聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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ふたりの話~覚醒のおまけ
それは、まだ"悪魔"として活動を始めたばかりの頃。
想いを遂げたばかりの関係は、立ち止まっていた。
「お先に~」
「うん、お疲れ~」
先に片づけを終えた仲魔たちがスタジオから帰路に着く。
その背中をぼんやりと見送ったライデンは、その頭の中で自身の媒体と話をしていた。
『…じゃあ、今日は邪魔しないでね』
そう言われた言葉に、小さく笑いを零して頷く。そして、早々に悪魔は眠りに着き、媒体たる"彼"は、自身を取り戻す。
「…さて、じゃあ帰るかな~」
大きく伸びをして、自分に戻って来た身体を実感する。そして荷物を抱えると、スタジオを後にした。
「…随分遅かったね」
入り口を出たところで待っていてくれた相棒は、ふとその気を感じて小さく首を傾げる。
「あれ?もう湯沢くん?」
「うん。今日は…ね」
この後、一緒にご飯を食べに行く約束をしていた訳で…その為に早々に人間に戻った訳だが、相手はそこまで察してはいなかったようだ。
「じゃあ…俺も石川の方が良かった?」
「…まぁ…」
何となく、追い出してしまうようで申し訳ない…。そんな思いが顔に出たのか、相手はくすっと笑いを零した。
「そんなところで遠慮しないで。折角のデートだもんね、ちゃんと石川に変わるから」
「……御免…」
そう零すと、くすくすと笑いながら頭を撫でられる。
「邪魔しないから心配しないで。ごゆっくり」
相手はそう言って笑うと、目を閉じて自分の媒体を呼び出す。
次に目を開けた時には、纏う気が変わっていた。
「お待たせ」
「…うん…」
改めて向かい合うと…何となく照れ臭い。
「行こう」
そう声をかける相手の表情は、特にいつもと変わらない。
初めて出会った時から、その雰囲気も、受け取ったイメージも、何も変わらない。それが嬉しい反面…まだ、特別な表情を見たことがない。それが、ちょっと引っかかるところでもあった。
この相手にとって、俺の存在はどれ程の大きさなのだろう。
そんなことをぼんやりと考えながら、相手の背中を追いかけていた。
「…ねぇ…今日、ウチ来る…?」
食事の合間に、思い立ったようにそう問いかけてみる。
「…湯沢くんち?行っても良いけど…どうしたの?急に…」
「……話があるから…」
「…今も話してるけど…?」
「………」
それもそうだ。食事中とは言え、今正面向かって話をしている真っ最中だと言うのに…。
思わず口を噤んだ俺の顔を見ながら、相手はくすくすと笑いを零した。
「湯沢くんち、行っても良い?」
「…はい?」
「話があるんでしょ?」
「…まぁ…」
調子が狂う…。結局、自分が何をしたかったのか、良くわからず終いで。
何となく気まずいまま、食事を終え、揃って家へと向かった。
途中で飲み物を調達しつつ、一緒に俺の家へと帰って来る。
「適当に座ってて」
「うん」
石川くんがここに来たのは初めてではないけれど…改めてぐるっと部屋の中を見回している。
「…どしたの?」
飲み物を持って戻った俺の声に、石川くんは小さく笑う。
「相変わらず、片付いてるな~と思って。俺の部屋とは大違い」
「そんなことないよ。石川くんっちだって、別にそんなに汚くないじゃん」
そう言って笑いながら、床に座った石川くんに買って来たばかりの缶ビールを差し出す。酒に弱い俺はジュースだけど。
「…で、話って?」
本題を思い出して問いかけた石川くんの声に、俺はテーブルを挟んで向かい合うように、ベッドを背に床に座り込む。
「…いや…たいしたことじゃないんだけど…」
そう前置きしたのは…自分だけ焦っている姿を、見せたくなかったからかも知れない。そして、どんな答えが帰って来るかもわからなかったから。
ちょっと緊張しながら、ゆっくりと口を開いた。
「…ねぇ…俺たちって、どう言う関係だと思う…?」
「…は?」
思わずそう声を零した石川くんの顔を真っ直ぐ見ることが出来ず…俺はちょっと目を伏せた。
「…俺は、石川くんが好きだよ。石川くんも好きだって言ってくれたじゃん?お互いの気持ちはわかってる。キスもしてる。でも…正直、それだけじゃん?まぁ…俺が体調崩してたから、完全にあの時はタイミング逃したのはわかるんだけど…その……」
そこから先の言葉は、なかなか出て来ない。
自分自身では、求めるモノはわかり切っている。ただ、同じリズムセクションとして仕事中は傍にいることが多い分、改めてどうの…とはなかなか言い辛いところで…しかも、真剣になるのがどうも照れ臭かったり。
俺たちが悪魔として共に歩き始めてからの時間は、まだほんの僅か。お互いに、自分の主たる悪魔のことは良くわかっているだろうけど、相手の主のことまでは、俺はまだ把握し切れていない。丸ごと全部ライデンに頼っても良いんだけど…それでは、俺じゃなくてライデンの主張になりかねないし。
あくまでも…俺個人の気持ちとして。それを、伝えたくて。
その苦悩しているであろう姿を見つめていた石川くんは、呑みかけのままだった缶ビールを呑み干すと、ゆらりと立ち上がった。
「…そう言う事ね」
「…ちょっ…石川くん…?」
缶ビール一本ほどで、彼が酔っ払うはずはない訳で…けれど、その姿はどうもいつもとはちょっと違う。
怪訝そうに眉を寄せた俺ににっこりと微笑んだ石川くんは、そのまま俺の隣へと腰を下ろす。
「…どっちが良い?」
「…どっち…って…?」
不意にそう問いかけられ…当然、俺は何のことやら訳がわからず、首を傾げる。
「いや、直感でどっちが良いかな~と。悪魔たちの関係をそのまま受け入れる必要はないと思うんだ。だから取り敢えず聞いてみようかと…」
「…そんな律儀に聞かんでも…」
真面目なんだか、天然なんだか…。その素っ頓狂な質問に、俺は思わず笑いを零す。
「別に俺は、あんたを押し倒そうとは思ってないけど?それとも、俺に押し倒されたいの?」
「……そう言われるとね…」
流石に、変なことを聞いたと実感したのだろう。ちょっと赤くなった顔を指先でぽりぽりと掻きながら、言葉を濁す石川くん。
それでも、確認もせずにさも当たり前に事に及ぶのではなく、一応希望を聞いてくれようとしたその想いは、ちょっと嬉しかったりする。
「確かにさ、悪魔に全部流されるのもどうかとは思うけど…俺は、ライデンと身体を共有している訳だからね、同じで構わないと思ってるよ。その方が、ココロもカラダも変に混乱しなくて良いと思うんだけど?」
まぁ…俺は最初からそのつもりだったんだけどね…。
石川くんに抱き締められたら、温かいし、柔らかいし(面と向かっては言わないけどね…)、ふかふかの布団みたいで気持ち良いだろうな~って。
多分…ライデンも、同じ気持ちだったんだろうなと思う。
「…ホント、そう言う決断は潔いよね…」
「まぁね。でも…安心して身を任せられると思うのは、あんたを信じてるから、だよ?」
「…湯沢くん…」
俺は身体の向きを変え石川くんと向かい合うと、腕を伸ばしてその首へと回した。
そして、そっと顔を寄せる。
「…愛してるよ」
耳元でそっと囁くと、その答えの代わりに抱き締められ、俺の首筋に顔を埋めた。そして徐ろに首筋に口付けられたかと思うと、首筋を耳まで唇で辿り、耳朶を軽く吸い上げる。
「あっ…」
突然始まった愛撫に、背筋がゾクッとして思わず首を竦める。
「ちょっ…」
どう反応して良いものやら…と、咄嗟に頭を過ぎったものの、気が付いたら既に床に押し倒されていた。
一旦身体を離し、改めて顔を寄せ、唇を合わせる。
深くて甘いキス。このまま身を任せても良いかな…と思ったものの…。
「ちょっと…待って」
声を上げたのは、俺だった。
その声に、再び身体を離し、俺を見つめた石川くんの眼差しは…何とも言えないものだった。
「…やっぱり…駄目?」
まるで、お預けを喰らった犬、と言う表情を浮かべた石川くんに、俺は小さく笑う。
「何て顔してんの。そうじゃなくて…背中痛いんだけど?何でベッドがあるのに、床に押し倒すかね…それに、シャワーも浴びてないし…俺、汗かいてたから……」
「…あぁ…御免…つい…」
石川くんは慌てて身体を起こし、その手で俺を起こしてくれる。そしてそのまま俺をベッドに座らせると、自分は俺の足の間に両膝をついて座り、俺を見上げた。そして、小さく笑う。
「シャワーの前にもうちょっとだけ…」
「…うん?」
石川くんの言わんとすることが良くわからなかったんだけど…その腕に抱き締められ、胸元の寄せられた顔がとても幸せそうに見える。
「…何か、楽しそうだね…」
さっきまでの勢いは何処へやら…抱き締められているだけで、特に何をしている訳でもない。でも、その顔を見ていると、つい笑ってしまう。
「うん、楽しいよ」
「…そう?」
それならそれで、まぁいっか。と、思ってしまう。何だろう、この長閑な時間…でもそれもまた愛おしい。
俺もそっとその頭を抱き寄せ、その髪を撫でる。すると、石川くんはふと顔を上げた。
「ポンポンされたことはあるけど、頭ナデナデされたのなんて、子供の時以来…っ」
「そう?」
確かに。普通は、大人になれば頭を撫でられることなんてそんなにあることじゃない。そう考えると、俺は頭を撫でられる確率が高いし…周りから見たらまだ子供なのだろうか。
ふと、そんな思いが俺の心の過ぎる。
「…どうしたの?」
溜め息を一つ吐き出した俺に、石川くんは小さく首を傾げて問いかける。
心配そうな眼差し。さっきまでの、甘い雰囲気は急に冷めた気がする…。
「ねぇ…俺って、まだ子供なのかな…みんなに頭撫でられるんだけど…」
今まで、然程疑問にも思ったことはなかったんだけど…よくよく考えれば、玩具扱いと言うか、ペット扱いと言うか…みんなと出逢った頃はまだ俺は十代だった、って言うこともあったし…ホント、遊ばれてると言う感覚は何処かにあったから。でもそれが、単に子供扱いされている、と言うことには繋がっていなかった。
自分が放った言葉に、自分自身で酷く落ち込んでしまった…。
俺のそんな姿を見ていた石川くんは、くすっと小さく笑いを零す。
「俺は、子供だとは思ってないけど?」
「でもみんな、俺を玩具みたいだと思ってるでしょ?」
思わず言い返した声に、石川くんは再び笑った。
「まぁ…俺は良いキャラだと思うけどね。可愛がられてるって言うことと、子供扱いとはまた別だと思うよ。それに、子供だと思っていたら俺はここまで興奮しないし」
その言葉には、我が耳を疑う…。
「…興奮してんの?和んでるようにしか見えないけど…」
「…密かに、ね」
石川くんはくすっと笑うと、腰を上げて片膝をベッドに付いて俺と視線を合わせる。そして、ぐっと顔を寄せた。
「一緒にシャワー浴びる?」
突然のそう言われると…流石の俺も一瞬たじろいだ。
「……ホント、急に豹変するよね…」
「それを言ったら、湯沢くんもだよ?最初のキスの時なんか、急にエロくなったし」
「…あんたが言うか」
思わず笑い出す俺。勿論、言った石川くんもくすくすと笑っている。
だってあれは…俺だけじゃなかったし…ね。
「御免ね。風呂狭いから一人ずつ」
「そうか、残念。じゃあ、またいつか…」
何処まで本気なのかはわからないけど、この呑気な雰囲気でその後何をしようとしているのかなんて、全く繋がらないのだが…とにかく今は、変に緊張するよりも気持ちが落ち着いたのは確かだった。
多分、それはお互いに。
笑いを収め、小さく吐息を吐き出した石川くん。目を細めて笑うその姿は、とても柔らかい。
「…好きだよ」
囁くような声。けれど、目の前にいるのだから聞こえないはずはない。
「…俺も大好き」
にっこりと笑って、そう返す言葉。そんな言葉だけでも、胸の奥が熱くなる。
そっと、傾けた石川くんの頬が触れた。
重ねられた唇が、とても甘い。
零れる吐息を拾うように、何度も口付けられ、舌で口の中を弄られる感覚に自然と声が零れる。
「…ぁ…ん…」
「湯沢くん、可愛い」
「……もぉ…」
くすっと笑う声。もう、顔なんか見ていられなくて…俺の意識は、キスだけで完全に蕩けている。
「はい、ばんざ~い」
そう声をかけられ、思わず素直に両手を挙げると、そのままあっと言う間に着ていたTシャツを脱がされ、そのままベッドの上に倒される。
「…普段のんびりしてるクセに…何でこんな時ばっかり手早いかな…」
「何でって…この状況でそれを聞く?我慢出来ないからに決まってるじゃない」
笑いながら、両手で額にかかった俺の髪を掻きあげ、額に口付けた。
「御免ね、このまま…しても良い?」
耳元でそう囁かれる。
「シャワー浴びてないけど…」
「平気」
その言葉が俺の耳に届いた時には、その唇は既に俺の首に押し当てられていた。
その唇で、指先で、掌で。体中を弄られ、俺の思考は止まっていた。
半ば無意識に両腕を伸ばし、その首に絡め、引き寄せる。
耳元で感じるのは、吐き出す吐息がとても熱い、と言うこと。
お互いが吐き出す息と、聞きたくはなかったけど…留められない自分の嬌声と。そして、交わるその音が、俺の聴覚を犯していく。
思わず…その耳元に、囁いたのは…どうしても呼びたかった"名前"。
その途端…きつく、抱き締められた。
----愛してる。
耳元で囁かれた言葉に…意識が、爆ぜた。
「…何で急に"名前"…?」
苦笑しながら俺の顔を覗き込んだその顔は、とても優しかった。
「…だって、呼びたかったんだもん…」
半ば、ぼんやりとした意識のまま、譫言のようにそう答えた。
「…まぁ、良いけど…」
笑いながら、深く口付ける。
そこにあるのは、全身で感じる、愛されている、と言う実感。
そんな想いに包まれ…俺は、いつの間にか眠りに落ちていた。
目が覚めたのは、だいぶ日が高くなった頃、だった。
ふと、良い匂いが鼻をくすぐって…その途端、ぐぅ~っと大きな音を立ててお腹が鳴った…。
「おはよう」
その声が聞こえたのか、笑いを含んだ声が届いた。
身体を起こすと、キッチンにくすくすと笑う石川くんの姿が見えた。
「…おはよう…」
お腹の鳴る大きな音を聞かれたことと、夕べの色んなことが一気に甦り、思わず赤くなる…。
すると、石川くんは笑いながらベッドまでやって来ると、俺の直ぐ傍に腰を下ろした。
「身体、大丈夫?」
ちょっと心配そうな眼差しを向けられ、俺は簡単に身体を動かしてみる。
「…今んとこ、意外と大丈夫そう」
「流石。若いね」
「何だそれ」
俺も思わず笑いを零すと、石川くんも小さく微笑んだ。
「夕べは結局、シャワーは入れなくて御免ね。簡単なものだけど、ご飯作ってあるから、食べる前にシャワー浴びておいで。俺もさっき、貸して貰ったから」
「うん、そうする。腹減ったし」
石川くんのご飯は美味しいから楽しみだ。
ベッドから降りると、少し身体はだるい。でも、動けないほどじゃないし。
そのまま風呂へ行き、シャワーを浴びながらふと思い出した。
そう言えば…どう言う関係だと思う?と問いかけた答えは、聞いていなかった…。
愛されていることは十分にわかったのだから、そこまで形式に拘る必要はないのかも知れない。でも…はっきりと恋悪魔だと公言した悪魔たちに感化されているだけかも知れないと、ふと過ぎる思いは、どうにも消化不良で…。
思わず、大きな溜め息を一つ。
ここまで悩む理由は一つしかない。俺自身、それはわかっている。だからこそ…ちゃんと、確かめたかった。
本当に…叶わぬものなのか、否か。
シャワーを浴び終わった後は石川くんが作ってくれたご飯を一緒に食べ、食後のコーヒーまで至れり尽くせりの時間を満喫しつつ…気になっていたことを、やっと問いかけた。
「ねぇ…夕べ俺が聞いたこと…覚えてる?」
「…聞いたこと?……何だっけ…?」
俺の隣で、同じようにベッドを背に座っていた石川くんは、首を傾げながらそう返した。
まぁ…色々あり過ぎて、覚えてないのも無理はない。そこは、怒るところじゃないし。
「俺たちは、どう言う関係だと思う?って聞いたこと」
「…あぁ…」
ちょっと考えて、思い出したように小さく言葉を零す。まぁ、本当に思い出したかどうかはわからないけれど。
「…心配?」
ふと、そう問いかけられる。
「心配っつーか…あんたの気持ちを疑ってる訳じゃないんだ。愛されてるのも、大事にされてるのもわかってる。でも…本心はどうよ?ってこと。形式に拘る訳じゃないけど、悪魔の影響はどうなんだろうな、って…」
そう言いながら、溜め息を一つ。
「覚醒してなかったとは言え、あんたは俺と出逢う前からゼノンといた訳でしょ?俺がライデンの媒体だってわかってから、こうなった訳だし…」
「そんなこと、心配しなくても良いのに」
そんな言葉と共に、石川くんからも小さな溜め息が零れた。
「俺…言ったよね?俺が覚醒する前に、湯沢くんの周りに嫉妬してた、って。確かに、俺は御前よりも先にゼノンと接触してたし、御前がライデンだってわかってから、改めて出逢った。でも、嫉妬するって事は、それだけ好きだってことでしょ?はっきり言わなかった俺もいけなかったんだろうけど…少なくとも俺は、恋人だと思ってるよ?」
「ホントに?」
「そんなことで嘘付いてどうするの」
くすっと、笑いが零れた。
「…そう言う湯沢くんは?」
問い返され…思わず吐息を一つ。
「御免ね。俺、ちゃんと好きになるのはの初めてだから良くわかんなくて…でも、俺は恋人であれば良いなと思ってたよ。ずっと…あんたのこと、好きだったんだもん。知ってるでしょ?」
「まぁ……って言うか、初めてって?前に彼女いたんじゃないの?」
「…そんなこと、誰にも言ったことないけど?それに、彼女って程の付き合いでは…って、何の話さ…」
「…えっと…暴露大会…?」
「……じゃあ、あんたも今までの恋愛遍歴を事細かに全部話せ…」
「…御免なさい…」
何だよ、言えないことでもしてるのかよ…まぁ、このヒトの事だから、有り得なくないんだよな…怖い怖い。
何だか不穏な空気になって来たんだけど…と思っていたら、石川くんは大きな溜め息を吐き出した。
「…いや…前に小暮から、御前がモテる、って聞いたことあったから…そうだ、その時、恋人の話は聞いたことないって言われたのを思い出したんだ。御免ね、変な話になって…」
「…ちょっと…俺のいないところで何の話してるのさ…で、モテるってなによ?音に関しては何回か言われたことはあるけど…人に関しては俺は知らんよ…?」
「うん、音の話だった…」
「…それはそれで、失礼だよな…」
ちょっとムッとしたように答えると、石川くんはくすっと笑った。
「御免ね。その話したのは、俺も色々迷子になってた時期だったしね。心配してたんだよ。御前に、恋人がいるんじゃないかって」
「だったら、直接聞きなさいよっ。そしたら、真っ向から否定してやったのに」
全くもぉ…。
「とにかく、俺の初恋はあんたなのっ。わかった?」
「うん。わかった」
くすっと笑ったその姿に、俺は小さな溜め息を一つ。告白って、普通こんな感じじゃないよな…と、呆れている間もなく。
「でも…じゃあ、あのキスは?やたらと…エロかったけど…?」
そこを突っ込むか…。
「…だから…最初にキスしたのは俺だけど、あんたの言ってるのは俺じゃなくて……」
そう。あれは…ライデンだ。変に、スイッチ入ったんだった…。
「でも、ライデンだってゼノンが初恋でしょ?それであのキス…?」
…つまり。
「結論は簡単じゃん。一番エロいのは、ライデンにあんなエロいキスを教え込んだゼノン、ってこと。つまり、その媒体のあんたも…?」
「………まぁ…御免…」
赤くなった顔を、ぽりぽりと指先で掻いている石川くん…。何だ、これ。
思わず、笑いが零れた。
まぁ、それならそれで…良いんじゃないかな。面白そうだ。
「いやぁ、これからが楽しみだ」
「…何の期待だよ…」
「そう言うお年頃ですから?」
「…興味津々の若い子って底なしで怖いね…」
「何言ってんの。二つしか違わないクセに」
思わず、くすくすと笑ってしまう。何か、凄い爺さんみたい。自分だって、まだ若いクセにね。
「清水さんと大橋と一緒にいるとね、否が応にも耳年増にもなりますって」
「…それはわかる気はする…」
苦笑していた石川くんは、暫く笑うと、小さく吐息を吐き出した。
「…あの二人に比べられると困るんだけど……俺だって、男相手は初めてだったから…」
不意にそう言われ、今度は俺が、苦笑する。
「そうだよね。石川くん、巨乳好きだもんね」
「…誰がそんなことを…」
「否定はしないでしょ?」
「……まぁね」
思わず爆笑…。
裏切らない答えは、流石だと思う。こう言う石川くんは、ホントに好きだ。
「でも、湯沢くんの方が好きだからね?」
「やたっ!巨乳に勝ったっ!」
思わずガッツポーズをした俺に、石川くんもくすくすと笑った。
でも、ホントに。一番好きでいてくれる相手が初恋だなんて、恵まれているんだと思う。
「…ホントはね…ちょっと、心配だったんだ」
笑う石川くんの前、ほんの少しだけ心の奥に残っていた不安。それを、吐き出してみることにした。
「何が心配?」
小さく問いかけた声に、思わず笑いを零す。
「よく、初恋は実らない、って言うでしょ?俺もライデンも、偶然とは言え、あんたたちが初恋だしね。しかも、そこそこ良い年してからの初恋だから…」
「だとしたら、出逢うべくして出逢ったんだよ。だから大丈夫」
にっこりと微笑まれ、そうなんだ、と普通に納得出来てしまう。
「…良かった。石川くんで」
「俺も、湯沢くん好きになって良かった」
そっと、傾けた頬が重なる。
甘い口付け。
夕べから何度もキスしていても、その度に蕩けるような感覚。
「…エロいキスばっかりするんだから…」
思わずそう零した俺の耳元で、笑いながら囁く声。
「でも好きでしょ?」
その声にも、ぞくっとする。
「…まぁね」
「流石」
再び、笑う声が耳元で聞こえる。
そして、その耳に口付けられ、耳朶を軽く噛まれる。
「ぅんっ…」
甘い疼きが背筋を這い上がる。
「エロい」
思わず零した言葉。
「お互い様」
くすくすと笑う声。勿論、俺もくすくすと笑いを零した。
その時間が、何よりも嬉しくて。
ホントに俺は、幸せ者だ。
「…で、俺たちも解禁?」
「多分…ね」
「やった」
くすくすと笑う声。その笑顔に、もう一名も笑いを零す。
初恋が、叶わないだなんて。それが迷信だと、改めて感じていた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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