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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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はじまりのうた
こちらは本日UPの新作です

拍手[4回]


◇◆◇

 最期の時は、満足だった。
 思い残すことがあるとすれば……それは、たった一つだけ。
 けれど、それは誰にも言わず、ずっと心の奥にしまって置くつもりだった。
 だが…その決心は、脆くも崩れさることとなった。

◇◆◇

 その日のミサが終わり、デーモンを除く悪魔たちは、魔界へと戻って行った。
 その背中を見送るのは、何度目だったか…。そんな思いが、ふと胸を過ぎる。
 これが最後、これが最後。そう言いながらも、幾度もここへ来てくれた。その気持ちは、とても嬉しかったし、一緒に過ごした時間もとても有意義だった。
 そして、悪魔たちが去った後。スタッフや媒体たちとの打ち上げの最中に、その電話はかかって来た。

「…デーさん、携帯鳴ってない…?」
 隣に座っていた湯沢の声に、いつになく何処か気も漫ろだったデーモンは、はっとして自分の荷物の中を漁り、携帯を確認する。
 そこに出ている名前は…。
「…悪い、ちょっと電話出て来るな」
 湯沢にそう声をかけると、何かを察したのだろう。湯沢はにんまりと笑うと、デーモンにそっと耳打ちした。
「ごゆっくりどうぞ」
「……あぁ…」
 それだけ言い残し、デーモンはそそくさと席を外す。そして、大急ぎで人気のない場所を見つけると、通話ボタンを押した。
『…打ち上げ中だったか?』
 携帯から聞こえて来た声に、大きく息を吐き出す。
「あぁ…出るのが遅くなって悪かったな」
『いや。俺が、勝手にかけたんだから。迷惑だったら、またかけ直すが…?』
「いや…大丈夫」
 周りを確認し、誰もいないことを確認すると、改めて小さな溜め息を吐き出す。そして。
「…有難うな、電話してくれて」
 少し酒は入っているが、酔っ払っている、と言う程ではなかったはず。けれど…頬が…耳が、熱い。
『無事、終わったんだろう?』
「…あぁ…無事に、終わった。彼奴等みんな、ちゃんと魔界に帰ったぞ」
 問いかけられた声に、先程の光景が甦る。
 見送った背中は、四名。けれど…その胸の奥に残るのは…十年前に見た、あの背中。
『…デーモン?』
 いつになく、口数の少ないデーモンに、電話の向こうの声は怪訝そうに名前を呼ぶ。
 その声が…とても、愛おしくて。
「…御前に言うのは…違うって、わかっているんだ。でも…どうしても、言わせてくれ」
 そう断ってから、相手の返事を待たずに言葉を続ける。
「なぁ、エース……吾輩は、やっぱり…御前にもいて欲しかった。御前だけが、足りなかったんだ…」
『…デーモン…』
「でもな、ジェイルがどうの、と言うことじゃない。ジェイルは勿論のこと、十分過ぎるくらい、みんな頑張ってくれた。忙しいところを集まってくれて…みんなに、感謝しているんだ。御前が忙しいのも、重々承知だ。でも…彼奴等の背中を見送った時…やっぱり、御前の背中が甦って来るんだ。それが何度目であろうと、変わらない。十年前に見た、御前の背中が…足りないんだ…」
 胸に込み上げて来る思いは…あの頃と、変わりない。
 誰よりも…傍にいたいのに。今は、一番遠い。
「…悪かった。御前は、エースじゃないのにな。御前に、エースの名を呼ぶのは…もう、これっきりだから。今だけ…呼ばせてくれ…エースの名を」
 どうしてこんなにしんみりした気持ちになるのか、デーモンにもわからなかった。けれど、何も言わない相手が…その呼吸の音だけが、恋悪魔を思い起こさせるから。
 すると、電話の相手は大きな溜め息を一つ。そして、小さな笑い声。
『そんなこと、遠慮してたのか?』
「…清水…」
『確かに俺は、エースじゃない。でも…御前だって、エースに会いたい時もあるよな。今日は特に、色々と思うところもあるだろうし…だから、今日はその名で呼んで構わない』
 珍しく、機嫌良く受け入れてくれた。それだけで、十分だった。
「…有難うな。だが、もう良いんだ。十分だから」
 デーモンも大きく息を吐き出すと、小さく笑った。
「不思議なもんだな。吾輩は御前の恋敵で…ずっと、御前に嫌われていると思っていたのに…いつの間にか、こうして笑って話せる相手になるとはな」
『全くだな。俺だって…御前からエースの名で呼ばれることに、嫌悪感はなくなった。寧ろ…俺は、エースの媒体で良かったって言うことを、改めて思い出させてくれる』
「…みんな、年を取ったんだ。尖っていたところは丸くなって、すっかりおっさんだ」
 くすくすと笑うデーモンに、電話の向こうからも笑い声が聞こえた。
『そうだな。みんな、良いおっさんだ。でもそれが当たり前だし、時の流れには逆らえない。でも、それで良いじゃないか』
「そうだな」
 電話の声を聞いていると、先程までのしんみりとした気持ちはだいぶ落ち着いて来ていた。
 その心理状態を察したのか…電話の相手は、ふとそれを口にした。
『…御前は、まだ人間界にいるし、仕事もあるだろうが…それでも、少しは休めるんだろう?』
「…あぁ。数日はな」
 急にそんなことを言われ、自分のスケジュールを思い出す。
『だったら…一度、魔界へ戻ったらどうだ?それで、エースの顔を見てくれば良いじゃないか。向こうで、みんなで打ち上げも出来るだろうし』
 不意にそう言われ…僅かに、心が揺らぐ。
 エースに会いたいのは確かだ。けれど…
「…今は、まだ駄目だ」
 デーモンは、そう言葉を零す。
『どうして?』
 問いかけられ、一瞬答えに迷う。けれど…答えは、一つしかなかった。
「…エースと、約束したんだ。吾輩は、人間界での仕事を全うする。それまで…魔界へは、帰らない。だから…まだ駄目なんだ」
『…そう言うところは律儀だよな。でも、そんなこと言ってるから…俺とエースを、混同するんだろうが』
 その言葉は尤もで…デーモンも、反論は出来なかった。
 そして、徐々にではあるが、それを受け入れてくれ始めた相手だから…こうして、落ち着いてしまっているのかも知れない。
「…今は少しだけ…見て見ぬ振りをしていてくれ」
 小さくつぶやいた声。
 そして、暫しの沈黙。
 そして。
『…しょうがないな。少しだけ、だぞ』
 そう、返事が帰って来た。そして、極め付け。
『…好きだよ、デーモン』
「……清水…?」
 思いがけない言葉に、何を言っているんだろうと…言葉の意味さえ、理解出来なかった。
『あ、勿論恋愛感情じゃないぞ』
「いや…それはわかっているんだが……唐突だと思ってな…」
『弱っている相手には、ちょっとは優しくしてやろうと思ってな』
「…吾輩、そんなに弱ってるか…?」
 思ってもみない言葉に、自分自身が驚いてしまう。
『解散なんて、何度繰り返しても、慣れないんだろう?その度に、弱ってるのは知っていたけど、今日だけ特別、な。俺があんなこと言ったなんて、誰にも言うなよ』
「…わかった…」
 いつになく優しい相手に、ちょっとだけ嬉しくなってしまう自分を感じながら…ほんの少し、罪悪感を感じたり。
「…悪かったな。明日もライブで忙しいんだろう?」
『まぁな。でも…ほら、今日は雨だろう?だから、ちょっと声が聞きたかったんだ』
「あぁ…」
 くすっと笑いが零れた。
『疲れてるだろうから、今日は歌は良いから。ゆっくり休めよ』
「…気ぃ使ってくれて有難うな」
 相手なりの、気遣い。それが、嬉しかった。
 そして…今日のこの日に、こうして話が出来たと言うことも。
『じゃあ、またな』
「あぁ、御休み」
 電話を切った後も、胸の奥がほんのりと暖かい気持ちで一杯だった。

 電話を終えて戻って来ると、半分出来上がりかけている湯沢が絡んでくる。
「…清水さん元気だった?」
「…まぁ、な」
「良いなぁ~ラブラブで~」
「ちょっ…声がデカイ…っ」
 慌てて湯沢の口を押さえるも、既に周りには聞こえているようで。
「ちょっとぉ~!いつの間に清水さんとラブラブになったのさ~」
「へぇ~、知らなかったね~。そう言う関係だったんだ~」
「エースが聞いたらなんというやら…」
 反応は、三者三様。でも…それもまた、楽しい時間だったり。
 自分は…本当に、良い仲魔たちに支えられていたのだと、改めて感じた。
 それは、悪魔の仲魔としても、媒体の仲間としても。
「…悪魔も良いけど…今度は、俺たちで集まりたいね。単なる呑み会で良いからさ。そしたら、清水さんも来れるでしょ?」
 そう言ったのは、誰の声だっただろう。
「あぁ…そうだな」
 もし、それが叶えば…きっと、楽しい時間になるだろう。
 新たな楽しみを胸に。
 それは、新たな出発の兆しとなるだろうか。
 その未来は…まだ誰にもわからなかった。でも、新たな楽しみであることには間違いはなかった。

◇◆◇

 その歌声は、今日も届く。
 愛しい相手が、頑張れるように。
 精一杯の、想いを込めて。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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