聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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翠烟 1
第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")
こちらは、本日UPの新作です。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.1
それは、彼らの愛娘が士官学校に入学した直ぐ後のこと。
このところ、体調が良い。勿論、油断は大敵。そう思いながら、久し振りに何日目かの連勤。一応、登庁前に仲魔の医師の診察を受けてから、遅めの登庁をする。
枢密院のロビーは、いつもと同じ風景。けれど…ふと目に入ったのは、一名の姿。
ロビーのソファーに浅く座り、項垂れるように俯いた姿。溜め息を吐き出し、暫しじっと蹲るような姿勢に…思わず、具合でも悪いのか…との意識が過ぎる。だが、その悪魔は再び大きく息を吐き出すと、思い立ったように顔を上げて立ち上がった。
と、そこで…足を止め、じっと眺めていた彼と、目が合う。
----…おや…?
目が合ったのは、枢密院では見たことのない顔の、明らかに女性型の悪魔。良く見れば、着ている物も制服ではない。きちんとした身なりではあるが…明らかに私服。つまりは、枢密院の局員ではない。
だが、その眼差しに…見覚えがある。
そう思いながら、記憶を辿っていると…相手も彼に気が付いたようで、小さく頭を下げた。
----そうだ。思い出した。
記憶が結びついた。その直後、彼は彼女へと歩み寄る。
「……サラ…だったか…?」
声をかけると、彼女は小さく微笑んだ。
「はい。御無沙汰しております」
その顔に面影はある。だが、彼が彼女に初めて会ったのは、まだ彼女が子供だった頃。この枢密院の、自分の執務室だった。それはどれくらい前だったか…と、細かい年数は既に思い出せないが…それでも、彼の記憶の中の彼女は、ずっと悲痛な表情だった。なので、彼女がこうして笑うのは初めて見た。
だがしかし。彼女は王都から離れている村に住んでいるはず。ここにいる理由がわからない。
「…ここで会うとは…父君に、何かあったのか?」
思わずそう問いかけると、彼女は首を横に振る。
「いえ、父は…相変わらず元気です。ここにいるのは…私が、王都で働こうと思って…少し前から、あちこち受けてはいるんですけど、上手くいかなくて。今日も面接で来たんですけど…やっぱりダメみたいです。良い顔をされませんでした」
「…そう、か…」
それは、一瞬の判断。
すっかり沈んだ表情の彼女をソファーへと促した彼は、その近くへと腰を下ろす。
「因みに…一般的な教養と言うか…その辺は…」
一応、遠慮がちに問いかけてみたが、彼女は少し考えて、口を開いた。
「一応…勉強は、父に教わりました。専門的なことも含めて…父の知識の大部分は教え込んだ、と父は言っていましたけど…士官学校を出ていないので比較も出来ませんし、証明も出来ません。それが役立つかどうかは定かではありませんし。まだ、活用も出来ていないので…」
士官学校を卒業していれば、また結果は違うのだろうが…彼女は士官学校を経由していないので、かなり厳しいようだ。しかも、年齢的にも新卒者に比べれば随分上。経験も何もない。尚のこと、ハードルが高いのだろう。
しかし…物は考えよう。
「ちょっと…一緒に来て貰えるか?」
「…はい?」
にっこりと笑った彼は、彼女の手を取って歩き出した。
何処か喜々としたその背中に困惑の表情を浮かべながら、彼女は着いて行くしかなかった。
副大魔王の執務室。そこに来たのは、二回目。最初の時は…とても、辛かった。それは…御互いに。
だが今は…主は、楽しそうに執務机に向かっている。その姿を、ソファーに座って眺めること…既に十分ぐらい経っているだろうか。
「…よし。まぁ、こんなもんだろう」
主たるデーモンは、数枚の書類を手に、ソファーに座る彼女…サラの前へと座る。そして徐ろにその言葉を放つ。
「面談に来たのなら、履歴証明書があるだろう?見せて貰えるか?」
「……はい…」
状況が良く飲み込めないが…と思いつつ、荷物の中から一通の封筒を取り出してデーモンへと渡す。
その封筒の中から取り出した履歴証明書に目を通したデーモンは、小さく息を吐き出してそれを再び封筒へ戻すと、改めて持って来た書類を、サラの前へと置いた。
「…これは…?」
何を出されたのか、良くわからない。そう思いながら書類へと視線を落とすサラに、デーモンは言葉を続ける。
「言ってしまえば、雇用契約書、だ。吾輩の、側近として。枢密院へ…ではなく、吾輩個悪魔との契約になるんだが…どうだろうか?」
「…え…?」
当然、サラは困惑顔だが…デーモンは、小さく笑いを零す。
「貴女の父親がその知識を教え込んだのなら、それだけで価値がある。ただ、今履歴証明書を見せて貰ったが…非常に勿体ない。大っぴらに公表出来ない事情があるが故に記載出来ず、実力を生かせないのは勿体ないだろう。ならば、事情を知っている吾輩がその知識を買おう。個悪魔的に、雇う。それならば、貴女も働けるだろう?」
「…ですが…副大魔王閣下ですから、側近の方が他にいらっしゃるのでは…」
突然の申し出に、未だ困惑は拭えない。
副大魔王に、側近がいないはずがない。なのに、どうしてここで自分が…しかも個悪魔的な雇用で雇われるのだろうか。
そんな想いが浮かんだその顔に、デーモンは返事を返す。
「昔は側近もいたが…諸事情があってな。長いこと、側近は置いていないんだ。だが…最近は仕事を回すことが少し難しくてな。側近を置こうと考え始めたところだった。そこで偶然、貴女と再会して…と言うことだ」
デーモンはそう言いながらソファーへ深く凭れると、そのまま話を続けた。
「吾輩は…貴女に、何の礼もしていない。出来ていない。エースを助けて貰って…吾輩は…救われたんだ。あの後、吾輩はずっと会うことがなかったが…感謝しているんだ。エースがいなければ…今の吾輩はいない。吾輩の生命は…エースがいるから、繋がっている。吾輩が生きているのは…あの時エースを助けてくれた、貴女のおかげ、だ。だから今…ここで出会えたのなら、吾輩が恩を返せる番だと思ってな」
くすっと、笑いを零す。けれど楽しい笑顔ではない。何処か苦し気で…辛そうで…でも、昔とはまた違う顔。
この悪魔は…何を、考えているのだろう…?
それを、知りたいと思った。
「頼む。働いてくれないか…?」
最後にそう零した言葉に、サラは大きく息を吐き出す。そして、ソファーから立ち上がった。
「…私…あの時から、閣下に何があったのか…それは良く…わかりませんけど…でも…私で御力になれるのなら…宜しく御願い致します…」
頭を下げたサラに、安堵の吐息が零れる。そして、笑い声。
「あぁ、良かった。これで断られたらどうしようかと思っていたんだ」
先ほどとは打って変わって、明るい笑顔。
「書類に目を通して貰って、サインをして貰えると有難い。それから、ダミアン陛下に直談判に行くから、一緒に来て貰えるか?」
「あ…はい…」
話が一気に進むと、サラは慌ててソファーへと腰を下ろし、テーブルに置かれた書類に目を通す。そして、納得した上で、サインをする。
「…これで、良いですか…?」
テーブル越しに書類をデーモンへと手渡す。デーモンももう一度目を通し、にっこりと笑った。
「あぁ、大丈夫。では…今から行けるか?」
「…はい…」
急かされるように、執務室から連れ出される。そして向かった先は、大魔王の執務室。副大魔王たるデーモンだからこそ、直通だが…本来なら、大魔王陛下に簡単に謁見が許されるはずもない訳で…当然、サラは緊張の面差しだった。
そのドアをノックすると、中から返事が返って来る。
「デーモンです。失礼致します」
ドアを開け、執務室へと足を踏み入れる。そして大魔王たるダミアンの前へとやって来たデーモンとサラ。
「……おや?誰を連れて来たのかと思ったら…彼女とは、会ったことがあるね…?」
少し首を傾げてそう言ったダミアンに、彼女は思い出したように息を飲んだ。
「…閣下の執務室で…」
まだ子供だった彼女の想いを、汲んでくれた悪魔。まさか、あの時の悪魔が当時皇太子だったダミアンだったとは…今になって、その事実に驚きを隠せなかった。
「あぁ、そうだ。ライデンと一緒にいたあの子だね。エースを、保護してくれた子だ」
にっこりと微笑んだダミアンに、サラは頭を下げる。
「あの時は、本当に有難うございました。私…貴方様の言葉で、物凄く安心したんです。訪ねて来て良かったと…本当に…」
「そう。それは良かった。君が来てくれたから、エースの行方がわかったのだからね。こちらの方こそ、感謝しなければいけないね。あの時は、有難う」
「そんな…勿体ない御言葉です…」
その言葉に、サラは感慨深げに首を横に振る。
と、その様子を眺めていたデーモンが、口を挟む。
「…そろそろ、御話を…良いですか?」
「あぁ、そうだね。で、彼女を引き連れてどうしたんだい?」
再び首を傾げたダミアンに、デーモンは持って来た書類を提出する。
「彼女を…吾輩の側近として、個悪魔的に雇用契約を結ぼうと思います。その許可を頂きたいと思いまして」
「…側近の雇用契約?」
そう言われ、ダミアンは改めて、手元の書類に目を落とす。
「はい。今のままでは…職務を続けることも厳しくなって来ているので…やはり、直接仕事を裁ける側近がいた方が良いかと」
「そう、か。まぁ…その方が安心だね」
そう言いながら、書類に添えられた封筒の中身を取り出して、目を通す。
「…それで?どうして彼女を?」
履歴証明書を見る限り、副大魔王の側近には相応しいとは思えない訳で…それでも、あの時の恩魔だと思えば、と言うことなのか…と、ダミアンの方も些か困惑している。まぁ、ダミアンにはサラのことは詳しく話していないので無理もないだろうが。
「彼女の父親は…ディール=オリガです」
その名前に、ダミアンは息を飲む。そして、まじまじとサラの顔を見つめた。
その顔に、似ているところは見受けられない。だが、すっかり頭から抜けていたのはダミアンの失態、だったのかも知れない。
「…父を…御存じなんですか…?」
父親が王都にいたことは知っていたが、何をしていたのかは聞いていない。「王都は好きじゃねぇ」が昔からの口癖だったので、てっきり何かしでかしたのだろう…とは思っていたのだが、まさかダミアンが知っているとは思いも寄らなかった。
サラの口調で、何となく状況を察したダミアンは、にっこりと微笑む。
「あぁ…わたしが子供の頃、会ったことがある。直ぐに王都を離れてしまって、それっきりだが…そうか、彼の娘、か…そう言えば話にだけは聞いていたね…」
まるで、懐かしむように細められた眼差し。
「父上様は、まだ御健在かな…?」
問いかけられた声に、小さく頷く。
「はい。年は取りましたが、今でも身体は丈夫なので…」
「エースとゼノンは、あの後もディールに会ったそうです。変わらず、元気だと聞いています。彼女は、記載出来る学はないようですが…ディールの知識の…専門的なことも含め、その殆どを教え込まれたそうです。彼と同等の知識があれば、吾輩の側近としては申し分ありません。尤も…実際は働いてみないことにはわかりませんが、雇うだけの価値はあるかと」
デーモンもそう口添えると、ダミアンも小さく頷いた。
「そう。御前がそう言うのなら…まぁ、良いだろう。特別に許可しよう」
そう言いながら、未だ緊張の色を浮かべるサラへと視線を向ける。
「一つ…条件がある。君はデーモンが個悪魔的に雇うと言っていたが…枢密院で働くと言うことになるから、一応、悪魔事部にも書類は通しておく。ただ、あくまでもデーモン個悪魔として契約することは、周囲の者にも洩らせない内密なことも多々ある。それは踏まえておいて貰いたい。デーモンが側近を置いていなかった理由がそこにあるのでね」
その重い言葉に…きっと、深い意味がある。自分がそこに関わって良いものだろうか…と思いつつも、踏み込んでしまったからには、引き返せない。
「…はい。宜しく御願い致します…」
深く、頭を下げる。その横で、安堵の吐息を吐き出したデーモン。
「…大丈夫か?」
ふと問いかけたダミアンの言葉に、デーモンは小さく笑う。
「大丈夫です。体調は良いので」
「連勤だろう?無理はするなよ」
「御意に」
デーモンに履歴証明書を返しながら声をかけると、デーモンも笑いながら返事をする。そのやり取りを眺めながら、その関係性にかつてを思い出す。
あの時…デーモンの執務室の奥、控えの間で…自分の訴えを受け止めてくれたダミアン。その執務室から出る時に、一瞬だけ見えた、真っ直ぐに自分を見つめる、金色の眼差し。それは…とても、悲しい色だった。
大事な仲魔だったからこそ…助けたかった。デーモンに対しても、ダミアンのその想いは感じ取れた。
「まぁ、そんなに心配することはない。これから色々覚えて行けば良いことだから」
サラに向け、微笑んだダミアン。
その先は…浅瀬なのか、底なし沼なのか…。
先の見えない不安のスタートラインに、思いがけず立ってしまった。
そんな想いを抱きながら、微笑むしかないサラであった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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