聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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檀香 白檀~序章 1
第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")
こちらは、本日UPの新作です。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
5話完結 act.1
その朝は、とても寒かった。
通勤の道すがら。空気がとても冷たい。そう思いながら足を止め、空を見上げる。
例年なら、雪が積もっている頃。だがその年は珍しいことに雪は殆ど降っていない。だからこそ、乾いた空気が尚のこと冷たく感じる。
「…遅れるぞ?」
数歩先を歩く姿が立ち止まって振り返っている。
それは、夕べ共に過ごした伴侶と同等の恋悪魔。
「あぁ、今行く」
その姿を追いかけ、再び歩き始めたその隣を歩きながら、自分が吐き出す白い息へと視線を向ける。
「雪、降るかな?」
「…さぁな。降らなきゃ降らないで寒いだけだが、降ったら降ったで仕事も大変だ」
机に向かっている時間の長い彼に対し、外回りの多い仕事故に、雪が降れば大変であることには変わりない。
そんな話をしている内に、枢密院の前に着く。
「じゃあ、な。また夜に」
「あぁ、待ってるから」
軽く手を上げ、自分の局へと向かうその背中を見送り、彼も枢密院の中へと入る。
その日の執務は…何となく、落ち着かなかった。
夜になり、彼の屋敷に集まって来た仲魔の面々。
集まったのは、大魔王たるダミアン、ルークにゼノン。そして雷神界から雷帝たるライデンも休暇を取ってやって来ていた。
「…雪、降って来たぞ」
最後にやって来たのは恋悪魔たるエース。薄っすらと湿った外套を使用魔たるアイラに渡しながらそう言葉を零す。
「やっぱり?今日寒かったもんね~。ウチの方は相変わらずかなり積もってるよ」
久し振りの魔界に御機嫌のライデン。魔界よりも雪の多い雷神界は、例年通りの積雪だった。
「エルが生まれた時も、雪降ってたよね。あの時は雪ばっかりで、なかなか暖かくならなかったよね」
懐かしむようにそう零したゼノン。それが良い思い出かどうかはそれぞれの想い一つだが、感慨深いことには変わりなかった。
「さ、じゃあエースも来たことだし…始めるか」
主の声にワインの入ったグラスを各々持つと、エースが口を開いた。
「本魔はいないが…彼女の発生日の御祝と言うことで…デーモンに感謝と…Happy Birthday」
「おめでとう!」
どうにも微妙な音頭ではあったが、音頭を取ったエース以外はくすくすと笑っている。
そう。この日は彼らの愛娘エルの発生日。まぁ、本魔は士官学校にいて不在なので、発生日の御祝…と言うよりも、産みの親たるデーモンの慰労、と言う意味合いが強い。
因みに、盛大にヒト見知りだったエルとデーモンの体調の不安定さもあって、仲魔内で集まって発生日を祝うのは今回が初めてでもあった。
エルを産んでから今まで、色々なことがあった。産んでから一ヶ月も意識が戻らなかったり、エースに対して盛大な反抗期のような姿があったり。そんなことをそれぞれ思い出しながら、それでもこうして笑って話せることが倖せだと感じる。
「…それにしても、デーさん随分元気になったよね?」
久し振りに見た顔色の良い仲魔姿を前に、楽しそうなライデン。
「まぁ…な。エースとゼノンも協力してくれているし、サラやルークも仕事の調整をしてくれているからな。やっと自分のリズムが出来て来たところだ」
そう言って笑うデーモン。
仕事は必ず定時で上がる。無理して連勤せず、しっかり休みを取る。そして何よりも効果的だったのは…やはり、恋悪魔たるエースとの関係。
生命エネルギーの分与をやめ、恋悪魔としての触れ合い。その辺りは寧ろ、以前よりも満たされているようで。それが御互いにとって、精神衛生上かなり有効だったようだ。
以前と同じように過ごすことは流石に無理だが、今は今なりに自分のリズムが整いつつある。まだまだ安心は出来ないが、そこまで戻って来られたことが、誰にとっても嬉しいことだった。
「でも、無理をしないようにね。今が堪えどころだよ」
「そうですね」
ダミアンの言葉に、デーモンも小さく笑いを零す。
慣れて来たからと言って、気を抜く訳にはいかない。それを改めて、自分に言い聞かせるように。
ただ…そんな穏やかな雰囲気が、ルークには心配なところもある訳で…いつものように、賛同出来ずにいた。
誰にもバレないように、こっそりと小さな溜め息を吐き出したルーク。
その真意は…デーモンしか、知らない。
その夜も遅い時間。
愛娘の発生日の御祝も御開きとなり、雪が積もらないうちに…と、エースを除いた面々はそれぞれ帰路についていた。
その夜も泊ることになったエースは、玄関先まで仲魔たちを見送り、デーモンの寝室へと戻って来る。そこで、窓からぼんやりと外を眺めているデーモンに声をかける。
「疲れたんじゃないのか?」
「…あぁ、少しだけな。だが、吾輩は明日休みだから。ゆっくり休むから大丈夫」
「…なら、良いが…」
少し心配そうな表情を見せながらも、デーモンの隣に立ち、外へと目を向ける。
「明日は積もってそうだな」
「…さっきゼノンも言っていたが…エルが生まれる時も、雪が深かったな。毎年この時期はまだ雪が残っていてな。今年はそうでもないかと思っていたんだが、やっぱり降って来たからな。あの子は、雪の子だな」
くすっと、小さな笑いを零す。
「しょうがない。冬生まれだからな」
「そうだな。御前の発生日は花が芽吹き始める頃で、吾輩は葉が落ち始める頃だ。季節感があって良いな」
「まぁ…みんな時期が違うからな。そんなモンだ」
当たり前の話をしながら…エースの脳裏を過ぎるのは、やはりエルが生まれた後のこと。
デーモン自身は覚えていないが、エースもゼノンも限界ギリギリのところで日々を過ごしていた。勿論、ダミアンやルーク、ライデンもずっと心配はしていたのだから、誰もが不安の中にいたことは間違いない。
あの時から比べれば…確かに、元気にはなって来ている。だが…だからこその不安も、なくはない。
「…なぁ、デーモン…」
確証はないが…問いかけてみよう。そんな思いで、エースが問いかける。
「前に…言っていたよな。まだまだやりたいことがある、って…あれって…何のことだったんだ…?」
「…ん?」
不意にそんなことを問いかけられ…デーモンはエースへと視線を向ける。
「仕事のこと、か?それとも…もっと、別の……」
何を何処まで推察しているのか。そんなことを思いながら、デーモンはくすっと笑う。そして身体の向きを変え、軽く背伸びをしてエースへと口付けた。
「…別の、って…何の想像してる…?」
唇を離し、小さく笑いながら問いかけたデーモンの声に、エースは小さな吐息を吐き出す。
「…だから…もう一名、産もうとか…」
「成程な」
相変わらずくすくすと笑いながら…デーモンは腕を伸ばしてエースの身体に回す。
「今日はエルの発生日なんだから、吾輩はそんな話はしないぞ?ただ…あの子が無事に育ったことを有難く思うだけだ。そうだろう?」
エースの顔を見上げるその顔は、実に穏やかで。何を目論んでいるのか…と推察したエースの方が、どうかしているのか…と、自分で思うくらい。
「…どうして急に、子供の話に?」
改めて問いかけるデーモンに、エースは溜め息を一つ。
「…色々、思い出したからな。今までは、何となく忙しくて…発生日を祝っても、そこまで感慨深く思い出すことはなかったが…今年はエルもいないしな。御前なら…こんな日に、そんな話を切り出すんじゃないか…と思っただけだ。ルークも…何だか、変だったしな」
「…ルーク?」
首を傾げるデーモン。そこでルークの名が出て来ることが疑問で。
「彼奴は御前の参謀だろう?また、内密で何か話しているんじゃないかと思ってな。いつもなら、もっと話に乗って来るだろうに…今日は割と無口だったからな。何かあるんじゃないかと思ったんだよ」
その推察は、流石エース…と言わざるを得ない。だが、デーモンは相変わらず。
「別に、産みたいからどうにかしてくれとか、そんな話を切り出した覚えはないぞ?これからの為に体力をつける、とは言ったがな」
「…これから、って…」
「あるだろう?色々と。仕事だって、ちゃんとしないといけないしな。御前やゼノンに迷惑ばかりかけてもいられないから」
イマイチ、腑に落ちない。そんな表情を浮かべるエースだったが…デーモンは笑いながら、ベッドへと促す。
「今日ぐらいは、ただ倖せに浸っても良いだろう…?」
「…デーモ……」
再び、デーモンからエースへ口付ける。そしてそのまま、ベッドへと押し倒す。
そしてそのまま…甘い夜を過ごす。
存分に満たされ、眠りに落ちたデーモンの顔を眺めつつ…未だに何処か腑に落ちないエース。
余計なことを考えているつもりはなかったのだが…その頭の中は、デーモンが何を考えているのか…本当にもう一名、産むつもりはないのか…と言う想いが拭えない。
だが、敢えてそこに触れないデーモン。はっきりと産むつもりはない、との否定もない訳だから…産む可能性がなくはないのだろうか。
「…拙かったかな…」
敢えて、話題に乗せてしまったエース。まさかとは思うが…と、ささやかな後悔が、そこにはあった。
デーモンの休み明け、早速執務室を訪ねて来たのはルーク。
「エース、何か言ってた…?」
流石にルークも、エースには悟られているだろうと感じていたようだ。唐突にそう尋ねると、デーモンは小さく笑いを零す。
「吾輩が、御前に内密で何か話しているんじゃないかと言っていたな。御前が余りにも無口だったってな」
「……やっぱり、エースに見られてたか…」
ルークは溜め息を一つ吐き出し、ソファーへと腰を下ろす。
「それで?何て答えたのさ」
「ん?そのまま答えたぞ。これからの為に体力をつける旨は話した、とな。別に、産みたいから何とかしてくれとか、言ってないだろう?」
「…そりゃ、言われてないけどさ…その言い方もどうよ…」
物は言いよう、と呆れてしまう。だが確かに、ルークも体力づくりの話はされたが…産みたいからどうにかしてくれだとか、どうしたら良いかだとか、そんな相談は受けていない。受けたところで、何も返せないことはわかりきっている。まぁ…"いつか"の為の体力づくりなのだから、それは内密に…とは言われたが。
「まぁさ、あんた一名じゃ産めない訳だしね。エースが納得して、同じ想いじゃないと無理なんでしょ?俺には良くわかんないけど」
自らが子を産めないルークには、その辺りのことは流石にわからないのだが、エースが反対している状態では産めない、と言うことはわかっている。エルの時も、結局エースが折れて…と言うことだったのだから。
「実際はそうなんだが…吾輩は、何も言わないことにしているんだ。エースの気持ちもわからなくはないからな。吾輩が産みたいと言えば、彼奴はまた悩むだろう?ゼノンも巻き込むことはわかっているし、また二名を振り回すことになる。だから、吾輩からは何も言わない。言えるはずはないだろう…?」
「…デーさん…」
何処までも…含みのある言葉。
「…まぁ…気持ちはわかるけどさ…」
溜め息を吐き出したルーク。その言葉はきっと正当な理由。その気持ちに嘘はないのだろう。だがきっと、デーモンの本心は違うところにある。
「あの二名を、蔑ろにするのだけは駄目だよ?それだけは、御願いだから」
「…ルーク…」
ふと零したルークに、デーモンは小さな吐息を吐き出す。
まるで…ルークの言葉が、釘を刺したようで。
「俺はさ…デーさんの伴侶じゃないしね、主治医でもないからさ…無責任な言葉になるかも知れないけど…デーさんの味方でいたいんだよ。デーさんが俺を片腕と思ってくれているのなら、俺は当然デーさんを護る為に戦えるの。でも…エースやゼノンが、どれだけ心配しているか。一番わかっているのはデーさんでしょ?だから、絶対、約束護ってね」
「わかっている。吾輩は、彼奴らを蔑ろにするつもりはないんだ。敵に回して、生きられるとは思っていないからな。だが、だからと言って、ただ惰性で生命を繋ぐのは違うと思う。出来ることはやってみたい。そう思うことは、彼奴らを蔑ろにすることになるのか?」
「思うだけならそんなことはないよ。でも、それを黙っているのは…向こうにしてみれば、裏切られた、と思うかも知れない。俺が言いたいのはそう言うことよ。一から十まで、全部開けっぴろげにする必要なないとは思うよ。俺だって、みんなに全部同じ話をする訳じゃないし。敢えて言わないことも一杯ある。でも、話さなきゃいけないことはあるでしょ?それを黙っていたら…エースはまた違う立場だからどうかわからないけど、ゼノンはショックだと思うよ。あんたの為に精一杯頑張ってるのにさ、いきなり聞いてないことをされるのは、イレギュラーの対応が必要になる訳じゃない。あんたの治療の為に、しっかり計画立ててるのに…って思うじゃん。俺だったら、そんなの嫌だもん」
「…そう、か…」
何かを考えている様子デーモンに、ルークは溜め息を一つ。
「話しておいた方が良いと思うよ。今産むつもりじゃなくても…さ。そんな考えが少しでもあるなら」
「……様子を見て、な…」
「デーさん…」
どうやら…すんなりと話は通らない様子。頑ななのは、何を思ってか。
「余計なことを打ち明けるのも、心配をかけることだ。さっきも言った通り、子供のことは吾輩からは何も言わない。その上での結果がどうなるかは、わからないだろう?もしもの時は、素直に謝るつもりではいるんだ。だが…後ろめたい気持ちがある訳じゃない。吾輩が黙っている以上…もしも予想外に子供が出来たとしても…それは、吾輩の所為になるのか?」
「…デーさんだけの所為ってことはないけど…だったらエースの所為だ、って言うの?確かにさ、デーさんだけが想っているだけじゃ生まれないってわかってるけど…誰かに責任転嫁することじゃないじゃん」
「確かに吾輩だって、エースに責任を押し付けるつもりはない。だが、そこで吾輩が咎められることはわかっているじゃないか。「何で言わなかったの?」「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」「どうして相談してくれなかったの?」と…ゼノンが言いそうなことはわかっているんだ。結局、全部吾輩の責任になる。誰の賛同も得られない。孤立無援だ。だったら…そんな未来には、絶望しかない」
「………絶望、って…」
大きな溜め息を吐き出したデーモン。そして椅子から立ち上がると、そのまま執務室を出て行く。
「デーさん、ちょっと待ってよ…っ!」
慌ててデーモンを追いかけ、執務室の外に出る。するとそこにはゼノンがいて…溜め息を吐き出すデーモンがいた。
「…どうしたの?急にデーモンが出て来たと思ったら、御前まで…」
驚いた表情のゼノンに、先ほどのデーモンとルークのやり取りは聞こえていなかったのだろう。丁度今ここへ来たのなら、そんなところだろうが。
「いや、ちょっと…」
咄嗟に応えの返せなかったルークに反し、デーモンは不機嫌そうに大きな溜め息を吐き出すと、ゼノンへと向き合う。
「吾輩は、子供は産むつもりはないから」
そう一言言い残し、その場から転移をしてしまった。
「……どう言うこと…?」
突然そんなことを宣言され、意味がわからない…と言った表情を浮かべ、首を傾げるゼノン。
「…いや……今のは、俺がいけなかった…かな」
残されたルークは…溜め息を吐き出すしかなかった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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