忍者ブログ

聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

初恋 4
こちらは、本日UPの新作です
 5話完結 act.4

拍手[3回]


◇◆◇

 王都から少し離れた郊外。そこに砦を構えた部隊に、目指す相手はいた。
「地獄中央情報局長官のエースと申します。クルアール司令官との面会の約束をしているはずなのですが」
 郊外にしては立派な建物。軍事局のその部隊の受付でそう声をかけたエースに、対応した悪魔は小さく敬礼をする。
「ルーク総参謀長より、連絡が入っております。御案内致しますので、こちらへどうぞ」
 促される声に従い、エースは建物の中を進む。そして案内魔は一つのドアのまで立ち止まると、ドアをノックした。
「クルアール司令官、エース長官が御見えになりました」
『どうぞ』
 案内魔に促され、エースはそのドアを開ける。そしてその執務室の中へと足を踏み入れた。
 情報局の自分の執務室よりも、二周りぐらい小さいだろうか…それでも片付けられたその執務室は、清潔感を感じられた。そしてその中に、目的の悪魔はいた。
「初めまして、エース長官。わたしはクルアールと申します。わざわざいらして頂いて恐縮です」
「エースです。御忙しいところ押しかけてしまって申し訳ありません」
 御互いにそう言いながら、握手を交わす。そうしながらも…当然、御互いに様子を伺っているのだが。
「…それで、わたしに何か話があると…?」
 エースをソファーへと促しながら問いかけた声に、エースはソファーに腰を下ろしてから口を開く。
「デーモン閣下の事で」
 そう切り出すと、クルアールはくすっと笑いを零した。
「まぁ、そうではないかと思いました。ルーク総参謀長から伺ったのでしょう?わたしが、閣下の同級生だと。ですが…それだけ、ですよ?」
「えぇ、存じ上げております。ですが…貴方は、士官学校時代、閣下とずっと同室だった。それだけで、御会いする価値はあると思ったもので」
 エースもにっこりと笑いを零す。その笑顔の前、未だに御互いに出方を伺っているのだが…穏やかな表情を浮かべるクルアールを前に、いつになくエースの思考がぶれる。
 このクルアールと、デーモンと。同じ部屋で過ごした時間…果たして、どんな思いを共有して来たのか。一族の滅亡を知った時…クルアールは、どうやってデーモンを慰めたのか。何処か嫉妬にも近いその意識は、エースの心を不用意に揺り動かす。
 極力表情には出さないよう気をつけていたつもりであったが…何かを感じ取ったクルアールは、ゆっくりと口を開いた。
「わたしに嫉妬しているのなら…その必要はありませんよ。彼は…とても、一途でしたから」
「…それは、どう言う…」
 一瞬、怪訝そうに眉根を寄せたエース。
「昔…聞いた話です。彼は、有翼種に憧れていましてね。いつか、自分にも翼が生えて来ると、本気で思っていたくらいで」
 笑いながらそう切り出したクルアールに、エースは未だ話の先が見えず、首を傾げる。
「有翼種…ですか?確かに、デーモン閣下は有翼種ではありませんが…」
 有翼種であるか否かは、生まれた時に決まっている。必ず翼を持って生まれて来る天界人とは違い、有翼種は多いものの翼を持たない魔族も沢山いる。デーモンも翼を持たない種族の一名だが…まさか、翼が生えて来ると信じていたとは…それは純粋無垢なのか、単なる知識不足なのか…と微妙なところではあるが。
「…それで、一途なことと有翼種に憧れていたことに、何の関係が…?」
 思わず問い返した声に、クルアールは言葉を続ける。
「彼が憧れたのは、わたしの翼、でした。まぁ、一番身近だったからかも知れませんが…わたしはただ、翼が欲しいだけだと思っていたんです。けれど、それだけではなかったとわかったのは…以前、一度王都に帰還した時でした。彼は…翼で空を飛びたかったんだ、と。それも…一番、想う相手と。そんな小さな願いが叶うようにと、ダミアン殿下から漆黒の羽根を一枚賜ったのだとか。その願いが叶いそうだと、それはそれは、幸せそうに笑っていましたよ」
「…漆黒の羽根…」
 未だ、ピンと来ない。そんな表情のエース。
「想う相手が背負う翼が、漆黒だったそうですよ。黒を纏った、赤き紋様を頂いた悪魔。それが、彼の想い悪魔だと聞いていました。何処で出会ったのかはわかりませんが…突然、告白されましてね」
 その言葉に、エースの表情がすっと変わった。
「…それは、いつ頃…?」
「確か…一族が滅亡したと、連絡を受けたその朝でした。その時は赤い紋様は何処の生まれだったか、と聞かれただけだったと思いますが…少しずつ、話題が出るようになりましてね。多分、それが彼の初恋だったのだろうと思いますよ」
「………」
 クルアールの言葉に、エースは小さく息を飲む。
 だがしかし。
「…その夜…デーモン閣下は…ずっと寮にいたのですか?」
 問いかける声が、固い。
「…えぇ、恐らく。出て行った気配はありませんでした。ただ…一族が全て滅亡した…と言うより、消えてしまったと聞いたものですから…彼もまた消えてしまったのではないかと、部屋に飛び込んで顔を見に行きました。彼の一族は長が作り出した生命だと聞いていましたから…彼も、巻き込まれたのではないかと。ですが、彼は生きていた。前日の姿と、何の変わりもなく。いつも通りに、そこにいました。そして、口癖のようにいつもと同じ言葉を言ったのです。『吾輩は、奴の子供ではない。それが理由だ』と…」
「……それは…事実なのですか?」
 真っ直ぐにクルアールを見つめた、琥珀の眼差し。その眼差しは…何を、何処まで知りたいのだろう?クルアールの脳裏にはそんな思いが過ぎっていた。
「それはわたしの知るところではありませんよ。わたしにとって、そんなことはどうでも良い。長の血を分けた息子だろうが、実はそうではなかったとしても…それを知ったところで、彼の何が変わりますか?わたしの知っているデーモンは、彼そのものです。何も、変わりませんよ」
 ゆっくりと、そう言ってみる。けれどエースの表情は相変わらず。
「長の息子でなければ…困ることでも?"貴殿の恋悪魔"として、相応しくはありませんか…?少なくとも、わたしの親友としては、何も困りませんよ?」
「…クルアール司令官…」
 にっこりと微笑むクルアールに、エースは大きく息を吐き出す。
 確かに…過去を詮索したところで、現状は何も変わらない。だがそれでは、デーモンが心底求めるモノが何なのかまでは辿り着けない。
 再び、大きく息を吐き出したエース。そして、ソファーへと深く背を預けた。そして目を閉じ、天井を仰ぐ。
「…仰ることは…良くわかっています。生まれがどうのと…そんなことは問題じゃない。ただ…何かが足りない。何かに枯渇したような…いつになっても満たされない何かを抱えた彼奴を見ていると…自分の無力さが嫌になる。どれだけ愛しても、俺の愛情だけでは足りないと言われているようで…それが、情けない…」
 つい、いつものように…その想いを吐露してから…はっとしたように口を押さえ、身体を起こした。
 ここは、いつもの執務室ではない。全てを吐き出しても良い相手ではなかった。
 そう思い出したが、時既に遅し。口をついて出た言葉は、もう戻らない。
「…申し訳ない…今の言葉は、忘れて下さい…」
 青ざめた表情でそう零したエースに、クルアールは再び笑いを零した。
「御気になさらず。直接言われたことはありませんが、デーモンの初恋の相手は貴殿でしょう?それに、今もわたしは貴殿がデーモンの恋悪魔であろうと言うことは察しておりました。先ほども申したはずですが…?」
「………確かに…」
 素で聞き流してしまったが…確かに、クルアールはデーモンを"貴殿の恋悪魔"と言っていたはず。それを流してしまったのは、エースの失態だった。
「御恥ずかしい限りです…デーモンの恋悪魔であることは、認めます。ですが…初恋がわたしだったのかどうかは、わからないんです。わたしにも心当たりはありますが、何度話をしても、何処か食い違う気がして…本当はわたしではなく、わたしと同じ色を持った、別の悪魔だったのではないか、と…」
 溜め息を共に吐き出した言葉に、クルアールは再び笑いを零す。
「迷う気持ちは、良くわかります。わたしも、彼が何処で初恋の相手と出逢ったのかはわかりません。若しかしたら、夢だったのかも知れないと…本気でそう思ったこともありますよ。それくらい、彼の初恋の相手は現実味がなかった。ですが、何となく…わかる気はするのです。彼は…デーモンは、ずっと何かに飢えていました。今でも、それは変わらないのでしょう。求める想いに対して、受け入れ態勢が出来ていない。初恋の相手に何を求めていたのかもわからない。恋悪魔として、同等の立場で隣に立ちたかったのか…ただ、愛されたかっただけなのか、それすらも。わたしとて…仲魔として、本当はもっと頼って貰いたいと思っておりました。けれど、彼にはそれを受け入れることが出来なかった。ずっと、迷う心があるのですよ。恐らく…士官学校に入る、ずっと前から」
「…それはやっぱり…長への…"親"への、想い…なのでしょうか…?」
 ゆっくりと問いかけた声。その重い言葉に…クルアールは大きく息を吐き出した。
「…恐らく。口では、悪態をついていましたが…本心は違う。一族の跡取りとしてよりも…ただ、普通に子供として親の愛情を受けたかった。ただ、それだけなんだと思います。けれどそれは、最早叶わない。彼は一生…親の愛情に枯渇したまま、生きて行くのかも知れません。貴殿が幾ら愛したところで…親にはなれない。長が与えるはずだった愛情を、変わりに与えることは出来ないのですよ」
「………」
 吐き出す溜め息も重い。
「…本当は…デーモンにとって…長が、初恋…にも似た感情だったのかも知れません。父親に抱く感情ではないのでしょうが…愛しているんだ、と…だから…これ以上、道を踏み外さないで欲しい、と…そう、言われたことがある。士官学校に入る前から、そんな想いを抱いていた。士官学校に入り、長を止めることが出来なくなったからこそ…その想いに、ずっと捕らわれているんだろうか…」
 過去を知れば知るだけ…切ない気持ちになる。
 今ではどうにもならない想いに捕らわれ…平気な振りをして…いや、若しかしたら…自分自身で、その想いに気付いていないのかも知れない。だからルークのように愚痴を零す訳でもなく…訴えることもなかった。
 だからこそ…無意識に、傷は深くなる。時が経つにつれ…長を救えなかった後悔が、胸を抉る。
「…忘れてしまうのが、一番良いのかも知れませんが…多分、彼にはそれは出来ない。だとしたら、その記憶を上書きしてしまえば良い。違いますか?」
「…上書き?」
 その意味が良くわからず、眉根を寄せたエース。そんなエースを見て、クルアールは再び笑いを零した。
「上書き、ですよ。彼が、父になれば良い。そうすれば…いつか、その想いが報われる。そんな気がします」
「…父に、って……?」
「えぇ。若しかしたら…彼を一族の争いに巻き込まない為に、一番安全な士官学校へ入れたのかも知れない。それは、長にしかわからないことです。彼は納得出来ないかも知れませんが、それが長の"愛情"だったとしたら。そう、考えを切り替えることも出来る、と言うことです。親の愛情は、親になってみなければわかりません。自分がその立場に立った時に、親の愛が見えるのかも知れない。少なくとも…父親になる価値はあるかと思いますよ」
「…飛躍しすぎでは…」
 流石のエースもそんなところまで考えてもいなかった上に、血筋を残すつもりもないのだから、急にそんな話を振られても困る訳で。
 困惑するエースを前に、クルアールはくすくすと笑っていたが…直ぐに、すっと表情を引き締めた。そして。
「貴殿にその気がないのなら…わたしが奪いますが、宜しいですか?」
「……それは…駄目です。デーモンはわたしのもの、ですから」
 真剣な表情でそう言われ…思わず、素で答えを返す。
「冗談ですよ。ですが…可愛いですね、エース長官」
 何処まで本気なのかはわからないが…再びくすくすと笑うクルアール。可愛いと言われ、思わず赤くなったエースだが…柔らかにエースを見つめる眼差しは、偽りではなかった。
「まぁ、彼の目には昔から貴殿しか映っていないので強引に奪うことは出来ませんが…それでも、親と同じ道を辿ることが、強ち悪いことではないとわたしは思います。一族が滅亡した時、彼だけが生き残った。それにはきっと意味がある。わたしは、彼にそう言いました。確証などはありません。彼が本当に長の子供なのか否か、そんなことも関係はない。ただ純粋に…まだ、生きていなければならない。一族の暴走の末に…ではなく、正当なやり方で、魔界を支える役割を彼は担ったのかも知れない。わたしはそう思います。だから、皇太子殿下の御付きの話が来た時に、躊躇う彼の背中を押した。彼にしか出来ないことがきっとあるのだと信じていましたから。その証拠に、彼は大きく成長したでしょう?副大魔王としての威厳もさることながら、沢山の仲魔に慕われ…そして、大切な恋悪魔を手にした。後は、呪縛から解き放たれるだけ、です。一族と言う呪縛から、ね」
 それは、ずっとデーモンの傍で彼を見て来たクルアールだからこそ、言えた言葉なのかも知れない。
 一族の呪縛から解き放たれる為に。その為にエースが出来ること。結局そこに戻ってしまうのだが…それでも、先日よりはずっとすっきりした。
「一族の呪縛から解き放たれる為に…結局、わたしにはその方法がわからない。だから、貴殿に会いに来たのですが…」
 未だ迷う。それを口にしたエースに、クルアールはにっこりと笑った。
「先ほど申し上げたでしょう?同じ道を辿れば良いのだ、と。だから、彼が父になれば良いと言ったのですよ。今すぐに考えを変えることが出来なくても…いつか、きっと解き放たれます。長になれとまでは言いませんが、彼と貴殿と、そして子供と、新しい一族を作れば良い。"家族"を、作れば良い。そう言う意味も含んだ言葉、ですよ」
「……クルアール司令官…」
 何処までも、先を見透かしたようなその笑顔。そして、エースの胸の痞えも…すっと、落ちた気がした。
 誰よりも良くデーモンのことをわかっている。羨ましい反面…そこまではまだ、辿り着けない。けれど…それで良いのかも知れない。
「…ところで…どうして、初対面のわたしに色々と話をしてくれたのです?ルークには、ただの同級生だ、としか言わなかったと聞いていますが…?」
 そう。何も話してくれないであろうと言うことを覚悟して来たはずなのだが、いざ蓋を開けてみれば、エースの思惑と違い、自ら色々と話をしてくれた。その理由が聞いてみたかった。
「ルーク総参謀長は…こう言いましたらルーク総参謀長には申し訳ありませんが…ただの興味本位でしょう?貴殿は、彼の想い悪魔だと、わたしも察していましたから。ですから、彼が倖せになれるのならと…ね」
 にっこりと笑ってそう言うクルアール。その心根は、何処までもデーモンの為に。それだけの深い想いを抱きながらも、その恋路を応援している。一途なのは…デーモンだけではないだろう、と思わざるを得なかった。
 思わず、そんな気持ちが顔に出ていたのか…クルアールは小さな吐息を吐き出す。
「正直…貴殿の顔を見るまでは、ルーク総参謀長と同じ対応をしようと思っておりましたよ。ですが…貴殿は彼の事に本当に一生懸命で、貴殿ならきっと…一生、彼を護ってくれるのではないかと思ったので。ですから、わたしの想いを伝えました。わたしに嫉妬など無用であることは、彼の姿を見れば良くわかるでしょう?あの時…本当に、現実に絶望していた彼が…無邪気に笑う。それだけで、今が満たされているとわかります。後は、貴殿次第ですよ」
 深い、深い想い。離れていても、今の尚変わらぬ、仲魔への思い。それは、ただの興味本位ではなく…うっかりとは言え、素直にデーモンへの想いを吐き出したエースにだから、打ち明けても良いと思ったのだろう。
 共に、生きる為に。その覚悟を背負ったエースだからこそ。
 大きく息を吐き出したエース。そして、その表情を緩めた。
「流石…士官学校時代にデーモンを支えて来ただけのことはあります。いつか…貴殿にも良い報告が出来るように…支えていきますから」
「支えていたと言うよりも、面白かっただけですよ。ヒトと違うことをする彼を見ているのが面白かった。考え方も、行動も、ヒトと違うことをする。けれど、決して目立たず…こっそりと、ね。ですから、これから先も楽しみにしています。彼が…倖せになることを。その為に、頼みますよ。エース長官」
「…精進します」
 くすっと笑ったエースに、クルアールもにっこりと笑った。
 わざわざ足を運んだ甲斐があった。
 それは、エースにとっては大きな収穫だった。
PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
  
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
バーコード
ブログ内検索
Copyright ©  -- A's ROOM --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by petit sozai emi / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]