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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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a new day 4
こちらは、以前のHPで2009年2月20日にUPしたものです
  4話完結 act.4

拍手[2回]


◇◆◇

 ゼノンが部屋に通され、束の間の休息を取っているその頃。
 自室のベッドに横たわったまま、ぼんやりと天井を見つめていたライデン。
 考えるべきことは、沢山あった。けれど、何処から消化して良いのかはわからない。
 出発まで、もう余り時間に余裕はない。そう考えると、尚更どうして良いのかがわからなくなって来る。
 幾度目かの溜め息を吐き出した時、フィードが食事を持って戻って来た。
「お食事に致しませんか?」
「…うん…」
 促されるままにベッドから起き上がり、ソファーへと移動する。
 運んで来た食事を用意しながら、フィードはゆっくりと口を開いた。
「ゼノン様は、客間にお通し致しました。後で、雷帝陛下にもお会いになりたいそうです」
「…そう…」
 父親たる雷帝に会って、何を話すつもりなんだろうか。
 そんなことが頭を過ぎった。
「…親父、忙しいの?」
 ふと、ライデンがフィードに問いかける。
「えぇ、今はお忙しいみたいです。ゼノン様とのご面会も、いつ時間が取れるかわからないとか…」
「…そうなんだ…」
 ぼんやりとそうつぶやきながら、スープのカップを手に取り、口をつける。
 暖かさが身体に染み込んで来る感覚。それがとても心地良くて、自分が空腹だったことを思い出させてくれた。
 暫しの間、無言で食事を口にする。
 そして、お腹が満たされて来ると、やっと思考がクリアになって来た。
 雷帝が忙しいことは、ライデンにもわかっていた。ここ数日、ライデン自身でさえも、父王とは殆ど顔を合わせていなかった。
 それでも、会って話がしたい。何を、と言う目的がある訳ではない。ただ…何かを吐き出したくて。
 ふと、時計に目を向ける。
「…ちょっと出て来る。心配しなくて良いから」
 食事の片づけをするフィードの背中にそう声をかけ、フィードが振り向くよりも先に部屋を出る。そして、躊躇うこともなく廊下を進む。
 目的の場所は、父王のいる雷帝の執務室。
 思い立ったら直ぐ実行。そうしなければ、タイミングを逃してしまいそうで。
 そして程なくして、ライデンは雷帝の執務室の前にやって来ていた。
 小さくノックをして、中の様子を伺う。
『…はい?』
 中から聞き慣れた父王の声が聞こえると、ライデンはゆっくりとそのドアを押し開けた。
「…俺…だけど……ちょっと良いかな…?」
 控えめに声をかけ、ドアの隙間から顔だけを覗かせる。
 執務机の上に山と積まれた書類の向こうに、父王の姿は見えた。
「あぁ…良いぞ」
 相手がライデンとわかると、父王は仕事の手を休め、椅子の上で大きく伸びをした。
「…御免ね、忙しい時に…」
 一応、そう気を遣って声をかけると、父王は小さく笑った。
「何を遠慮しておる。いつもそんなことは気にせずにやって来るではないか」
「…うん…」
 浮かない表情のライデン。その姿に、父王もいつもと違う雰囲気を感じたようだ。柔らかい微笑は敢えて浮かべたまま、ゆっくりとライデンに問いかけた。
「…どうした?何かあったのか?」
 そう問いかけられても、まず何から切り出して良いかわからない。
 気持ちと思考を整理する為に、暫し口を噤む。その間、父王は黙ってライデンを見つめていた。
 そして暫しの後、ライデンは大きく息を吐き出した後、言葉を紡ぎだした。
「…ゼノンが…来たのは知ってるでしょう?」
「あぁ。挨拶をしたい、と言う話は聞いたが…丁度その時は手が離せなくてな。わしもまだ会ってはおらぬが」
 雷帝はそう言葉を紡ぐ。ライデンはその声を聞きながら、大きく息を吐き出した。
 吐き出してしまおう。今が、そのタイミングなのだ。
 ライデンは心の中で何度もそう唱える。そして、再びゆっくりと口を開いた。
「…ずっとね…考えていたんだ」
 そう言葉を紡ぎ、そして、胸の中に蟠っていたことを全て吐き出す。
 ゼノンとのこと。魔界でのことも…これからの不安も。雷帝は、その言葉を黙って聴いていた。
 一通り吐き出すと、ライデンは大きく息を吐き出して一息吐く。そして再び、言葉を紡ぎだした。
「…お互いの想いが、同じ方向を向いているのに…向いているだけで、同じ場所を目指していない。そんな気がしてならないんだ。俺がいけないのはわかってる。ゼノンは、同じ場所を目指そうとして、ここへ来てくれた。それなのに…俺は、まだ進めないでいる。自分で、そうわかっているのに…どうして駄目なんだろう、って…ずっと、考えてた。でも、答えが見えないんだ。そんな時、親父なら…どうする?」
 そう問いかけてみる。
 自分よりも、経験豊かなこの父王は…自分の悩みに、どう対処するだろう。
 明確な答えが返って来る可能性は、恐らく半分くらいだろう。残りの半分は、自分で考えろと突き放される。
 そのどちらでも…聞かないよりは良いと思っていた。だから、問いかけたのだ。
 ライデンのそんな思いを知ってか知らずか…雷帝は、くすっと小さく笑って見せた。
「悩む必要などあるまい?躊躇わず、進めば良いではないか」
「……それって……」
 雷帝の言っている言葉の意味を、ライデンは掴み損ねていた。
 躊躇わずに進む。その結果は、目に見えてわかっている。
 その選択は、いつか、諍いを招く。
 それでも…その選択を勧めるのはどうしてだろう?
 訳のわからない、と言う表情を浮かべるライデンに、雷帝は目を細めて笑って見せた。
「そこまで好きなら、素直にぶつかって行けば良い。違うか?」
「…でも…そんなことしたら、いつか…周りから咎められるでしょう?身位の違いは…そんな簡単な問題じゃない」
 そう言ったライデンに、雷帝は笑いを零した。
「今からそんな先のことを心配するのか?無茶を出来るのは、若いうちだけだと言うのに」
「…親父…」
 いつになく、無謀なことを言い出す父王に、ライデンの方が困った表情を浮かべる。
 だが、雷帝の表情は変わらない。
「いつか…なんて、先のことは心配するな。お前がそのつもりなら、わしは幾らでもお前たちを護ってやる。それが、親の務めだろう?」
「………」
「好きになってはいけない相手はいない。少なくとも、わしはそう思っておる。周りに咎められるから何だ?お前は、そんな理由で、好きになることを諦めるのか?わしなら、そんな結論は出さん。わしは、そんな腰抜けではないからな」
 そう言って笑う父王に、ライデンは黙って唇を噛み締めた。
 好きになってはいけない相手はいない。そう言われることが、どれ程心強いか。けれど、今のライデンにはまだ、それを素直に受け入れることが出来ない。
 認められない関係は、必ずあるはず。それでも、好きになることが許されるとでも?
 ライデンの表情で、その思いは感じ取ったのだろう。父王は手を伸ばし、ライデンの頭の上にそっと置く。
「まだ、時間はある。ゆっくりと考えてみると良い。そして、お前の想いを素直にゼノン殿にぶつけてみろ。そうすればきっと、道は開かれる」
「……うん…」
 父王の声に、ライデンはそう頷くしかなかった。


 雷帝の執務室を後にしたライデンは、そのままゼノンがいるであろう部屋の前へやって来ていた。
 いつまでも悩んでばかりいても仕方がない。いっそうのこと、父王の言う通りにゼノンにぶつかってみよう。そんな思いで、足を向けたのだった。
 ドアの前で暫し立ち尽くす。
 勇んでここまで来たのは良いけれど、ドアを叩く勇気はまだない。
 大きな溜め息をこっそりと吐き出し、また出直そうかと踵を返した時。
 目的の部屋ではないドアが開いた。
「……ライデン?」
「………っ」
 背中越しに声をかけられ、振り返ってみれば、書斎の前にゼノンが立っている。
「…なんでそこに…?」
 思わず問いかけたライデンの声に、ゼノンは苦笑する。
「急に泊めて貰うことになったからね、レプリカに連絡を入れさせて貰ったんだ。さっき、フィードには許可を貰ったんだけど…」
「…そっか…別にそれは構わないけど…」
 思いがけずの面会となってしまったことで、ライデンも調子が狂ってしまった。まさか今更、何も言わずに立ち去ることも出来ず…結局、期は今しかないのだ。
 ライデンの複雑な表情で、何となくその雰囲気を感じ取ったゼノンは、ゆっくりと息を吐くと、小さく微笑んだ。
「…お茶、入れようか?さっき、食事と一緒にお茶の道具を持って来て貰ったから…」
「………」
 口を噤んだままのライデンだったが、大きく息を吐き出すと、小さく頷いた。
 ゼノンに促されるままにその部屋の中に入り、ベッドの端に腰を降ろす。
 ゼノンはライデンに背を向け、お茶の用意を始めている。その背中を眺めつつ、先程父王から言われた言葉が脳裏に蘇っていた。
 好きになってはいけない相手はいない。
 もし、それが認められることならば…悩む必要など何処にもない。
 そしてそれ程幸せなことはない。けれどその反面…何処かで、歪みが生じるかも知れない。それは、憶測でしかないが。
「…どうぞ」
「…どうも…」
 ゼノンが差し出したお茶のカップを受け取る。ゼノンの表情は、いつもと何ら変わりない。
 ゼノンは…何を、考えているのだろう。
 そんなことを考えつつ、お茶を一口啜る。そうして喉を潤した後、ゆっくりとその言葉を問いかけた。
「…ねぇ…あんたは、好きになっちゃいけない相手はいないと思う…?」
「…は?」
 唐突な問いかけに些か面食らったものの、真剣な表情のライデンを前に、はぐらかす訳にもいかない。
 ゼノンもお茶を一口飲むと、傍の椅子に腰を降ろす。そして、暫く考えた後、その答えを返した。
「俺は……そうであって欲しいと思う。現実は…上手くはいかないかも知れないけれど…そうであれば、こうして迷う必要はない訳だし…」
 そう答えるゼノンも、的確な答えは見つからなかったらしい。
「…でも、何で急にそんなことを…?」
 問いかけられた意味がわからず、ゼノンはそうライデンに問い返した。
「……さっきね、親父と話しをして来たんだ。俺たちのこと…親父なら、どう考えるかと思って。そうしたら、さっきの言葉を言われたの。好きになってはいけない相手はない。だから、素直にぶつかって行けば良い、って…」
「そう…」
「勿論、俺もすんなり納得は出来てない。だから、あんたにも問いかけたんだ。親父は、俺がそのつもりなら…周りが何と言おうと、俺たちを護ってくれるって言ってる。それが、親の務めだって。でも…好きになっちゃいけない相手はいない、って言ったってさ、絶対に認められない関係だってあるでしょう?みんながみんな、好き勝手やってたら、絶対何処かで歪みが出来る。幾ら、親の務めだって言って俺たちが黙認されたとしても、そんな関係まで貫き通す意味って何だろう、って…」
「…成る程ね…」
 ライデンの言葉を聞きながら、ゼノンは雷帝が言った言葉の意味を考えていた。
 ライデンの言いたいことは良くわかる。ただその言葉だけを問いかけられたら、自分も同じ解釈しか出来ない。
 けれど…雷帝の言った言葉は、多分それだけの意味ではない。
 未だ、困惑の表情を浮かべているライデンに、ゼノンはゆっくりと言葉を紡いだ。
「…お前の言いたいことはわかったよ。でも…雷帝陛下の言いたいことは…それだけじゃないんだと思うよ」
「…どう言う…?」
 首を傾げるライデンに、ゼノンはにっこりと微笑んだ。
「お前を、信じている。お前が選んだ相手なら間違いはない。だから、周りが反対しても、応援してやる。俺は、そう言いたかったんだと思う」
「………」
「勿論、俺が自分でそんなことを言うのはおこがましいと思っているけど…でも、そう言う意味だったんじゃないかなって思うよ。お前は、雷帝陛下にちゃんと一人前として認められているって言うこと。だから、誰が反対したって、護ってやれる。それが…親として、お前に向けた"想い"じゃないのかな、ってね」
「………」
 ゼノンにそう言われ、ライデンも父王の顔を思い出す。
 にっこりと、穏やかに微笑む父王。昔はもっと心配そうな表情ばかり見ていたような気がする。
 いつから…あんなに、柔らかく微笑むようになったのだろう。
 それを思い出すことは出来なかったけれど…いつでも、見守って貰っていると言う安心感は感じられた。
「…そっか…」
 父王の想いが身に染みて…胸の奥が熱くなる。
 勇往邁進。躊躇わず、勇んでで進むこと。ずっと胸に刻んで来た言葉さえも、いつしか忘れていたのかも知れない。
 柔らかくなったライデンの表情。その顔を見て、ゼノンは小さく笑った。
「…俺ね…成体になる、って言うことがどう言うことなのか…やっとわかったような気がするんだ」
「…成体になる意味?」
 それは、ライデンの中でもずっと燻っていたこと。
 ライデンの問い返しに小さく頷いて、ゼノンは言葉を続けた。
「肉体の成長と精神の成長。それが成体の成す意味だと言うことはわかっていたよ。でも、身体はともかく、精神の成長って言うことは、今一つピンと来なかったんだ。でも…今回のことでようやくわかった気がする」
「どう言うこと?」
 それはまさに、今のライデンに足りないもの。ライデンにも、精神の成長と言う意味がわからなかった。
「つまり…自分だけで生きているんじゃない、って言うことかな。誰かを大切に想う気持ち。自分が良ければそれで良い、じゃない。って言うこと。それが…根本なんじゃないかな、って思うんだ」
「…誰かを大切に想う気持ち…」
「そう。だから、魔族はその全てを含む意味で、"儀式"と言う形式を取って来たのかも知れない。自分一名では、越えられない"壁"だもの。誰かに心を許すこと。誰かを受け入れること。それが出来なければ、結局は"壁"を越えられないんだもの」
 ゼノン自身も、乗り越えて来たはずの"壁"。けれど本当の意味での"壁"は、未だ乗り越えられずにいたのだと、改めて思っていた。
 難しい顔をしているライデンに向け、にっこりと微笑む。
 そして。
「…だから、お前に出会えて良かった」
 その言葉に、ライデンもにっこりと微笑むと、ゼノンへと歩み寄る。そしてゼノンの手を固く握った。そして目を閉じてそっと顔を近づけ、その額に自分の額を寄せる。
「俺も…あんたに出会えて良かった」
 心の底から、そう思う。
 胸の奥が、ほんのりと暖かくなる。
 そんなライデンの姿を前に、ゼノンはゆっくりと口を開く。
「…この間は、ちゃんと答えられなかったけど…今はちゃんと言えるよ」
「…え?」
 その言葉の差す意味がいまいちわからなかったようだ。ライデンは額を離すと目を開けてゼノンを見つめた。
「…世界の誰よりも……愛してるよ」
「…ゼノ…」
 にっこりと微笑むゼノン。そして、そっとライデンに口付ける。
「…愛してるよ」
 唇を放した後、目を見開いて呆然とするライデンに、もう一度繰り返す。
「………有難う」
 やっと、その言葉の重みを受け止めることが出来た。そう思った瞬間、ライデンの瞳に見る間に涙が溢れ、頬を伝う。
「…俺も…誰よりも、愛してる」
 涙が溢れても、その表情は満面の笑み、だった。
 そして、再び唇を合わせる。
 今度は、深く、深く。吐息も漏らさない程に。
 やっと満たされた想い。
 お互いに違わぬ想いだったことが、何よりも嬉しくて。
 かくして、その絆は、お互いに深く刻まれたのだった。

 翌朝。
 やっと時間の空いた雷帝の執務室を訪れたのは二名。勿論、ゼノンとライデン。
 穏やかな表情を浮かべている二名を前に、雷帝はにっこりと微笑んだ。
 もう、何の心配も要らない。
 それは、二名の姿を見れば一目瞭然だった。
「初めまして。ゼノンと申します」
 そう口を開いたゼノン。そして、簡単な挨拶と自己紹介をする。
「…色々…ご迷惑と、ご心配をおかけいたしましたが…ライデン殿下とは…夕べ、話をさせていただきました。もしも…陛下のお許しがいただけるのなら……これからも、お付き合いをさせていただきたいと…」
 雷帝の様子を伺いながら、ゼノンはそう言葉を続けた。ライデンもゼノンの隣で、その様子を心配そうに伺っている。
 不安そうな二名の前、雷帝は小さく笑いを零した。
 そして、一言。
「構わないぞ」
「…宜しいのですか…?」
 余りにも呆気ない返事に、ゼノンとライデンの方が驚いているくらいだった。
 確かに夕べ、ライデンはゼノンとの仲を応援されたばかりだったが、まさか本当にこんなに呆気なく許可を貰えるとも信じていなかったところもある。
 呆気なさ過ぎて、寧ろ唖然。
 けれど、雷帝の言葉はそれだけではなかった。
「ゼノン殿には、こちらからお礼を言わなければならないかも知れんな。甘やかして育ててしまったところもあるのでな、我儘で扱いづらかっただろう」
「…いえ、そんな……」
 全くそんなことはない、とは言い切れない部分もあり…流石のゼノンも、その言葉にはどう答えて良いのか微妙だった。
 だが、雷帝はそんな姿もお構いなしだった。
「今のライデンの姿を見れば、ダミアン殿下の任務に参加することも問題ないだろう」
「…ホントに?俺、任務に参加出来る…?」
 思いがけない雷帝の言葉に、ライデンは目を丸くして喜びの声を上げる。
「あぁ、何の問題ない。わしが太鼓判を押そう」
「やった~!」
 大喜びするライデン。雷帝は、その姿を目を細めて眺めている。
 立派に成長した我が子の姿。それを見つめる眼差しは、まさに父親の眼差しだった。
 だが、任務に出発することは、暫しの別れを意味する。
 でも、それでも…確かな絆が、今はそこにある。それが、何よりも安心出来ることだった。

◇◆◇

 数日後。それは、出発の朝。
 前日にゼノンの屋敷に泊まっていたライデンは、最愛の恋悪魔との暫しの別れの瞬間を、その屋敷の玄関で迎えていた。
「…俺は今日も通常通り任務があるし…出発の瞬間を見送るのは落ち着かないから、見送りには行かないよ」
 数日前から言い続けていることをその朝も繰り返すゼノンに、ライデンはにっこりと微笑んだ。
「うん、大丈夫。俺も、あんたが来ると…何だか後ろ髪引かれる感じがするからね。ここまでの見送りで十分」
 今生の別れではない。それはわかっていることだが…見送る方も、見送られる方も、その寂しさは言わなくてもわかっている。だからこそ、屋敷での見送りが妥協点だったのだろう。
「…そろそろ、お時間ですよ」
 ゼノンの屋敷の使用魔…レプリカの言葉に、ゼノンは小さく溜め息を吐き出した。
「…それじゃ…」
 そう口を開いた瞬間、ライデンは遮るように言葉を発した。
「あのさぁ…」
「…ん?」
 思いがけず言葉を遮られたゼノンは、ライデンの表情をじっと見つめる。
 ライデンは…真っ直ぐにゼノンを見つめたまま、一瞬迷いの色を見せた。けれど直ぐに思い直したように、再び口を開く。
「…あんたも…何れ、地球任務に参加してくれることを、信じてる。それでね、もし、あんたが地球に来た時には……俺が、必ずあんたを見つけるから」
「……ライ…」
「俺が、必ず見つける。だから……地球で、また会おうね」
 不確かな未来への約束。けれど、それが今の彼らに出来る精一杯の約束。
「…うん。わかった」
 ライデンの想いを十分に感じ取ったゼノンは、にっこりと微笑んでそう返事をする。
「約束、だよ」
「うん。約束」
 にっこりと微笑み合い、お互いの手を固く握り締める。
 不確かな、未来を信じて。
「…じゃあ…行って来るね」
 大きく息を吐き出したライデンは、自らそう口にするとそっと手を離す。
「…気を付けてね」
 ゼノンは微笑んでそう言葉を送る。
 そして、ライデンは踵を返すと、振り向くことなく姿を消した。
「…行って…しまわれましたね…」
 その背中をゼノンと共に見送ったレプリカの声に、ゼノンは小さく笑いを零した。
「大丈夫。また、ちゃんと会えるから」
 その言葉は、まだ見ぬ土地での再会を信じて疑わないように思えた。

 新たな未来が、動き始めた。
 そして…その先には、新たな絆が待ち構えていた。
 全ては、"信頼"の絆で繋がっている。
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プロフィール
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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