聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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心根の卵
夢を見た。
そこは、真っ白な世界だった。
目に見える全てが真白。他に、何の色もない。
ただ一つ、自分の存在を除けば。
その場にいる意味さえわからず、ただぼんやりと立ち尽くしていると、背後に何かの気配を感じた。
振り返ってみれば、そこにいたのは、見たこともない存在。
「…デーモン閣下、ですね?」
そう問われ、小さく頷いた。
「そうだが…御前は?」
問い返すと、"奴"は小さく笑った。
「私は単なる遣い人ですから、名前を問うても無駄、です」
「ならば、誰が御前を、吾輩のところに遣わせた?」
そう問い直すと、再び小さな笑いが零れた。
「申し上げられません」
「何故?」
「私も存じ上げないから、です」
「……」
奇妙な答えだったが、確かにそれ以上問う気は失せた。
「吾輩に、何の用だ?」
今度は、そう問いかける。すると、"奴"はにっこりと微笑み、その両の掌を、吾輩へと差し出した。
「……?」
意味がわからず、首を傾げると、"奴"の両手がゆっくりと輝き始めた。
そして、その光はやがて、一つの小さな珠になった。
「…これは?」
「卵、です」
「…卵?何の…?」
「閣下の、"心の卵"、です」
「……」
言われている意味が、良くわからなかった。
「それで、吾輩にどうしろと言うんだ?」
首を傾げたまま問いかけると、"奴"はその珠を、吾輩の掌中へと託した。
「お…おい…」
「孵して、下さいね」
突然、そう言われた。
「…孵す?」
「そうです。その卵は、閣下の心の一部ですから。その卵を孵すのは、閣下の御仕事、です」
「…もしも、孵らなかったら?」
そうだ。必ずしも、卵が孵るとは限らないじゃないか。
突然そう言われたって…吾輩には、他にも山程の仕事があるんだ。卵に掛かり切りではいられない。
だからそれは、当然の問いかけだと思った。
だが、"奴"からは、その的確な答えは得られなかった。
「孵して、下さいね」
「……」
もう一度、その言葉を口にされた。
「孵らなかったら…と言うことは、考えなくても良いのか…?」
思わずそう問い返すと、くすっと小さな笑いが返って来る。
「孵らなかったら…などと言う否定的なことを、御考えになるのですか?閣下御自身の卵ですよ?もしも孵らなければ、その時はこの卵の中にある"心"は、そのまま死んでしまうことになります。そうなれば、御困りになるのは、閣下、ですよ?」
「…御前は、痛くも痒くもない、と言うことか」
「言ってしまえば、そう言うことになりますね」
にっこりと微笑む"奴"は、何ら罪の意識もないかのようだった。
そう言われると…やはり、困るのは吾輩、か…
「この卵は…吾輩の心の、どんな役割を果たすものだ?」
「それは、御自身で御確かめになって下さい。卵が孵れば、わかることですから」
"奴"は笑った。そして、もう一度、念を押すように、その言葉を口にした。
「孵して、下さいね」
その声が、嫌に遠くに聞こえたと思った瞬間…白い世界は、崩れ始めた。
「…っっ!?」
慌てて卵を掌で包み込み、逃げる方向もわからないまま走り出した吾輩の足下が、途端に崩れた。
「うわぁ~~っ!!」
落ちる!
そう感じ、次に来るであろう衝撃にある程度備える為に、固く目を閉じて、覚悟を決めた。
瞬間。
ドスン!
「…あれ?」
確かに、背中が何処かにぶつかった。だが、思った程強くもない衝撃に、目を開けてみれば…そこは、吾輩の部屋、だった。
「…何やってんだ?御前…」
頭の上から、聞き慣れた声が落ちて来た。
その、呆れたような声に視線を向けてみれば…ベッドの上に、エースがいる。
「今時、寝惚けてベッドから落ちる奴も珍しいよなぁ…」
呆れた声に、吾輩は辺りを見回した。
間違いなく、吾輩の部屋、だ。
ならば、先程のは…
「…夢…?」
思わず、零れた声。ふと手の中の感触に気が付き、開いてみれば、そこには白い珠があった。
「何だ?それ。御前、そんなもの持って寝てたのか?器用な奴…」
相変わらず呑気なエースの声も、吾輩の耳にはロクに届いていなかった。
「…夢…じゃ、ない」
それは紛れもなく、"奴"が吾輩に託した、卵、だった。
「卵、ねぇ…」
再びベッドの上に戻った吾輩は、手の中の珠…もとい、卵をエースに見せて、それまでの経緯を話して聞かせた。
エースは…と言うと、怪訝そうに眉を寄せながらも、掌中の卵をじっと見つめていた。
「孵せば良いんじゃないのか?」
「まぁ…そうだろうが…」
確かにエースの言う通り、孵せば良いんだろう。
だが、しかし…
「御前は…気にならないか?」
ふと問いかけた声に、エースは僅かに笑ってみせた。
「気にして欲しいのか?」
「いや……」
何と、答えて良いものやら…
気にして欲しい、と言う気持ちも、きっとある。だが、知られたくないと言う思いもまた、そこにあるような気がする。
吾輩自身も、何の役割を果たすべき"心"なのかわからないのだから、全て見られてしまうのは、少し気恥ずかしい。
エースはその思いを、感じたのだろう。
「煙草…良いか?」
一旦そう言葉を区切り、吾輩が頷くのを確認すると、ベッドから降りて窓辺へと向かった。
「卵の中身は、結局全て御前に返って来るモノだ。詮索されるのが恥ずかしいのなら、言わなければ良いさ。自分で見つければ良いだけの話だろう?」
「まぁ…な」
「じゃあ、黙ってろ」
言えば少なからず詮索はされる。だからこそ、エースは吾輩にそう言ったのだろう。
「そう…だな。別に、吾輩が危機に陥っている訳でもなし…取り立てて困っている訳でもないからな」
「まぁ、いつ孵るのかはわからないけどな。取り敢えず、見守っていたら良いんじゃないか?」
くすっと、エースは笑った。
「御前の、"心根の卵"、だな」
吾輩の心の中の卵。エースはそれを、"心根の卵"と称した。
酷く、ロマンチックじゃないか。
「もしも、御前が吾輩と同じ立場だったら…御前の"卵"からは、何が生まれるかな?」
問いかけた声に、エースは暫く黙り込む。
「…何だろうな。全く、想像が付かないが…まぁ、少なからず、御前は絡んでいるだろうな」
くすっと笑う声。思わず、吾輩の頬が赤くなるじゃないか…
「まぁ~ったく…口が上手いんだから」
「おや、信じない?酷いなぁ。俺はこんなに…」
御前を、愛してるんだぜ。
そう言うなり、歩み寄って来たエースに抱き締められ、口付けられる。
「こら…朝っぱらから…」
エースを引き離して零した吾輩の声に、エースは笑いを零す。
「本当は、朝も夜も関係ないと思うけどな。むしろ明るい方が、御前が照れてるのが良くわかる」
くすくすと笑うエースの、また無邪気なこと。そんな顔見せられたら、拒否も出来ないじゃないか…と、吾輩も思わず呆れて、笑ってしまった。
「こら、卵が潰れるじゃないかっ」
「…卵?」
ふと、エースの視線が吾輩の手の中に落ちた。
「…あ…れ?」
吾輩も視線を落とす。すると、今まで手の中にあったはずの卵が…いつの間にか消えていた。
「…もしかして、もう孵ったとか…?」
「殻も残さずに…?」
「元々、御前の心なんだから、殻が残る訳ないだろうが」
「そりゃ…」
そりゃそうだろうが…気が付かないウチに孵ってしまうだなんて、何とも腑に落ちない…
「…で、何か新しい発見はあった?」
「…発見?」
エースの問いかけに、吾輩は意味がわからずに首を傾げた。
「だって、新たに"心"が生まれたんだろう?何か変わったことでもないのか?」
「………?」
少しばかり考えてみたが、特に今までと変わったと感じるところはない。
「特に…変わりないが…」
そうつぶやきながらエースへと視線を向けてみて、ふと気が付いたこと。
----あぁ、そうか…
声には出さなかったが、何となくわかった気がした。
多分それは、エースと共用出来る時間、だ。
そして、吾輩の、エースへの想い。
エースが想ってくれるように、吾輩もまた、エースを大切に想い…愛していると言う心情。
それが、卵の正体なのだと思った。
「まぁ…良いじゃないか、今まで通りで」
そう口を開いた吾輩の声に、エースは笑った。
「そうだな。俺には関係ないか」
「そうそう」
吾輩も、くすくすと笑う。
あの遣い人が言った通り…卵が孵らずにいて困るのは、吾輩だけのようだ。
エースへの明確な想いを、失うところだったのだから。
今は、その想いを、大切に育てて行こうと思った。
吾輩の…"心根の卵"から孵った、それは大切な気持ちだから。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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