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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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初恋 5
こちらは、本日UPの新作です
 5話完結 act.5

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◇◆◇

 エースが王都に戻って来たのは、もう日も変わるかと言う時間だった。
 局には寄らず、直接屋敷へと戻って来たエースは、その門柱の影に隠れるように佇む姿を目にする。
「…デーモン?」
 問いかけた声に、その姿がすっと動く。そしてエースの視線の前にその姿を露にする。
 それは、エースの呼びかけの通り…恋悪魔たるデーモンに他ならない。
「どうした?こんな時間に…」
 思わず問いかけると、デーモンから大きな溜め息が零れる。
「…御前の姿が見えないから、他の奴等に聞いたら…ルークが、御前が觜輝に会いに行ったと言うから…」
「…觜輝?」
「あぁ…今はクルアールだ。昔は觜輝と呼ばれていたんだ」
 觜輝と言う呼び名にはピンと来なかったエースだが、確かにゼノンがそう報告してくれたはず。
「そうだった。ゼノンがそう言っていたな…」
 そう言いながら、デーモンの顔を見ると…実に、奇妙な表情をしている。
「…それが、どうかしたのか…?」
「いや……」
 クルアールと何の話をして来たのか…当然、デーモンも気になるところだろう。だからこそ、エースが帰って来るまでこんなところで待ち伏せをしていたのだろうと察する。
「取り敢えず…入ったらどうだ?こんなところでする話でもないし…ゆっくり、話そうか」
 そう言ってデーモンの腕を取ると、了解を得ないまま門を潜って屋敷の玄関へと向かう。
「ちょっ…エース…っ」
 されるがままにエースの屋敷へと一緒に入って行ったデーモン。使用魔たちは当然驚くこともなく、当たり前のようにデーモンを出迎える。そして、あっと言う間にエースの自室へと辿り着いていた。
「…で?御前は何を気にしているんだ?」
 上着を脱いで片付けつつ、ソファーへと腰を下ろしたデーモンへと問いかけるエース。
「何を、って…御前こそ、觜輝に…いや、クルアールに、何を聞きに行ったんだ…?別に彼奴とは、士官学校の同級生と言うだけで、他に何もないぞ?」
「あぁ、それはゼノンやルークからも聞いていたし、本魔もそう言っていたからな。別に、何を疑っている訳じゃないんだ」
「じゃあ、一体何を…」
 ルークからは、流石に会いに行った、としか聞いていなかったようだ。だからこそ、何の話を…と心配になったのだろう。
 そんな複雑な表情のデーモンを前に、エースは着替えを終えると、グラスを二つ用意してそこに酒を注ぎながら、口を開く。
「いや、どうしたら御前を倖せに出来るかをな、昔を知る仲魔に聞いてみようと思っただけでな」
「…は?倖せに、って…吾輩は今でも結構倖せなんだが…?」
 素でそう口にして首を傾げるデーモンに、エースは小さく笑いを零す。そして、グラスを一つ、手渡した。
「もっと倖せになれたら良いだろう?」
「……変な言い訳だな」
 思わず、デーモンもくすっと笑いを零す。
「それで?クルアールは何と言っていたんだ?」
 いつもは正面に座るエースが、今日は珍しくデーモンの横に座る。その横顔を眺めつつ問いかけたデーモンに、エースはにやりと笑う。
「…有翼種に、なりたかったんだって?」
「……っ!!」
 途端に真っ赤になったデーモン。
「それは…っ!…子供の時の話で……っ!!って言うか、觜輝は御前にそんなこと…っ」
 真っ赤な顔でそう捲くし立てるデーモンに、エースはくすくすと笑いを零す。
「見せてやろうか?御前が憧れた翼じゃないかも知れないが…?」
 そう言ったエースの言葉に、デーモンは真っ赤な顔のまま、一つ息を飲んだ。
「どうする?」
 幾度も見たはずの、エースの翼。勿論、その姿はしっかり覚えているのだが…よくよく考えると、間近で…となると、話は別。
「……見せてくれるのか…?だったら…御前の裸の背中から生えているところが見たいんだが…」
 思わずそう言ったデーモンに、エースは笑いを零す。そしてソファーから立ち上がると、徐ろに部屋着に手をかけて脱ぎ、上半身裸になる。そしてデーモンに背を向け、その背中に羽根を呼び出した。
「…これで良いか?」
 笑いながら顔だけデーモンを振り返る。だがその眼差しは既にエースの背中に釘付けになっていた。
 裸の背中から生える翼。自分には、一生生えて来ない。だからこそ…憧れる。
「…良いな…これ……特に、この…生え際、って言うのか?肌から、翼が伸びている、ここ……初めて見た…」
 うっとりとした眼差しで手を伸ばし、その指先が翼の生え際に触れる。
 エースの方も、不意に背中に触れた温かい指先の感触に、一瞬背中の翼が震えた。
「…見せて…貰わなかったのか?クルアール司令官に…」
 エースも、思わずそう問いかける。
「…流石にな…別に、觜輝は恋悪魔じゃないし…裸の背中を見せろだなんて、言えないだろう?それに、子供の時は、そんな邪な欲望じゃなかったから……」
「邪って…御前、翼一つでどんだけ興奮するんだよ」
 くすっと、エースの唇から笑いが零れる。
 確かに、軍服越しの羽根ならば、エースも幾度も見せていた。勿論、裸の背中も。けれど、"裸の背中に生えた翼"を見せたのは初めてだったはず。たったそれだけの事で、デーモンがこれ程喜んでくれるのなら…容易いこと。
 他の誰でもなく…それが、自分が一番初めの相手なら、尚更。
 だからこそ…不安が纏わりつく。
 大きな吐息を吐き出し、デーモンから視線を外したまま…エースは、ゆっくりとその想いを吐き出した。
「…なぁ、デーモン…御前が翼が見たいと言うのならいつだって見せてやるし、俺に出来ることなら何だってやってやるから…だから……何処にも、行くなよ」
「…エース…?」
 いつになく…弱気な言葉。当然…デーモンは、怪訝そうにエースの顔を覗き込んだ。
 その表情に浮かんでいたのは…先ほどまでの笑顔ではなく、何処か寂しそうな…何処か思い詰めたような、そんな表情。
「…俺が…御前の全てを満たしてやれるかどうかなんて、わからない。でも…共に歩んでいくと約束した以上、俺は…精一杯、御前を愛するから…だから……"ここ"に、いてくれ…」
 苦しそうに歪められた表情。その顔をじっと見つめていたデーモンだったが…やがて、大きく息を吐き出す。そしてエースの正面に回ると、両手でエースのその頬を挟んだ。
「ば~か。觜輝に何を聞いて来たのかは知らないが、吾輩は今が倖せだからな?勝手にヒトが何処かに行く妄想するんじゃないっ」
「…デーモン…」
 その視線を上げると、にっこりと笑うデーモンがそこにいた。
「幾度、愛していると言った?御前が良いと言った?傍にいると言った…?吾輩を信じろよ。何処にも行きゃしないから」
 そう言って笑うと、デーモンはエースの頬を挟んでいた手を離し、その腕でエースの身体をしっかりと抱き締めた。
「信じてくれ。吾輩には…御前しか、いないんだ。昔からずっと……」
「……あぁ、そうだよな…御免…」
 くすっと小さく笑いを零し、エースもデーモンの背へと腕を回す。
「觜輝に…何を言われた…?」
 エースの耳元で小さく問いかけると、暫しの間。そして。
「…御前に…倖せになってくれ、と…」
「…そう、か。なら…尚更、御前の傍にいないと」
 くすくすと笑うデーモン。身体を離し、その顔を覗き込んだエースは、その金色の眼差しが楽しそうに細められているのを見た。
 現実に絶望していたデーモンが、無邪気に笑う。それは…自分が、傍にいるから。
「大丈夫。子供の頃からずっと…吾輩は、御前に惚れているんだ。だから、こうして想いを返してくれる御前が目の前にいれば、倖せなんだ」
 にっこりと、微笑む。嘘偽りのない、その表情。その、眼差し。
 迷えば迷うほど、深みに填まる。必要のない嫉妬に苛まれる。けれど…最終的に、いつもこの笑顔に救われる。
 それは、エースだけでなく…デーモンも、同じこと。
 共にいるからこそ、救われる。
「…いつか…一緒に、クルアール司令官のところに行かないとな。御前が、倖せだと…顔を見せに…」
「あぁ、そうだな。だから…」
 いつまでも、共に。
 御互いに重なった想い。どちらからともなく頬を寄せ、唇を重ねる。
 いつか……その、期待に応えられるように。
 それはまだ見えない遠い未来の話。そう、思っていた。
 今はそれで良い、と。
「…で?吾輩は…御前の色っぽい背中と翼を見せ付けられて、この欲望をどう処理したら良い訳だ…?」
 笑いを含んだ声が、耳元に届く。そして、寄せられた身体。
「…堪能すれば良いだろう?夜は…まだ長いし」
 その意を汲み、笑いを零したエースがその腰を引き寄せる。
「じゃあ…そうしようか」
 唇を重ね、吐息を分け合う。重ねた身体の重みも、熱も、全て欲する欲望は…御互いにしか、満たすことが出来ない。
 それが…何よりも、倖せだと思えるように。
 心が満たされたように感じたのは…エースだけではなかった。

◇◆◇

 翌日の昼過ぎ。エースの執務室にやって来たルークとゼノンの姿があった。
「…で?どうだったのよ、クルアール司令官」
「俺もそれが気になってね。ついルークに同行しちゃった」
 すっかり興味津々のルークを苦笑しつつ、ゼノンも興味津々らしい。
----ルーク総参謀長は…こう言いましたらルーク総参謀長には申し訳ありませんが…ただの興味本位でしょう?
 昨日聞いたクルアールの言葉を思い出し、確かにその通りだとエースも苦笑する。
「まぁ…御前の言ってた通りだよ。最初の言葉からして、同級生だがそれだけだと釘を刺された」
「やっぱり?でも、あんたのことだから…聞きだしたのは、それだけじゃないんじゃないの…?」
 再び問いかけるルーク。勿論、エースとて昨日のクルアールとの話の内容を全て言える訳ではないことはわかっている。寧ろ…口に出来ないことの方が多いのではないか。特に、デーモンが父になれば良い、などと…今のルークに知られたら、どうからかわれることか。
 そんなことを瞬時に考えながら…話せる内容を思い出す。
「…別に…そこまで盛り上がった訳じゃない。一緒に御茶を飲んで、同級生だと釘を刺されて…後は、昔の話を少し…」
「昔の話って?」
「…あぁ……漆黒の翼に、憧れていたらしい」
「漆黒の翼…?そう言えば、デーさん有翼種じゃないもんね。でも漆黒って言うと…やっぱりあんたの?」
「いや、士官学校時代のクルアール司令官の翼だそうだ。良いなぁ、と言う程度らしいけどな」
 何処まで話せるかを考慮しながら…まぁ、このくらいならバラしても大丈夫か、と言うところまではルークにも打ち明ける。
「そっか。だから、クルアール司令官の翼を見て直ぐわかったんだ。でも…良いの?あんたの翼じゃなくて」
 流石にそこは嫉妬しているのではないか、とルークも様子を見るようにエースの顔色を伺う。
「別に問題ないけどな。今彼奴が惚れているのは俺の翼だし」
「…実感篭ってるね…ってことは、夕べ堪能したんだ、デーさん…」
 くすくすと笑いながらそう言うルーク。その辺りの鋭さは流石だと感心せざるを得ない。
「まぁ、クルアール司令官と話したのはそのくらいだ。そうそう、デーモンから書類預かって来たから返す」
 そう言いながら、エースは夕べデーモンから預かっていた、今回の騒動のきっかけともなった書類をルークへと差し出す。
「何?これ渡すから帰れ、って?」
「そう言う事。ほら、仕事して来いよ。書類溜めると、ダミアン様に怒られるぞ」
 くすくすと笑いながらそう声をかけたエースに、ルークは溜め息を一つ。
「はいはい。帰れば良いんでしょ?まぁ、また何かあったら教えてね」
 そう言いながら、ルークは書類を手にすると素直に踵を返す。そんな姿を見る限り…本当に仕事が立て込んでいるのだろう。
「じゃあ、またね」
 にっこりと笑顔を残し、ルークは執務室を後にする。
 そして…残されたのは、無言で話を聞いていたゼノンと、主たるエース。
「…で?色々聞けたの?"昔の話"」
 ルークには言えなかった話。ゼノンが聞きたかったのは、その真相だった。
「まぁ…」
 小さな溜め息を一つ吐き出したエースは、コーヒーを淹れに席を立つ。そして、二つのカップを持ってソファーへと戻り、一つをゼノンに渡してその向かいに腰を下ろした。
「一応…話は聞けた。ルークには、そこまでの理由を話していなかったから言わなかったんだが…デーモンが枯渇している想いは、やはり親の愛情じゃないか、と言われた。向こうへ行く前に、ルークからも同じことを言われたんだが…やっぱり、親の愛情には敵わない。幾ら、俺が満たそうとしたところで…それは別物だ。それは、クルアール司令官にも言われたことだ」
「…そう。俺たちには想像はつかなかったけど…やっぱり、"親"の愛情は偉大なんだね」
 納得するように、腕を組んで大きく息を吐き出しながら、ゼノンはソファーに背を凭れる。
「そうだな。ルークもそうだったが…どんな親であれ…子供である以上、愛されたいと思う気持ちは誰もが持っているんだろうな」
 エースも大きく息を吐き出し、クルアールから言われたことを思い出していた。
「デーモンの一族が滅んだその朝…デーモンは、確かに寮の部屋にいたそうだ。それはクルアール司令官も覚えていた。そして、デーモンだけが生き残った理由を、自分は長の子供ではないと…そう言ったそうだ。それは幾度も聞いていたことらしい」
 それは、クルアールのところへ行く前に、ゼノンとも話したこと。
「やっぱり、そうなのかな…?でも、一族の能力を受け継いでいるのは確かなことでしょう?」
「あぁ、彼奴の能力の大きさを考えるとな。能力を受け継いでいることは確かだと思う。だが、彼奴はクルアール司令官には、ずっと父親への文句を言っていたそうだ。そうなる原因は、俺たちにはわからない。ただ…士官学校に入ってしまったが為に、一族の暴走を留めることが出来なかったことを、後悔していたのかも知れない。勿論、それは俺たちの想像の範囲内での話だ。そこまではデーモンには聞けないし…聞くつもりもない。一族の事に関して、彼奴は触れられたくはないんだと思う。だから、その辺りの深入りはしないことにした」
「…それで、大丈夫なの?血族の絆を断ち切る方法とか、聞いていたクセに…?」
 心配そうに問いかけるゼノンに、エースは小さく笑った。
「過去はどうであれ…俺が好きになったデーモンに、何ら変わりはない。過去を知ったからと言って、想いが変わる訳じゃない。寧ろ、知らない方が良かったと…後悔することになるかも知れないだろう?だったら、今のままで良い。それは、クルアール司令官も同じ考えだった。だから、ただ黙ってデーモンの背中を押した。デーモンが大人しくダミアン様の御付きになれたのは、クルアール司令官が背中を押してくれたからだそうだ。デーモンが生き残ったことには、きっと意味がある。だから、生きていなければ、ってさ」
「…オトナだね、クルアール司令官は」
 士官学校の時から、そこまで先を読めるとは。流石のエースもゼノンも、感服せざるを得ない。
「…因みに、血族の絆を断ち切る方法は…わかったの?」
 問いかけた声に、エースは少し考えてから…ゆっくりと、口を開く。
「…詳しい方法は聞いていないが……同じ道を辿れば良い、と…クルアール司令官は、そう言ったな…一族の記呪縛から逃れる為には、長と同じ道を辿れば良い…そうすれば、解き放たれると…」
「…同じ道を辿る、か…と言うと…」
 ゼノンはそう言って、暫し、考えを巡らせる。
「まぁ…その辺はおいおいな。今慌てる必要性はないから」
 ゼノンが答えに辿り着く前に、エースはそう言葉を放ち、その考えを断ち切らせる。
「…何だか強引に切られた気がするけど…まぁ、エースがそれで良いなら、別に良いけどね。困ったら相談して」
 深入りはしない。それがエースの考えなら、それに従うしかない。それが最善だと言うのならば。
「あぁ、何かあれば相談するから。取り敢えず…今は御互いに必要としていることがわかればそれで良い」
「それだけ自惚れていられるんだから、問題ないね」
 くすくすと笑うゼノン。
 先のことは、確かにまだ誰にもわからない。だから今は…手に届く倖せを大切に。
 エースのそんな想いも察したゼノン。だから彼もまた、大人しく帰路に着いた。
 そして…束の間の平穏が訪れる。

◇◆◇

 いつか…良い報告が出来るように。
 それは……やがて、目の前の現実となる。
 但し。皆が倖せであるとは限らない。

 新たな道が、目の前に現れる。
 共に、歩む為に。共に…生きる、為に。
 その"手段"としての、生命を繋ぐ為に。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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