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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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月と水面と着流しと
こちらは本日UPの新作です

拍手[3回]


◇◆◇

 何気ない日常の中の一コマ。
「……僕は、あぁ言うのが大好きでね~…」
----…知ってるし……
 思わず、口から出そうになった言葉を、ハッとして飲み込んだ。
----…ヤバイ。重症じゃん…
 もう一つ飲み込んだのは…小さな溜め息、だった。

◇◆◇

「…おい、灰落ちるぞ」
 声をかけられ、ハッとして顔を上げた。確かに、指に挟んだ煙草の灰は、今にも落ちそうなくらい、危うい。
「あぁっ!」
「馬鹿っ、危ないって!」
 思わず、もう片方の手を受け皿にしようとした瞬間、背後からその腕を捕まれた。
 当然、その衝撃で灰は飛び散る…
「どした?ぼんやりし過ぎ。疲れたか?」
 そう言いながら、腕を捕んでいた手を離し、着ていた浴衣の胸元に飛び散った灰を手で払う。
 そんな些細な優しさに…まぁ当然、溜め息が零れる。
「…大丈夫。御免ね、手、汚して」
「別に大したことじゃないし。それより、気を付けろ?火が落ちたら、火傷するから」
「…わかってる。御免ね」
 思わぬ失態に、相手はくすくすと笑っている。何ともまぁ、無邪気な笑顔で。
「…それはそうと……」
 そのまま仕事の話を振られ、あらぬ方向に向き始めた意識は、強制的に引き戻される。
 吐き出したのは…安堵の、溜め息。

「……で。俺ら何年目だっけ?」
 仕事の話が一段落つき、不意にそう問いかけられる。
「もう忘れたの?去年、十五周年やったでしょ?付き合い自体は…何年目だっけかな?もう随分前からだからね、忘れちゃったけど」
 冷静にそう答えると、小さく首を傾げる姿。
「…俺は覚えてるよ?そこまで耄碌してないから。そうじゃなくて、何で今更照れんの?」
「………」
 その言葉に、先程煙草の灰を払って貰った拍子にはだけた浴衣の胸元を隠そうとしている自分に気付き、ハッと我に返る。
 そうだ。何で、照れる必要があるんだろうか…?下にシャツ着てるのに。
「…ホントだ…」
 我ながら…何の、妄想をしていたんだろうか…。
「何、俺が背後からその胸元に手を入れて弄るとでも?」
 くすくすと笑う声に、思わず顔が赤くなる。
「別に、そんな心配はしてないけどね」
 そう。そんな心配をしている訳ではない。と言うか…この相棒に対して、恋愛感情とか、どうかと思う。そして何より…相棒は、自分に対してそんな感情は抱いていないと言うこともわかり切っている。
 確かに、魅力はある。色っぽかったり、無邪気だったり…人に対しても、音に対しても真摯に向き合うその姿は、まぁ総じてカッコ良い。長い付き合いになるが…それは、昔から変わらない。
 だがしかし。相棒の心の奥には…ずっと想っている相手がいる。それを知っているが故に…深入りせず、ただ、相棒として選ばれたことを光栄だと思うだけに留めている。まぁ…それが、普通だと思っていた。
 悪魔同士の関係と、悪魔とその媒体の関係と。未知なる関係は…常識内では収まらない。それを、相棒と出会ってから思い知ることとなった訳で。
 その複雑な胸の内は…気付かないうちに、ほんの少し表情に出ていたんだろう。一瞬、相棒の眼差しが変わったような…そんな気がした。
「…十六年目か。そろそろ、はっきりさせようか…?」
「…はい?」
 急に、何を言い出すのか。意味がわからず、そう問いかけた声に…相棒は煙草を一本銜えると、火をつけて紫煙を吐き出す。
 そして。
「…何か、変な心配してるのか何だか良くわからないけど…俺は、何処にも行かないから」
「…え?何が?」
 咄嗟に意味がわからずにきょとんとした表情を浮かべたのは、自分でもわかっていた。そして、その表情を見て、相棒が笑った。
「帰って来る場所は、"ここ"だってこと」
「…何なの、急に…意味わかんないんだけど…?」
 思わず眉を潜めると、更にくすくすと笑いを零す。
「まぁ、変に構えられても困るんだけどさ」
 そう言葉を零すと、笑いを収め、再び紫煙を吐き出す。
「今は、御前が…一番、俺を知っていてくれると思う。それで良いじゃないか、ってこと。悪魔との関係の事も、わかってくれているんだと思ってる。だから、誰よりも信頼しているし…御前が、"ここ"に帰る場所を作ってくれたんだと思ってる」
「…エースさん…?」
 にっこりと笑ったその顔に…ドキッとした。
 出逢いも別れも、誰にでも訪れる。でも…それには色んな意味も、想いもあるはず。
 十年前…再結成で、想い悪魔が戻って来ると言う時に…かつての総帥に、直談判した記憶がある。
 再結成が終わったら、必ず…自分たちの元へ、"相棒"を返して欲しいと。
 その時、"相棒"が帰って来る場所は、自分たちのところだと言われた。"相棒"も、それを望んでいるのだと。
 その時に感じたのは…自分が、総帥から"相棒"を奪い取ってしまったのではないか、と言う罪悪感。けれど、その笑顔を見る為に、総帥もそれを望んでいるのだと改めて告げられ、ならば…と、精一杯居場所を作る為に頑張って来たつもりでいた。
 そして、相棒の方も…きっと、色々と複雑な思いがあったはず。想い悪魔から離れて十五年。二度目の別れからももう十年。その間、抱えて来たその想いを消化しようと、ずっと歯を食い縛って頑張って来たんだと…何気ない顔をして、ずっと御互いに同じ想いを抱いて歩いて来たのだと…漸く、そう思えた。
 最初から、恋愛感情だとか、仲間意識だとか…そう言う問題ではなかったんだ。
 ただ…ずっと傍にいる、と言う安心感が欲しかったんじゃないか…だなんて、勝手に思ってみたり。
「…俺も、何処にも行かないから」
 小さく呟いた声に…くすっと、笑いが零れた。
「神妙だなぁ?」
「…当たり前でしょう?俺だってね、精一杯あんたに尽くしてんのよ?それで、誰彼構わずそんな口説き文句吐かれてたら堪らないんだから。せめて、唯一無二の居場所になってやるから…っ」
 自分で言ってて、恥ずかしくなる…。
 そんな言葉を言わせる相手であると言うことは…自覚しないとね。
 御互いに。
「…って言うかさ、何でそんなこと急に言い出したの?」
 突然発生したそんな話題に、相手は相変わらず笑っている。
「大事な日だから、言っとこうと思ってな」
「大事な、って…」
「誕生日、だろう?改めて、おめでとう。ホントは、一番最初に祝ってやろうかと思ったんだけど、最初ばっかりじゃ芸がないからな。たまには、存分に噛み締めてから…と思ってな。結局、みんなの後だけど」
「……」
 確かに…いつも、相棒は最初に誕生日を祝ってくれていた。今日も日付が変わってもれなくメールは届いていたし、ライブでも祝って貰った。だから、それで満足だったのだが…改めてそう言われると、流石に照れてしまう…。
「…ホント、一々やることがイケメンだよね…」
 思わず苦笑すると、当然相手も笑う。
「何だそれ」
 軽く…ホントに軽く。酒気を帯びた所為か、今日は頗る機嫌が良いらしい。そう言えば、ずっと笑っている。
 そんな、何でもない日常を、笑って過ごせる。それが、とても心地好いと思える。
 そんな楽しそうな姿は、誰が見ていたって楽しい。その時間を共有出来る、一番近いところにいられるのだから。それは最早、特権でしかない。
「…あんたが、水面に映る月明かりの道が好きだなんて、俺は昔っから知ってんだから…」
 思わず零した言葉に、一瞬の間。そして、くすっと笑い声。
「だろうな。まぁ、御前なら言わなくても知ってると思ってたし」
「でしょ?」
「…でもそんなことで、嫉妬するな?」
 見透かされていた。そんな思いにドキッとして、思わず赤くなる。
「…嫉妬とか、する訳ないじゃん。善き妻は、嫉妬なんかしないの」
「妻、って……そう来るか。まぁ、確かに内助の功、ってヤツ?随分助けられたしな」
 思わず口をついて出た言葉に、相手は一瞬目を丸くしたものの、やがてそう言葉を返して苦笑する。
「そうでしょ?十五年も連れ添った夫婦みたいなもんじゃないのさ、ここまで来たら。これから先だって、そうだからね?覚悟しておきなよ?」
 開き直ってそう返すと、くすくすと笑いながら椅子から立ち上がった相手は、両手を伸ばす。そして徐ろに…抱き締められた。
「ちょっ…!?」
 流石に…まずくないか?と思った瞬間、耳元で囁かれた言葉。
「…有難う」
 何度も言われた言葉だけど…何だか今日はやけに感慨深い。それは多分…色んな想いの詰まった言葉だったから、だと思う。
 思わず、その背を軽く抱き返して、ぽんぽんと叩く。
「改めて…宜しくね」
 今更言う言葉ではないけれど…それでも、共に歩んで行きたいと思うから。
 …にしても。
「…流石に、この体勢はどうかと思うけど…?」
 椅子に座っている状態で抱き締められている訳だから…うっかりすれば押し倒されそうな訳で…しかも、ひっくり返りそうだし。
 そう言葉を放つと、くすくすと笑いながら、やっと身体を離した。
「あぁ、そうだな」
 何処か満足そうな顔に、つい、笑いが零れる。
 相棒に…しかも、自分よりも年上だと言うのに、そんな姿が可愛いと思うことが、既に色んなことに感化されているんだろうけど…まぁ、そう思ってしまったのだから仕方がない。
 この際だから、そんな気持ちも全部、感受する。
 諦めなのか、妥協なのか。はたまた、新たな扉を開けかけている自分に対する脅威なのか…どう転んでも、大差はないけど。
「さ、そろそろ着替えて呑み行こう。いつまでも待たせちゃ悪いから」
「そうだな」
 御互い笑いながら、支度を始める。
 何だか今日は…一杯一杯だ。

 ただただ、共にいられる時間を甘受する。
 嫁、だなんて大きなことを言ってしまったけれど…それはあくまでも言葉の綾であって、そこまで辿り着かなくても良い。
 そんなに、大きなことは望まない。ただ…楽しい時間を共有出来れば、それで。
 誰もが抱いた、そんな些細な希望を…まぁ、ある意味、物凄く大変なことなのかも知れないけれど…誰よりも、傍で果たしたい。
 誰にも、邪魔されないように。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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