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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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星彩~その後 後編

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは、以前のHPで2009年05月15日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;

拍手[2回]


◇◆◇

 シリウスの思いがけない行動から数日後。ルークは士官学校の面談室にいた。
 呼び出した相手はまだ来ていない。その日の最終の授業が終わったばかりだから、多分今頃は後片付けでもしているのだろう。
 そう思いながら、椅子に腰掛けたまま、ぼんやりと天井を見上げていた。
 ちょっと前までは、士官学校は足を踏み入れたこともない場所だった。それが、一時的とは言え学長代理を務めることにもなったり、そこを離れてもこんな風に足を運ぶ羽目になるとは。つくづく、自分は厄介ごとを背負うタイプだ。そう思いながら、小さな溜め息を一つ吐き出す。
 そんなことに思いを巡らせていると、控えめなノックの音が聞こえた。
『…ゼフィーですが…』
「はい、どうぞ」
 慌てて居住まいを正し、ドアへと視線を向ける。
「失礼します」
 入って来た相手は、呼び出された意味がわからなかっただろう。そして、これから話すことも。
「こんにちは」
 表情を引き締め、声をかける。
「…こんにちは。今日は、何か…」
 相手は、怪訝そうにルークを見つめている。
「あぁ、取り敢えず座って」
 そう言って相手を椅子へと促す。その声に、ルークの正面に腰を降ろした姿。
「…実は、君に話があるんだ」
 そう切り出すと、小さな溜め息が返って来た。
「…シリウスのことですよね…?」
「…あぁ、まぁ…」
 心当たりがあったのだろう。自分からそう切り出したゼフィーに、ルークは一瞬言葉に詰まった。
 先に切り出されてしまった。さて、ここからどう話そうか…。
 瞬時に頭の中に言葉を巡らせたが、それよりも先にゼフィーが言葉を続けた。
「この間、シリウスから連絡がありました。ルーク様に、士官学校の短期入学の話をした、って。自分では、社会勉強の為だ、とか言ってましたけど…どうも、エルのことが気になってるみたいです」
「…あぁ…そうみたいだね」
 シリウスの態度は、ゼフィーも気が付いているくらいあからさまだったのだろうか…。それに気が付かなかった自分は、どれ程鈍いんだろうか…と、ルークは改めてそんなことを考えたりして。
 まぁ、それは扨置き。
「その、短期入学の件だけど…ダミアン陛下はあっさり賛成でね。さっき、学長にも話をして来たんだ。身位を明かさなければ、入学を許可する、とのことだったよ」
「…じゃあ、ホントにここに来るんですか?」
「殿下の気が変わらなければね」
「………」
 まさか、本当にそんな無謀な案が通ってしまうとは思っていなかったのだろう。ゼフィーは唖然とした表情をしている。
 その気持ちもわからないでもない。多分ルークも、気を抜けば同じ表情をしていただろう。
「…で。本題なんだけど…殿下が士官学校にいる間、君に監視役になって貰いたいんだ」
「…監視役、ですか…?」
「そう。余計なことに首を突っ込まなければ安全なんだろうけれど、殿下のあの性格じゃ…寧ろ、余計な問題を起こしそうな気がしてならないんだ。そこで、気心の知れた君に頼もうと思ってね」
「…はぁ…」
「勿論、殿下にとっても、君が傍にいる方が安心だと思う。何せ、社会経験ゼロ、だからね…一応、一般常識は教えたけど、全くの素人だから…」
「…ですよね…」
 思わず苦笑するゼフィー。元々こちらも温室育ちのゼフィーに言われるくらいだから、傍から見てもやっぱり相当なのだろう。
「了解して貰える?」
 多分…ゼフィーのことだから、拒否はしないだろう。
 そうはわかっているのだが…一応、様子を伺うように問いかけてみる。
「…まぁ…他に頼む相手がいないですものね…わかりました。良いですよ」
 案の定、ルークの想定通りの答えが返って来る。わかってはいたものだが、何となくホッとした。
「…それで、いつからですか?」
「準備が出来次第、多分直ぐに。だから、早ければ来週から、かな」
「…ホントに急な話ですね…」
「まぁ…ね」
 確かに急展開であるが…まぁ、シリウスの気が変わらないうちに…と思えば、納得も行くだろう。
「それで、なんだけどね……」
 身位を明かせない状況なのだから、細かい打合せも必然的に必要となる訳で。それを一つ一つゼフィーに説明しながら、これさえ終われば、ある程度肩の荷は下りると思うことが、今のルークにはささやかな安息だった。

◇◆◇

 ルークが士官学校にやって来た翌日。
 昨日受け取った入学許可証と、入学の為に必要な品を手に、ルークは皇太子宮を訪れていた。
「…では、こちらが入学許可証と…こちらが制服、こちらが教科書と……」
 持参して来た物を一つずつテーブルの上に並べて行くルーク。けれどシリウスのその表情は、ぼんやりと窓の外に向けられていた。
「…聞いてます?」
 全くの他悪魔事のような態度のシリウスに、ルークは溜め息混じりにそう問いかける。
「…聞いてるよ。入学の準備だろう?別に、一つずつ説明する必要もないじゃないか。見ればわかるよ」
 実に面倒くさい、と言う声で返すシリウスに、ルークは再び溜め息を一つ。
「…士官学校に入れば、もう誰の手も借りられませんよ。寮は独り部屋ですし、授業の用意だって、ゼフィーを頼りにしてはいけませんよ。自分でやらなければならないのですからね。今のうちに良く心得ていて下さいよ」
「わかってるって」
 そう言いながらも、シリウスはルークの方を見ようとはしない。完全に煙たがられているようだ。
 そんなシリウスの姿を前に…ルークは、小さく息を吐き出す。
「先日…陛下に比べて、貴殿の入局の時期が早いのはどうしてだ、と問いかけられましたね…?」
「…あぁ。何、親父に聞いたの?」
 少しだけ興味を向けたその声に、ルークは言葉を続けた。
「えぇ。陛下の頃は天界との関係も今ほど落ち着いておらず、情勢も違うこともあったようです。ですが一番は、陛下の教育係の方針だったようです」
「教育係の方針?」
「…はい」
 確か…ルークが教育係となった時に、父たるダミアンの教育係の話を聞いた記憶がある。
 自分が任務で留守にする時に寂しくないようにと、オルゴールをプレゼントしたとか。そのオルゴールは、今はシリウスが受け継いでいる。あれは何処へしまっただろう…と、考えていると、ルークが言葉を続けた。
「…今よりもずっと危うい情勢の中で陛下を護る為に、かなり過保護だったようで…十分安全を確保する為に、入局時期が遅くなったようです」
「…へぇ。じゃあ、俺が早く入局するのは、今が安泰だから、ってことか?」
「…言ってしまえばそう言う事です。ただ、安泰だからと言って…全てが安全、と言う事でもありません。念の為に、ゼフィーに話をして来ました。何かあった時に、貴殿一名では危険過ぎます。せめてゼフィーがいれば、連絡が取れますから」
「…ゼフィーに対応出来るなら、俺だって十分だと思うけど?」
 確かに、そうかも知れないが…それでも、シリウスの境遇を知るゼフィーがいれば心強いはず。
「念には念を、です。わたしは、陛下の教育係より、過保護ではありませんが…それでも、出来る限りの準備は致します」
 溜め息交じりにそう零したルーク。多分、これ以上言って聞かせたところで納得して貰えるかは定かではない。あっさり引いてしまう方が良いだろう。
「…では…私はこれで失礼致します。入学の日に迎えに参ります。それまでに、準備をして置いて下さい」
 些か心配ではあるが…このまま退散することにしたようだ。シリウスの返事を待たずに、ルークは一礼をして踵を返す。
 その足音がドアの向こうに消えると、シリウスは大きく息を吐き出してやっとテーブルの方に視線を向けた。
 ルークが置いて行った荷物は、丁寧にテーブルの上に並べられてある。
「…ったく…ルークも十分過保護だ、っつーの。ホント、心配性なんだから…」
 溜め息を吐き出しつつ、再び窓の外へと視線を向ける。
 この景色も、暫くは見られなくなる。そう考えると、ほんの少しだけ残念なような気もする。
 けれど…もう少しすれば、彼の悪魔の子供に会える。
 大いなる期待を寄せている訳ではないが…彼の悪魔の面影を少しでも感じることが出来るなら上出来だろう。
 ほんの少し、唇の端に笑みが零れた。
 まずは、出会わなければ。そうしなければ、何も始まらない。
 今は、それが楽しみであった。

◇◆◇

 それから数日後。その日は天気もすこぶる良かった。
 朝早く皇太子宮を訪れたルークは、彼の自室のドアを軽くノックする。
「ルークです。御迎えに参りました」
『…どうぞ』
 中からそう声をかけられ、ルークはゆっくりとドアを開ける。
 明るい部屋の中に、士官学校の制服に身を包んだシリウスがいた。
「…見違えましたね」
 まだ、ぎこちなさはあるものの、その姿は士官学校の学生そのものである。
「…まぁ、一応な」
 シリウスも満更でもないのだろう。機嫌良く言葉を返す。
「他の荷物もまとめてありますね?」
「あぁ。出来てるよ」
「では、参りましょうか。私は、士官学校の門の前までの見送りになります。そこから先は、"天狼"御独りになりますので」
「了解」
 大きく息を吐き出し、シリウスは荷物を持ったルークの後に続いて出発する。
 もう、後戻りは出来ない。

 士官学校の門の前まで一緒にやって来た"天狼"とルーク。
 漸く、自分の手を離れる。出会ってから今までの苦労と、成長を感じる安堵感。そんな感慨深い想いが過ぎるルークだが、"天狼"は一度もルークの顔を見ない。勿論、これからの期待しかない"天狼"には、そんな感慨など一切ないなのだろうが。
「…では、御気を付けて…」
 その声に、軽く頷いただけ。"天狼"からルークへ、返す言葉もない。
 ここから先は、以前学長代理を務めたルークでさえも用がなければ簡単には入ることが許されない場所。この先は何があっても自己責任でしかない。
 一抹の不安を覚えつつも、"天狼"に任せるしかないのだ。
 無言で士官学校の門を見上げる"天狼"の姿に、大きな溜め息を一つ。
 とその時。
「…なぁ、ルーク…」
 不意に"天狼"が口を開く。そして真っ直ぐに、ルークへと視線を向けた。
「…どうしました?何か…ありましたか?」
 その姿に向けて問いかけると、"天狼"は大きく息を吸い込む。そして、その口を開いた。
「…何で…親父だったの?」
「……え?」
 咄嗟に答えられず、ルークは思わず息を飲んだ。
 自分を見つめた、青い瞳。恋悪魔と同じ色の瞳を前に、どう答えて良いのかわからなかった。
 けれど、それ以上問われることはなかった。
 すっと伏せられた瞳。
「まぁ…良いや」
「…"天狼"様…」
 何を問いたいのか。それはわからない。けれど…再び顔を上げた"天狼"は、気持ちを切り替えるかのように、大きく息を吐き出す。そして、ルークへと視線を向けた。
「せめて、笑って見送れよ。御前の、一番の顔で」
「……は?」
 先ほどの問いかけとは全くかけ離れた、思いがけない言葉。当然…そう言葉を投げられたルークは、混乱気味。だが、"天狼"はそんなことは全く御構い無しに、更に言葉を続けた。
「仏頂面で、溜め息ばっかり吐いてるんじゃねぇよ!笑顔は御前の専売特許なんだろうがっ」
 そう言われて、ドキッとする。
 思えば…ここ暫く、笑った記憶がない。職務に走り回り、"天狼"に振り回され…仲魔にも…そして大事な相手にさえ、自慢の笑顔を見せていない。
 指摘されるまで…笑うことを、忘れていた。
 口を噤んだルークに、"天狼"は真正面に立つ。そして頭一つ以上背の高いルークの胸倉を両手で掴むと、グイっと引き寄せた。
「ちゃんと、笑って見送れ。それが…礼儀、ってモンだろうが」
 まさか、"天狼"の口から"礼儀"などと言う言葉が出て来るとも思わなかった。けれど…そんな言葉がちゃんと出て来るということは、ルークの教育も無駄ではなかった、と言うことだろうか。
「…そう、ですね。ちゃんとしましょう」
 小さな吐息を吐き出したルークは、自分の胸倉を掴んでいる両手を、その手でそっと包み込む。そしてそのまま胸倉を掴んでいた手を解くと、そのまま握り締めた。
 そして。
「…貴殿と離れることが、今は少し寂しく思います。わたしが教育係として就いてから…いえ、"就く前"から…戦いましたね。それも、二回も。それでも、受け入れていただいて…わたしも精一杯、何処に出ても恥ずかしくないように御育てして来たつもりです。入局が決まった途端、士官学校へと短期入学となりましたが…貴殿が選んだ道、ですから。わたしは、貴殿を信じて…見護って、いますよ」
 その言葉と共に、にっこりと微笑む。
 ほんの少しだけ、憂いを残してはいるが…華やかな、最高の笑顔で。
 思い出せばキリがないくらい…散々振り回され、幾度溜め息を吐いたことか。自分のやっていることが正しいのかどうかも、正直、自信はなかった。
 けれど、実際"天狼"は有能であった。勉学も、能力の使い方も、興味を持ってコツさえ掴めばあっと言う間。その点に関しては、苦労はなかった。
 そんな記憶を辿りながら、ルークは微笑む。
 まるで…オトナになった我が子を見護る、父のように。
 そんな笑顔を向けられた"天狼"も、少し表情を和らげる。そして荷物の中から小さな小箱を取り出すと、ルークの手の中へと押し込んだ。
「…これは…」
 見覚えのある小箱。蓋を開けてみれば、懐かしい音色が聞こえた。
「俺が離れて寂しいだろう?戻って来るまで、それ、貸してやるから」
 ニヤリと笑う"天狼"に、ルークは顔を上げる。
「心配すんな。御前が俺を育てたんだろうが。胸張ってろ。それに、御前も…俺にとっては、十分過保護だったから」
「……"天狼"様…」
 口調は相変わらず乱暴だが、"天狼"にとっても後ろ盾のない状況は初めてなのだから…それなりに思うところはあったのだろう。こうして腹を割ってくれたことが、何よりの証拠、だった。
「行ってらっしゃいませ」
「あぁ。成長して帰って来るのを楽しみにしてろよ」
 ニヤリと笑ってそう言った"天狼"は、ルークから一歩、離れる。そしてそのまま、背を向けて走り出した。
「…信じてますって…当然でしょう?俺が、育てたんだから」
 手の中の小箱を大事そうに見つめ、くすっと笑ったルーク。その顔は、心配ではあるが…何処か、満足そうに見えた。

◇◆◇

 門の前でルークと別れた"天狼"は、案内されるままに学長室へと足を向ける。
「こちらです」
 促されるままに、学長室のドアをくぐる。
 学長と簡単な挨拶を交わしていると、そのうちにドアがノックされた。
『績羅です。失礼致します』
「どうぞ」
 学長の声に応えるようにドアが開き、姿を現した一名の悪魔。
「主任識者の績羅だ。困ったことがあれば、君の力になってくれるだろう」
「…はぁ…」
 大人しくしていれば、何も困ったことなど起きないはずだ。ならば、相談することなど何もない。
 そう思いつつも、流石に天狼もそれは口にはしなかった。
 余計なこと、目立つことはしない。それは、ルークとの約束でもあったからだ。
 績羅に促されるままに、天狼は学長に挨拶をすると学長室を後にする。そして、まず寮へと案内された。
「今日は、授業へは参加しなくても結構です。部屋で荷物の整理でもしていると良い。明日からは、他の生徒と一緒に授業に参加するように。クラスは聞いているね?」
「…はい。問題ありません」
「それならば宜しい」
 績羅は小さく頷くと、踵を返して校舎の方へと帰って行く。
 天狼はその背中を見送りながら、小さく頭を下げる。
 特に整理するほどの荷物もなかったが、部屋にいろと言うのなら、大人しくそうしていよう。
 天狼は大人しく自室へと向かう。そしてそのドアを閉めると、大きく息を吐き出して…少し考えた後、その部屋全体に結界を張る。
 これで、多少能力を解放しても問題はないだろう。
 慣れない場所の緊張感もあって、流石の天狼も気分的にはすっかり草臥れ果てていた。そこでベッドに横たわると、大きく伸びをして身体の緊張を解す。
 この場所で、天狼の正体を知っているのは学長とゼフィーだけのはず。先程会った績羅も、天狼の正体は聞いていないはずである。
「…意外と面倒だな…」
 意気揚々とやって来たものの、いざこの環境を目の前にすると、窮屈で仕方がない。だが、それを選んだのは他の誰でもなく自分自身なのだから、今更弱音を吐く訳にも行かず。
 大きな溜め息を吐き出すと、いつしかそれが欠伸となり、緊張から解き放たれたこともあって、うとうとと眠りに落ちていた。

 どのくらい、眠りの中にいたのだろう。
 ふと戻って来た意識の遠いところに、ドアを叩く音が聞こえた。
「……?」
 それが現実だと判断するまでに、ほんの少しの時間を要した。だが直ぐにベッドから起き上がると、手櫛で髪を整えながらドアへと向かう。
「…はい?」
 声をかけると、ドアを叩いていた音が途切れ、声が聞こえた。
『…天狼?僕だよ、ゼフィー』
「…あぁ…」
 大きな欠伸をかみ殺しつつ、指先を振って結界を解く。そしてそのドアを開けると、そこには見慣れた姿が心配そうな顔をして立っていた。
「…随分呼んでたんだけど…寝てたの?」
「…まぁ…そんなところだ」
 相手がゼフィーならば、何の気兼ねも要らない。
 再び大きな欠伸をしつつ、ゼフィーを部屋の中へと促す。そしてそのドアを閉めると、再び結界を張った。
「…結界、張ってたの?」
「…気付かなかったのか…?」
「………気配はないな、と思ってたんだけど…」
「………」
 相変わらずのんびりとしたゼフィーの姿に、天狼の方が心配になって来る。
「…御前さぁ…そんなんで、ホントに無事にやってるのか?」
「何が?」
「…いや…まぁ良いや」
 これから暫くは、自分も彼の傍にいるのだから、今ここでそんな心配をする必要性はない。そう判断した天狼は、大きく息を吐き出す。
「明日から、授業に参加するんでしょう?」
 そう切り出したゼフィーの声に、天狼は椅子に腰を降ろして小さく頷く。
「そうらしいな。まぁ、授業は問題ないさ。これでも、帝王学だって一通りやり終えたんだから。実技だってルーク仕込みの腕だ。何の問題もない」
「まぁ…それはそうだろうけど…それでも、気を引き締めてよ。うっかりボロを出そうものなら、後々苦労するのは天狼なんだからね」
「わかってるよ」
 ゼフィーに苦言を呈されるとは。だが、この士官学校では、ゼフィーの方が経験を積んでいるのだから、大人しく聞いていた方が良いだろう。
 それは、天狼の"妥協点"でもあった。
「…で。"彼女"には、俺のことを話したのか?」
 それが一番気になる点。
「ううん。まだ。今日は授業が終わった後真っ直ぐここに来たから、会う機会もなかったし。多分、明日は会えるよ。"いつもの場所"に行けばね」
 天狼の一番の目的。それを知っているゼフィーは、小さく笑を零す。
 けれど…たぶん、天狼の思っている通りには事は進まない。それはゼフィーには何となく感じているところであるのだが…当の本魔は楽しみにしているようなので、余計な口は挟まないことにしたようだ。ゼフィーもそれ以上は"彼女"については触れなかった。
「…それにしても…まだ"天狼"って言い慣れない」
 くすくすと笑いながらそう零すゼフィーに、天狼の方も溜め息を吐き出す。
「俺も呼ばれ慣れないね。まぁ…気を張っている時は注意して聞いているから、問題はないと思うけどな」
 こればっかりは、もう慣れていくしかないのだから。
「まぁ、暫くの辛抱さ」
「頑張ってね。影ながら応援するよ」
「…何で影なんだか…」
 くすくすと笑い合う。そんな時間は、実に平和で。
 自ら踏み込んだ、閉鎖された場所。ここでこれから何が待ち構えているのかは…まだ、わからない。
 だからこそ、珍しく興味を抱いたのかも知れない。

◇◆◇

 運命の歯車は、ゆっくりと噛み合って行く。
 そして、複雑さを増しながら、運命は進んで行く。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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