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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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Wish

第四部"for EXTRA" (略して第四部"E")

こちらは、本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;

拍手[4回]


◇◆◇

 空を、ぼんやりと見上げていた。
 幾度目かの季節。
 数日前に、懐かしい相手から連絡があった。その誘いに誘われるまま、待ち合わせた場所へと向かう。
 穏やかな日差しと、風が気持ち良い。そう思いながら空を見上げる。
 そうして暫し…
「リシア」
「…っ」
 不意に顔を覗き込まれ…驚いて息を飲む。すると、覗き込んだ相手はくすっと笑いを零した。
 暫く振りに会った養い子、ケイトだった。
「御免なさい、遅くなって」
「…大丈夫…日向ぼっこ、していたから」
 その言葉に、目を細めて微笑む。
「それより…どうしたの、急に」
 問いかけた声に、ケイトは振り返る。その向こうに見えたのは、もう一名の姿。
「一度、紹介したいと思って」
 そう言って、後ろにいたもう一名を傍へと呼ぶ。
 短い金色の髪に、薄いグレーの瞳。どうやら生粋の天界人ではない雰囲気の青年。彼女が見知っているケイトよりも、まだ少し若いだろうか。
「わたしの養母」
 そう、紹介される。
「…ガイル、です…」
 何処か戸惑いがちに頭を下げる。恐らく彼女同様に急に呼び出されたのだろう。
「…リシア、です」
 彼女もまた、控え目に頭を下げた。そんな二名の姿を、ケイトは笑って見ている。
「御免なさい、リシア。ガイルはわたしの後輩で…士官学校を卒業して、今期ガブリエル様の軍に入ることが決まったから。その御褒美?」
 何が御褒美なのか、良くわからないが…すっと赤みの差したその頬に、その感情の端が見えた。
「済みません…俺が、御願いしたんです。ケイトがいつも貴女の話をするから…どんな方なのかと思って…」
 その言葉に、彼女はその視線をケイトへと向ける。
 相変わらず微笑むその姿。
 楽し気に、彼女の話をガイルに聞かせるケイト。その姿をぼんやりと眺める。
 身体は大きくなったが…生粋の天使様たる容姿は、出会った頃から変わらない。穏やかに笑い…本心を見せない。唯一変わったのは、そこだけだった。
 天界の二大勢力とも言われるラファエルとガブリエル。その軍に入れることは、最大の出世コースなのだと…聞いた記憶がある。
 今はラファエル軍に入り、順調に経験を積んでいるらしいケイト。その穏やかな微笑みで、どれだけの者を踏み台にして来たのか。
 尤も…彼女には、何の興味もないが。
「…リシア?大丈夫…?」
 その声に、ふと我に返った。
 心配そうに自分を見つめる眼差し。それだけは変わらない。
「…御免なさい、大丈夫」
 小さくそう答え、目を伏せる。
 そして。
「…ガイル、だったかしら…」
「…はい」
 不意に名を呼ばれ、ガイルは彼女へと視線を向ける。
「ケイトは…優しい?」
「…はい…」
「そう…」
 何を、問われているのだろう…?そんな表情を浮かべたガイルに、彼女は視線を上げた。
「気を付けなさい。心の見えない笑顔には、必ず裏があるから」
「…え…?」
 真っ直ぐに向けられた、色薄の眼差し。今までぼんやりしていた姿が嘘のように…その言葉だけは、妙に現実味があった。
「またそんなこと」
 くすっと笑うケイト。
「御免なさい、ガイル。リシアは時々、変なことを言うんですよ。昔から父のことも良くそう言っていたけれど、今でも一緒にいるくらいだから。余り気にしないでください」
「………」
 ケイトの言葉に、ガイルは黙って小さく息を飲んだ。
 ケイトの言う父も、養父である。ガイルはそう聞いている。
 幼い頃、両親を失ったケイトを、養父母が育ててくれたと。そしてケイトは、養母以上にその養父を敬愛している節がある。口には出さないが、そんな雰囲気をガイルは察していた。
 笑う養父と、笑わない養母。そして…先ほどの言葉。それは…何処か奇妙な関係。
 尤も…ヒトの育った環境をどうこう言えるほど、ガイルも良い環境で育ったとは言えないので、そこは口を噤むしかなかった。
「…そろそろ帰る時間ですね。リシア、有難うございました」
 にっこりと微笑むケイト。そして、先に踵を返す。
 歩いて行くその背中を見つめながら…未だ、動けないガイル。
「…置いて、行かれるわよ」
 こちらも、遠くなるケイトの背中を見送りながら、小さくそう零す。
 その声に、ガイルは口を開く。
「ケイトは…どうして、笑うんですか…?」
 思いがけないその言葉に、彼女はガイルへと視線を向ける。
 真っ直ぐに、ケイトの背中を見つめるガイルは…先ほどとは違い、何処か醒めた…冷たさを感じさせた。
「先ほど…俺に、言いましたよね?『心の見えない笑顔には、必ず裏がある』と。それは…わかる気がします…」
「…そう」
 小さく、相槌を打つ。そして、零した言葉。
「ケイトの笑顔は…あのヒトと、良く似ている。私は…好きじゃない、わ」
 思わず…小さく苦笑する。
 好きじゃない笑顔は、良く知っている。ならば…好きな笑顔は?そう問いかけられたら…どう、答えたら良いのだろう。
「気を付けて」
 彼女はそう言い残し、踵を返した。
 その背後に、立ち去る足音が聞こえる。どうやらガイルも、ケイトを追って行ったようだ。
 ふと足を止め、振り返る。やはりそこには、既に誰の姿もなかった。

◇◆◇

 空を見上げる。蒼黒の空に、蒼の雲。
「…どうして…笑うの?」
 思わず呟きを零す。
 脳裏を過ぎったのは…満面の笑み。
 それが、誰なのかはわからない。自分は、昔の記憶を無くしたと聞いた。心当たりがない、と言うことは…過去の記憶の断片、なのだろうか。
「…私の、好きな笑顔」
 くすっと、小さく笑いを零す。
 誰ともわからない相手だが…笑った顔が好きだ、と思う記憶だけはあった。
 そっと目を閉じ、その微かな記憶を辿る。
 裏表を感じさせない、優しい笑顔。
「…貴殿の笑顔が…大好き」
 零れた声は、いつになく柔らかい。そして、その表情も。
 いつか…その記憶が、戻れば良い。そんな想いが、いつも心に過る。
 そんな感慨に浸っていると、背後から声をかけられた。
「リシア、何をしている?」
 その声を聞いた瞬間、すっと現実に引き戻された。
 振り返ってみれば…そこには、薄っすらと笑みを浮かべた姿。だが、その笑顔は…好きではなかった。
「身体が冷えないうちに戻って来い」
 そう言って、直ぐに背中を向ける。
 小さな溜め息を一つ吐き出すと、諦めたようにその背中を追う。
 現実は、酷く冷たい。けれど、今いる現実で、生きなければならない。
 だからこそ…微かな記憶だけが、安らぎだった。

 いつか…その記憶に辿り着けるように。
 それまで、その笑顔を忘れないように。僅かな記憶を、繋ぎ止めるように、目を閉じる。
 遠い、遠い…あの笑顔に。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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