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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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心根の卵
こちらは、以前のHPで2000年08月06日にUPしたものです

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◇◆◇

 夢を見た。

 そこは、真っ白な世界だった。
 目に見える全てが真白。他に、何の色もない。
 ただ一つ、自分の存在を除けば。
 その場にいる意味さえわからず、ただぼんやりと立ち尽くしていると、背後に何かの気配を感じた。
 振り返ってみれば、そこにいたのは、見たこともない存在。
「…デーモン閣下、ですね?」
 そう問われ、小さく頷いた。
「そうだが…御前は?」
 問い返すと、"奴"は小さく笑った。
「私は単なる遣い人ですから、名前を問うても無駄、です」
「ならば、誰が御前を、吾輩のところに遣わせた?」
 そう問い直すと、再び小さな笑いが零れた。
「申し上げられません」
「何故?」
「私も存じ上げないから、です」
「……」
 奇妙な答えだったが、確かにそれ以上問う気は失せた。
「吾輩に、何の用だ?」
 今度は、そう問いかける。すると、"奴"はにっこりと微笑み、その両の掌を、吾輩へと差し出した。
「……?」
 意味がわからず、首を傾げると、"奴"の両手がゆっくりと輝き始めた。
 そして、その光はやがて、一つの小さな珠になった。
「…これは?」
「卵、です」
「…卵?何の…?」
「閣下の、"心の卵"、です」
「……」
 言われている意味が、良くわからなかった。
「それで、吾輩にどうしろと言うんだ?」
 首を傾げたまま問いかけると、"奴"はその珠を、吾輩の掌中へと託した。
「お…おい…」
「孵して、下さいね」
 突然、そう言われた。
「…孵す?」
「そうです。その卵は、閣下の心の一部ですから。その卵を孵すのは、閣下の御仕事、です」
「…もしも、孵らなかったら?」
 そうだ。必ずしも、卵が孵るとは限らないじゃないか。
 突然そう言われたって…吾輩には、他にも山程の仕事があるんだ。卵に掛かり切りではいられない。
 だからそれは、当然の問いかけだと思った。
 だが、"奴"からは、その的確な答えは得られなかった。
「孵して、下さいね」
「……」
 もう一度、その言葉を口にされた。
「孵らなかったら…と言うことは、考えなくても良いのか…?」
 思わずそう問い返すと、くすっと小さな笑いが返って来る。
「孵らなかったら…などと言う否定的なことを、御考えになるのですか?閣下御自身の卵ですよ?もしも孵らなければ、その時はこの卵の中にある"心"は、そのまま死んでしまうことになります。そうなれば、御困りになるのは、閣下、ですよ?」
「…御前は、痛くも痒くもない、と言うことか」
「言ってしまえば、そう言うことになりますね」
 にっこりと微笑む"奴"は、何ら罪の意識もないかのようだった。
 そう言われると…やはり、困るのは吾輩、か…
「この卵は…吾輩の心の、どんな役割を果たすものだ?」
「それは、御自身で御確かめになって下さい。卵が孵れば、わかることですから」
 "奴"は笑った。そして、もう一度、念を押すように、その言葉を口にした。
「孵して、下さいね」
 その声が、嫌に遠くに聞こえたと思った瞬間…白い世界は、崩れ始めた。
「…っっ!?」
 慌てて卵を掌で包み込み、逃げる方向もわからないまま走り出した吾輩の足下が、途端に崩れた。
「うわぁ~~っ!!」
 落ちる!
 そう感じ、次に来るであろう衝撃にある程度備える為に、固く目を閉じて、覚悟を決めた。
 瞬間。
 ドスン!
「…あれ?」
 確かに、背中が何処かにぶつかった。だが、思った程強くもない衝撃に、目を開けてみれば…そこは、吾輩の部屋、だった。
「…何やってんだ?御前…」
 頭の上から、聞き慣れた声が落ちて来た。
 その、呆れたような声に視線を向けてみれば…ベッドの上に、エースがいる。
「今時、寝惚けてベッドから落ちる奴も珍しいよなぁ…」
 呆れた声に、吾輩は辺りを見回した。
 間違いなく、吾輩の部屋、だ。
 ならば、先程のは…
「…夢…?」
 思わず、零れた声。ふと手の中の感触に気が付き、開いてみれば、そこには白い珠があった。
「何だ?それ。御前、そんなもの持って寝てたのか?器用な奴…」
 相変わらず呑気なエースの声も、吾輩の耳にはロクに届いていなかった。
「…夢…じゃ、ない」
 それは紛れもなく、"奴"が吾輩に託した、卵、だった。

◇◆◇

「卵、ねぇ…」
 再びベッドの上に戻った吾輩は、手の中の珠…もとい、卵をエースに見せて、それまでの経緯を話して聞かせた。
 エースは…と言うと、怪訝そうに眉を寄せながらも、掌中の卵をじっと見つめていた。
「孵せば良いんじゃないのか?」
「まぁ…そうだろうが…」
 確かにエースの言う通り、孵せば良いんだろう。
 だが、しかし…
「御前は…気にならないか?」
 ふと問いかけた声に、エースは僅かに笑ってみせた。
「気にして欲しいのか?」
「いや……」
 何と、答えて良いものやら…
 気にして欲しい、と言う気持ちも、きっとある。だが、知られたくないと言う思いもまた、そこにあるような気がする。
 吾輩自身も、何の役割を果たすべき"心"なのかわからないのだから、全て見られてしまうのは、少し気恥ずかしい。
 エースはその思いを、感じたのだろう。
「煙草…良いか?」
 一旦そう言葉を区切り、吾輩が頷くのを確認すると、ベッドから降りて窓辺へと向かった。
「卵の中身は、結局全て御前に返って来るモノだ。詮索されるのが恥ずかしいのなら、言わなければ良いさ。自分で見つければ良いだけの話だろう?」
「まぁ…な」
「じゃあ、黙ってろ」
 言えば少なからず詮索はされる。だからこそ、エースは吾輩にそう言ったのだろう。
「そう…だな。別に、吾輩が危機に陥っている訳でもなし…取り立てて困っている訳でもないからな」
「まぁ、いつ孵るのかはわからないけどな。取り敢えず、見守っていたら良いんじゃないか?」
 くすっと、エースは笑った。
「御前の、"心根の卵"、だな」
 吾輩の心の中の卵。エースはそれを、"心根の卵"と称した。
 酷く、ロマンチックじゃないか。
「もしも、御前が吾輩と同じ立場だったら…御前の"卵"からは、何が生まれるかな?」
 問いかけた声に、エースは暫く黙り込む。
「…何だろうな。全く、想像が付かないが…まぁ、少なからず、御前は絡んでいるだろうな」
 くすっと笑う声。思わず、吾輩の頬が赤くなるじゃないか…
「まぁ~ったく…口が上手いんだから」
「おや、信じない?酷いなぁ。俺はこんなに…」
 御前を、愛してるんだぜ。
 そう言うなり、歩み寄って来たエースに抱き締められ、口付けられる。
「こら…朝っぱらから…」
 エースを引き離して零した吾輩の声に、エースは笑いを零す。
「本当は、朝も夜も関係ないと思うけどな。むしろ明るい方が、御前が照れてるのが良くわかる」
 くすくすと笑うエースの、また無邪気なこと。そんな顔見せられたら、拒否も出来ないじゃないか…と、吾輩も思わず呆れて、笑ってしまった。
「こら、卵が潰れるじゃないかっ」
「…卵?」
 ふと、エースの視線が吾輩の手の中に落ちた。
「…あ…れ?」
 吾輩も視線を落とす。すると、今まで手の中にあったはずの卵が…いつの間にか消えていた。
「…もしかして、もう孵ったとか…?」
「殻も残さずに…?」
「元々、御前の心なんだから、殻が残る訳ないだろうが」
「そりゃ…」
 そりゃそうだろうが…気が付かないウチに孵ってしまうだなんて、何とも腑に落ちない…
「…で、何か新しい発見はあった?」
「…発見?」
 エースの問いかけに、吾輩は意味がわからずに首を傾げた。
「だって、新たに"心"が生まれたんだろう?何か変わったことでもないのか?」
「………?」
 少しばかり考えてみたが、特に今までと変わったと感じるところはない。
「特に…変わりないが…」
 そうつぶやきながらエースへと視線を向けてみて、ふと気が付いたこと。
----あぁ、そうか…
 声には出さなかったが、何となくわかった気がした。
 多分それは、エースと共用出来る時間、だ。
 そして、吾輩の、エースへの想い。
 エースが想ってくれるように、吾輩もまた、エースを大切に想い…愛していると言う心情。
 それが、卵の正体なのだと思った。
「まぁ…良いじゃないか、今まで通りで」
 そう口を開いた吾輩の声に、エースは笑った。
「そうだな。俺には関係ないか」
「そうそう」
 吾輩も、くすくすと笑う。
 あの遣い人が言った通り…卵が孵らずにいて困るのは、吾輩だけのようだ。
 エースへの明確な想いを、失うところだったのだから。
 今は、その想いを、大切に育てて行こうと思った。
 吾輩の…"心根の卵"から孵った、それは大切な気持ちだから。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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