聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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恋唄
その甘い芳香に、胸が熱くなる。
触れる指先も、柔らかい唇も、全てが甘く、温かい。
その唇から零れた熱い吐息を拾うように、重ねられた唇。微かに震えたその身体は、更なる快楽を求める。
身体は疲れ切っていたが、未だ冷めることのないその熱は、本能の赴くまま求める欲望だった。
ぼんやりと目を開ける。
まだ夜明けには遠く、部屋の中は薄暗い。けれど、自分のモノではない寝息と、縋りついたように自身の夜着の端を握ったままの温もりに、小さな笑いを零す。
朝までは、まだ時間はある。ならば、この時間も堪能しなければ勿体無い。
そう思いながら、再び温もりの傍へと身を寄せ、目を閉じる。
「……ダミ様…?」
身動ぎした所為で目を覚ましてしまったのだろう。隣で眠っていた姿は、うっすらと目を開けている。
「あぁ、悪かったね。まだ寝ていても大丈夫だから。今日は休みだろう?ゆっくりしよう」
そう声をかけ、その頭をそっと撫でる。
「……ふぁい…」
小さな欠伸と共に零れた声。そしてその黒曜石は再び閉ざされ、眠りへと落ちていった。
このところ遠征続きで、ちゃんとした休暇は久し振りだったはず。かなり疲れていたのだろう。本能が求めるままに快楽を欲し、満足すると同時にその意識はあっと言う間に眠りに落ちた。
そんな、珍しく本能に忠実な姿を眺めながら、ずっとこの倖せな時間が続けば良いのに…と、ささやかな思いを抱く。
けれどその反面…胸の奥が、軋む音が聞こえるような気もする。
この倖せは…長くは続かない。
心の何処かで…最初からそうわかっていたはず。
だからこそ、束の間のこの時間を…自分自身が相手を求める本能をも野放しにしているのだと、自覚していた。
小さな溜め息を吐き出し、再び相手の身体へと身を寄せる。
求めることが許される内に…相手の寝息も温もりも、纏う芳香も、全て、堪能する為に。
そんな自分が愚かだと自嘲しながら、彼もまた、再び眠りに落ちていった。
眩しくて目を開ける。
未だぼんやりとした意識の中、部屋の中に視線を巡らせ…夕べのことを思い出してハッとしたように身体を起こした。
そう。ここは、自分の屋敷の自室ではなかった。それなのに、こんなに明るくなるまで馬鹿みたいに寝入ってしまった。
幸い、部屋の中には誰の姿もない。隣に寝ていたはずの主が何処へ行ったのか気になるところではあるが…今はそれよりも、薄い夜着が辛うじて腕に絡まっているだけの自分の格好をどうにかしなくては、と言う考えしかなかった。
誰もいない今のうちに、身仕度ぐらいどうにかしておかないと…と、慌ててベッドから降りる。そして、近くのソファーの背凭れの上に夕べ脱ぎ捨てて置いたままの服を着ると、漸く大きく息を吐き出した。
脱いだ衣類がそのままであった、と言うことで、まだ使用魔の掃除が入っていなかったことがわかる。綺麗好きな主のことであるから、本来は有り得ないことだが…恐らく、自分が眠っているから、何も触れずに気を使ってくれたのだろう。それは心底、感謝せずにいられなかった。
「…で、ダミ様は……」
姿の見えない主が、やっと気になった。
ぐるっと周りを見回して見れば、テラスの奥に僅かに影が見えた。
彼はそこまで歩み寄ると、そっとテラスへと出る履き出し窓を開けた。
「…ダミ様?」
「あぁ、ルーク。おはよう。ゆっくり寝られたかい?」
椅子に座って本を読んでいた主は、声をかけられて振り返ると、にっこりと笑ってそう問いかける。
多分、随分長いことそこにいたのだろう。テラスに置かれているテーブルの上に置かれたカップは中身が空になっているし、手に持っている読みかけの本はもう直読み終わりそうである。
そんな姿に、彼は小さく溜め息を吐き出す。
「…起こしてくれたら良かったのに…」
「たまの休みだろう?ゆっくりしたら良いじゃないか」
「…ゆっくりし過ぎて、もう昼じゃないですか…これじゃあ、まるで抱かれる為だけに来たみたい…俺はもっと話もしたいのに…」
「わたしはそれはそれで構わないんだが?たまにはそんな艶っぽい時間も良いんじゃないか?」
「…もぉ、ダミ様ったら…」
溜め息を吐き出す彼を主はくすくすと笑う。
まぁ、今の話が何処まで冗談かは別として…主が気を使ってくれていることは良くわかるのだが…彼としては、眠っていれば一緒に過ごす時間が短くなる訳で…だったら、起こして貰った方が良かった、と言うことなのだ。
「おいで、ルーク」
名を呼ばれ、彼は主の傍へと歩み寄った。するとダミアンは、ルークの手を取って引き寄せると、向かい合うように自分の膝の上にルークを座らせた。
「ちょっ…ダミ様……誰かに見られたら…」
「誰も見ていないよ」
「でも……」
困惑した表情を浮かべたルークであったが、ダミアンはそんなルークの表情などまるで構わず、そのままそっと抱き寄せ、ルークの胸に顔を埋めた。
膝の上に抱えているとは言え、寧ろ縋りつくようなダミアンの仕草に、ルークは困惑した表情のまま。そして、いつにないそんな姿に…当然、不安も過ぎる。
「…何か…あったんですか?」
思わずそう問いかけた声に、顔をあげたダミアン。その顔は、いつもと同じように微笑んでいる。
「うん?何かなければダメかい?」
「いえ、そう言う訳では…」
言い淀むルークをくすっと笑い、ダミアンは再び顔を埋める。
そして。
「…御前といるとね、癒されるんだよ」
「………」
その言葉に、ルークは口を噤む。
自分が遠征に出ている間、ダミアンもまた、忙しく働いていたことはわかっていた。けれど、それは今までも変わらないことであるし、そのことで愚痴を零されたこともなかった。
となると…癒しを求めるほどの心労の原因は一つしかない。
「…日取り……決まったんですか?」
小さく問いかけた言葉。それは、ダミアンの婚姻の儀に他ならない。
「一応…な。まぁ…まだ先だけれどね」
ルークの胸に顔を埋めたまま、ダミアンはそう答えを返した。当然、ルークの表情がすっと変わる。
胸の奥が、小さく軋んだ。それは、ルークにも実感出来た。けれど…その道を選んだのは、自分自身なのだから、誰に愚痴を零す訳にもいかない。
ルークは、小さな溜め息を吐き出す。そして、そっとダミアンの頭を抱き締めた。
「…ルーク…?」
されるがままだったルークが抱き返したことが、ダミアンも怪訝に思ったのだろう。僅かに顔を上げ、ルークを見上げた。
「…御免なさい…」
「…御前が謝ることじゃないだろう?」
笑いを零すダミアンに、ルークは僅かに唇を噛み締める。そして、大きく息を吐き出して言葉を続けた。
「でも、結局…迷う原因の元に俺がいたことが関係しているのなら、苦しめているのは俺じゃないですか…?」
そう零したルーク。その表情は、今にも泣き出しそうで。
幾度も迷い、苦しんだ事。その全てが、本来間違いだったのなら。出逢うことがなければ…大事なヒトを、苦しめる必要もなかったのではないか、と。
そんな後悔を覗かせたその表情に、ダミアンは小さな吐息を吐き出した。
「御前の所為じゃないから」
ダミアンは手を伸ばし、ルークの髪をくしゃっと掻き混ぜると、いつものように柔らかく笑った。
「もしも御前が、出逢わなければ良かったのだろうか、なんて思っているのなら…それは間違いだよ。御前に出逢わなければ、わたしはずっと自分の正直な気持ちなど吐き出せはしなかったよ。幾ら顔は笑っていても、自分の心に嘘をついたままで、倖せだなんて一つも思えなかっただろうね」
そう。例え、仲魔に恵まれたとしても…皇太子として流されるだけの自分の運命は、決して倖せではない。その意識は、変えられなかっただろう。
ルークが、魔界に降りて初めてダミアンと出逢ったあの日…漆黒の髪と、絶望に満ちた黒曜石の真っ直ぐな瞳。そして、背中に背負った真白き翼。自分の心に嘘をつかないその姿に魅せられた。
その先がどんな未来だろうと、出逢えて良かったと、正直に思えた。
だからこそ、ここまで執着しているのだろう。
「御前を傍に置くことを望んだのは、他の誰でもない。このわたしなんだから。御前はそんなことは気にしなくても良いんだ。ただ…御前が、自分自身の為に本気でわたしと出逢ったことを後悔していると言うのなら、その時は遠慮なく言ってくれ。この関係を無理強いする訳じゃない。御前が無理だと思ったら、素直にそれを言ってくれないと困るよ?それに、もし御前が他に好きなヒトが出来た時にも…ね」
「…ダミ様…」
「御前も倖せだと、思えなければ…一緒にいる意味がない」
「………」
すっと細められた、ダミアンの眼差し。それは、いつもでは決して見られない、彼の本心。
本当は…いつまでも、共にいたいと願う。けれどそれは…本来、望んで良い願いではない。それを良くわかっているが故に…どうすることも出来ない想いは、常にそこにあった。
せめて…今一時の、安らぎを。ただ、それだけの、ささやかな願い。
ダミアンはルークの首の後ろへと両腕を回すと、その頭を引き寄せる。そして首を伸ばし、その耳元に顔を寄せる。
「…愛しているよ」
小さくつぶやくと、更にその頭を引き寄せて、深くその唇を重ねる。
「愛しています。誰よりも…貴方を」
甘い吐息と共に吐き出した言葉。
幾度言葉を交わしても…身体を交わしても、その言葉の比重などわからない。心の奥底の想いなど、わからない。
ただ…共に過ごす時を。
首筋に触れた唇が、鎖骨へ、胸元へと下りて来る。
その指先で、掌で、唇で。肌に触れられる度、夕べの熱が甦って来るようで、思わず甘い吐息を零す。
だがしかし。ふと、我に返る。
「…ちょっ…ここで…ですか?」
完全に愛撫と思えるその仕草に、思わずルークが声を上げる。ストップをかけなければ、恐らくこのままそのテラスで…と言うことになる。流石にそれはどうか…と我に返った訳だが…思いがけず、笑い声が返って来た。
「誰も見ていないと言っただろう?」
「誰も、って……え?」
思わずダミアンから身体を引き離したルークは、周りをぐるっと見回しながら、気を探る。
「……ホントに、誰もいないんですか…?執事さんは?使用魔たちは…?」
ルークが探ったところ、いつもなら屋敷の中に誰かしらの気配は感じるのだが…今日は確かに、誰の気配もない。本当に、ダミアンとルークの二名だけのようだ。そう考えれば、寝室に掃除が入っていないのも、空のカップに新しい御茶が注がれないのもわかるのだが…今までそんなことは一度もなかったので、尚更奇妙に他ならない。
驚いた表情を浮かべているルークに、ダミアンはくすくすと笑いを零した。
「誰もいないよ。今日は、御前とわたしの二名きり、だ。だから、恥ずかしがることはないだろう?」
「…どうして…」
ルークが困惑しているのは当然。だが、ダミアンは相変わらずだった。
「昨日ね、引っ越したんだ」
「……は?」
思いがけない言葉に、ますます困惑した表情のルーク。
「引越し、って……?」
「……大魔王宮に、ね。親父も完全に隠居してしまって、別宅に引っ越してしまったし…わたしも、婚姻の儀の後、大魔王を継ぐことを余儀なくされているからね。いつまでもここにいるよりは、さっさと引っ越せと…まぁ、親父にしてみればそう言うことだそうだ」
「………」
王位継承と、婚姻の儀。ライデンの時にも経験しているはずのその二つの大事な儀式は、ダミアンにも当然来る訳で。だが、婚姻の儀のことばかり頭に残り、王位継承をすっかり忘れていたのはルークの失態だった。
唖然としたままのルークをそっと抱き寄せ、再びその胸へと顔を埋める。
「…臆したか?」
いつになく、低い声。その声で、ダミアンも思うところがあるのだろうとは察した。
「……えっと…いや、別にそう言う事ではないんですけど…ちょっと待ってくださいよ…今、頭の中を整理しますから……」
そう言葉を放ち、大きく息を吐き出す。
大魔王を継いだら…ダミアンは、何か変わるだろうか…?一国の王として、当然仕事量は増えるだろう。責任も大きくなるだろう。けれど…だから、ダミアンの中身が何か変わるとでも……?
答えは簡単。否、だった。
今まで、ルーク自身が見て来た…接して来たダミアンは、何も変わらないだろう。だとすれば…臆することなど何もないはず。
大きく息を吐き出すと、にっこりと微笑んで見せた。
「俺は…逃げませんし、臆したりもしませんよ。貴方の結婚からも、王位継承からも。だって、貴方と一緒にいると決めたんだから。どんなことがあっても、貴方を信じていますし。ただ、奥方様になる方には逢いません。出来ることなら…この先、ずっと。だから、貴方が大魔王宮に移ったら…職務以外では、暫くプライベートでは会いません。婚姻の儀が終わって、世継ぎが御生まれになって…貴方の周りが落ち着くまで。それが…俺の、せめてものけじめです」
「…ルーク…」
思わぬ言葉に、ダミアンの方が一瞬唖然とする。
その言葉が真実なら…世継ぎが生まれなければ、もうこんな関係は望まないと言うことになる。尤も、生まれないと言うことはないのだが…いつ、解放されるかはわからない。
だが、直ぐに小さな笑いを零した。
それが、ルークの決意なのだと。
「…わかった。御前がそう望むのなら、御前の思う通りにしよう。だから今は……ここにいろ」
誰よりも、一番傍に。
その想いは、言葉にしなくても伝わるだろうか。
そんな想いを込め、その身体を抱き寄せる。
先ほどはストップをかけたが、今度は誰もいないのなら…と受け入れる。
重ねた唇も、絡めた指も。交わる熱も全て、御互いの心と身体に刻み込んで。
その一時が、永遠であれば良いのに…と、過ぎった想いを、心の底に深く沈める。
乗り越えるべき大きな壁の前に、今立ったばかりだった。
この先の未来に、不安がない訳ではない。ただ、それを不安と思わないように…せめて、気丈に生きていこう。
前を向いたその眼差しは、決して揺らぐことのない決意を見せていた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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