聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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早く起きた朝に…
ある朝のこと。
未だベッドで眠りを貪っていた彼の頬に、そっと触れられた指先。だがその指先は、まるで彼の睡眠を妨げるかのように…若しくは、その睡眠を打ち切らせようとするかのように、彼の頬から顎の辺りを撫で回し続けていた。
「……ん~~~?」
「あ、起こしちゃった?御免ね~」
悪びれた様子もなく、くすくすと笑う声。その指先は既に掌に変わり、尚も彼の頬を撫で回し続けていた。
「…何やってるの?」
寝惚け眼を擦りながら、相変わらず頬を撫で回す相手に問いかける。
「え?だって、髭生えてるんだもん」
「…は?」
一瞬、まだ寝惚けているのかと思った。けれど、その手は絶えず彼の頬を撫で回している、と言うことは、やはり現実に聞いた言葉なのだ。
「…あのねぇ…」
思わず、頬を撫で回す手を捕え、大きな溜め息を吐き出す。
「あれぇ?撫でられるの嫌い~?」
「…そう言うことじゃなくて…」
無邪気な相手の声に、溜め息しか出て来ない。
「…自分だって生えてるクセに、何で俺のほっぺばっかり撫でる訳?別に珍しくもないでしょう?俺だって、男なんだから」
「自分の触ったって、面白くないじゃんよぉ。あんたのほっぺだから面白いんじゃん」
くすくすと笑う相手。
「あのねぇ…」
再び零れる溜め息。だがそれは、まだ睡眠を欲する欠伸へと変わりつつあった。
枕元の時計を見ると、まだ彼が起きようと予定した時間には一時間も早い。
「…珍しく早く起きてると思ったら、ロクなことしないんだから…」
「だってさぁ~、天気は滅法良いし、何となく目が覚めちゃってさ。そしたら、目の前に珍しく髭の生えたあんたの顔があるじゃない。これは触ってみなくちゃ、と思ってさ」
「だからって、そんなにべたべたと触ることないじゃない。珍しい訳じゃなし…」
「珍しいじゃん。あんたの不精髭なんてさ。忙しかったの?」
「…まぁね」
相手の言葉に、彼は自分でも頬に触れてみる。確かに、いつもよりも伸びている髭。
いつもならば、この相手が起きるよりも前に彼の方が起き出して、身仕度をしているものだから、ここまで不精髭を伸ばした姿は見られたことがなかったかも知れない。
しかも、彼は研究に没頭していた余り、ここ数日身だしなみなど後回し。当然髭剃りなど完璧に怠っていたどころか、睡眠すらロクに取っていなかったのだ。
それが昨夜、彼の恋悪魔…つまり、今隣にいる相手が突然やって来たモノだから、研究を切り上げて久し振りに自分の寝室のベッドに潜り込んだのだった。
当然、ここ数日の睡眠不足が祟ってか、昨夜はベッドに入った途端に眠ってしまったのであるが…。
「お髭もじゃもじゃ~」
「ちょっ…ライデンったら…っ」
くすくすと笑いながら、再び…今度は両手で…顔を撫で回す恋悪魔に、彼は流石に眉を顰た。
「良いじゃん、良いじゃん。もうちょっと~」
「こらこら…っ」
「ん~~、じょりじょり~」
挙げ句の果てに、頬擦りまでされてしまう始末…ここまで来たら、諦めるしかないようである。
さて、それから一時間後。つまり、彼が起床する本来の時間。
その間、何をしていたのかと言えば……まぁ、それは後想像にお任せするとして…。
ベッドから起き出し、身仕度を始めた彼を、恋悪魔は傍の壁に凭れたまま眺めていた。
「髭、剃っちゃうの?」
「当たり前でしょう?また頬擦りされたらたまらないもの」
「勿体無いなぁ~。たまには伸ばしてみたら?」
「…似合わないでしょう?」
「…まぁ、ね」
くすくすと笑う恋悪魔。そう言えばこの恋悪魔も、かつては"原人"と言われる程にまで髭を伸ばしていたこともあったが、最近は雷神界に帰っていることが殆どであるから、身だしなみのチェックが厳しいらしい。その頬は、多少髭も生えてはいるものの、流石に彼の不精髭とは程遠い。
剃刀をその頬に当てた瞬間。
「あ~、ゼノンが髭剃ってる~」
「…あのねぇ…」
溜め息を吐き出しつつも、不精髭を剃り落としていく。
「俺、気付かなかったんだけどさぁ…髭ってさぁ、キスする時に結構当たるのな~。鼻の下、ひりひりする」
「…悪戯ばっかりしてるからだよ。それに、俺はそんなこととっくに知ってるし…」
何を今更…と言う表情で、尚も髭剃りに余念がない。そんな彼を、相手は笑いながら見ていた。
「俺さぁ、あんたって、髭が生えないんだと思ってた~」
くすくすと笑うその姿が、ふと、彼の記憶の中で何かと重なった気がした。
それはまだ、彼がまだ士官学校にいた頃。その頃彼は、学校の寮に住んでいた訳で…当然、一悪魔部屋など夢のまた夢。他に三悪魔が同居する、四悪魔部屋で生活をしていた。
年頃になれば、悪魔とて髭も生えて来る訳で…当然彼も例に漏れず、髭の生えて来る年頃であった。
「あ~、ゼノンが髭剃ってる~」
くすくすと笑う声が突然背後から聞こえ、彼は思わず手に持っていた剃刀を落としかけた。
「…びっくりさせないでよ…」
目の前の鏡越しに、自分の背後で笑う姿を軽く睨む。
笑っているのは、自分と相部屋の悪魔。クラスは違うが、彼と同じ学年の、ホリィと言う悪魔。
「何処行ってたの?朝帰りなんて、良い度胸してるじゃない」
そう。昨夜、そのベッドにホリィの姿はなかったはず。そして今自分の背後にいる、と言うことは、朝帰りとしか言いようがない。規律の厳しい士官学校の寮で、堂々と朝帰りをする者は滅多にいない訳だ。
「ん~?良いところ」
そう宣いながら、相変わらず笑いながら彼を眺めている。
「また恋悪魔のところ?程々にしないと、怒られるよ?まだ他の連中は寝てるから良いようなものの…密告でもされたらどうするつもり?」
「大丈夫。見つからないように上手くやってるもの。この時間、起きてるのはあんただけだ、ってのも知ってるしね。あんたは当然、密告なんかする性格じゃないことも確認済み」
確かに、ホリィは飄々としていながらも、上手いことやっている。幾度も無断外泊を繰り返しながらも、未だに見つかったことはないらしい。それも才能と言えば才能なのだから、何れ何処かで活かされるかも知れない。そう思うと、文句ばかりも言っていられない。
小さな溜め息を吐き出すと、ホリィは再び笑いを零した。
「それにしても、似合わないね~。あんたの髭剃り」
くすくすと笑う声に、彼はわずかに眉を顰る。
「しょうがないでしょう?」
「まぁね。伸ばし放題よりは良いけど…でも、あんたでも髭が生えるんだね~。あんたは髭なんか生えないんだと思ってたよ」
「そんな馬鹿な。俺だって男だもの。髭ぐらい…」
「似合わないね~」
彼の言葉を遮り、ホリィはそう口にしていた。
「あんたは、絶対髭ない方が良いよ。あんたに髭だなんて、想像出来ないもん」
「…そんなこと、言われたって…」
「だから、もう他の奴に、髭剃ってるところなんか見せない方が良いよ。あんたに髭は似合わないんだから。俺だけ、特別ね」
にっこりと微笑むホリィ。
別に、その約束を守ろうと思って守った訳ではなかったのだが…必然的に、他の悪魔と顔を合わせる前の身仕度は、それ以来彼の習慣となっていたのであった。
「…どうしたの?急に、笑い出したりして…」
剃刀を握ったまま、急に笑った彼の姿に、それを眺めていた恋悪魔は不思議そうに首を傾げていた。
「…いやね、昔もそんなこと言われた記憶があったな~と思って」
「そんなこと、って?」
「俺は、髭が生えないと思ってた、って。そう見えるのかなぁ?」
思い切り良く剃刀を使いながら、鏡越しに恋悪魔の表情を伺い見る。
「髭生えてるところ、見たことないからじゃない?それ言ったら、エースだって、ルークだってそうじゃん。ダミ様なんか以っての外、って感じじゃない?全く想像付かないもん」
「…そっか」
妙に納得した彼。だが、鏡越しの恋悪魔は、既に笑っていないことに気が付いた。
「…どしたの?」
思わず振り返ると、僅かにその頬を膨らませている。
「だって~…」
「だって、何?」
「……」
「ライ?」
黙ったまま膨れっ面をしている恋悪魔。だが、やがてゆっくりとその口を開いた。
「…誰に見せたの?あんたの寝起きなんて…」
「…あぁ…」
彼の過去に、嫉妬している訳だ。
それを察した彼はくすりと小さく笑った。
「学生の頃の話、だよ。相部屋だった奴にね、言われたんだ。昔の話だからね」
確かに、昔の話なのだが……まぁ、その辺りのことは、これ以上は触れずにいよう。
「…ホント?」
「当たり前でしょう?」
「……わかった」
納得した様子の恋悪魔。けれど、まだ何処か腑に落ちないのだろうか。その表情は、未だ拗ねている。
「拗ねない、拗ねない」
笑いながら、相手の頭をポンポンと軽く叩く彼。次第に、相手の表情も綻んでくる。
「…他に、誰にも見せないでね?」
「見せない、見せない。どうせ、みんなそんなに早起きしないでしょう?」
「…そっか」
すっかり機嫌を直した恋悪魔。再び、にっこりと微笑むその表情に、彼も小さな笑いを零す。
綺麗に髭を剃り落とした頬に手を伸ばした恋悪魔は、再びさわさわと手を動かす。
「つるつる~。やっぱり、この方が良いな~」
「はいはい」
触るついでに、ほっぺをぷにぷにされたり、おまけにキスまでされた彼。
けれど、その細やかな愛撫(?)も、たまには良いか、なんて思う自分もいる。
その日は、予想外ではあったが、ちょっと得した早起きであった。
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HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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