聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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星彩~出陣
壁にかけられた、真新しい執務服。
それを真っ直ぐに見据えた眼差し。固く唇を結び、これから先の未来を少しだけ考える。
「……ま、何とかなる、か」
想像つかないことに思いを馳せても、何も思い浮かばない。ならば、ただ進んでみよう。
いつか、追いかけて来るであろう仲魔たちの為に。まず、自分が足を踏み出さなければ。
「…よし、行くか」
気合を入れるように大きく息を吐き出すと、壁にかけた執務服に手を伸ばし、袖を通す。
出発の時間は、目前だった。
士官学校の研修を目前に控えたその日。
責任者として、色々と準備…ほぼほぼ、報告書の確認だが…に忙しくしていたルークだったが、その忙しい最中に大魔王たるダミアンからの呼び出しがかかった。
執務室に呼び出される用件に心当たりはなかったが、ここ最近忙しくてロクに顔も見ていなかった為、余り深く考えることもなく呼び出しに応じたのだった。
「失礼します」
執務室のドアをノックし、返事が返って来ると声をかけてドアを開ける。
「何かありましたか?」
そう言いながら執務室の中へと入ると…そこには、副大魔王たるデーモンと、もう一名。真新しい執務服に身を包んだ、皇太子が立っていた。
「ただいま」
「…シリウス様…」
思いがけない姿に、まじまじとその姿を見つめる。
士官学校に入る前より、多少背も伸びているようだ。短く切った緩い金色のウエーブ(巻き毛になるほどの長さではなかった)が良く似合い、すらりとした体躯を執務服に包んだその姿は若い頃のダミアンと良く似ていた。
「えっと…これはどう言う…?」
全く状況のわかっていないルークに、ダミアンが小さく笑いを零す。
「士官学校の短期入学を終えて、昨日戻って来たようだ。わたしも夜になってから会ったのだが…少しは成長したようだよ」
「…少し、って…」
不服そうに口を尖らせるシリウスに、デーモンも苦笑する。
「本日より、皇太子の職務に就かれるそうだ」
「…急すぎやしません…?」
思わず零したルークの言葉に、シリウスが溜め息を吐き出す。
「急、ってさぁ…じゃあ何か?御前は俺に研修受けろとでも言うのか?一名だけ研修に参加しない訳にもいかないだろうがっ」
「…研修……あぁ、そう…でした…」
そう。忙しくて認識が甘かったが…これから控えている研修は、ゼフィーたちの学年の初めての研修だったはず。シリウスもゼフィーと同じクラスにいたのだから、本来ならばこれから研修が始まるはず。まぁ、シリウスも言った通り…現皇太子が、何処かの局に研修に行けるはずもなく。シリウス自身はそのタイミングで帰還するつもりでいたのだろう。少なくとも、学長にはそう伝えていた。
教育係たるルークには、何の連絡もなかったが。
「まぁ、そう言うことだ」
シリウスとルークのやり取りに笑いを零したダミアンは、席を立ってルークの前へとやって来る。そして、一枚の辞令を差し出した。
「本日より、皇太子の御目付け役として任命する。宜しく頼むよ」
「…はい」
辞令を受け取ったルークは、シリウスに向け、頭を下げる。
「宜しく御願い致します」
「あぁ、宜しく」
務めて冷静なシリウス。
「デーモンも、副大魔王としてシリウスを頼むね」
「御意に。宜しく御願い致します、シリウス殿下」
にっこりと微笑んで頭を下げるデーモン。その姿にも、シリウスは冷静に返事を返していた。
そんな姿を眺めながら…ルークは感慨深げに小さな吐息を吐き出す。
出逢った頃とは比べ物にならないくらい、落ち着いていて立派な姿。この姿を見る為に、懸命に育て上げたのだから、その努力も無駄ではなかった。
そして、些か強引だったが…士官学校に入ったことも、きっと良い経験となったはず。少なくとも、そう思いたい。
「…どうした?」
ぼんやりと物思いに耽っていると、不意にそう声をかけられる。視線を向けてみれば、真っ直ぐに自分を見つめるダミアンの眼差しがあった。
「いえ…何でもありません」
こんなところで、物思いに耽っている場合ではなかった。そう思い、大きく息を吐き出すと、その視線をシリウスへと向けた。
「…では、これから今後の職務の話を…」
「俺、ルークの執務室に行ってみたい」
「…はい?」
ルークの言葉を遮るように、シリウスが不意に声を上げた。当然、ルークだけでなく、ダミアンもデーモンもきょとんとした顔をしていた。
「今までは立ち入れなかったけど、これからは行っても構わないだろう?」
そう言いながら真っ直ぐルークを見つめたシリウスに、ダミアンが溜め息を一つ。
「まぁ…行くのは構わないが…ルーク、迷惑なら断っても構わないぞ…?」
その言葉に、ルークも溜め息を一つ。
「…断る理由は特にないですよ。まぁ…今忙しいので、ちょっと散らかってますけど…」
「じゃあ、早速行こう!」
間髪入れず、シリウスはルークの腕を取って歩き出す。そしてそのまま、ルークを引きずるかのようにダミアンの執務室を出て行った。
その後ろ姿を見送ったダミアンとデーモン。
「…大丈夫…ですかね…?」
思わず零したデーモンの言葉に、溜め息を吐き出すダミアン。
「まぁ…シリウスを育てたルーク、だからね。何とかなるだろう」
些か不安ではあるが…先は長い訳で。ルークに任せておけば、何とかなる。そう思うしかなかった。
軍事局にある、ルークの執務室。そこを初めて訪れたシリウスは、机の上を片付け、御茶を淹れるルークを横目に、室内をきょろきょろと見回していた。
「執務室って、何処も同じ感じ?」
ソファーに座り、そう問いかけるシリウス。テーブルに御茶のカップを置きながら、ルークもシリウスの前へと腰を下ろした。
「多少は違いますが、雰囲気としては似てるとは思いますよ。シリウス様の執務室の方がもっと広いですけれどね」
散々通った、皇太子の執務室。今でもその様子はしっかり覚えていた。
ダミアンが大魔王の執務室に移ってからは、ずっと空室だった。なので、足を踏み入れることはなかった。けれど、そこには沢山の思い出があった。代替わりをして、そこがシリウスの執務室として使われるようになることには、未だ実感がないが。
「…そう言えば……」
ふと思い出したように、ルークが席を立つ。そして、執務机の引き出しから小箱を取り出すと、それを手に再びソファーへと戻る。
「…御預かりしておりましたが…御返ししましょうか…?」
それは、シリウスが士官学校に入学する時にルークに預けたオルゴールの箱。
「…あぁ、これね」
ルークから小箱を受け取ると、その蓋を開ける。柔らかなメロディーが流れ出し、暫し、そのメロディーに耳を奪われる。けれど、聞き入るルークとは反対に…シリウスは小さな溜め息を一つ。そして、徐ろに蓋を閉め、ルークへと突き返した。
「まだ、返さなくて良い」
「…まだ、とは…」
首を傾げるルークに、シリウスは御茶のカップを手に取る。
「御前、その曲好きなんだろう?いつも嬉しそうに笑ってるから。だったら御前が持っていれば良いし。時々聞きに来るから」
「…好きと言うか…」
確かに、好きか嫌いか…で問われれば、嫌いではないので好き、と言うことにはなるのだろう。けれど…曲が好きだから、と言うには語弊があるように思う。
元々、ダミアンがまだ皇太子であった頃…しかも、自分が魔界に降りる前、まだ子供だった頃。教育係たるルシフェルに貰った物。そしてそれをルークが譲り受け…そしてシリウスにと譲ったのだが、またルークのところへと戻って来た訳で…寂しさを紛らわせる、という本来の目的からすれば、今は寂しい訳でもない。なので、自分が所有していなくても良いような気がしなくもない。
だが…ルークにしてみれば、それが父親たるルシフェルの唯一の形見であり、ダミアンの所有物であったから。だからこそ、嬉しかったのだ。純粋に、その想いだけ。
どうしようか…と迷いの表情が見えたルーク。じっとルークの様子を見ていたシリウスには、それを感じ取ることは出来た。
その迷いの原因は、一つ。
「…そう言えばさ…」
御茶を飲みながら、シリウスは口を開く。
「俺も、皇太子としての職務についた訳だし…この際だから、聞いておこうと思うんだけど…」
「…何を、です?」
嫌な予感がする。そう思いながら問いかけると…案の定。
「何で、親父と結婚しなかったの?」
「………はい?」
流石シリウス…と感心してしまうくらい、思い切り良く突っ込んだ質問に、ルークは首を傾げ、眉を寄せる。
「…えっと…何の話、です??」
何故、いきなりそんなことを聞かれるのか。そう思いながら問いかけると、シリウスは手に持っていたカップをテーブルへと置く。
「士官学校にいる間に、色々聞きたいことを考えていたんだ。まず、親父とのこと。それから、どうして結婚しなかったのか、どうして俺の教育係になったのか、これから親父とどうしたいのか……」
「ちょっ…ちょっと待ってください!」
指折り数えるシリウスに、慌てたルークが口を挟む。
「ダミアン陛下とは別に何も…っ」
だが、シリウスは全く表情を変えない。
「今更隠してどうするんだよ。別に、御前と親父のことは知ってるし」
「…シリウス様……」
顔面蒼白で、大きな溜め息と共に肩を落としたルーク。そんなルークを覗き込むように、前のめりになって様子を窺う。
「俺、士官学校に入る前に聞いたじゃん?"何で、親父だったの?"ってさ。なのに、この期に及んで気付いてないと思ってた訳?」
そう問いかける声に、ルークは再び大きな溜め息。
「…そうですよ、わかっていましたよ…貴殿にそう言われてから、貴殿は全部知っているんだと…ずっとそう思っていましたよ…」
諦めたように項垂れるルークに、シリウスは興味津々。
「じゃあ、話を戻す。何で結婚しなかったの?」
話を戻され…漸く、シリウスがルークの執務室へ来たがった理由がわかった。
ここなら、こそこそしなくてもダミアンにもデーモンにも話を聞かれない。だからこそ、わざわざ押しかけて来たのだ、と。
そこまでして、何も聞かずに帰るはずがない。シリウスを良く知っているルークだからこそ…諦めるしかなかった。
「…その前に…ダミアン様にもこの話をしましたか…?」
ダミアンの様子を見る限り、まだ何も話してはいないだろう…と思いつつ、念の為に聞いてみる。すると案の定、シリウスは首を横に振った。
「まだ。昨日の今日、だしな。入局の準備が慌ただしくて、それどころじゃなかった。まぁ、ルークに聞いた方がすんなり話が聞けそうだし?」
「…その素晴らしい炯眼を、仕事に生かしてくださいね…」
最早、話を変えることも出来ず。溜め息を吐き出すと、ルークは自分のカップに手を伸ばす。
そして。
「わたしは…堕天使なのでね。子を、孕むことが出来ないのですよ。世継ぎを産むことが出来ないのなら、役には立たないでしょう…?だから…結婚なんて、最初から無理なこと、です」
ルークにとっては、重い言葉。それを、世継ぎたるシリウスに話すことになるなど…想像もしてはいなかった。
御茶を啜るルークを真っ直ぐに見つめたまま…シリウスは小さく首を傾げる。
「…親父が産めば良いのに。大魔王だから産まないの?雷帝は自分で産んだよね?ゼフィーがそう言ってたし。伴侶が産まなきゃいけないって言うのは、ただの偏見じゃん?産める方が産めば良いのに」
「…シリウス様…」
何処までも真っ直ぐなその眼差し。ただ純粋に疑問に思っただけなのだろうが…そんな簡単な問題ではないことは、ルークにはわかっていた。けれどシリウスには、まだわかっていないのだろうか…否、そんなはずはない。
「大魔王陛下が、職務を休む訳にはいきません。前大魔王陛下は、ダミアン陛下が御成婚される前に引退され、眠りについてしまわれましたから、大魔王に就任する前より一名で魔界を背負って来たのです。雷神界は、ライデン陛下が雷帝に就任してからも前雷帝は御健在でした。その差もあるのですよ」
「だから頭が固いって言ってんだよ。デーモンだって、俺が生まれる前はまだ元気だったんだろう?何の為の副大魔王だよ。大魔王の仕事を支えるのがデーモンの役割じゃねぇか。デーモン一名に背負わせることが出来なくたって、御前だってエースだってゼノンだって…あぁ、ゼノンは雷帝が子供を産んだばかりで雷神界に行く機会も多かっただろうけど…それでも、上層部には有力者が沢山いるだろうが。何の為に、それだけの有力者がいるんだ。そう言う時こそ、御前たちの得意な"仲魔同士の助け合い"、じゃねぇのかよ」
ルークの説明に、呆れたようにそう言ったシリウス。その言葉に、ルークは思わず唖然とする。
勿論、今更そんなことを言ったところで過去に戻ることは出来ないのだから、机上の空論にしかならないのだが…シリウスがそこまで柔軟に考えられることが驚きだった。
「…今更、過去を変えることは出来ません。ダミアン陛下が奥方様と御成婚なさらなければ、貴殿はここにはいなかった。その選択は、間違いではなかったと…わたしは思いますよ」
小さな溜め息と共に、ルークはシリウスにそう告げる。
「…だから御前はいっつも貧乏くじ引くんだよ。公式に認められない愛魔の立場に甘んじて、教育係も御目付け役も押し付けられて…教育係も御目付け役も、自分の職務との兼任じゃないか。面倒なことばっかり背負いやがって…」
愚痴を零すように吐き出した言葉に、ルークは思わずくすっと笑った。
「貴殿の御世話は…ちっとも、面倒ではありませんでしたよ」
「…ルーク…」
「余り、御自分を卑下なさらないでください。確かに、教育係としては大変なこともありましたが…それでも、今の貴殿の姿を見れば、苦労だったなんて思いません。教育係も、御目付け役も、押し付けられた訳ではありません。わたしが自分で、申し出たのですから。何の問題もありませんよ」
にっこりと笑うルーク。その表情に…シリウスは溜め息を一つ。そして、ソファーの背に凭れかかった。
「…っとに御前って変なヤツ…」
「でも、嫌いではないでしょう?こんなに、心配してくださるんですから」
「………」
苦虫を噛み潰したようなシリウスの顔。けれど、直ぐに苦笑いに変わる。
「嫌いだったら、とっくに解雇だったな。まぁ…悪かない」
「そうでしょう?」
ルークもくすっと笑う。
「でも、これからどうするつもりなんだ?このままずっと、愛魔でいるつもりなのか?跡取りは、俺がいるんだ。あのヒトなら…別れるのも、拘らないと思うけど…?」
不意にそう切り出した言葉に、流石のルークも首を横に振る。
「わたしは、今のままで納得しています。勿論、公表出来るものではないので、今わたしたちの会話は、他言無用で御願い致します。日頃から心労の絶えないダミアン陛下にも御心配をおかけする訳にはいきませんから、内密にしていただきたいのです」
「心労、ね…まぁ、それはわかった。どうせ、あのヒト絡みの心労が殆どだろう?前からそうだし…」
小さな溜め息と共に吐き出した言葉。ここに来て二度目の"言葉"に、ルークは意を決したように口を開く。
「…貴殿の仰る"あのヒト"は…母上様、でしょう?どうして…そんな呼び方をなさるんです?貴殿と母上様の間に…何か、あるのですか…?」
今度は、ルークの方が様子を窺うようにシリウスに問いかける。
その疑問は、ずっと引っかかっていたこと。
皇太子宮に来たばかりの頃…不意に訪ねて来た王妃を、喜ばなかったシリウス。その奇妙な関係は、ルークだけではない。エースもまた、引っかかっていたこと。
けれど、その質問にはシリウスは少し、目を伏せた。
「…別に。まぁ…真面に育てて貰った、とは思ってないけどな」
明らかに、歯切れが悪い。そこに何かあることは、恐らく確実。けれど、シリウスが口を割らない以上…今は、踏み込むべきではない。それは、ルークの直感。
「…そう、ですか。では…この話は、これでおしまいにします。ですが、もし何かあったら…わたしは、貴殿の味方、ですから」
何があっても、シリウスを護る。そして、必ず味方でいる。
それが、シリウスを育てて来たルークの想い。
少し視線を上げたシリウスは、にっこりと微笑むルークの姿に…少し、表情を和らげる。
「皇太子としての職務に着いたのですから、これから先は長いですよ」
「…わかってる。御前に…恥は、かかせないから」
ルークの想いに応えるかのように、シリウスが吐き出した言葉。
「期待、していますよ」
ルークが差し出した手を、シリウスはしっかりと握り締める。そして、真っ直ぐな眼差しでニヤリと笑う。
これから先、どんな未来が待ち構えているのか…それは、まだ何もわからない。
ただ、今のシリウスにとって、ルークは信頼に値する。それを実感出来たルークは、何よりも嬉しいこと。
「いよいよ出陣、だな」
「御供致しますよ」
しっかりと結びついた絆を実感しながら、シリウスも…そしてルークもまた、新たな一歩を踏み出したのだった。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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筋金入りのオジコンです…(^^;
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