフィーさんで、二番は父上たちで、三番はディナ、四番が天狼さん……」
「ちょっ…ディナって誰っ!?」
 聞き覚えのない名前に慌てるフレア。
「弟です。少し前に生まれたばかりで…」
「弟…っ!?」
 平然とそう言ってから…フレアの声にハッとして口を噤んだエル。
 あくまでも自分は自然発生と言うことになっていたはず。保護してくれた親はいるものの、血の繋がりはない。つまりは生まれて間もない弟とも、血の繋がりはないことになるのだろう。それ以前に、弟も書類上は保護されたことになっているはず。その辺りの詳しい話はフレアは知らないはずだが…と思いながらも、迂闊に口にすれば何処かでボロが出る。こう言う話は余り深入りしない方が無難。だが、フレアはまだそこまで頭が回らないようだ。と言うか、親だの弟だの、登場魔物が増えたことで一層混乱しているようだ。
「…親とか弟とか、もう勝ち目ないじゃん…」
 素で落ち込んでいるらしい…先ほどまでの興奮状態とはすっかり真逆の表情になってしまっている。
 流石に両親と弟を引き合いに出さない方が良かったか…と、言ってしまったエルの方がちょっと申し訳なく思ってしまったり。
「…でも…顔見知りの中では、一番ですけど…」
「……ホント?」
「まぁ…」
 途端に、満面の笑み。ころころと表情の変わるフレアを眺めつつ…ゼフィーや天狼ともまた違う、裏表のない感情表現。ただ真っ直ぐ。誰かと比べてどうか、と言うよりも、それがフレアなのだろう。
 今回の件で、自分の周囲には、自分を好意的に見てくれているヒトがいることを知った。そして、その声が…存在が、力になることも。
 ならば…もっと近づいてみたら…見える世界が、また変わるだろうか…?
 フレアとなら…きっと…
 くすっと、エルが笑う。それはとても楽しそうで、とても魅力的で。
 フレアも初めて見たエルの笑顔に、自然と笑顔が零れる。
「エル…これからも宜しくね」
 前向きなその言葉。
「…はい」
 エルも前向きな返事を返す。それが何よりの答えであるかのようで。
 色々とあった武術大会。だが、終わってみれば、誰もが成長出来たような気がする。
 御互いに浮かべた穏やかな笑顔が、それを物語っているようだった。

◇◆◇

 武術大会が終わり、エルの怪我も数日の安静でしっかり治すことが出来た。
 けれど、穏やかな日々は長くは続かない。
 それに気付いている者は…今は一名だけ、だった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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