聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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星彩~休息日
朝から天気が良い。
窓を開け放ち、大きく深呼吸をする。朝早い時間の空気はとても冷たい。だが、だからこそ心地好い。
「…暇だなぁ…」
数日間の休みの初日。その間、特に何の予定もない。
吐き出し窓からテラスへと出て、暫し外気浴をする。
だがしかし。
「…さぶっ」
思わず、両手で腕を擦りながら部屋の中へと戻る。
今日は天気は良いが、空気は冷たい。雪こそ積もってはいないが、数日前まで雪もちらついていた。要はそのレベルの冷え込みなのだ。
改めて、部屋の中から外を眺める。
「……そうだ」
時間はたっぷりある。だったら、普段出来ないことをやろう。
思い立ったらすぐ行動。服を着替えると、用意されていた朝食もロクに手を付けないまま、屋敷を出て行く。
道の端に残った雪を踏みながら歩みを進める。その姿は、年相応…と言うよりも、随分幼い。だが、滅多に見られないその姿は、実に楽しそうだった。
久々に、纏まった休日。目が覚めた時には、既に昼近くだった。
珍しく思う存分睡眠を取った。そう思いながら服を着替えてリビングへと向かう。
だがしかし。
「……何故、御前がここにいるんだい…?」
リビングに足を踏み入れた途端、目に入ったのは…ソファーで寛いでいる息子たる皇太子の姿。
「親父、遅いよ」
「遅い、ではなくてな…何故ここにいるのか、と聞いているんだが…?」
何が起こっているのか、良くわからない。そんな、混乱気味の表情で問いかけると、息子たる彼は小さく笑う。
「暇だったから、偵察に来た。てっきりルークを連れ込んでるのかと思ったらいないじゃん」
「…御前ねぇ…」
呆れた溜め息を吐き出しながら、ソファーへと腰を下ろす。
「ルークは余程のことがない限り、ここへは来ないよ。馬鹿なことを言うものじゃない」
「でも恋悪魔だろう?あぁ、親父が出向くの?流石にフットワーク軽いな。"あのヒト"のところとは大違い」
「……シリウス?」
さらっととんでもないことを言われた。当然、父王は唖然としている。
「…あぁ、俺知ってるから。親父とルークの事」
「ちょっ…??御前、何を言って…??」
些か困惑気味。彼がその関係を知り得ている、との報告は一切受けていない訳で…当然、どう返して良いのか、咄嗟に言葉も出ない。
珍しく混乱している父王の姿に、彼は平然と言葉を続けた。
「ルークから聞き出した。まぁ、前から知ってたけどな。ルークからあんなに親父大好きオーラ出されてたら気付くって」
その言葉には、父王も閉口する。
一緒にいる時は気を付けていたのだから、そんな姿を見せた覚えは一切ないのだが…それでも気付かれていたとは。その鋭い感覚を褒めた方が良いのだろうか…とも思ってしまう。
大きな溜め息を吐き出す父王の姿に、彼は少し首を傾げる。
「…ねぇ、ルークとは結婚する前から続いてるんでしょう?俺も職務に就いたし…だったら、もういい加減…"あのヒト"と、別れても良いんじゃない?そしたら、ルークといたって何の問題もないじゃん?何でいつまでも、"あのヒト"と一緒にいる訳?ロクに顔も合わせないクセに」
突然切り込んで来た彼。だが、流石にいつまでも唖然としたままの父王ではない。話の内容が内容だけに、冷静さを取り戻していた。
「シリウス。他悪魔に話をする時に、"あのヒト"と言うのはやめなさい。母親、だろう?それに…別れるつもりはないよ。彼女との約束だからね」
ソファーに深く背を凭れ、穏やかに言葉を放つ。
「何でだよ。"あのヒト"…"母様"だって、別れた方が好きなことが出来るんじゃないのか?ルークだって親父だってそう。こんなの、誰の徳にもならないじゃないか」
穏やかな口調だからこそ…腹立たしい。そんな色を乗せた声に、父王は小さく笑いを零す。
「わたしは、ルークを縛り付けるつもりはない。それは、ルークも承知していることだ。離れるつもりになれば、いつだって自由になれる。わたしの願いは、ルークが倖せであることだからね。今の状況は、わたしにとっても彼女にとっても何の問題もない。御前が勝手に余計な気を回しているだけだろう?」
「余計なことじゃない。ルークは俺の教育係だったし、今だって御目付け役だ。親父よりもずっと長い時間、一緒にいるんだ。落ち込まれでもしたら、俺の職務にも影響するんだよ。良いのか?職務が滞っても」
「御前ねぇ、職務が滞ることを、他悪魔の所為にするんじゃないよ。第一、ルークの機嫌は御前の職務とは関係ないだろう?御前の前で、機嫌に左右されるルークではないはずだが?」
正当な意見を言っているようで、実は父王の言う通り、自分の職務にはほとんど影響はない。それが総参謀長としてのルーク。父王はその姿をちゃんとわかっている。
真っ直ぐに視線を向けられ…彼は小さく肩を竦めた。
「…まぁ、ね。ルークがそこまで馬鹿じゃないことぐらい、俺だって知ってる」
半分は冗談。けれど、もう半分は本心。
彼の表情でその心内を察した父王は、苦笑する。
「そう言う冗談に、ルークを巻き込むんじゃない。それで…御前がここに来た目的は一体何だい?」
問いかけられた声に、彼はソファーの背凭れに深く背を預けた。
「目的?別に?今日から休暇だけど、やることもないから暇つぶしに。もしかしたらルークがいるかも~と思ってさ。ついでに色々聞いてやろうと思っただけ」
「…暇つぶしにしては、なかなかハードな内容だったが?」
そう返しつつも、王都に来たばかりの頃は、自分からは一切近寄って来なかった。それを思えば、手加減の一切ない切り込みではあったが、自分から関わりを持とうとする姿には安堵していたりする。
「…じゃあ…折角だから、特別な場所に連れて行こうか」
「…特別な場所?ここじゃなくて?」
「あぁ、ここではない場所、だ」
興味津々で、その目が輝く。滅多に見ない、そんな素直な姿に苦笑しつつ、父王はソファーから立ち上がった。
「さぁ、それでは行こうか」
「うん!」
彼もソファーから立ち上がると、先を歩く父王の後に着いて行く。
嘗ては経験出来なかった、親子水入らず。しかも、御互いに何処か楽しそうな姿。
そんな姿を微笑ましく見送る執事や使用魔たちであった。
郊外の鬱蒼とした森。誰も立ち入ることのない森の中は未だ雪が残っていた。
その森の中を、父王の後を追いながら不思議そうに首を傾げる彼。
「こんなところに何があるの?」
問いかける声に、先を行く父王は少し振り返りながら小さく笑う。
「もう少し行けばわかるよ。まぁ、黙って着いておいで」
「………」
先を行く父王の足取りは軽い。それだけで、楽しみな場所なのだろうと察する。
そうして歩くこと暫し。
目の前に現れたのは、一軒の屋敷。見た目は父王の屋敷と同じくらいの大きさ。
「…ここは?」
玄関の扉へと歩み寄りながら問いかけた声。視線は屋敷の外観を観察しているようだった。
「ここは、わたしの生家だ」
「生家…?」
「そうだ。元々先代の大魔王の別宅だ。まぁ、わたしがいたのは本当に小さい頃だけだったけれどね。御前より小さいうちに、皇太子宮へ移ったからね」
「…へぇ…」
思いも寄らない場所。だが鬱蒼とした森の奥は、安全を確保するには万全の場所だった。
自らドアを開け、屋敷に中へと入って行く。出迎える使用魔たちは、そんな様子に驚きもせず当たり前のように受け入れている。そんな様子も、彼は興味深く眺めながら、父王の後に続いていた。
そしてリビングへとやって来ると 壁にかかる、大きな肖像画が目に入った。見覚えのない…美しい、金の巻き毛の女性。何処か、目の前の父王と似ている気がする。
「…誰?」
父王を振り返りながら問いかけた彼に、父王はソファーに腰を下ろすと、ゆっくりと口を開いた。
「…わたしの母、だ。尤も、わたしが生まれて直ぐ亡くなったから、何も覚えてはいないけれどね」
「…そう…」
流石の彼も、どう返して良いのか迷うところだった。
そして…ここへ連れて来られた意味も。
「ここは、先代の大魔王…まぁ、わたしの親父だが…その親父の別宅でね。わたしが皇太子宮に移ってから職務に就くまでは、わたしはここへ戻ることはなかったんだ。だが、職務に就いて最初の発生日に…初めてここへ戻って来た。そうしたら、普段忙しくて殆ど顔も合わせなかった親父がいて…毎年、わたしの発生日には必ずここにいたことを知ったんだ。わたしの発生日は、母の命日だから…この場所で、母に会う為に、ね。それからは、わたしもそれが習慣となった。ここで、親父と母と、三名で一日過ごす。親父が眠りに着いてからは、母と二名になってしまったけれどね」
「………」
彼もソファーに腰を下ろしつつ、父王の話に耳を傾ける。
普段、自分の生い立ちなど一切話したことのない父王。その話には興味はあったが…やはりまだ、父王の意図はわからない。
「他のヒトはここへ来ないの?ルークとか、デーモンとか…」
「いや、誰も。あぁ、ゼノンは一度…偶然森の前で会ってしまってね。連れて来たことはあったが…誰かを連れて来るのはそれ以来だね」
肖像画に向けられた父王の眼差し。その、懐かしそうな眼差しは、とても優しい。
「わたしは、母の愛を知らない。親父とも、プライベートではそこまで一緒には過ごさなかった。だからと言う訳ではないが…家庭を持つ、と言うことに執着はない。ただ、大魔王としては話は別だ。後世を残さなければならないからね。そんなわたしの想いを受け入れてくれた彼女には、感謝しているんだ。こうして御前を産んでくれたのだからね。だから…後は、彼女の事には口出しはしない。別れないのは彼女の意思でもある」
「でも…そんな悠長なことを言ってて大丈夫なのか?親父の知らないところで、取り返しのつかないことにでもなったら…」
彼が母親の元を離れるまで。然程長い時間ではなかったが、引っかかるところは多々あった。それを考えると、いつかそれ以上に何かをする。それは彼の直感でもあった。
大魔王妃としての自覚があるのかどうかすらわからない。そんな状況での行動は、当然、大魔王たる父王の上にも降りかかって来るはず。
彼が職務に就いてから、流石にそれを考えるようになった。だから、子供である自分から、別れることを口にしたのだ。
だがしかし。
「…御前が心配することではないよ」
「親父…」
にっこりと微笑む父王。
彼の胸の内を…全て見透かしているのではないか。そんな眼差しに…ゾクッとした。
----全部、知って……?
知って尚…黙って見ている。多少振り回されたとしても、掌中にあるのなら、それが一番安全だから。
大魔王としても…父としても。
けれど…本当に……
ふと、その不安が顔に出る。そんな彼に、父王は再び笑う。
「御前は、何の心配もしなくて良い。彼女の周りに関してはともかく、御前に関しては何ら疑うところはない。間違いなく、御前はわたしの息子、だからね」
「…別に、疑ってねぇし。どう見たって、親子じゃねぇか」
ちょっと赤くなった顔を背ける。
見透かされたと言う気まずさと、はっきりとそう告げられた安堵感と。
この場所だからこそ、父王もすんなりと話すことが出来たのだろう。そしてここへ連れて来られた意味が、何となくわかった気がした。
母の肖像画の前では、嘘はつけないから。
ならば…それを信じるしかない。
父王と良く似た姿の彼は、父王と良く似た肖像画を見上げる。
「…また、ここに来ても良い…?」
「一名では駄目だよ。来たいのなら…わたしと一緒に、だ」
この場所で好き勝手をされては困る。そんな想いで放った言葉に、彼は小さく笑った。
「わかった」
素直な答えに、小さく微笑む。
良く似た容姿の二名…否、三名。そこには、血族としての確かな繋がりがあった。
夕方まで別宅でのんびりと過ごした父子。その帰り道。
「なぁ、親父…御婆様の肖像画はあるのに、どうして爺様の…先代の大魔王陛下の肖像画はないんだ?どうせだったら、一緒に飾れば良いのに」
そう、疑問をぶつける彼。
確かに、肖像画は一つだけ。先代の肖像画はなかった。
すると、隣を歩く父王はちょっと顔を顰める。
「まぁ…それはそうなんだが…親父に見られているのはちょっとね…」
「…親子のクセに」
「親子だから、だよ。御前だって見張られるのは良い気はしないだろう?」
「確かに」
いつにない父王の姿に、彼は笑いを零す。
そして、いつになく無邪気に笑った彼に、父王も笑いを零す。
同じ顔で笑う二名は、まさに親子だった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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