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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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希求
こちらは本日UPの新作です。

拍手[3回]


◇◆◇

 雨が降る。
 ぼんやりと窓に打ち付ける雨粒を眺めつつ…大きな溜め息を吐き出す。
 どのくらい、そうしていただろうか…不意に届いた声に、現実に引き戻された。
『…考えて、くれた?』
 その声に、再び溜め息を零す。
「…今更、だろう?別に、俺がいなくたって何の問題もないじゃないか…」
『…確かに、ね。問題は何もない。でも…』
「…でも?」
 その言葉の後、暫しの沈黙。その間に…"でも…"に続くであろう言葉を、ぼんやりと考える。
 例えば…一番簡単なのは、"信者の為に"。それが一番の常套句。他には、"みんな待ってるから"だとか、"一緒にやりたがってる"だとか…活動している仲魔たちの願い。
 後、考えられるとすれば…何だろうか?
 暫く遠ざかっていた"音"は…"声"は、忘れた訳じゃない。けれど…そこに自分はいないものだと、既にそう認識されてしまっている。それを今更、どの面下げて…との思いも、なくはない。
 だからこそ……イマイチ、本気になれない。
 ただ、それが選択肢に出ただけでも、状況を考えての妥協、だとわかっていた。
「…でも…何だよ」
 暫く答える声がないことに、改めて問いかけてみる。
 すると…その窓ガラスに、相手の顔が映った。
 真っ直ぐに見つめる眼差し。そして…何処かはにかんだような顔。
「…何だよ…」
 思わず零した言葉に、相手の顔が緩む。
『俺が、見たい』
「………」
 かぁっと、顔が赤くなる。じんわりと汗が滲む。
『大義名分は沢山あるだろうよ。多分、それはあんたが色々考えていると思う。まぁ、こんな状況だしね。そこに楽しみがあることが活力になる。それは、俺も納得出来るんだ。でも…それはやっぱり何処か逃げの言葉にしかならなくて…さっきも言った通り、大義名分としか受け取れないこともない。あんたの本心は?って聞かれたら、多分違うんじゃないかと思う。だから、俺ははっきり言ったんだ。俺が、あんたを見たい。それだけ』
 顔を見せたのは…その気持ちが嘘ではない、と伝えたかったから、だろうか。
 ならば…自分の本心は?
「彼奴らは…何て?」
 色々と思いを巡らせながら、問いかけた言葉。
 毎回、最初に話を切り出されるのは、この相手の方。そして自分へと回って来る話。優先順位は…相手の方が高い。
 だからこそ、気になる反応だったのだが…相手はくすっと笑った。
『別に誰にも、あんたを説得しろ、とは言われなかったな。毎回、どうだろうか…?って言われてたけど、それは俺への御伺い、だろう?俺を説得してどうするんだよ、って思ったけど…まぁ、理にかなっているんだろうな、と今更思うよな。俺が納得しなければ、あんたも無理な話だから』
「まぁ…な」
『だからこそ、じっくり考えた。今俺に出来ることは何か、と言う大義名分と…素直に、あんたを見たい、って言う本心と、その両方。勿論、本心は打ち明けないけれども…きっと、察するだろうな』
 本心を隠してはいても、何処か滲み出る。それをあっと言う間に見抜くのは、きっと長年の仲間であり…仲魔、だからか。
 それが時々煩わしくもあり…嬉しくもある。
『…で、どうよ』
 改めて、そう問いかけられる。
 暫し、悩んで見せて…溜め息を、一つ。
「御前さぁ…そこまで言ったなら、察しろ?」
 苦渋顔でそう返すと、相手は盛大に笑った。
『そう言うとこ、変わらないよな。OK。じゃあ、察する。予定が立ったら、また連絡するから』
 そう言い残すと、窓に映る顔がすっと消え、再び自分の顔が映る。
 何とも言えない顔。だが…その想いは、しっかり固まった。
「…やれやれ」
 溜め息を吐き出しつつも、久し振りの感覚に胸の奥の方がくすぐったくもある。
 あくまでも、今回はイレギュラー。正式な参戦と言うよりは、御手伝い感覚。だが…やるからには、真剣に。
「…俺だって、見たいんだよ。御前の笑う顔が」
 小さく零しながら、先ほど見た盛大な笑顔を思い出す。
 相手の活動に負担のないように。最初から、その約束であれば…御互いに、覚悟を決められる。
 だから…意を決して、一歩を踏み出そう。
 伊達に、無駄に時間を過ごしていた訳じゃない。その想いは、果たして…届くだろうか。
「覚悟しろよ」
 ニヤリと笑う顔。それは、相手の元を離れた16年前と、何も変わらなかった。

◇◆◇

「御帰り」
 懐かしそうに細められた眼差し。そして、嬉しそうな顔。
『…待たせたな』
 その言葉に、ニヤリと、笑う顔。
『…にしても、伝説のギターヒーローって…』
 苦笑した姿に、相手から笑いが零れる。
「イイじゃん。カッコイイよ?」
『…ヒト事みたいに言ってるけど、御前も俺、だからな?』
「勿論。わかった上で」
 そう言って再び笑う。とても、楽しそうに。
『……ったく…』
 そう零すものの、顔は笑っている。
 ほんの一時。それでも、その存在はやはり絶大。
 残念ながら、彼を呼ぶ"声"は聞こえない。けれど、"言葉"も"想い"も、ちゃんと届く。そしてそれが、全ての力となる。
 その一時を、存分に楽しむ為に。
『さぁ、行こうか』
 踏み出した足は、しっかりとした足跡を残していた。


 頑なな心を溶かしたのは、誰かを想う心。
 強く願い、求める想い。その心根は変わらない。
 大切な想いを、届ける為に。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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