聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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炎夏 前編
夏の風物詩と言えば、花火。花火と言えば浴衣。そんな、安易な発想ではあったが…夏だけの御愉しみ。
その特別感は、経験しなければわからなかった。
「…花火大会?」
電話口で思わず問い返した声に、笑い声が返って来る。
『そう、花火大会。良かったら一緒に行かない?』
そう言われ、壁のカレンダーに目を向ける。
「…御免、仕事が入ってる。次の週なら土日空いてるんだけど…」
幾つも予定の書き込まれたカレンダー。あちこちのバンドに参加している為、何日か置きに仕事がある。そして週末はほぼほぼ埋まっているのだが…誘われた翌週なら、偶然空いてはいた。ただ、彼の予定で花火大会が行われる訳ではないので、そんなに都合の良い話はない…はずだったのだが。
『翌週?あぁ、あんたの家の方であるけど?』
「…ホントに?」
電話の相手は、花火大会の予定表でも持っているのだろうか。ふとそんな考えが過ぎる。
『……ねぇ、一緒に行かない…?』
「…わざわざ、人を見に行くようなものだけど…?」
『たまには良いじゃん』
空いている花火大会など、見たことがない。大抵、大混雑だ。移動することも簡単ではないのだが…どうやら、それも苦ではないらしい。
「まぁ…御前が良いなら良いけど…」
『じゃ、決定ね』
テンションの高い声。
「じゃあ、泊まってくよね?」
花火大会ともなれば、当然帰りは遅くなる。自宅同士は離れているが、帰れない距離ではない。だが、無理に帰らなければならない予定がない限りは、どちらかの自宅に立ち寄れば当然泊まって行くことが前提。だから、改めて聞くことでもなかったのだが…何気なく問いかけた言葉に、やはり引っかかったらしい。
『…そのつもりだけど…あれ?都合悪い?』
「…いや、そう言うことじゃなくて…片付けをね…」
毎度毎度、片付いてないと連呼する為、何処まで片付けたら綺麗になったと認識するのだろうか…と、電話の相手も思ったりする。
『慣れてるんだから、別に良いって言ってるのに。それとも、俺に見せられないエロい物でもある訳?』
くすくすと笑いながらそう言う声に、思わず部屋を見回す。
「…エロい物、ね…探せば何処かから出て来るかも。何なら、探しとこうか?」
『いや、そうじゃなくて』
相変わらず、安定の天然さ。
『まぁ、エロい物に関しては別に忘れて頂戴よ。それより、一旦あんたのウチに行ってから出発で良い?荷物置いて行きたいし』
「…荷物?別に良いけど」
『じゃあ、決まり。夕方行くね』
じゃあね。
そう言って、電話は切れた訳だが…
「…荷物、ねぇ…いつもそんなに大荷物で来ないけど…」
普段は大抵、念の為の眼鏡と財布とタオルの入ったリュック一つ。下着やTシャツ、靴下の着替えは既に常備されている。なので、今更荷物と言われたことを疑問に思いつつも、取り立てて気に止まった訳でもない。
「…ま、いっか」
結局、その一言で終わる。そして部屋の中へと再び視線を向ける。
電話で話していたように、見せられないようなエロい物がある訳でもない。あるのは主に仕事の物。頻繁に使う物は直ぐ取れるところに置いたまま、積み重なっているのだが…まぁ、整理しておくに越したことはない。
「…少し片付けよう」
溜め息を吐き出しつつ、重い腰を上げたのだった。
約束した花火大会の日。
夕方になり、予定通りに訪ねて来た相手。
「いらっしゃい」
「御邪魔するね」
やって来たのは、定期的に帰って来る主たる悪魔の恋悪魔であり、実体でも恋人たる湯沢。いつになく、大きなバッグを持って来ている。
「…何持って来たの…?」
思わず問いかけたのだが、その声に湯沢はにっこりと笑う。
「良い物❤」
そう言って、徐ろに寝室へと向かう。
「ちょっと部屋貸してね」
「…え?」
にっこりと笑いながら、目の前でドアを閉められる。当然、主たる石川が締め出されている訳で…何が始まるのかと、困惑気味である。
取り敢えず湯沢が出て来ないことには話にならないので、仕方なしにリビングで待つこと暫し。
「御待たせ~」
ドアを開け、そう言いながら出て来た湯沢。その姿は、先ほどとは違う。
「…浴衣?」
見慣れないその姿。
「そ。結構良いでしょ?前にCANTAの撮影で使ったんだけどさ、似合うって言われたんだ。折角だから、着てみようかと思って。着方、教えて貰ったんだ。雪駄も持って来たし、準備万端!」
そう言いながら、くるりと一周して見せる。何とも、楽しそうで。だが、石川は唖然とした表情のまま。
「…あれ?駄目だった?」
思っていたような反応が帰って来ず…表情を曇らせた湯沢に、石川は慌てて口を開く。
「そうじゃなくて…いや…想像してなかったから、ちょっと受け入れるまで時間がね…似合うよ、勿論」
何を受け入れる必要があるのだろうか…と思いつつも、似合うと言われればそれなりに嬉しい訳で。再び、にっこりと笑う湯沢。
「じゃ、準備も出来たし行こうか?」
「…俺はこのままで良いのかな…?」
別に、石川も浴衣を…と強制された訳ではないが、一名だけ浴衣で…と言うのもどうかと思い、いつも通りTシャツジーンズの自分の服装を見下ろし、そう聞いてみる。
「え?浴衣持ってんの?」
「……持ってないけど…」
「じゃあ駄目じゃん。別に俺が着たかっただけだし、あんたはそのままで大丈夫。じゃ、行こう」
上機嫌のままの湯沢に手を引かれ、何処か気も漫ろな石川も一緒に、花火大会へと出発したのだった。
会場は当然だが、最寄駅から既に人込み。うっかりすると迷子になりそうな雰囲気だった。
それでも離れずに花火大会の場所まで辿り着く。だが、人込みと言えば当然汗もかく。
「浴衣で動くのって、結構暑いね」
持参した扇子で扇ぎながらの移動。
「そりゃ…結局長袖だしね。でも女の子の浴衣よりは楽なんじゃない?女の子の浴衣って、色々巻いたりしてるじゃない?帯だってキツイだろうし。着るのも一苦労みたいだしね」
何気なくそう言った石川に、湯沢がニヤリと笑う。
「へぇ、詳しいじゃん。何、浴衣の女の子とデートの経験でも?」
「……一般論。清水さんが言ってた。自分でも夏になると、浴衣着てライブもやってるしね。色々経験豊富でしょ?」
「まぁ、清水さんならね。言いそう」
流石に気まずくて、咄嗟に仲間の名前を出したものの…正直、なくはない。ただし、かなり遠い昔。勿論、そのあと何かあった訳でもない。それくらい昔の話なのだが…言った石川自身が、どうも落ち着かない。
ふと横を見れば、汗を拭きつつ、扇子で扇ぐ姿。長めの髪は一つに束ねられているので、その項も良く見える。
どんなに昔の記憶が甘酸っぱかったとしても…現状の色気には敵わない。
気付かれないように…小さく、生唾を飲む。
と、その時。不意に、湯沢がよろける。
「うわっ!」
「ちょっ…大丈夫?」
慌てて手を差し伸べ、よろける身体を支える。だがその拍子に人波に流され、そのまま数メートル進んでから、漸く人波から外れる。
「大丈夫?怪我はない?」
一息ついてから、改めて声をかけると…浮かない表情の湯沢。
「…怪我はないけど…誰かに後ろから踏まれて…雪駄…片方脱げた…」
「…はい?」
足元を見れば…確かに、片方しか履いていない。
「えっと……」
恐らくよろけただろう、と思う辺りを振り返ってみるが、未だ人の波が途切れることがない。あの中で、脱げた雪駄を探す、と言うのはなかなかに大変なこと。
だが流石に、裸足で移動する訳にも行かず…石川は溜め息を一つ。そして。
「…ちょっと、ここにいてね」
落ち込む湯沢をその場に残し、徐ろに人波を避けて道の端を戻り始める。勿論、その姿も直ぐに人波に飲まれて見えなくなる。
すっかり人波に埋もれてしまった姿を待つこと暫し。
人波の中に見覚えのある姿が見えた時には、安堵の吐息が零れた。
「御待たせ」
心配そうな湯沢の顔を見て、小さく笑った石川。その手には、多少踏まれた跡のある片方の雪駄があった。
「流石に人が多くてなかなか見つからなかったけど、ちゃんとあったよ」
そう言いながら汚れを手で払い、湯沢の足元へと置く。
「…御免ね…」
雪駄に足を入れながら、心底、申し訳なさそうな表情。勿論、表面上だけではなく、本心で反省しきりなのだろう。
「しょうがないじゃない。踏まれちゃったんだもの。別に、湯沢くんの所為じゃないでしょ?それに、足も使うドラマーに、裸足で帰れなんて言える訳ないじゃない。怪我したら仕事に差し支えるもの。だったら、俺が探しに行くよ」
「石川くん…」
当たり前のようにそう言う石川。
「怪我、しなかった?」
思わず問いかけた声に、石川は自分の手を改めて見る。
「あぁ…ちょっと手の甲ひっかけたけど、大丈夫。ちょっと赤くなっただけだから、心配しないで」
そう言って、湯沢に手の甲を見せる。確かに少し赤くなっていたものの、大きな怪我ではなかったので、一先ず安堵の溜め息を零す。
石川とて、手でも踏まれて怪我でもしようものなら仕事に差し支えるはず。足の裏よりも弱い指先。しかも指弾きのベーシスト。気にならないはずはない。そう思い、いつになく落ち込む湯沢の姿を前に、石川は笑いを零す。
「さ、花火始まるよ。折角来たんだもの。見に行こう」
そう言って、手を差し出す。
「…うん」
湯沢がその手を伸ばすと、石川にしっかりと握り締められる。そして、にっこりと笑う。
その手の温かさに、安堵する。
「有難うね」
やっと、表情が和らいだ湯沢の手を引き、人波へと戻る。
人込みの中にいれば、手を繋いでいても目立たない。
そうこうしているうちに花火も始まり、手の温もりを感じたまま、その雰囲気を堪能していた。
帰りも当然大混雑の中、しっかりと繋いだ手を離すことなく、駅まで辿り着く。
流石に駅からは手は繋がなかったが、人気のない道では自然と寄り添って歩き、石川も湯沢が転ばないように様子を見ながら、いつもよりゆっくり目に歩いていた。
帰りにコンビニで食料と飲み物を調達し、漸く帰宅した頃には、いつも体力の有り余っている感のある湯沢もすっかり草臥れていた。
「やっぱり雪駄で歩き回るのは厳しいね。次があるなら、サンダルにすっかな」
「雪駄は雰囲気は良いんだけどね。足袋も慣れないと滑って歩き難いみたいだし、無理しない方が良いね」
「やっぱ、そうだよね」
苦笑しながら、玄関の鍵を開ける石川の背中を眺める。
文句の一つも言わず、湯沢を気遣って歩いてくれた。それだけで十分嬉しいのだが…どうせなら、折角の浴衣をもう少し愉しみたい、と思ってみたりもする。
鍵を開け、家の中へと入ると、湯沢はそこで立ち止まる。
「どうしたの?」
いつもなら勝手に上がって来るのだが、今日はそのまま動かない。
「えっとさ…足、洗いたいんだけど…ほら、雪駄が脱げた時裸足で足着いたから…」
「足?あぁ…じゃあ、ちょっと待って」
そのまま風呂場へ直行でも良かったのだが…取り敢えず、足だけはすっきりさせておきたくて。そんな意を察してか、無意識にか…御湯を入れた洗面器と、タオルを一本持って戻って来た石川。そして徐ろに湯沢の足元に跪き、顔を上げる。
「洗ってあげるから、足上げて。浴衣濡れると面倒でしょ?」
「…有難う…」
片足ずつ、雪駄を脱いだ足を洗面器へとつけると、石川がそっと洗ってタオルで拭いてくれる。両足終わると、風呂場へ洗面器を片付けに行き、漸く一息。
と、帰って来た感で安心したのか…ぐぅ~…っと湯沢の御腹が鳴る。
「取り敢えず腹ごしらえかな」
「…そうだよね…ロクに食べてないし…」
くすくすと笑う石川に、湯沢はソファーへと腰を落ち着かせる。
夜店で多少は食べたものの、やはり人込みと浴衣を着ている、と言う緊張感で、大した量は食べていない。帰宅して安心して、漸く身体が空腹に気付いた、と言うところだろうか。
「ちゃんと調達して来たじゃない。酒もあるしね。少しゆっくりしよう」
「うん」
花火大会に行ったにも関わらず、既に普段の宅呑み。だが、湯沢が浴衣を着たまま。それだけで何処か夏らしい風情を感じるから不思議である。
「じゃあ、取り敢えず乾杯」
「乾杯~」
乾いた喉に、染み渡る。酒豪とも言われる石川に比べたら全然比較にならないが…この楽しみを共に分かち合えるようになっただけでも、多少飲めるようになって良かった。それを実感する湯沢。尤も…空腹には、呑むよりも先に食べる、が優先だが。
取り敢えず、空腹が満たされるまで。楽しそうに食べるその姿は、石川にとっても良く見る光景ではあるが、良いツマミでもあった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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