聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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flower cracker
それは、木々の葉が赤く色付く季節のことだった。
「これ、あんたに渡して、ってダミアン様から頼まれたんだけどさ…」
そう言って渡された紙袋。持って来たのは、暫く振りに顔を合わせたジェイル。
「…何、ダミ様のところに行ってたの?」
紙袋を受け取りつつ、そう尋ねたのは、執務室の主たるルーク。
「そう。勿論、仕事だよ?報告書をね、届けに。ついでにルークのところに届けてくれってこれ渡されて。別に他に用事はなかったんだけど」
「そう。まぁ、あんたがプライベートでダミ様に会いに行く理由がまずわからないしね…そりゃ仕事だろうけど…悪かったね、わざわざ」
苦笑しながら紙袋を開け、中を覗き込む。
「何が入ってるの?なんか、丸い固いのがゴロゴロしてたけど」
首を伸ばして、ちょっと紙袋の中を覗いてみるジェイル。尤も、中身は見えないが。
「ん~…何これ??」
袋の中に手を入れ、取り出したのは丸い球根。
「玉ねぎのちっちゃいのみたいだけど…食べんの?これ」
「玉ねぎ…じゃないでしょうよ。ちょっと見せて」
ルークの手から一つ受け取ると、クンクンと匂いを嗅ぎ、あちらこちらからじっくりと眺める。
「いや、食べちゃダメなヤツでしょ、これ。球根じゃない?」
「球根?何、俺に球根を植えろと…?」
「それはダミアン様に聞きなよ。渡した意図は、俺は知らないから」
苦笑しながら、その球根をルークへと返すジェイル。
「取り敢えず、屋敷の庭にでも植えてみたら?後、植木鉢に植えて、ここに置いといても良いんじゃない?植えましたよ~って言うのがわかり易くて」
完全に他悪魔事なので、極めて適当。まぁ、そうとしか提案出来ないのは尤もだが。
「まぁ…植えてみるけどさ…」
育て方など、まるでわからない。屋敷の使用魔なら、知っているだろうか。そう思いつつ、手に持っていた球根を紙袋へと戻す。
「そう言えばさ、デーさんの発生日のパーティー、来られるの?」
もう直仲魔の発生日。恒例のパーティーを…と予定は立てているのだが、ジェイルに関しては来られないことが多かったので問いかけたのだが…やはり、首を横に振る。
「ちょっと無理かな。忙しくてね。閣下には、別で御祝言っとくから。パーティーは不参加で」
「わかった。まぁ、ライデンも今回は無理だって言ってたからね。来られるヒトだけでやるわ。因みに、ライデンの発生日も盛大にはやらないってさ。まぁ、ゼノンは行くけどね」
以前はどうにか都合をつけて集まっていた発生日だったが、この頃は集まれる者だけが集まることになっていた。なので、一名二名欠けることも珍しくはない。まぁ、誰かしらは必ず祝っているのだから、大人数で祝わなくても良いか、と皆が納得していた。
そんな状況下であるのだから、皆諸々忙しさもあり、無理強いは出来ない。そう言う自分も、若しかしたら急に仕事が入って参加出来ない可能性もあるのだから。
「まぁ、閣下はエースがいれば良いんだから。ライデンだって、ゼノンがいれば文句ないんだし。それぞれの予定だけで良いのかもよ?」
くすくすと笑いながら、踵を返すジェイル。
「じゃ、用事はそれだけだから。またね」
「うん、有難うね」
手を振って見送ると、ジェイルも笑いながら片手をあげ、執務室を後にした。
「…さて。じゃあ……これ、植えないとな…」
小さな溜め息を吐き出したルーク。まぁ、実際に植えるのはルークではなく使用魔なのだが。
それが、秋の話。
それから寒い季節を経て、最初に来る仲魔の発生日も終わり、ルークの発生日が目前となった頃。
彼自身はすっかり忘れていたが…使用魔からの報告を聞いたのだった。
「ルーク様。もう直、花壇のチューリップが咲きそうですよ」
出勤前に屋敷の使用魔たる朱凛にそう言われ、きょとんとした表情を浮かべたルーク。
「…チューリップ、って?」
すっかり忘れていることが明らかな表情に、朱凛はくすっと笑う。
「昨年の秋に、ダミアン様から頂いた球根ですよ。私共で庭の花壇に植えましたが…御忘れですか?」
「…あぁ…そうだった…」
このところ忙しくて、庭の花を愛でる暇もなかった。そう思いながら、庭へと足を向ける。そして色とりどりの花が咲き始めた花壇の一角に、真っ直ぐに伸びた茎と葉。そして、目一杯膨らんだ蕾が並んでいた。
「ホントだ。もう咲きそうじゃん」
「流石ダミアン様ですね。丁度良い時期に球根を頂きました」
その真意を察している朱凛だが、ルークの方は今一つピンと来ていない様子だった。ただ、丁度良い時期=春、と言うイメージしか思い浮かばなくて。
「ま、咲いたら教えて。仕事行って来るね」
そう言い残し、ルークは仕事へと向かった。その背中を見送り、くすっと笑う朱凛。
その真意とは、如何に。
数日後。その日はルークの発生日だった。
職務を終え、屋敷へと戻る。
発生日のパーティー会場たる自分の屋敷では、既に準備が整っていた。そしてそのテーブルの上に、花壇に植えていたチューリップが数本、花瓶に生けられている。
「…チューリップ?」
「はい。先ほどダミアン様から連絡がありまして、数本で良いので花瓶に生けて置いて欲しいと」
「…まぁ、ダミ様から貰った球根だしね…でもなぁ…」
朱凛の言葉に、イマイチ、乗り気ではない表情のルーク。
それもそのはず。先日咲きそうに膨らんでいたチューリップの蕾は、綻ぶ寸前のまま、未だ開かず。その状態のままの蕾を飾ることほど、寂しいものはない訳で…。
「…咲いてない、って…言った?」
小さく問いかけると、朱凛は頷いてみせる。
「はい。ですが、それで良いと」
「…そう。まぁ…ダミ様が良いって言うなら良いけど…」
そう言いつつ、余り目立たないテーブルの端の方へと少し寄せてみたり。
そんなことをしている間に、仲魔たちが集まって来た。
「あれ?あんたの花冠は?」
前回のエースの発生日の勘違いを再び引っ張り出して来たのはライデン。そしてその向こうで、苦渋顔のエース…。
「被らないから。ってか、あんたとエース、って珍しい組み合わせで来たね?」
そう、普段なら、ライデンは大抵ゼノンと一緒に来る。だが、何故か今日はエースと二名でやって来ていた。
「あぁ…デーモンはあとでダミアン様と一緒に来る。ゼノンは研究の方でトラブルがあったらしくてな。急に来られなくなったらしい」
「そう。まぁ、仕方ないよね。あんたの時だってダミ様来られなかったし。ジェイルは来るの?」
エースの発生日には現れたジェイル。常に近くにいる訳でもないので、会える時には会っておきたいとも思うが…なかなかタイミングが難しいので、余り期待はしていなかった。
「…さぁな。連絡は入れてみたが…俺には返信がなかった。忙しいみたいだからな」
「いつも地味~に色々やってるからね」
くすっと笑いを零すルーク。
「また、ジェイルに花冠持って来て貰いたかったんだけどな~」
そう言って笑いながらも、既に視線はテーブルの上のオードブルに向けられているライデン。ついでに言えば、先ほどから御腹が鳴る音も聞こえているような気がしなくもない。
「先やってようか。そのうち来るよ」
「やった」
無邪気なその笑顔には勝てない。そんな笑いを零すルークに、エースも小さく笑いを零す。
「メインがそう言うなら」
酒の注がれたグラスに手を伸ばし、三名で先にグラスを合わせて乾杯をする。そして、談笑しながら待つこと暫し。
「…なんだ、先にやってたのか?」
後からやって来たダミアンとデーモン。既にグラスを手にしている姿に笑いを零しつつ、そう声をかける。
「まぁね。だって、ライデンが待ちきれなさそうだったから」
くすくすと笑いながら、ライデンへと視線を向けるルーク。そこには、小腹が満たされてにんまりするライデンの姿があった。
「主賓が良いって言ったから、良いだろう?」
苦笑しながらそう言ったエースは、空いているグラスに酒を注ぐと、合流組に促した。
「ジェイルから連絡は?」
一応、そう声をかけてみる。
「あぁ…やはり今日は無理、だそうだ。後で改めて、フラワーリース持って来るらしいぞ」
先日のエースの発生日を思い出し、くすくすと笑うデーモンに、笑いが零れる。
「じゃあ、しょうがない。今回はこの面子でやろうか」
エースがそう言って、再びグラスを掲げて乾杯の音頭をダミアンに促そうと視線を向ける。だがダミアンは、テーブルの端に置かれた花瓶へと向けられていた。
「あ…そのチューリップ…まだ、咲いてなくて…」
少し気拙い。そんな表情の浮かんだルークに、ダミアンは一旦グラスを置き、花瓶へと歩み寄る。そしてそこから一本チューリップの蕾を抜き取ると、ルークへと差し出した。
「良い感じだね。はい」
「…あぁ…はい…」
目一杯膨らんだ蕾。何日、この状態だったか…と思いつつ、差し出されたのだから受け取る。するとダミアンは、にっこりと笑い、グラスを手に取って掲げる。
「では、改めて。ルーク、発生日おめでとう」
「…おめでとう!」
状況は良くわからないが…ダミアンが音頭を取ったのだから、それで良いのだろう。
様子を窺いつつ、皆でグラスを掲げる。すると、ダミアンが一つ、パチンと指を鳴らした。
その刹那。目一杯膨らんだチューリップの蕾が、ポン!と花弁を広げた。
「わぁ!」
手に持っていたグラスと花を思わず落としそうになるくらい、素で驚いた声を上げる。それはルークだけでなく、他の構成員も同じように驚いていた。
幾重にも重なった花弁は、まるでレースを重ねたように見える。とても豪華で、チューリップだと言われなければ、違う花だと思うくらいだった。
「何これ、すっごい可愛い~!手品みたい!」
素で驚いた次は、素で喜ぶルーク。パッと明るく笑ったその顔に、ダミアンも満足そうににんまりと笑いを零す。
「折角だからね、良いだろう?」
「一体どんな仕掛けなんです??俺でも出来ます?」
「あぁ、やって御覧」
ダミアンに促され、花瓶に生けられている蕾に向けて、ルークも指を鳴らしてみる。すると、先ほどダミアンがやって見せたのと同じように、ポン!ポン!と次々に花が開く。
「凄~い!面白~い!俺もやりたい!!」
ライデンも一緒になって、笑いながら指を鳴らすと、残りの花も全てポン!と開いた。あっと言う間に満開になったチューリップ。それはそれは見事だった。
「まさにサプライズだな」
すっかり華やかになったテーブルに、デーモンが笑いながらそう言葉を零す。
「春だからね」
にっこりと笑うダミアン。
ルークの発生日と言えば春。枢密院のデーモンの執務室の窓から見える桜の下で、花見をしながら祝うことが多かった。だが、忙しくて全員集まれないことが増えたここ数年の様子に、たまには違ったカタチの祝い方も良いだろう、とダミアンが考えたことだった。
何より、ルークが楽しそうに笑っている。それが、ダミアンには何よりも嬉しい。
「さて、花も全部開いたことだし、改めて乾杯するかい?」
おめでとう、の言葉と共にチューリップを咲かせてしまったので、実際誰もグラスに口も付けていない。なので、改めてダミアンがそう言うと、皆がもう一度グラスを掲げる。
「では、ルークの発生日に乾杯」
「乾杯!」
皆でグラスを合わせ、改めて発生日を祝う。
満開のチューリップに負けない、満面の笑み。
「有難う!」
にっこりと笑ったルークは、とても嬉しそうで。
その気持ちが、何よりも嬉しい。そんな想いが溢れていた。
その夜遅く。
パーティーが御開きになった後、チューリップの花瓶を寝室へと運んだルーク。
「あんまりじっくり眺めたことなかったけど…こんなに綺麗だったんですね」
改めて眺めながらそう零したルークに、一名残ったダミアンがドアに寄り掛かったままその様子を眺めつつ、くすっと笑いを零す。
「桜も綺麗だけれどね。たまには違うのも楽しいだろう?」
「…そうですね」
桜の木は、誰もが愛でることは出来るが、元々デーモンが希望して一本だけ人間界から持ち込んだもの。だから、デーモンの執務室が一番良い眺めなのだ。だが、この不思議なチューリップは…自分だけの為に。そんな特別感を改めて感じ、ほんのりと赤くなるルーク。
満足そうな笑顔に、ダミアンも微笑む。
「では、わたしからもう一つ…」
そう言うと、ルークへと歩み寄るダミアン。そして目の前に立つと、その指先で軽く顎に触れ、そっと持ち上げる。
「…御前が生まれて来てくれたことに、感謝するよ」
囁くように言葉を零し、そのまま軽く口付ける。
されるがままのルークは、顔だけではなく当然耳も首筋も朱に染まる。
「ちょっ…気障過ぎやしません…?」
真っ赤になったままそう零すと、ダミアンはくすっと笑う。
「しょうがないだろう?わたしは、本気でそう思っているのだから」
「……そう言われても…」
にっこりと微笑まれてそう言われると、照れずにはいられない。
「御前は、そのままで良いからね」
どんな姿も愛おしいが、今のまま、変わらずにいてくれたら…それが一番。
身体を寄せ、背中に腕を回す。
「…有難うございます…」
その想いは、ちゃんと伝わっている。だからこそ、素直に嬉しい訳で。
寄り添ったルークの頭を抱き寄せ、その髪に口付ける。そんな仕草に、ふふっと笑い声を零すルーク。
勿論、夜はこれから。
大事にされている実感を満喫する一時。それが、何よりも倖せだった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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