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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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家郷
こちらは本日UPの新作です。

拍手[3回]


◇◆◇

「ねぇ…あんたの一番古い記憶、って何?」
 不意に、そう問いかけられた。
「…一番古い記憶…?」
 問い返してから、記憶を辿る。
「そう。自然発生だ、って言ってたけどさ、何が一番古い記憶になるのかな、って思って」
 確かに自然発生であれば、発生したその時からの記憶はある。その瞬間から、自力で生きて行かなければならないのだから、ある意味当たり前。
「一番古い記憶、ね…」
 辿って行った先に辿り着いたのは。
「あぁ…"海"、だ…」
「…"海"…?」
「そう。丘の上から見た"海"。それが、最初の記憶かな…」
 懐かしい記憶。そこから、彼の全てが始まった。

◇◆◇

《おはよう、ゼノン》
 微かに、そう呼ばれた気がした。
----…ゼノン?
 初めて聞いたが…多分、それが自分の"名前"なのだと察することは出来た。
《行っておいで》
 温かい声。その途端、引き寄せられるような感覚に包まれた。

 ぼんやりした意識。
 遠くに見えるのは…青い…
 思考が定まらない。ただ、青い"それ"を、ぼんやりと見つめていた。
 とその時、不意に背後から声をかけられる。
「貴方も、目覚めたの?」
「…え?」
 振り返ってみれば、そこにはにっこりと笑う姿。
 短い白金の緩いウエーブの髪に、赤い紋様。そして綺麗な碧色の瞳。その頭上には、小さな角。
「貴方も鬼、でしょう?仲魔ですね」
 そう言われ、自分の頭に手をやる。そこには、二本の小さな角。確かに相手の言う通り、どうやら自分は鬼であるようだった。
 自分は、"鬼"として生まれ出でたのだ。
 周りをぐるっと見回す。改めて辺りを確認すると、どうやらそこは丘の上。そして先ほどまでぼんやりと見ていたのは、眼下に広がる広い"海"。木々の緑と海の青。それは、とても綺麗な景色だった。
「…鬼…か…」
 生まれたばかりで、物事に対する知識は殆どない。けれど、"鬼"であると言う潜在的な認識はそこにあった。
「名前…聞きました?」
 ふと、そう問いかけられた。
「あぁ…っと……"ゼノン"、だったかな…君は?」
 多分、そうだと思う。そんな感覚で答えると、相手も少しだけ記憶を手繰るように視線を上げ、そして再びその視線を戻す。
「多分…"レイラ=クーヴェイ"、です」
「"レイラ=クーヴェイ"…」
 にっこりと微笑む相手に、その名前は良く似合う。
「ここで会ったのも何かの縁だし…宜しくね、"レイラ"」
 そう言って手を差し出すと、にっこりと笑う相手もその手を固く握った。
「宜しく、"ゼノン"」
 共に、歩いて行く仲魔。そこから、彼等にどんな未来が待っているか。それはまだわからない。
 けれど、生まれたからには生きていかなければならない。それが、彼等に与えられた運命なのだから。
 再び、ぐるりと回りに目を向ける。
 緑の木々。青い海。穏やかで、美しい光景。それは多分、彼のこれからの生涯の中で、一番鮮烈で、一番美しい景色となるのだろう。
「…いつかまた…ここへ、戻って来られると良いね…」
 そう零した声に、彼の手を握ったままの"レイラ"もにっこりと笑う。
「そうですね。いつかまた…」
 その約束が…いつか、果たされることを願って。御互いの心に刻み込んだ景色だった。

◇◆◇

「……ノン?……ゼノン?」
「…え?」
 ハッと気が付くと、心配そうに自分を見つめる眼差しと行き合う。
「大丈夫…?」
 そう問いかける声に、溜め息を一つ。
 どうやら、記憶を辿っているうちにぼんやりと過去に捕らわれていたようだった。
「大丈夫。ちょっと、色々思い出してたんだ…」
 溜め息と共に、そう言葉を零す。
 今まで生きて来て…決して、順風満帆ではなかった。多分、今目の前にいる伴侶と出会うまでが、精神的にも苦しい時期だったのではないかと、改めて思う。
 "鬼"として生まれて、自分が背負ったその運命を思い知る。
 血を好み、その身を喰らう種族の"鬼"。到底、他悪魔の愛を受け入れることも出来ず、当然愛せるはずもなく…大事な同胞を傷つけ、失い、"鬼"であることから逃げることばかり考えていた。
 自分の"鬼"としての本性を受け入れられず、沢山の葛藤の中で生きて来た。けれど、その中で伴侶と出逢えたのは…その苦悩を全て消してくれたのは…多分、奇跡。
「…ライ」
 思わず抱き寄せた伴侶の身体。その温かさも、匂いも、全てが今の自分の癒し。
「ねぇ…次の休暇に、行きたいところがあるんだけど…一緒に行かない…?」
 抱き寄せたまま、その耳元でそう囁くと、くすっと笑いが返って来た。
「珍しいね。あんたがそんなこと言うなんて」
 少し身体を離し、にっこりと笑って顔を覗き込んだ伴侶。
「連れてってくれるなら、何処までも一緒に行くよ?」
「…うん、一緒にね」
 にっこりと笑いそう返事を返すと、再びその身体を抱き締めていた。


 数日後。久々に魔界へとやって来た雷帝と、その伴侶たる"鬼"。
 共にやって来たのは、"鬼"が生まれた場所。
 その丘の上から、眼下の海へと視線を向ける。
 その色は、あの頃のまま。何も変わらないその景色と色。
「…もう一度…ここへ、戻って来たかったんだ…」
 そうつぶやいたまま、真っ直ぐに海を見つめるその横顔を見つめている雷帝。
「…有難う、ね」
 ふと、そんな言葉が零れた。
「何が?」
 問い返した声に、視線が戻る。
「一緒に来てくれて、有難うね」
 小さく笑うその笑顔に、自然と不安も消えていた。
「当たり前じゃん。伴侶ですよ?あんたがいつも俺の為に頑張ってくれてるんだもん。俺も、あんたの為に何かしたいじゃん?一緒に旅行なんて珍しいもんね。尚更」
 笑いを零しながらそう言った言葉に、彼は笑った。
 穏やかなその笑顔。今までここへ戻って来れなかった理由は…多分、まだ彼の中で消化はされていない。そしてそれをわかっている雷帝もまた…引っかかっていること。
 本当は、誰と来たかったのだろう?
 何処か思い詰めたようなその眼差しを見つめながら、ふとそんな意識が過ぎる。
 自分は…本当にここにいて良かったのだろうか。そんな不安も、無きにしも非ず。
 本当は、聞かないで置こうと思っていた。けれど…ふと、口から零れた言葉。
「…ねぇ…本当は、誰と来たかったの…?」
 その言葉に、彼の視線が向けられた。
 真っ直ぐな碧の眼差し。
 けれどその眼差しは、直ぐにふっと柔らかく細められた。
「まぁ…隠してもしょうがないしね。本当はね…レイラと約束してたんだ。俺をここで見つけてくれたのはレイラだったから…いつかまた、ここに戻って来られたら良いね、って。結局、無理だったけどね」
「…そっか…」
 彼の同胞だった"レイラ=クーヴェイ"。その名前は知っているが、雷帝は会ったことがなかった。
 そしてその彼は…仲魔の大事な補佐官であり、現在は恋悪魔である副大魔王との諍いのきっかけでもあったはず。
 聞かなければ良かっただろうか。そんな些細な後悔が顔に出たのか…彼は手を伸ばして、雷帝の頭を引き寄せた。
「そんな顔しないで。あの頃だって…帰ろうと思えば、幾らだってここへ戻って来る事が出来たはず。でもそれをしなかったのは…きっと、俺がここへ戻って来るのは、レイラとじゃなかったんだ。俺は、御前と一緒にここへ戻って来たかったんだと思う」
「…ゼノ…」
 にっこりと笑うその笑顔。それが、自分だけに向けられていると言う現実が、とても嬉しい。
 穏やかな風に吹かれ、穏やかに笑う二名。
 この、最愛の相手と過ごす時間が、いつまでも続くように。
「…またいつか…ここに、戻って来ようね。今度は…子供たちも一緒に、ね」
「うん」
 固く握ったその手は、未来へとずっと続く絆。
 それは、この地での新たな願いだった。

 緑の木々に、青い海。
 その記憶の色は、ずっと変わることのない美しさ、だった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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