聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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LEAVES 2
第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")
こちらは、本日UPの新作です。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
5話完結 act.2
ルークがゼノンの執務室を訪れてから数日後。ルークの姿は、雷神界にあった。
「…どうしたの?珍しいじゃん」
「うん、まぁ…ちょっと気晴らし?」
執務終了後の、ゼノンのいない夜。ライデンも暇を持て余していたので、すんなりとその状況を受け入れた訳だが…いつものルークとは、何処か違って…気が抜けている感がありありとわかる。
「そう言えば…シリウス殿下、士官学校に入ったんだって?」
官吏のフィードが御茶を用意して部屋から出て行くと、ライデンがそう話を切り出す。
「ゼノンから聞いたの?」
「まぁ、ね。ルークの仕事が一段落着いたから、また遊びに来るかもって言ってたんだ。意外と早く来たな、って思ったけどね」
「そっか。シリウス様のところにいる時は、あんまり留守に出来なかったからね…雷神界に行ってた、なんて知られたら…自分も行きたい、ってごね兼ねなかったから」
苦笑するようにそう零す。
同じように皇太子を育てる身。教育係と実親との違いはあるが、自分たちの年も同じであり、育てている皇太子たちの年も近い。自然と、共通意識も生まれる。
「あぁ、ウチもそう。ララも、俺が魔界に行こうモンなら、何で自分は駄目なんだ、って文句たらたらだからね。迂闊に休暇も取れやしない。皇太子としての自覚とか、どうよ?ってさ。まぁ俺が言えた義理でもないけど。それに俺は、ゼノンが来てくれれば、何処にいても良いんだけど…」
こちらも苦笑しながら、我が子の話をする。一見すると…子育て同期として、共通の話題のように思う。勿論…一見すると、と言うことだが。そして、当のライデンは…それに気が付いていた。
「……で?手を離れて、寂しいの?」
様子を窺いながら…そう、問いかけた声。今まで笑っていた顔が、すっと素に戻る。
「…何で?」
思わず問い返すと、再びライデンが苦笑する。
「明らかに変じゃん。気が抜け過ぎ。シリウス殿下のこと以外で、あんたがそんな顔する理由があれば別だけど。じゃあ聞くけど、他に何かあった?あんたが…嫉妬だか、ストレスだかを抱えるような案件」
「…嫉妬だかストレスだか、か…」
そう言われ…ソファーに深く凭れながら、天井を見上げる。
自分自身で、そんな意識はない…と思っていた。けれど、ゼノンからも心配され、ライデンにもこうして指摘されると言うことは…周りは、そう感じているのだろう、と認識した。
そして、考えを巡らせること暫し。
思い当たる節が…一つだけ、あった。
「…そう言えば…デーさんのこと、ゼノンから何か聞いてる…?」
天井を見上げたまま、ルークがそう口を開く。
「…デーさん?そう言えば少し前に、サラが側近になった、って言うのは聞いたけど…その後は何も。また調子悪いの?このところ、ゼノンも戻って来てないからさ、デーさんのところ行ってて帰って来られないのかな、とは思ってたんだけど…」
心配そうに少し眉根を寄せて問いかけたライデンに、ルークは大きく息を吐き出しながら、身体を起こす。そして、ライデンの顔へと視線を向けた。
「いや、俺も何も聞いてない。このところ、前よりも頻繁に登庁もしてるし…サラも慣れて来たからね、仕事がしやすいから調子は良いのかも知れないんだけどさ…俺もシリウス様のところに行ってたから、あんまり顔合わせてないから何とも言えないんだけど…何か、ちょっと引っかかる、って言うか…」
副大魔王付きの参謀。今でもその役職は健在であって、幾ら皇太子の教育係になったからと言ってもそこを退いた訳ではない。今でも、大事な主であることには変わりないのだ。
ただ…今までで一番、距離を感じる。
「サラのことも…はっきり言えば事後報告。サラの歓迎で集まった時に久々に会ったからね。まぁ、それに関しては偶然サラと会って、デーさんが勝手に決めた、って聞いたからさ、言ってしまえばみんな事後報告。だからそれは良いんだけど…体調に関してもゼノンは何も言ってないからさ、特に大きな何かがあった訳じゃないと思うんだ。ただ…サラの時みたいに…俺が知らない何かがあるのかも、って思っただけ。エースは一番傍にいるんだから、一番敏感だろうし…ゼノンは主治医だから、それこそ何か変化があれば直ぐわかるでしょ?でも俺はさ……そうじゃないから」
「何、今更拗ねてんの?」
「いや、そう言う訳じゃないんだけど…子供じゃないんだから」
そう言いながら、御茶のカップへと手を伸ばす。
「デーさんからは…連絡ないの?」
ライデンも御茶を飲みながら、そう問いかける。
「仕事の話はあるよ。でも、俺が教育係になってからは前よりも少ないかな。御互いに、本業から離れてたこともあるしね。デーさんが仕事してなきゃ、俺が傍にいる理由はないから。最近も、仕事の話しかしてないかな…」
そう言いながら…再び、天井へと視線を向ける。
「…やっぱり、寂しいのかな…俺…」
未だ嘗て…何に関してもこんなに集中出来なかった記憶はない。そう考えると、やはり寂しかったのだろうか…と思わざるを得ない。
「何今更実感してんの。じゃあ…酒にしようか?」
苦笑しながら立ち上がったライデン。喜々として酒を勧める姿に、ルークも苦笑する。自分一名の時は殆ど呑まないが、ゼノンが帰って来た時には晩酌に付き合うようになった。相変わらず大して呑める訳ではないが、呑むことにもだいぶ自信がついたようだ。
「じゃあ…ちょっとだけ、ね」
楽しそうなライデンの姿。最近は余り会っていなかったので、その気持ちもわからなくはない。
「俺も、子育て一段落ついたら…寂しくなんのかな」
用意したグラスに酒を注ぎながら零したライデンの言葉に、ルークは笑いを零す。
「あんたは大丈夫じゃない?子育てから離れたって、ララは皇太子じゃん。結局、ここにいるんだから。それにゼゼだって、今はまだ無理でもそのうち顔も見に来られるようになるだろうし。ゼノンだっているんだから」
「まぁね。産んだのは一回だけど、二名いるしな…でも…」
ふと、ライデンの顔が変わる。
「…ホントはさ、まだ産みたかったんだよね…一回しか産めないのはさ、なんか寂しいな、って」
「…贅沢者。二名産んどいて、何言ってんの。じゃあ、俺はどうなんのさ」
「自分の子供じゃなくたって、子育て終わったじゃん」
そう言い放ったライデンの言葉に、グラスに口を付けながら、苦笑するルーク。
ライデンは、産もうと思えば、身体的には産めなくはない。まだまだ体力はあるだろうし…何より、今でもゼノンとは非常に仲が良い。未だにイチャイチャしているところを見れば、その気になればまだ産めるはず。けれど、そこには王位継承の掟がある訳で…例え、皇太子であるラライが継承順位の筆頭だとしても、他の嫡子に生命を狙われれば順位も変わる。例え王位継承の証がなくても、余計な争いを避ける為に双子であるゼフィーが魔界へ降りたくらいなのだから、それ以上の子供を望むことは不可能だった。
そう考えれば、魔界の状況も同じ。大魔王たるダミアンの子供も、シリウス一名きり、と言うことになる。
「まぁね、ダミ様はシリウス様だけで十分なんだろうけど…物理的に産めない俺は別として、あんたは産めるのに産めないってのは、確かにちょっと残念だよね」
「でしょう?別に気にしなきゃ良いんだろうけど…何かあったら困るしね。そう考えたら、これ以上産まないに越したことはない訳よ。そう考えるとさ…デーさんって良いよね…」
「…は?」
思いがけない方に話が流れ、ルークは首を傾げる。
「だってそうじゃん。確かに、一番しんどい思いしてるんだけど…でも、今は体調も良いんでしょ?その気になれば、まだ子供だって産めるじゃん。産むのは確かに大変なんだけど、貰うパワーもあるからさ。前以て十分準備しておけば、産めなくはないでしょ?まぁ…前回のことがあるからね、エースは反対するだろうけど…」
「…そっか…そうだよね…」
そう言えば…シリウスが士官学校の話を出す少し前に、デーモンとエースの愛娘のエルが入学していた。そしてルーク自身も、その後エルに会いに士官学校にも足を運んでいた。
その姿を見たからか…デーモンも、すっかり子育てから手が離れた、と思い込んでいた。
確かに、エースなら…一度、予想外の大きな危機を目の当たりにし、ゼノンと共に心労も相当なものだったはず。それを考えれば、二度目を賛同はしないだろう。それはほぼ確実。
「…そっか…デーさん、まだ産めるんだ…って言うか…その話、まさかデーさんにしてないよね…?」
ふと、そんな想いが過ぎって問いかけたルーク。その神妙な表情に、ライデンは一つ、息を飲んだ。
「…したの?」
「いや……随分前に、ほんのちょっと…でも、ホントにちょっとだよ?元気なら、産めたかもね、って…」
「…あー、それ…何か嫌な予感するな…」
何かが引っかかっているようなモヤモヤ。デーモンがそれを安易に受け入れることはないだろうが…なくはない、と言う想いもある訳で。
すっかり心ここに有らず、と言ったルークに、流石にライデンもまずかったか…と後悔しつつ…まさか、の想いも残っている。
「…いや、産まないでしょうよ。エースもゼノンも、あんだけ大変な思いしたんだもの。簡単に許可は出さないでしょうよ。そんな、神妙な顔しないでよ」
デーモンにもルークにも、冗談半分で言ったつもりだったのだが…ルークの表情に、ライデンも少し慌てたようだ。笑いながら、その顔を覗き込む。
「ほら、あんたもデーさんもエースも、みんな子育て終了。ね?」
「……うん…」
そう。誰よりも生命を大事にしなければならないデーモンなのだから、自ら縮める行為を望みはなしないはず。その思いと、まさか…と過ぎった想いを、首を振って追い出した。
「…そうだよね、産まないよね」
「そうそう。産まないから」
何とかルークの心を引き戻したライデンは、何処かホッとしたように笑いを零した。
「さ、呑もう呑もう!」
御互い、酒豪の仲魔のように強い訳ではないが…この状況は呑まなければ。奇妙な使命感に駆られたライデン。懸命にその場を盛り上げる。
その想いを受けてか…ルークも少しのつもりが、かなりのグラスを重ねることとなった。
翌日の昼過ぎ。魔界へと戻って来たルークは、そのまま自分の執務室へとやって来ていた。と、直ぐにエースが顔を出す。
「…あぁ、やっと捕まった」
「…あぁ、そう言えば…そうだね」
ソファーへと腰を下ろし、大きく息を吐き出したエース。ルークはエースの分のコーヒーを淹れながら、先に淹れた自分のカップへと口を付ける。
「何だ、二日酔いか?」
珍しく、酒の匂いがする。そう思いながら差し出されたカップを受け取りながら言葉を零す。
「…ちょっとね。昨夜、ライデンのところで呑み過ぎた…」
「ライデンのところ?それで呑み過ぎた、って…相当だな」
呑みの相手がエースやゼノンならともかく、一番弱いライデンと呑んでいて二日酔いになるとは。予想外の出来事に、エースは苦笑する。そんなエースを前に、ルークもコーヒーを飲みながらソファーへと腰を下ろした。
「ゼノンから、あんたが探してる、って聞いてたんだけど…ホント、暫く会わなかったね」
「訪ねて来ても、御前が散歩だとか言われたぞ。ゼノンも御前が呆けてる、って心配してたが…何かあったのか?」
ゼノンの執務室でのやりとりは聞いている。だが、まだ何かあるのかも知れないと、取り敢えず問いかけてみた。
飲みかけのカップをテーブルに置き、ルークは大きく伸びをしながら、ソファーへと凭れる。
「別に…?あぁ、ゼノンのところ行ったの?だったら聞いてる?シリウス様の話」
「シリウス様の、って…士官学校に入ったことか?それとも…置き台詞の話?」
ルークの様子を窺うように問いかけると、ルークからは笑いが返って来た。
「全部報告済みってことか。まぁ、良いんだけどね」
笑いながら、身体を起こしたルーク。そしてエースへと向かい合うと、その笑いを収める。
「そ。ダミ様とのこと…ね、多分バレてる」
「…まぁ、シリウス様のことだから…御前をどうこうしようと言うことはないと思うが…」
「うん、俺もそう思ってる。ゼノンは心配してるんだけどさ、あの方はきっと…大丈夫」
短期間でも、教育係として傍にいたエースもまた、ルーク同様シリウスの性格は把握しているつもりだった。なので、ゼノンのように心配はしていないが…それでも、ルーク自身よりは多少心配はしているようだ。少し寄せられた眉根が、そう語っている。
「…で?あんたは、それを聞き出す為にずっと俺を捜してた訳じゃないでしょ?あんたこそ、何かあったの?」
漸く、勘が戻って来た。そんな感じのルークに、エースは小さな溜め息を一つ。そして、軍服の内ポケットから一通の封筒を取り出して、ルークの前に置いた。
その宛名は…デーモン宛。
「…何?デーさん宛の…これは…王家の、勅書…?」
封筒を手に取り、確認する。封をしていた王家の印の入った蜜蝋は割れていたので、開封済みであることがわかった。だがしかし…デーモン宛の勅書を、ルークに渡す意味が今一つわからなかった。
「中を見てみろ」
溜め息と共に吐き出されたエースの言葉に、ルークは封筒の中から便箋を取り出す。そして、その中身に目を通した。
「………どう言うこと…?」
思わず、零れた声。
送り主は、大魔王妃。そしてその内容は…皇太子たるシリウスの御目付け役として、デーモンにその役について貰えないか、との提案、だった。
元々、ダミアンが皇太子の頃から副大魔王として隣の執務室で働いていたこともあり、シリウスが入閣してもその延長で皇太子としての職務を支えてやって欲しい、と言う意味合いなのだろうが…ルーク自身は、ダミアンが入閣した時と同じように、教育係としての自分が、そのままその役に就くと思っていたのだ。
「俺も…勿論デーモンも、これには驚いた。直接デーモンに宛てて届いていたから、ダミアン様も知らなかったようだ。かなり驚いて、すっ飛んで行ったくらいだ」
「…ダミ様、奥方様のところに行ったの…?いつ?」
「ダミアン様が行ったのは、この勅書が届いて直ぐ、だ。一週間ぐらい前だったか…御前がいつになっても捕まらなくて、その間の話だ」
「…そっか…」
まさか、自分が腑抜けの間にそんなことになっていたとは。
シリウスの士官学校入学の話をした時は、何も言っていなかった。それからまだ一月も経っていない。その間に起こった話なのだが…それにしても、余りにも唐突で。
「奥方様は、ルシフェル参謀の存在を知らなかったんだろう。だから副大魔王イコール皇太子の御目付け役、と思っていたんだろう。デーモンが副大魔王でいることはわかっていたが、今の状況までは把握していなかった。だから、デーモンに…と言う事だったんだろうが…シリウス様がいつ戻られるか、まだわからないだろう?今は割合体調が良いとしても、この状態で、そこまで先の予定を入れる訳にはいかないから、当然デーモンは断りを入れたんだが…状況を話す訳にもいかないから、なかなか受け入れて貰えなくてな…」
「……何それ…」
納得がいかないのは、ルークも同じこと。自分の知らないところで、そんなことになっているとは…全く以って、気に入らない。
「勿論、ダミアン様は御前が引き続き御目付け役として付くことを予定しているし、それを変えるつもりはないはずだ。だから、心配する必要はないんだが…御前が何も知らないのはどうかと思ってな。話だけでも…と思ったんだが…」
顔つきの変わったルークに、エースはフォローするように声をかける。
だがルークは、徐ろにソファーから立ち上がる。
「…ダミ様の所に行って来る」
そう言ってドアへと向かったルークの腕を、エースが慌てて掴んで引き止める。
「ちょっと待て、話はまだ終わってない」
「まだ何かあるの?」
明らかに機嫌の悪い表情。だが、エースは溜め息を吐き出しながら、ルークを窘めるようにソファーへと引き戻した。
「御前が納得出来ないのはわかってる。ただ…奥方様だって、御前の事を知らない訳じゃないだろう?教育係として御前が就いていたことは知ってるだろう?普通は、その延長上に御目付け役があることぐらい…」
「俺は、デーさんの御供として、軍事局の総参謀長としては会ったけど、教育係としては会ったことないから」
不貞腐れたように零した言葉。
「第一、奥方様は…一度も、シリウス様に会いに来たことないじゃん。一回だって、王都に来て俺たちに顔見せたこともないじゃん!そんなんで、勝手に誰が御目付け役だとか、決める方が可笑しいでしょうよ!それを決めるのは、奥方様じゃないでしょ」
思わず、声を荒げる。だがエースは相変わらず冷静な声で返した。
「俺は…一度だけ、皇太子宮で会った。まだ、教育係として数日目のことだったが…急に、訪ねて来たんだ。王都に用事があって出て来たから、って」
昔のことを思い出しながら、エースはルークへと視線を向けた。
「偶然、ダミアン様も皇太子宮に来ていたんだが…王都へ来る、と言う連絡も、シリウス様を訪ねて行く、と言う連絡もなかったようだ。思い付きで立ち寄った程度だったんだろうが…シリウス様は、ちっとも喜ばなかった。少なくとも…俺には、そう見えた」
「…どう言うこと…?」
怪訝そうな表情に変わったルークに、エースは言葉を続ける。
「確か…あの時、シリウス様はまだ誰とも口を利かなかったし、奥方様から引き離されたことを、怒っていたんだと思っていたんだ。でも…多分そうじゃなかった。シリウス様は…周りのオトナを、信用出来なかった。多分、そう言うことだったんだと思う。オトナは理屈で全てを抑えつける。子供だから、抑えつければ大人しく言うことを聞くと思ってる。それが、どんな酷いことなのか、見ない振りをして。そう言った。ダミアン様も…奥方様も、俺もそうだ、と」
思い出すと…今更ながらに胸が痛い。自分も、シリウスを傷つけた一名であることが…あの時、それを否定出来ず、その傷を癒すことも出来なかった自分が。
「…そうね、そんな話してたね。でも子供はね、みんな同じことを考えるもんだよ。俺だってそう思ってたし、ゼゼやララ、エルだって…きっとそう。でもそれは結局オトナ全般への不満であって、別にあんたを責めた訳じゃない。たまたま一番近くにいて、吐き出した相手があんただったから。そう言うことだと思う。多分、そこから今までの間にだって、俺にだってそう思ったこともあるだろうし…それ以上の何かが、あったんだと思うよ」
すっかり冷めてしまったコーヒーで口を潤し、ルークは大きく息を吐き出す。
「まだ何かあると?」
シリウスの傍にいた時間は、ルークの方が断然長い。当然、エースが気づかないことも、ルークは知っている。だかこそ…色々、引っかかるのだ。
「多分ね…ずっと、見ていたんだと思う。俺たちのこと。あんたがさっき言ったこともそうだったかも知れない。でもきっと、それだけじゃないんだ。シリウス様は…俺たちを、ずっと見てた。だから、俺とダミ様のことも…わかってたんじゃないかと思う。もしかしたら…奥方様から、何か言われてたかも知れないしね」
「何かとは…?」
今度はエースの方が、怪訝そうに眉根を寄せる。
ルークはもう一つ、大きく息を吐き出す。そして。
「…考えても御覧よ。奥方様が王都に住まず、生家で暮らすこと。それが婚姻の条件だった。でもそれって、やっぱり変じゃない?ダミ様は、御互いの気持ちを正直に話し合って、その結果の別居だとは言っていたけど…もし、その時に…俺の話をしていたら?名前は出さなくても、自分には結婚する前から恋悪魔がいると…だから、完全なる形式だけの夫婦だと。そして奥方様にも生家から離れたくない理由があった。それが、御互いにとって、都合の良い理由だったとしたら…?」
「…なくはないだろうが…御前の事は話してはいないんじゃないのか?それを打ち明けなくても、奥方様の言い分を素直に受け入れてみせれば良いだけの話だろう?」
ルークの仮定は、現実味がある。だが…そんな危険な橋を、ダミアンが渡るだろうか…?エースの想いは、そこにあった。
けれど、ルークはその首を小さく横に振る。
「話していなかったら、シリウス様があそこまで警戒する理由にならない。俺たちを観察して、それが事実だと納得した。だから…俺に問いかけたんだ。"何で、親父だったの?"って。そして…御目付け役をデーさんに指名したのは、奥方様が俺をシリウス様から遠ざけたかった、とも考えられるじゃん」
そう考えれば、問われた言葉に対しての意味も、辻褄は合う。だがしかし。仮定だけで、そこまで暴走して良い部類の話ではない。
「…だが、それはあくまでも御前の想像に過ぎないだろう?」
「だから…聞きに行く」
再び席を立ったルーク。こうなったら、エースが止めるのも聞かないだろう。
「…わかった。ただ、話が終わったら報告しろ。冷静に、な」
「…エース…」
エースが心配してくれていることはわかっている。興奮したままでは、後々の報告も儘ならない。だからこそ、冷静にならなければいけない訳だ。
「…後で行くから。有難うね」
ルークはそう言い残すと、エースよりも先に執務室を出て行く。その背中を溜め息と共に見送ったエース。
ここに来て、また色々と厄介ごとが重なって来た気がする。
もう一つ溜め息を吐き出すと、自分が渡された分とルークが置き去りにしていったカップを片付け、隣室の副官にルークが出掛けた旨を伝えてから、漸く自分の執務室へと戻って行った。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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