聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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心懐
ベッドに横になった相手の上に乗っているのは自分。
顔を寄せ、軽く口付ける。
けれど、甘い雰囲気は…そこにはない。
「…で、結局誰が好きなの?」
マウントポジションにいる自分を見上げ、問いかけた声。
「…ん…?えっとねぇ…あんたも好きだけど、この前会った彼奴も悦かったしぃ~…それからぁ…」
この期に及んでそんな言葉と共に考えるように顎に人差し指を沿え、視線を上へと向ける。
どうして、そんなことを口にしているのか…自分でも良くわからない。
「…そう。わかった。もう良い」
その言葉の後、大きな溜め息が聞こえた。
自分は…この相手に、どう思われているのだろう…?
売女か…はたまた、ただの阿婆擦れか。誰彼構わず発情する獣と同類。自分でそう思うくらいなのだから…相手がどう思っているかは大体想像がつく。
こんな自分が…いつまでも愛されるはずがない。ただ身体だけの付き合いぐらいにしか、思われていないのではないか。
そんな想いがふと過り、一気に大きくなった不安。
そんな…複雑な想いは、胸の奥底の不安、だったのだろうか。
ふと目が覚める。まだ薄暗い。ぼんやりとしたまま、今の状況を思い出す。
時計を見ると、朝の五時前。明け方にもまた早い。
大きな欠伸を零しつつ、目蓋を擦る。
もう少し、眠る余裕はある。けれど、目を閉じると…その脳裏を過ぎったのは、つい先ほどまで見ていた"夢"。
あれは…あくまでも夢であって、現実ではない。それは、自分が一番良くわかっている。
けれど、自分の中に何処か不安が付き纏っていたのかも知れない。
そう思うと、溜め息しか出て来ない訳で…。
溜め息を一つ、吐き出す。そして、その意識を切り替えるように、楽しいことを想像する。そしてそのまま、再び眠りに落ちて行った。
何となく夢見の悪いその日は…都内でのミサだった。
いつも通りに準備を終え、ミサも順調に進んだ。
視線を横に向ければ、当然そこには相棒たる彼がいる。
何となく…居心地が悪い。そんな気がする。
けれど、そこは仕事と割り切らなければ。そう思いながら、ミサと向かい合っていた。
「御疲れ~」
「うん、御疲れ」
ミサは無事に終了した。鬱憤晴らしには持って来いの状況なのだから、変に気を回さなければ問題はない。そんな、達成感で心地良い疲れの中でにんまりと笑う。その視線の先には、うっすらと汗の浮かんだ相棒の姿。
必然的に全身運動の自分に比べれば、余り動くことのない彼は、驚くほど汗をかかない。まぁ…この構成員の中では、彼の方が特殊なのだろうが。
「風邪引かないうちに早く着替えなね~」
「おうっ!」
背後から、笑いながら声をかける仲魔。まぁ…普通に考えれば、汗だくの自分にそれは当然。
控え室へと足を向けつつ、隣を歩く彼へと視線を向ける。
「ねぇ…今夜、暇?」
問いかけた声に、その視線が向く。
「行かないの?打ち上げ」
「あぁ…」
問い返され、僅かに口を噤んだ。
確かに、他の構成員ほど酒は呑めないけれど、打ち上げの席は好きだ。飢えた身体に、みんなで食べる食事は酒がなくても十分満たされる。けれど今日はそんな気分ではなくて…どちらかと言えば、あの"夢"を払拭したい気分なのだが。それを、どう伝えたら良いモノか。
そんなことを考えているうちに、控え室へと辿り着く。中へ入れば、仲魔が既にそこにいるはず。
「…ゼノ、ちょっと……」
思わずその手を取り、控え室の前を通り過ぎて人気のない場所へと誘い込む。
「何?…どうしたの…?」
すっかり草臥れているのでよろよろとした足取りで先導する姿に、当然怪訝そうに首を傾げる彼。
「…御免、ちょっとだけ…」
大きく息を吐き出すと、そのまま吸い寄せられるように彼へと身体を寄せる。そして、その首筋へと顔を寄せる。
「ちょっ……ライ?」
されるがままの彼が、一瞬息を飲んで身を固くしたような気がした。まぁ…媒体のフェティシズムを考えれば、汗だくの自分が身体を寄せれば当然の結果だろうが。
「…大丈夫…?」
その言葉に、彼がまだ理性を保っているのだと理解する頭はある。けれど…問題は彼ではなく、自分自身の方。
「…大丈夫じゃない。ちょっとだけ…頂戴」
そう零すと、うっすらと汗の滲んだその首筋を、その耳まで思い切り良く舐め上げる。
「……んっ」
思わず零した声に、慌てて口を押さえる。けれどその耳へと辿り着いた舌は、躊躇うことなく耳の後ろまで辿り着くと、軽く吸い上げる。
「ライ……っ」
慌てて制止をかけた彼の肩口に額を寄せ、大きく息を吐き出す。
これでは…あの夢の自分と変わりない。何処でも発情する獣のようで…急激に、冷めた。
「…御免」
力を強めて彼の身体を押して引き離す。そして踵を返すと、怪訝そうに首を傾げる彼へと視線を向けた。
今更…何を迷う?
「着替えて来るよ。風邪引くと迷惑かけるしね」
「…ライ…?」
小さく笑いを零し、再び先に立って歩き出した。
迷えば迷うほど、土壷に填まる。それはわかっている。だからこそ…さっさと吹っ切れば良い。
彼に気付かれないように溜め息を吐き出すと、意を決したように控え室のドアを開けた。
「…よっしゃ!呑みに行くぞっ!」
「…御前が言うか」
先に着替えていた仲魔の笑う声。
それで良い。いつまでもくよくよと悩むのはらしくない。多分…みんな、そう思っているはず。
自分自身を盛り上げ、何事もなかったかのように振舞えば、直ぐに忘れてしまえる。
そんな想いを知ってか知らずか。仲魔たちは苦笑しながらも、ミサ終了後の打ち上げも兼ね、当然その提案に便乗することとなった。
その日の打ち上げは、自分にしてはしこたま呑んだ記憶がある。と言うか…半ば、記憶はない。
当然、自力で歩いて帰ることなど儘ならず…気が付いたら、既にベッドの上だった。
眠くて、目が開かない。けれど、柔らかなベッドの感触とシーツから漂う、嗅ぎなれた芳香。そして誰かに触れられている感触はわかった。
指先で、掌で、手の甲で、頬に触れ…首筋に触れ、薄く開いた唇に触れる。その手の感触が、とても気持ち良い。
その愛撫のような柔らかな感触に、思わず零れたのは、吐息。
「…気持ちイイ…」
譫言のように零れた言葉に誘われるように、唇が触れる。いつものように開けた唇に舌が差し入れられ、口内を甘く舐る。その手が首筋をなぞり、胸元、脇腹へと触れる。服の上からではあるが、その程好い感触が快楽を生む。
「…ぁ…っん」
吐息と共に、自然と声が零れる。けれどその瞬間、その意識がふっと引き戻された。
ずっと…恋悪魔の愛撫だと思っていた。けれど、何かが違う気がする。だとすると…一体、誰の愛撫で、悶えているのか…?
ハッとして目を開けると同時に起き上がる。視界に映るのは、恋悪魔の媒体のマンションの寝室と、驚いたように目を丸くしている恋悪魔の姿。否…その姿は、媒体の方、だった。
「…大丈夫…?」
思わず…と言った感じでそう問いかける声に、大きく息を吐き出す。
顔が…熱い。
「…えっと……御免…」
そう零したのは、どっちだったか。
自分が嬌声を漏らした相手は…恋悪魔ではなかった。その現実に、あの"夢"が甦る。
恋悪魔以外に、聞かせるつもりなどなかった甘い声。ついうっかり…と言う言葉で済ませてしまうには、ココロが…追い詰められ過ぎていた。
視界が歪み…涙が、零れた。
「…あの…御免……湯沢くんかと思って……ライデン、だよね…?」
慌ててそう言葉をかける彼に、涙を拭って顔を上げる。その手が…微かに震えていた。
自分がどっちの姿でいるのかすら、覚えていなかった。けれど、その言葉で自分の容姿がわかった。
媒体の姿に、悪魔の魂。だからこそ、無意識に寝落ちしたままで勘違いしたのだ、と。
「…御免…俺も、紛らわしくて…」
やっとで口から出た言葉に、彼は溜め息を一つ。
「ライデンに手を出すつもりはなかったんだ。湯沢くんだと思ってたから、つい…眠ってたから、気付かなくて……」
「…大丈夫…あんたの所為じゃないから。俺がいけなかったんだし…」
そう言いながら、大きく息を吐き出す。そして半ば無意識に…その手の甲で唇をぐいと拭う。
「…御免ね…思わず、キスしちゃって…」
「…あ…御免……そうじゃなくて…」
言い訳をするつもりだったが…あからさまに唇を拭う姿を見せてしまったことは、今更どうにもならない。勿論、相手もその心内はわかっているのだろう。咎めることも、怒ることもない。
顔を覗き込んだその眼差しは、ほんの少し、恋悪魔とは違う。けれど、同じなのは…大事なヒトを、心配する色。
「ゼノン…心配してたよ?今日のライデンは、何か可笑しい、って。心配してたんだけど…打ち上げの途中で、意識が落ちたみたいで…途中から湯沢くんになっちゃったから、俺と代わったんだ。湯沢くん家の鍵が見つからなくて、俺の家に連れて来たんだけど…あんまりにも色っぽい声だったから、湯沢くんだと思ってつい…でも起きたらまたライデンで…だから……」
「あぁ…そっか…」
通りで、打ち上げの記憶がなかったはず。無意識に媒体と入れ替わってしまっていたから、傍にいたのも恋悪魔の媒体だったのだ、と納得。
「呑み過ぎたかな…」
未だ震えの止まらないその手を隠すように頭を掻きながら、そう苦笑する。誤魔化すようだけれど…そうしていないと、また泣いてしまいそうで。
馬鹿みたい。その現実に…胸が痛い。
けれど、そんな姿を暫く見つめていた相手に…そのまま、そっと抱き締められた。
「ちょっ…石川…っ!?」
思わぬ展開に、思わず声を上げる。すると、耳元で囁かれた声。
「湯沢くんだろうが、ライデンだろうが…そんな顔してたら、俺は心配になるんだから」
そう言うと身体を離し、微かに震える両手をそっと握る。そして覗き込むように見つめる眼差しがすっと細くなった。
「悩み事があるなら、はっきりゼノンに言ったら?彼奴に言い辛かったら…俺が聞くよ?」
「…石川…」
「普段は、俺の相手は湯沢くんだし、御前はゼノンだろうけど…たまには良いんじゃない?滅多にない機会だし…俺はもっと、御前と話がしたかったんだ。湯沢くんとは違う。素のライデンとね」
柔らかいその眼差しとその声に、大きく息を吐き出す。
確かに。吐き出してしまえば、気持ちは楽になる。けれどそれは…自分以外には、単なる戯言。夢の中の話であって…現実ではない。そうわかっているからこそ…言い出し辛い。
「…ライデン…?」
名前を呼ばれ、再び溜め息が零れた。
「御免…あんたがどうの、ってことじゃないんだけど…俺は…ゼノンが好き、なんだ…」
胸が痛い。高だか夢の話じゃないか、と言われればそれまでだけれど…自分にとっては苦しいことには変わりない。
「俺は…ゼノンしか、経験ないよ…?ゼノンが初恋だし…初めての相手だし。だから、ゼノンしか好きにならないし…愛してない。他の誰かとなんか…比べたことないからね…?俺は……誰にでも抱かれる訳じゃない」
そう言いながら…再び、はらりと涙が零れた。
夢の中の…冷めたような声と溜め息が、耳の奥に甦る。
きつく目を閉じる。本当は、耳も塞ぎたい。けれど、その手は未だ、しっかりと彼に握られていた。
「…知ってるけど?」
耳元でそう囁かれ、ハッとして目を開ける。
「…ゼノン…?」
入れ替わったことにも気付かなかった。けれど…その眼差しは間違いなく、愛しい恋悪魔。
「御免ね、何か…いつもと違うから、俺も気になってたんだ。石川に任せて様子は見てたんだけど、内容が内容だったから急遽戻っちゃって」
微笑むように目を細めた恋悪魔に、カッと顔が熱くなるのを感じた。
「ヤダ…見ないで…」
気まずさと恥ずかしさと情けなさと。色々な感情が入り混じった変な顔など、見せたくはなかった。けれど、両手を握られている状態のままでは、顔を隠すことも出来ない。僅かに伏せたその顔さえ、簡単に覗き込まれてしまう。
現に…恋悪魔は、伏せた顔を覗き込んだ。
「俺も、御前だけだよ?」
甘い、囁き。
「何をそんなに気にしているのかわからないけど…俺は御前を信じてるし。御前に愛されてることなんか、聞かなくても顔見ていればわかるもの」
くすっと小さな笑い声と共に、そっと頬に触れられた唇の感触。
「ゼノン…」
その真っ直ぐな想いを感じて、改めて…本当に、何を心配していたのやら、と思い改めた。
あくまでも、アレは夢の姿。本来の自分も、恋悪魔の想いも、ちゃんと繋がっているのに。何を、心配する必要があったのだろう、と。
大きく息を吐き出すと、気持ちが少し軽くなった。
「御免ね。もう、大丈夫」
笑ってそう言うと、相手もにっこりと微笑んだ。
そして。
「じゃあ…続きね」
「…続き?」
その言葉の意味が良くわからず、小さく首を傾げる。すると手を握っていた恋悪魔の手が離れ、すっと抱き締められる。そしてその手がそのまま腰へと回される。
「ちょっ…ゼノン…」
「大丈夫。今触ってるのはちゃんと俺、だから」
耳元で囁く声が笑っている。思わず、顔が赤くなる…。
服の中に差し入れられたその手が、とても温かい。そして、その感触が…愛撫が、とても気持ち良い。
間違いなく…その手は、愛しい恋悪魔の温もり。だからこそ…欲望に火がつく。
「…嫌…じゃない?こんなに簡単に欲情するなんてさ…?」
吐息混じりに思わずそう問いかけると…くすっと笑う声が聞こえた。
「俺はオールオッケーだけど?だって……」
----そう育てたのは、俺だし。
そう囁かれ、ハッとして身体を離し、恋悪魔の顔をまじまじと見つめる。
そう、だ。この恋悪魔としか経験がないと言うことは…確かに、その言葉の通り。
「…そうじゃん。そもそも、あんたが俺の身体に快楽を叩き込んだんじゃん…」
すっかり頭から抜けていたとは言え…元を正せば、今目の前にいる恋悪魔の仕業。それを思い出した。
「だって、誰よりも大好きで、愛している恋悪魔だよ?当たり前じゃない。誰にも取られたくないもの。だから、俺のモノだ、って身体に刻み込んだんだよ。御前が、俺以外に好きなヒトが出来た、って言うのなら話は別だけど…この先も、俺の恋悪魔であるのなら、別に問題ないと思うのは…俺だけ…?」
「…いきなりそうぶっちゃけられてもね…」
思いがけない展開になり…ほんの少し、頭の中を整理する。
結局のところ……迷うだけ迷った先に見えたのは、ただひたすらに…愛されている、と言う想いなのかも知れない。
「…ライ?」
口を噤んだまま、じっと考えているその様子に、ちょっと心配そうに呼びかけられる。
真っ直ぐに見つめるその眼差しは…ただ、愛しい。
「責任…取りなさいよ」
そう言いながら、徐ろに着ていた服を脱ぐ。そして、恋悪魔の身体をベッドの上に押し倒すと、その上に跨った。
マウントポジションから見下ろしたその顔は、あの夢の姿とは全く違う。
「ねぇ…聞かせて?誰が好き…?」
頬に手を伸ばして、そう問いかける姿。その問いかけは…あの夢と同じ。
聞きたい言葉は…御互い、たった一つ。
「あんただけ、だよ。ゼノン」
自分でも驚くくらい、甘い声。その声に、にっこりと微笑みが返って来る。
「良かった」
そこにあるのは、全身から溢れ出ているような、愛情一杯のオーラ。
両の掌でその頬を挟み、深く口付ける。
「…酒の味がする」
「まぁ…呑んで来たからね。でも御前もヒトの事言えないと思うけど?酔いつぶれたのは御前の方だよ?」
「そりゃそうだ」
ペロッと自分の唇を舐める恋悪魔に、思わず笑いが零れた。
「…で?どうする?」
くすくすと笑いながらそう問いかける。
「…そんな状態見せといて、今更俺が拒否出来ると思う?」
そう言いながら、恋悪魔も笑いを零す。そして、むき出しの足を、爪先から上へと撫で上げられる。与えられるその感覚に軽く吐息を零した。
「…あんたの手、温かくて気持ちイイ…」
「服脱いじゃったから、冷えたんでしょ?」
笑いながら、その身体を幾度となく撫で上げる。その度に、甘い声が零れる。
もう、そこからは理性など切り離して……と思った瞬間。
「…ってか俺…簡単にしか、シャワー浴びて来なかったんだけど…どうせなら、石川の方が良かったかなぁ?」
軽く汗は流しては来ているものの、汗の匂いが残っているんじゃないか…と思って口にした言葉に、すっと恋悪魔の表情が変わった。
「何で石川…?」
「だって石川、俺の…ってか、湯沢のだけど…汗の匂い、好きなんでしょ?こう言う時はやっぱり、湯沢で石川と…の方が良かったのかな~って……ちょっ、ゼノ…っん」
唐突に腰を引き寄せられたかと思うと、そのまま抱え込まれて反対に押し倒される。そしてそのまま一気に首筋を耳まで舐め上げ、軽く耳の下に噛み付く。
「…わかってないなぁ…」
耳に唇を押し当てたまま、囁く吐息が熱い。
「何…が…?」
唐突な事態に、頭が着いて行かない。
譫言のように零した言葉に、頭からしっかりと抱き締められた。
そして。
「さっき、石川の愛撫で泣いたのは誰?まぁ、あれは出会いがしらの事故みたいなものだから、それ以上は言及はしないよ。でも、湯沢は石川のモノだけど…今の御前を抱いてるのは俺(ゼノン)、だよ?例え石川にだって、御前の汗も匂いも…」
----絶対、渡さないから。
耳元で囁かれ、そのまま耳に舌を這わせると、耳朶に歯を立てる。
「…んっ…」
ぞくっとして、一つ息を飲む。
まさか、いつも穏やかな恋悪魔が、自分の媒体に嫉妬するとは。
それだけで、十分愛されているのだと実感する。
「大丈夫。心配しないで」
腕を伸ばしてその頭を抱き締め、そう耳元で言葉を零す。
「誰のモノにもならない。俺は全部、あんたのモノだから。だからあんたも…俺に、全部頂戴」
「…勿論。全部あげる」
甘い囁きに、それだけで心が満たされる。
その唇を軽く舐め、そのまま深く口付ける。そして自ら腰を上げ、その足を恋悪魔の腰へと絡ませる。
深く繋がるのは身体だけではなく、その心も。嫉妬するほど、深く愛している。その想いを改めて感じながら、御互いに高まる快楽に零れた嬌声と吐息を分け合うように、深く深く口付ける。
嫌な記憶を上書きするように。
全て満たされたその夜は、御互いにとても穏やかな表情で眠りに落ちて行った。
翌朝目を覚ますと、恋悪魔は既に起きているようだった。
「…おはよー…」
寝ぼけ眼で寝室を出ると、キッチンで食事の用意をする背中があった。
「おはよう」
流石に諸々気まずいと思ったのだろう。振り向かないその背中に歩み寄った彼は、その肩に顎を乗せる。
「ちょっとぉ。顔ぐらい見なさいよ」
そう言いながら覗き込んだその横顔が、うっすらと赤い。
「今更何さ」
その照れたような横顔に、思わず笑いを零す。すると小さな溜め息が返って来た。
「いや、その…」
言い淀んでいるのは、夕べの痴態の所為だろう。そう想いながら、その耳の後ろに軽くキスをする。
「ちょっ…ライ…」
「いつものことだけどさぁ…あんだけ好き勝手やっといて、朝になると後悔するの止めなさいってば」
「…それはそうなんだけど……」
溜め息と共に彼へと向いたその眼差しに、くすっと笑う。
「まぁ…今回は俺が色々とね…迷惑かけたけどさ。俺はもうすっきりしましたよ?」
そう言いながら、こちらを向いた恋悪魔の首に腕を絡める。
「色々さ…あんたにも石川にも心配かけたけど…まぁ俺としては、昔からずっとあんた一筋だし?これからもずっと、生涯の相棒だと思ってる訳ですよ」
「それはまぁ、知ってるから良いんだけど…一体、一名で何を迷走してた訳…?」
再び溜め息を一つ吐き出した姿に、小さな苦笑を一つ。
「まぁ…確かに迷走だぁね。でも現実はね、何も心配はしてないんだ。ただ、夢の中だと制御出来ないでしょ…?俺が誰が好きで、誰に抱かれて、あんたはそんな俺をどう思っているのかと思ったら……」
「…は?夢…??って言うか…御前が俺以外と…って……どう言う夢なの…??」
「あ……」
思わず口から零れた言葉に、当然奇妙な顔をした。
引き金が、まさか夢だなんて。しかも自分が、恋悪魔の何股だかわからない状態の一名だなんて。突然そんなことを言われて、すんなり受け入れる方がどうかと思う。
「いや、だから…あくまでも夢だから…別に現実じゃないし…」
流石に夢とは言え、打ち明けるには申し訳なかったのだが…つい口が滑った、としか言いようがない。
だがしかし。
「…成程ね、そう言う事。まぁ…夢見が悪かったってことね」
そう言って笑いを零すと、少し身体を離すと頭へと手を伸ばし、よしよしとその頭を軽くポンポンと叩いた。
「理由がわかれば問題ないよ。大丈夫だよ。現実で目一杯愛してあげるから。今度は良い夢見られるよ」
「目一杯って…」
確かに、夕べは目一杯愛された記憶がある。それがきちんと現実なのだから、何の心配もないのだろう。
「まぁ…夕べ…ってか今朝だけど…何か、凄い良い夢見た気がするし」
にっこりと笑うその笑顔に、とても癒される。
それは、誰よりも愛しい恋悪魔に愛されていると実感しているから。
「…さ、今日もまたミサだよ。御飯食べて出かけないと」
「そうね。遅れてったら怒られちゃうし」
くすくすと笑いながら、二名で食卓に着く。
「…有難うね」
「どう致しまして」
小さく零した言葉に、にっこりと笑顔が返って来る。
何も心配は要らないのだと。そう言っているようなその笑顔に、自分も笑いを零す。
そんな些細な倖せが、とても嬉しい。
夢などに振り回されてしまったが…やはり、その思いは変わらない。
誰よりも…愛おしい恋悪魔であると言うこと。そして、誰よりも愛されていると言う実感。それは、この先いつまでも続くように。
ただ、それだけで良い。
その想いは、御互いの心の中にある想いだった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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