聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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真昼の月 ~Dami-A~
魔界の大魔王陛下が、人間界でデビュー。史上最高齢だと、話題を呼んだ。
その話を聞いた時から…何だか、嫌な予感がしていた。けれど、自分との仕事上の接点はない…はず。
まぁ…そんな浅はかな予測など、悪魔には簡単に覆されるもので。ある意味予定調和気味に…気が付いた時には、しっかり仕事をセッティングされていたのだった。
現況として、当然と言えば当然。
年の瀬も迫って来たその日の仕事は、エースとルークと…ゲストのダミアン陛下とメインヴォーカルのシエル。そう聞かされた時、唖然としたものの…状況としては仕方がないかと、半ば諦めモード。所詮は別バンドのプロモーションだからと、思ったところで、周りは丁度良いと喜々としていたはず。まぁ…拒否したり、断る理由も特にはない。
それに、多分自分にはそれほど被害(?)はないだろうと踏んでいた。
何せ、相手はゲスト。最初から最後までいるとは限らない。その上、もし最後まで残っていたとしても…ルークはダミアンを敬愛している訳で…当然、仕事が終われば二名で積もる話もあるのだろうから、自分は早々に解放される…はず。
そう思いながら仕事を終え…ゲスト二名の姿が見えないことをこれ幸いと、速やかに帰ろう…と思った途端、思わぬところから呼び止められたのは自分…だった訳なのだ。
そして…今に至る…。
「…何で俺かなぁ…ルークもいたのに…」
安全策をしっかりと取ったとある場所で共にグラスを傾けつつ、思わず零したそんな言葉に、世仮だが中身は本魔そのままのダミアンはくすっと笑う。
「ルークとは、まだ会おうと思えば会う機会はあるんだ。この間も会えたしね。だが、御前とは…ここではまた会えるかどうか、定かではないだろう?」
そう言われたのは、清水。だが今日は、こちらも世仮。中身は珍しく、主たる悪魔…エースである。
「…俺は魔界に帰ればいつでも会えますけどね」
「それは悪魔単体の"エース"、だろう?今日は、以前と同じ、"エース清水"だ。協力して貰った"清水さん"には、感謝しないとね」
悪魔単体の意識体でも、実在出来なくはない。だが、やはりそれはかなりの負担になる訳で…そう考えると、人間の身体を借りるのが一番負担が少ない。そしてかつての媒体である清水の身体なら尚更。まぁ、かなり久し振りにはなるが…短時間なので、清水自身にもそれほど負担はないはず。
そして、清水の身体を借りる、と言うことは清水の記憶も引き継ぐ訳で…必然的に、先輩後輩の関係もそこに存在する。魔界にいる時とはまた違う。
人間界で世仮、と言うことで、ダミアンも…そしてエースも、少し砕けた口調。だが悪魔としての礼儀も弁えてはいる為…何処まで砕けて良いのかと、御互いに少し混乱している部分も無きにしも非ず…。
「"さん"付けの上に感謝とか、また心にもないことを。自分が言えば、当然通ると思ってません?」
「まさか。"さん"付けなのは、御前が世仮だからだよ。これでも、敬っているよ?御前だって清水さんの尻に敷かれていると言うのに、当たり前の訳がないだろう?これでも、人間界では新人ミュージシャンだからね。清水さんは色々と大先輩だよ?」
「…その大先輩の尻には敷かれてませんから…」
久し振りに話した所為だろうか…"さん"付けで呼ばれ、流石のエースも、ペースを乱され気味。拒否はしないが、居心地は今一つ。だが…まぁ、確かに滅多にない機会なのだから、この時間も大事にしなければ…とも思う。
「プロモーション、楽しい…ですか?」
何を話そうか…と思いながら、結局その話題が一番に出て来る。
「あぁ、楽しいね。まぁ、わたしだけ表に出ても無意味だから、シエルには色々協力はして貰っているけれどね。聖飢魔Ⅱの時には、わたしには出来なかったことだから、やっと…と言う感じだね。まぁ、わたしは実際演奏はしていないからね。プロデューサみたいなものだよ」
「ダミアン節全開の上に、演奏しないまでも一番目立っておいて、良く言う…」
「それは仕方がないよ。わたしだからね」
くすくすと笑いながら、グラスに口を付ける。
「御前は…清水さんは、楽しいかい?」
そう聞き返され…エースは、少しだけ考え…そして、小さく笑う。
「清水なら、きっと…楽しいって言うと思いますよ。色々大変だとは言え、良い相棒に恵まれて、大事な仲間たちと好きなことを出来ているんですから。今までで喧嘩一つしないだなんて、俺たちだったら想像もつかない」
「そうか。大橋や石川とも一緒にライブが出来て、ルークともこうして仕事を共に出来ているところを見ると、仕事とは言え普通に楽しんでいるんだろうね。喧嘩しなくても意思疎通が出来るのなら、良いことだよ」
感慨深げに零した言葉。
「…意味深な言い方しますね」
頬付けをついて小さな溜め息を吐き出しつつ…エースがそう零す。
「そう捉えると言うことは、何か心当たりがあるんだろう?だから、わたしとは会いたくなかった、と?ルークに任せて、さっさと帰ろうとしていたしね?」
くすっと笑うダミアンに、気付かれていたか…と、溜め息がもう一つ。
「会いたくない訳ではないですよ。ルークが貴方と一緒にいたいんじゃないかと思っただけですから。それに留守番係として、魔界では一緒に仕事してたじゃないですか」
「ここは人間界だよ?魔界の話はなしにしよう。ここは…人間界での話、だ。御前ではなく、わたしと清水さんの話だよ」
「清水のことなら…駄目ですよ。邪魔しちゃ」
その言葉に、ダミアンは笑いを収め、隣に座るエースへと視線を向ける。
「心配しなくても良い。別にね、御前と喧嘩をしに来た訳でもないし、戻れと言いに来た訳でもないんだ。清水さんがやりたいことをやるべきだし、皆が納得した結果であるのなら、わたしは問題ないと思っているよ。邪魔だなんて、御前も意地が悪いね」
「…これが性根ですよ。聖人君子ではないものでね」
溜め息を吐き出すと、再びグラスに口を付ける。そしてゆっくりと酒を喉に流し込むと、大きく息を吐き出す。
「…貴方に、言って良いモノかどうか…正直わかりませんよ。でも…清水も俺も、もうあの場には戻りませんから。五年毎に何処かしらから話は聞きますけど…俺はあの場所をジェイルに明け渡したし、今の状態が一番だと思っていますから。自分の居場所を護る為に必死になる彼奴を、俺は見護るのみ、です。今回は貴方が来る、って言うから、こうして俺も馳せ参じましたけど…もう二度と御免ですよ」
「わかっているよ。ただ…こうして、御前と一緒に呑みたかっただけだよ。説得しようと引き止めた訳でもないし、彼らはとっくにわたしの手を離れているから。そんな心配は無用だよ。御前を引っ張り出して悪かったね」
小さな吐息を吐き出すと、肘をついてその両手を軽く組む。そしてその手の上に顎を乗せたダミアンは、真っ直ぐに前を向いたまま、ゆっくりと言葉を続けた。
「理想はね…現実とは違う。結局、いつまでも理想なんだよ。御前に帰って来て貰いたいと願う信者たちの気持ちは真実だ。だが、それは御前たちには既に現実ではない。だから、噛み合わない。御互いの想いがあるのだから、それは生きていれば必然の歪みだ。だからわたしは、それを否定はしない。だが、肯定も出来ない。我々の姿は、信者たちには理想であり、それが現実でなければならない。離脱することが悪いことではないが、理想から外れてしまうことに嫌悪感を抱くこともある。勿論、御前と他の構成員たちが喧嘩別れした訳でもないし、何か問題を起こした上での離脱と言う訳でもないし…正当な話し合いの上での結果だから、我々には不可抗力なんだがね」
「…酔ってますか?説教臭くなって来ましたよ」
流石に、長年の職業病は簡単には消えない訳で。話が長い、と思いつつも…たまには良いか、と笑いを零す。
「俺は別に、気にしてませんけどね。ただ、彼奴が時々ウンザリした顔をしていたから。まぁ、そのことだけではないですけど…彼奴の性格上、ね。譲れないところはある訳ですから。それでも、石川や大橋とは気を遣わずに仕事もするし、今年は篁とだって一緒に仕事が出来ているんですから。理想と現実の狭間にいたって、頑張ってるじゃないですか」
長い間には、こんなはずではなかった、と思ったことも沢山あっただろう。それでも、自分の理想を目指して。それが現実として、確立するように。それを黙って見護っていることも辛いところだが…ダミアンの話ではないが、彼ももうエースの手を離れている。今更、口出しをするつもりは毛頭ない。
「…寂しいかい?」
エースの横顔を眺めながら、そう問いかける声。
「…今は、平気ですよ。去年の彼奴の誕生日あたりはちょっと…寂しかったですけどね」
「ピンポイントだね」
本当にピンポイントの答えに、くすっと笑う。
「デーモンに言われたんですよ。俺が、彼奴の節目の誕生日を祝う場にいられなかったことが寂しかったのか?とね。今まで、ずっと彼奴の一番は俺だったのに…いつの間にか、俺が一番ではない。勿論、彼奴に聞けば変わらないと言うだろうけど…現実、彼奴は相棒と、仲間と、ファンが大事で…俺がいなくても何も変わらない。同じ名前を背負って、悪魔に戻らないのかと五年毎に言われる度に思い出すぐらいで。彼奴はもう随分前に、そう言うものだと割り切ったみたいだから…俺も、それで良い。寂しいだなんて…彼奴には、絶対言わないし…」
「…そうだね。御前に言える訳はないね。まぁ、御前だけではなく…みんなそうなのかも知れないがね」
それがエースのプライドであり、強がりでもある。そして、他の仲魔たちも、みんな。
「離れていたって…ずっと、見護っていられるよ。御前なら大丈夫。今回の仕事が終われば他の構成員も魔界へ戻って来るしね。そうしたら、見護り仲魔が増えるから、心強いだろう?」
「…彼奴ら、意外と薄情ですよ?自分たちは、呼ばれればいつでも人間界に行けると思ってるから。特にルークは喜々として戻って来るし。今回だって一番楽しんでるんじゃないですか?貴方も知ってるでしょう?」
「ルークはしょうがないよ。デーモンがまだいるからね。様子を見に来る、と言う名目がある。一応、参謀だから」
「一応、って…」
思わず、二名揃って笑いを零す。
少し前までは、まさかこんな話題で笑い合うだなんて思ってもいなかった。そう考えると、やはり呼び止められて良かったと思う。
構成員たちとは、また少し違う。普段、一緒にいる機会の少なかったダミアン。けれど、彼らのことは良く知ってくれている。そして、違う目線で彼らを見護っている。
若い頃は、ここまで吐き出せなかった。世仮では後輩だったとはいえ、悪魔になれば皇太子。遥かに身位が上の相手。そんな相手に何処まで本心を吐き出せていたか…今となってはもう思い出せないが…それでもエースにとってもかなりヘヴィな心持ちだった。
だが、そんな時代から時間が経ち、全く会わない間に気持ちは変化する。
過ごした時間は同じでも、見て来た景色が変わった。御互いに悪魔ではなく、"人"として時間を過ごし…外から"悪魔"を見る。その共通点は意外にも…昔よりも話しやすい、と感じることが出来た。
そんなダミアンが相手だからこそ、エースも酒の席で、こうしてあっさりと、吐き出すことが出来たのかも知れない。そして、寂しいと思う想いが…少し、軽くなった。
「…機会があったら、また呑みましょう」
笑いながら、目を伏せ、そう零した言葉。
「エースとかい?それとも…清水さん、かな?」
その姿を目を細めて眺めながら、問いかけてみる。
「…さぁ。どちらでしょうね?」
「まぁ、どちらでも良いか。どちらにしても…楽しい酒宴であれば良いだけの話だよ」
そう言って、笑う顔。暫く振りに会うが…その笑う顔は、昔と全く変わりない。
「何だかんだ言っても、これからもやりたいことやって、後悔のないように、楽しく生きれば良いさ」
「御互いに、ね」
エースもくすっと笑うと、グラスに残っていた酒を呑み干す。そしてもう一度同じものを二つ、注文する。
新しい酒が届くと、それを一つずつ手に取る。そして。
「じゃあ、もう一度…」
次は、いつ会うかはわからない。だからこそ、束の間のこの時を楽しめるように。
未来への希望と、期待と、絆と。そんな不確かなモノが愛おしいと想いながら、グラスを合わせ、笑いながら御互いに口を開いた。
「乾杯」
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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