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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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香雲 1

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、以前のHPで2005年01月29日にUPしたものです。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
5話完結 act.1

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◇◆◇

 少し前から、眩暈や立ち眩みが頻繁に起こるようになっていた。
 それが、全ての前兆だとはまるで気がつくはずもなく…。
 その軽い症状を放置したままの時間は流れ、現在に至る。
 症状は相変わらず。けれど…既にその身体は、限界寸前だった。

 その日は、古くからの仲魔である医師から、健康診断を受けるように言われている日だった。
「どう?何か自覚症状はある?」
 様々な検査の最後に、医師たるゼノンからの問診があった。
「ん~…そうだなぁ…まぁ、ちょっと眩暈とか、立ち眩みとかがあるくらいだな。後は特に何もないかな」
「…そう。まぁ、検査の結果が出ればわかると思うけど、あんまり無理しないようにね。眩暈や立ち眩みだって、立派な病気の症状なんだから」
「わかっているって」
 そう言ってくすくすと笑うのは、副大魔王たるデーモン。
 少し前から、彼らの周囲は慌しく動き始めていた。
 ゼノンとライデンの血を引く子供が一名魔界へ降り、士官学校への入学が決まったのだ。そして更に、大魔王の子息たる皇太子殿下が皇太子宮へと移り、帝王学を学ぶ準備も始まっている。当然、それは周囲の"オトナ"たちをも巻き込んでいることは間違いない。
 だから、この忙しい時期に無理をするな、と言う忠告はデーモンの耳を素通りしているだけ。そんな忠告があったからと言って職務が減る訳でもなく、ゼノンに職務を減らせる権限がある訳でもない。
 結果、忠告があろうとなかろうと、デーモンの忙しさは何も変わらないのだ。
「何日かしたら結果が出るから、連絡するよ」
「あぁ」
 その時は、さして気にも留めずにいた。
 それは、デーモンもゼノンも。
 その数日後、事態は急変した。


 その日、デーモンはゼノンから先日の検査の結果が出たから来て欲しい、との連絡を受けていた。
 自分の執務室を出て文化局に行く前に、エースの執務室に寄ってみる。
 それは、前日から新たな職務に付くことになったエースの様子見を兼ねてのこと。
 その時はまだ、デーモン自身、自分の身体の状態に変化を感じていなかった。

 文化局へとやって来たデーモンは、ゼノンの執務室を訪れていた。
「御免ね、わざわざ来て貰っちゃって…」
 呼び出したゼノンは、済まなそうにそう言って詫びる。
「いや、ついでにエースの所にも寄って来ることが出来たからな、気にするな」
 にっこりと微笑むデーモン。だが、ゼノンの表情は優れない。
「…でね、結果なんだけど…」
 そう言いながら、検査の結果が記載されている書類をデーモンへと見せる。
「…免疫力が下がって来ているんだよね。それに、生命波動が揺らいでいて、とても不安定になっているんだ。具体的な症状が大きく見られる訳ではないけれど、安心は出来ないよ」
「…そうなのか…」
 思いがけず告げられた報告に、デーモンは表情を曇らせる。
 エースに言うべきだろうか。だが、余計な心配をかける訳にもいかないのが実情。
「とにかく、暫く安静にして。仕事は必ずセーブすること。近いうちに、また必ず検査させて」
「…あぁ…」
 浮かない表情の二名。だがしかし。それはまだ、序章に過ぎなかった。

◇◆◇

 それから、半月ばかりが経った頃。丁度エースが遠征に出ていた時のこと。
 職務中、ふとした弾みに眩暈を感じたデーモンは、立っていることが出来ずにその場に座り込んでしまう。
----…拙い…
 瞬間的にそう思ったものの、その時には既に意識を保つことも難しく。意識を失ったデーモンは、そのまま病院へと担ぎ込まれたのだった。
 そして、次に目を覚ました時には、枕元に心配そうな表情のゼノンの姿を見た。
「…気がついた?」
「…あぁ…」
 見慣れない病室。
 いつもなら自分の屋敷に運ばれるはず。けれどこの日は病院に担ぎ込まれたと言う事実。それが、自分自身の身に訪れている"何か"を感じるには十分のことだった。
「…吾輩…どうなったんだ…?」
 天井を見上げたまま、つぶやいたデーモンの声。それに答えたのは、ゼノンの溜め息、だった。
「…エース…呼び戻したから。戻って来たら、一緒に話を聞いて貰いたいんだ」
 二週間程前から遠征に出ていたエースを呼び戻してまで、話さなければならないこと。それが、事の重大さを物語っている。
「…わかった」
 今は、そう答えるしかなかった。
 そしてその数時間後。遠征から呼び戻されたエースは、デーモンが運ばれた病室へとやって来ていた。
「…大丈夫なのか?」
 いつになく神妙な顔つきの二名を前に、呼び戻されたと言う事態を含め、エースの表情も穏やかではない。
「…大事な、話…」
 そう言って切り出したゼノン。
「…この間の検査の結果、見てくれる?」
 ゼノンは、エースに一枚の検査結果を差し出す。それは、先日デーモンが受け取ったものと同じもの。
「見てわかると思うけど…免疫力が下がって来ていて、生命波動も安定していない。この時は、心配ではあったけれど、そんなに重大だとは思っていなかった。だけど…今回、デーモンが倒れたことではっきりした。これは…一過性のモノじゃない。デーモンの…"寿命"が近い、と言うことだと思う」
 口にしたゼノンも、聞いていたエースも、酷く苦しそうな表情をしている。けれどデーモンは、真っ直ぐにゼノンを見つめていた。
「幾ら、簡単には死なないと言ったって…俺たちにも、寿命があるのは確かだよ。勿論、本来なら…俺たちの寿命はまだ先だけれど…デーモンは、違う。体力も魔力も、これ以上満ちることはない。後は、衰えて行くだけ。勿論、その衰退を穏やかにすることは出来るかも知れないけれど、留めることは出来ない。今すぐにどうと言う訳ではないと思うけれど…でも…免疫力が低下している以上、いつ容態が悪化しても可笑しくはない状況なんだ。生命波動も不安定だから、このまま何かの病を一緒に併発してしまったら…風邪一つひいただけでも…下手をすれば、生命が尽きても可笑しくはないんだ…」
「…どうしてだよ……デーモンだけ違うってなんだよ…っ!種族が違うと言ったって、まだまだ衰えることはないはずだろう!?同じように生きて来て、どうしてデーモンだけ…っ」
 思わず口を挟んだエース。だが、デーモンは相変わらずゼノンを見つめたまま、だった。
「デーモンと俺たちは…違うんだ。前に、ウイルスが蔓延した時…御前の…異種族の能力が混ざった。それも、生命波動のバランスを崩したきっかけの一つだったのかも知れない…」
 想像もしていなかったところを衝かれ、一瞬エースも息を飲む。
 そうしなければ、デーモンの生命が危うかった。生命を救う為の手段が、再び牙を向くことになろうとは。
「…だが、それだったら…ダミアン様はどうなる?ダミアン様だって、ルークの能力を貰ったはずだ…」
 口をついて出た言葉に、ゼノンは小さく息を吐き出す。
「確かにね。でも、ルークの能力は…正直、別物だった。天界人の能力が混ざったルークの能力は…寧ろ、ダミアン様の免疫力を高くした。魔界としては、良い結果になった。でも…デーモンは違ったんだ。勿論、あの時は生命を助ける手段として、あの方法しか見つからなかった。だけど、それはきっかけの一つに過ぎない。デーモンには…もう一つ、俺たちとは違う所があるんだよ。多分…本当の原因はそれだと思う」
「…違う所…?」
 怪訝そうに眉を寄せたエース。だがしかし。デーモンには心当たりがあったのだろう。その口から零れた小さな溜め息。そして。
「…一族の、滅亡…か」
「…デーモン…」
 エースの視線が、デーモンへと向けられる。
「…そう。一族が滅亡した時…どう言う訳か、デーモンだけが生き残った。多分…それが大元の原因だと思う。突然変異だったのかどうかはわからないけれど…最初から、デーモンの寿命は俺たちよりも短かったのかも知れない」
「…そんな…」
 エースの口から零れた言葉。納得出来ない思いは、勿論エースだけではなかった。けれど、一番傍にいて、これからも生涯を共にすると決めた恋悪魔の"寿命"と言うものを知らされて…目の前に突き付けられて、平然としていられる訳もない。
 特にエースは、より原種に近い種族だと言われている。そしてその生命力はどの種族よりも強いと言われているのだ。
「…顔色一つ変わらないなんて…デーモンは自分で、気付いて…いたの?」
 問いかけたゼノンの声に、デーモンは小さく笑って見せた。
「長が亡くなった時…自分が生きている意味もわからなかった。一緒に消えなかったのが奇跡だと思っていた。だから、いつかこんな日が来ても不思議はない、と言うことはぼんやりとな」
 当事者だったからこそ、察していた真実。だからこそ、こんな状況下でも冷静を保てたのかも知れない。
「…病気を併発しなければ、今すぐにどうと言う訳ではないんだろう?それなら、そんなに深刻にならなくて良い。仕事もセーブするし、無茶もしない。だから…」
----そんな顔、してくれるな。
 そう言って、にっこりと微笑むデーモン。その微笑みは、デーモンの精一杯の思いやり。だからこそ、エースとゼノンの胸に深く突き刺さった。
「…これからの、治療方法を考えるよ。絶対、このままになんか…しないよ。御前は、もっと…もっと、生きなきゃいけないんだから。もっともっと…一緒に、いるんだから…」
 そんな言葉を口にしながら、ぽろりとゼノンの頬を伝った涙。それは、止め処なく零れ落ちる。
「あぁ、吾輩だってそのつもりだ。直ぐになんか死ぬものか。だから……そんな風に泣かないでくれ」
 微笑んだまま、そう言ったデーモン。エースはただ、唇を噛み締めてその二名を見つめていた。

 ダミアンに報告をする為に病室を出たエース。ゼノンも一緒に病室を出たが、未だその瞳は涙で潤んでいる。
「…御前の所為じゃないんだから。もう、泣くな」
 エースはゼノンと並んで壁に寄りかかり、ゼノンの頭をぽんぽんと軽く叩く。
「…俺は、無力だよ。デーモンの為にしてやりたいことは沢山あるのに…実際は何も出来ない。"寿命"を相手に…何も手が出せない。医師として…何よりも辛い…」
 いつになく、弱気なゼノン。エースよりも、デーモンとの付き合いが長かったことも含め、様々な想いが巡っているのだろう。
 そんなゼノンの姿に、エースは小さな溜め息を一つ。
「…俺だって…どうにか出来るものなら、どうにかしてやりたいさ。だが、"寿命"に逆らうことは出来ないだろう?無理矢理何かをしようものなら、それは謀反行為だ。それだけは、許されないことだろう?それに、デーモンも受け入れる覚悟はしているみたいだしな。だったら…俺たちも、それを受け入れるしかない。せめて…一緒にいられる時間を大事に、少しでも長く生きることを考えよう」
 それが、今の彼らに出来る精一杯のこと。だからこそ、振り返って後悔する時間はないのだ。
「…御免ね、エース…」
 ゼノンには、そうつぶやくことしか出来なかった。そんな姿は、何よりも痛々しくて…胸が痛い。
「…御前が謝ることじゃない。ウイルスの時だって…御前がいなかったら、今ここにデーモンはいなかったかも知れない。御前には、感謝しているんだ。今回だって、取り返しがつかない状況になる前に気付いてくれた。これから幾らだって対処は考えられる。だから…前を、向こう。あの時も…そう言われただろう?だから…挫けるなよ」
 エースのその一言は、自分自身にも言い聞かせた言葉だったのかも知れない。
「…とにかく、ダミアン様の所に行って来る。後のことは頼むな」
「うん。気を付けて」
 ゼノンも懸命に微笑んでみせた。それが、一番辛いはずのエースに向けてのせめてもの償いの思いだった。


 時刻は既に深夜。けれど、大魔王の執務室にはまだ明かりがついていた。
 そこには、眉根を寄せる大魔王と、苦しげな表情を浮かべるエースの姿があった。
「…そう、か…」
 エースから、デーモンのことを聞いたダミアンの最初の言葉はそれだった。
「今更どうにもならないと言えばそれまでだが…そんな報告は、辛くなるだけだね」
 ダミアンは溜め息を一つ。
「…病気を併発さえしなければ、今すぐにどうと言うことではないと、ゼノンは言っています。ですが、だからと言って、今まで通りの生活に戻れるかと言えば、それも無理なことです。仕事をセーブし、無理をしないように心がけたところで…風邪一つひいただけでも、どんな状態になるかわからないんです。だからこそ…何も出来ない自分を、ゼノンは責めているんです」
「…ゼノンらしいね。だが、こればっかりは、誰の所為でもない。今は出来る限り生き存える方法を探すことが、デーモンの為でもあるんだと思うよ」
 今は、それが最善の答え。だからこそ、ダミアンもそう口にするしかなかったのだ。
「…それで…一つ、御願いがあるのですが…」
 エースは、ゆっくりとそう口にする。それは、病院からここに来る間に、ずっと考えていたこと。そして、エースが少しでもデーモンの傍にいる為に考えた、最善のこと。
「何だい?」
 その深刻な表情に、ダミアンもエースの眼差しを見つめる。
「…本当は、俺の仕事もセーブして、出来る限り傍にいてやりたいと思うのですが…局の方の仕事は、急にどうこうする訳にはいかないのが現状です。ですから…シリウス様の教育係を、辞退させていただくことは出来ないでしょうか…勿論…俺が出来る限りの協力は惜しみません。ただ…片手間に出来る職務ではありませんから…ずっと傍で見守ることは…正直、厳しいかと…」
 やっと、自分に心を開き始めたシリウスとの関係を断ち切ってしまうのは、エースにも苦しい決断だった。けれど、デーモンを失うことの方が、エースにとっては重大なのは言うまでもない。
 当然、ダミアンもそれをわかっていた。だからこそ、エースの決断を快く受け入れることを決めたのだ。
「…まぁ、それが当然だろうね。シリウスのことは、心配しなくて良い。また他の魔材を捜すことにするから。御前は、自分のやるべきことに専念すると良いよ。局の方の仕事も、少しずつ調節してね。今までみたいに、全部背負い込むんじゃないよ。仕事は副官に任せることも必要。悩みは適度に吐き出すこと。良いね?」
「…はい。我侭を言って申し訳ありません…」
 深く、頭を下げるエース。
 この先、どれだけの時間を共に過ごせるかはわからない。だからこそ、少しでも長く一緒にいる為に。
 そして…その先の決断も。
 そのことはは、まだ誰にも話してはいなかった。
 それは…最後の手段、なのだから。

◇◆◇

 エースがダミアンに報告に行っている頃、デーモンもまた、ゼノンにその想いを吐き出しているところだった。

 病室の天井をぼんやりと見つめているデーモン。そして、その傍らにはゼノンの姿。
「なぁ、ゼノン…吾輩の生命は、今すぐ急激な変化がある訳ではないんだよな…?」
 ふと、そう問いかけたデーモン。
「…うん。それは、エースにも話したでしょう?今は、免疫力が下がっていて、体力的にも随分落ち込んでいるけれど、それは薬と療養で何とか出来ることだから。今まで通りの生活に戻ることは出来ないかも知れないけれど…出来る限り、生きていられるように…考えていくから…」
 そう答えるゼノンは、もう泣いてはいなかった。これからのことを前向きに考えていく、医師としての姿に戻っていた。
「なら…吾輩の願いは、叶えられるかな…?」
「…願い…?」
 問い返す声に、デーモンはそっと目を閉じる。そして、その口元がほんの少し、笑ったように見えた。
「今更だが……吾輩な…子供を、産んでみたいんだ」
「…子供?」
 思いがけない答えに、ゼノンは目を丸くする。
 今まで、自分たちの血筋を残すことを望まなかったデーモンとエースだったから、子供が欲しいなどと言う言葉は一度も聞いたことはなかったのだ。だが急にそれを口にしたことに、思わず驚いたと言うのが正直な所だった。
「…まぁ、無理ではないけれど…もう少し、様子を見てからの方が良いんじゃないかな…エースには話したの?」
「いや。まだ言ってない。御前の許可が出たら話そうかと思ってな」
「デーモン…」
 困ったように眉根を寄せるゼノンに、デーモンは小さく笑って見せた。
「やっぱり、唐突かな?」
「…当たり前でしょう…」
 溜め息を吐き出すゼノン。けれど、デーモンがそんな唐突なことを言い出すにはやはり理由がある。デーモンはそれを、ゆっくりと口にした。
「…昔な、エースと決めたことがある。共に、生きようと。それは、裏を返せば、死をも共にすることになるだろう?多分、エースはそのつもりだと思う。吾輩が死んだら…エースもその時が自分の"寿命"だと決めてしまうんじゃないかと言う不安があるんだ。エースは、魔界にはまだまだ必要な存在だ。吾輩の"寿命"で切り捨てて良い生命じゃないだろう?」
「それはそうだけど…でもそれと子供と、どう繋がるの?子供を産むことが、御前の"寿命"を縮めることになるかも知れないんだよ?」
「あぁ、それはわかっている。だが、子供がいれば、エースだってその子供を置き去りにして、勝手に死ねないだろう?御前も親なんだから、それは十分わかっているはずだろう?」
「それはそうだけど…」
 ゼノンの困った顔は相変わらずである。だがデーモンの方は、とても穏やかな顔をしていた。
「勿論吾輩だって、運命に流されるまま簡単に死ぬつもりはない。だが、いつどうなるかわからない生命なら、守り刀を用意して置きたいんだ。それにどうせなら、やったことがないことをしておきたいと思ってな」
「…それが、自分の生命を縮めるかも知れないとわかっているのに?体力が十分あったライデンでさえ、相当大変な思いをして子供たちを産んだんだよ?エースがそんなこと、認めるはずないじゃない」
「だから、御前に最初に話したんだろう?御前が許可を出せば、エースだって納得する。医師としての御前には、それだけの権限があるんだ」
「…そう言われても…」
 ゼノンが困るのは当然のこと。勿論、デーモンもそれをわかってはいた。けれど、エースの生命を護る為には、それが最善のことだと思うから。
「吾輩は…自分の生命よりも、残されるエースが心配なんだ。吾輩のことは、"寿命"なんだから仕方がないと割り切っている。それが、吾輩が選んで歩いて来た道だったのだからな。だが、エースは違うだろう?馬鹿なことを考えなければそれで良いと思うが…あの性格だろう?深く想ってくれることは嬉しいが、それと自分の生命を犠牲にすることは違うと思う。吾輩に、エースの生命を奪って良いと言う権利はない。だから…産んで置きたいんだ。吾輩が、後悔しない為に」
 デーモンのそんな気持ちは、ゼノンにも痛い程良くわかった。けれど、医師として…明らかに生命を縮めるであろうと言う行為を見逃すことは、苦しい決断でもあるのだ。
 困ったままの表情のゼノンを眺めながら、デーモンは小さく笑いを零す。
「まぁ、御前が苦しむ気持ちもわからないでもないんだ。吾輩の我侭なんだから。だが…わかって貰いたいんだ。吾輩も、子供を励みに長生き出来るかも知れないだろう?一番簡単な延命措置じゃないか」
 ゼノンは、深い溜め息を吐き出す。
「…そりゃ…気持ちはわかるよ。だけど…俺は、医師としては認めることは出来ないよ。御前の生命を護ることが先決なんだよ?そうでなければ、俺はエースに恨まれるもの…」
「…なら、医師としてではなく…父親の一名として、はどうだ?」
 尚も譲らないデーモン。
「……全く…強引なんだから…」
 そう言って、再び溜め息を吐き出すゼノン。
 それを了解と受け取ったデーモンは、にっこりと微笑む。
「まぁまぁ。やれることは、やれるうちにしておかないとな。後で後悔するのは悔しいだろう?」
「…でもだからって、エースにはなんて話すの?反対するのは目に見えてるよ?それに、エースだけじゃないよ。ダミアン様や、ルークにだって説明しないと…」
 溜め息を吐き出しつつ、問いかけるゼノン。当然、エースがそんな無謀なことをすんなりと賛成するはずもない。
「エースには、正直に話すつもりだ。エースが納得すれば、ダミ様やルークにも話すつもりでいる。何にせよ、今一番権限を持っているのは、医師たる御前なんだぞ?」
「…そう言われてもね…」
 ゼノンの溜め息は絶えることがない。
「まぁ、一度話してみてから、だね。エースがすんなりと納得すればそれで良いのだろうし、納得出来ないと言うのならまたじっくりと話し合うことになるだろうから…」
 とにかく、今はそれしか言えないと言うのが実情。ゼノンも、そこは妥協するしかなかった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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