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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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flower crown
本日UPの新作です
エースさんの御誕生日&御発生日記念で。

拍手[5回]


◇◆◇

 はらりと額に落ちてきた前髪。
 いつになく、全体的に髪が長い。
「…随分伸びたな?」
 下から手を伸ばし、両手で耳にかかるサイドの髪を後ろへと掻き上げ、そう言葉を零す。
「あぁ…そうだな、忙しくて暫く切ってなかったな」
 最後に切ったのはいつだったか…と考える。
 後ろ髪はずっと結んでいるので気にしなかったが、サイドから襟足にかかる髪が、解いた時に肩に当たり始めて跳ねて来ている。前髪もいつもはきちんとセットしているので、余り気にしていなかった。
 昔はこのくらいの長さは気にならなかったが、ここ数年は割りと短いスパンで髪を切っていたようにも思う。
 暫く振りの…長めの髪。今は動く度にはらりと後を追う。
「…何だか…色っぽいな」
 そう思い始めれば、いつも以上の色気を感じる。そんな色気を無意識に振り撒かれては…余計な心配事が過る。
「…そろそろ…切らないか?」
 思わず問いかけた言葉。
「…あぁ、伸ばすつもりはないから構わないが……何で今言う?」
 吐息を吐き出しつつ、苦笑する。
「いや…何となく。目についたから…」
 そう言いながら、首へと回した腕を引き寄せる。
「どっちも似合うけれど…な」
 小さく笑いながら、囁くように言葉を零す。そして、そのまま深く口付ける。
 舌を絡め、甘い吐息を零す。
「…取り敢えず…その話はあと、な」
 耳元で囁き、そのまま耳へと口付ける。そして首筋から肩口へと唇を這わせる。
 甘い声が零れ、先ほどの話などすっかり頭の中から消えてしまうくらい…快楽が、意識を攫う。
 暫しの間、御互いに求める快楽で、頭が一杯となった。

「…で?いつ切る?」
 シャワーを浴び、ガウンを着てタオルで頭を拭きながら戻って来たエースに、ベッドの中で未だ転がって寛いでいるデーモンが声をかける。
「…いつ、って…何でそんなに急ぐんだよ。俺の髪が長いと、何か不都合でもあるのか?」
 煙草を銜えながら窓辺へと行き、窓を開けてから火をつける。そして紫煙を一つ吐き出しながら問いかけた声に、デーモンはベッドから身体を起こす。
「不都合、と言うことはないんだが…」
「…何だよ、歯切れの悪い言い方して…」
 紫煙を燻らせながら、いつにない拘りに眉を寄せる。
 まだ、少し湿っている髪。洗い晒したままなので、必然的にその前髪が額にかかっている。
 いつものように分け目で左右に流して額を出した姿よりは、随分若々しい。と言うよりも…全くの素、であるのだから、その特別感も合わせて、何倍も愛らしい。
「まぁ…良いじゃないか。吾輩は、御前の短髪も好きなんだから。さ、吾輩もシャワー浴びて来よう」
 ベッドから降り、怪訝そうな眼差しを向けるエースから離れるようにシャワーへと向かう。
 本当は…長い髪も嫌いじゃない。どんな髪型だろうが…まぁ、無茶な髪型をすることはないので…好きであることには変わりないのだ。だが…長くなれば、それに伴ってちょっとした仕草にも色気も出て来る訳で…エースにはそんなつもりは毛頭ないのだから、全く気にしない。つまりは色気の垂れ流し、なのだ。
 流石に恋悪魔として…それを止めたい、という想いがある。自分以外に、そんな姿を垂れ流されたら…エースを慕う者が増えるのも困りもの。だからこそ、切ってくれたら少しは安堵に繋がるか…と。
 それをはっきり言ったら、どんな顔をするだろうか。そう思いつつ、何となく恥ずかしさもあって秘密にしてしまった。
 シャワーを浴びつつ…先ほどまでの姿を思い出し、くすくすと笑う。
 色気満載の姿は…デーモンだけが知る姿、だった。

◇◆◇

 数日後。その日はエースの発生日だった。
 職務が終わった後エースの屋敷を訪れると、リビングには同じ目的で訪れたルークの姿があった。
「…エースは…?」
 メインであるはずの、当事者がいない。
 思わず問いかけた声に、ルークが口を開く。
「ちょっと遅れる、って。何か用事があるんだって。さっき、ティムがそう言ってたよ」
 その声に、丁度御茶のセットを運んで来た使用魔長のティムが口添えをする。
「はい。少し遅くなるとの連絡が入りまして。もう直に帰られると思いますが…」
「…そう、か」
 ソファーへと腰を下ろすと、先に御茶を飲んでいたルークが思い出したように口を開く。
「そうそう。ゼノンは雷神界行って来るからちょっと遅れるって。ジェイルも来られるって言ってたけど、まだみたい。ダミ様は残念ながら忙しくて来られないって」
「そうか。ジェイルは珍しいな。普段は滅多に来ないのに」
「今日は彼女の許可が出たみたいよ」
 そう言って笑うルーク。
 今まで王都には余り近寄らなかったジェイルが異動になって治安判事となってから久しいが、そのおかげで少しはこちらにも足が向くようにはなっていた。ただ、更に忙しくなった訳で…ついでに言えば、勤務地が王都の外れなので、彼らのように仕事帰りにふらりと遊びに来ることは少なかったが…それでも、時々はこうして集まりに参加もしていた。ただ、伴侶とも言える相手の許可が出れば…の話だが。
「…ねぇデーさん、ジェイルの彼女の名前覚えてる?」
 思わずそう問いかけるルーク。滅多に名前を口にしない上に、会ったこともない。なので、未だに覚えていないルークだった。
「…名前…?あぁ、何だったか…聞いた覚えはあるんだがな…風の民、だったよな?」
「何だ、覚えてないの俺だけかと思ったら、あんたも一緒か」
 ルークがくすくすと笑いを零すと、デーモンもつられて笑う。
「まぁ、倖せそうだし、良いんじゃないか?」
「そう、ね。不躾に踏み込まないでいよう」
 二名が御茶を飲みながらそんな話をしていると、ゼノンがライデンを連れてやって来た。
「…あれ?エースは?」
 リビングに入るなり、そう声をかける。先ほどのデーモンと同じ反応に、ルークは笑いを零した。
「デジャヴ…」
 その言葉に笑いを零しつつ、今度はデーモンが説明をする。
「用事があって少し遅くなるんだそうだ。ジェイルも来るらしいが…聞いてるか?」
「いや。珍しいね。彼女の許可、下りたんだ」
 やはり同じ反応。くすくすと笑う二名に、久し振りのライデンがすかさず割って入る。
「何よ、二名して楽しそうに。俺も混ぜて!」
 メイン不在だが、取り敢えず和気藹々とした雰囲気。
 そうこうしている内に、漸く主が帰って来た。
「あぁ、御帰り…ジェイルも一緒だったのか?」
 エースの後ろからこっそり覗いている姿を見つけ、デーモンが声をかける。
「そこで会った。来るのを知らなかったから、驚いた」
「そ。ルークに声かけて貰ってね。久々に」
 笑いながら入って来た姿。楽しそうな仲魔たちの姿を横目に、着ていた外套と被っていた帽子を脱ぐエース。その一部始終を眺めていたデーモンは…エースが帽子を取った途端、声を上げる。
「髪切ったのか?」
 昨日までは長めだった髪が、短くすっきりとしている。
「…あれ?昼間会った時は長かったよね?切りに行って来たの?それで遅くなったとか??」
 思わず口を挟んだルークに、エースは髪に手をやりながらうっすらと赤くなる。
「まぁ…デーモンが切れって言ったからな…」
 デーモンの一言でここまで従順なエースに、デーモン以外はみんなニヤニヤと笑っている。そんな姿を目の当たりにし、流石に恥ずかしかったのだろう。全体的に短くなったおかげで、真っ赤になっている耳も良く見える。
「…短いのも良く似合うぞ。何だか…その……可愛いな…」
 そう口にしたデーモンも…何となく照れて赤くなっている。
 確かにデーモンの言う通り。長い時は色気満載だが…短くなったらなったで、若々しくて可愛い、と言う表現も強ち間違ってはいない。
 他の仲魔たちは、それほど髪型を変えることもなかったので…だからこそエースの短髪が目立つのだ。
「エース、似合うよ。可愛い可愛い」
「ホント、可愛いね~」
「良いなぁ、手入れいらずで…」
 笑いながら賛同するジェイルに、同乗するライデン。そして羨ましがるルーク…と、三者三様の反応を笑いながら眺めているゼノン。実に楽しそうである。
「…そうだ。忘れるところだった」
 一頻り笑ったジェイルが、思い出したように抱えて来た箱をエースへと渡す。
「これ、ウィロメナからあんたに。発生日のプレゼントだって」
「…あぁ、有難う…」
 思いがけない相手からのプレゼントを渡され、驚きを隠せないエース。
「…ウィロメナ…って?」
 聞き慣れない名前に、隣にいるルークにこっそり問いかけるライデン。だが、ルークも首を傾げる。
「…ゼノン知ってる?」
 まるで伝言ゲームのようにゼノンへと問いかけたルーク。ゼノンも首を横に振る。
「デーモンは?」
「…さぁ…?」
 こちらも首を傾げるデーモン。その一部始終を…ジェイルは面白そうに笑って見ていたが、エースが大きく溜め息を一つ。
「…ジェイルの彼女。で、俺の天敵」
「……あぁ…」
 風の民と炎を司るエースは、相性が悪い。尤も…近寄らなければ問題はない。元々警戒の強い種族なので、自分から近寄って来ることはない。ジェイルもそれをわかっているので、ヒト前に連れ出すことはなかった。だからこそ、エース以外は誰も名前を憶えていなかったのだ。
「開けてみて」
 ジェイルにそう声をかけられ、エースはソファーに座ると、その箱を開けた。
 そこに入っていたのは…色とりどりの花を編んで作った輪。
 ほんのりと漂って来たのは…風の、薫り。
「…花輪…?」
 送られたモノが良くわからず、箱から取り出してまじまじと眺める。
「花冠じゃない?ほら、サイズ的に丁度良いんじゃない?」
 そう言われてみれば、そんな気がしなくもない。
「ほら、髪も切ったことだし、乗せてみたら?」
 笑いながら、エースの頭の上に花輪を乗せるルーク。
「…やだ、可愛い…」
「…ホント、可愛い…」
「…うん、可愛いね…」
「ちょっ…御前ら…」
 ルークとライデンとゼノンに真顔で可愛いを連呼され、真っ赤になるエース。
「…可愛いぞ…?」
「…御前まで…」
 流石にデーモンにまで真顔で言われれば、照れ臭い。思わず両手で赤くなった顔を覆った。
「じゃあ、丁度良いから…このまま続行!さ、閣下。音頭取ってよ」
 笑いながらデーモンを促したジェイルに、デーモンはティムが用意して行ってくれたグラスを手に取る。
 全員がグラスを手に取ると、くすっと小さく笑いを零し、口を開いた。
「エース、発生日おめでとう!」
「おめでとう!!」
 みんなでグラスを掲げ、乾杯をする。
「…有難う…」
 最年長故に、誰よりも一番年を重ねていることも…何故か可愛いを連呼されるのも、不本意ではあるが…それでも、祝ってくれる気持ちは有難い。それは素直に感謝していたエース。
 だがしかし。
「…確かに似合うんだけど…あれ本当に花冠…?」
 乾杯が落ち着いてから、ふと、ゼノンがジェイルに問いかける。
 上部は花が沢山盛られているが…サイド以下はそうでもない。何となく、バランスが悪い…気がする。
 そんな違和感で問いかけたのだが…真相を知っているジェイルが、途端に爆笑する。
「…気付いた?あれね、ホントはインテリア用のフラワーリース。でも良いんじゃない?フラワークラウンでも。エースに似合うし」
「ちょっ…!!」
 ジェイルの言葉に、エース以外爆笑…。エースが勘違いした訳ではないのだが…辱めを受けたエースは、真っ赤になって頭の花輪を外す。
「誰だよ、花冠だなんて言ったの!!」
「良いじゃん、似合うんだから~ねぇ、デーさん?」
 エースの頭に乗せた張本魔であるルークは、爆笑しつつデーモンにそう振る。振られたデーモンは、笑い過ぎて溢れた涙を指先で拭いながら、反対の手でエースの頭を撫でる。
「大丈夫大丈夫。似合ってたから問題ない」
「…大丈夫じゃない、っつーの…」
 溜め息を吐き出すエースに、ジェイルが笑いながら隣に座る。
「御免ね。でも、揶揄うつもりじゃなくて、ホントに彼女が心を込めて作ったものだから…飾ってやって?」
「…わかってるよ…彼女に有難うって伝えてくれ」
 そう言われてしまえば、捨てる訳にもいかない。花冠としては揶揄われたが…インテリアとしては十分過ぎる程立派なものだった。そこは、有難く感謝して受け取ることにする。
 まぁ、そのおかげで素晴らしく盛り上がったパーティー。それはそれで、良い記念だった。

 その夜。エースの屋敷に泊まることになったデーモンは、漸く二名きりになった寝室で、改めて短くなったエースの髪を眺めていた。
「…似合うか?」
 じっと見つめられ、改めて問いかけた声に…デーモンはくすっと笑って、両手でエースの髪を掻き上げる。
「…長いのも良いが…これも良い。どんな髪型でも良く似合うから」
「…何だよ、それ…」
 真正面からそう言われ、再び照れる。そんな顔も、愛おしい。
「…おめでとうな。これからも…愛してるぞ」
 そう零し、そのまま口付ける。
「有難う、な」
 デーモンの身体に腕を回し、エースも余すことなくデーモンの口中を堪能する。
 短い髪も、それはそれで愛おしい。そして…やはり、色気は拭えない。
 その夜も…その想いを、改めて感じるデーモンであった。


「…で、ジェイルの彼女…名前何だったかな…?」
 眠りにつく直前、ふと思い出したことを口にしたデーモンに、隣のエースが小さく口を開く。
「…俺からは教えない。名前を聞けるのは何年かに一回だから…次に聞けるのを楽しみにしてろ」
 大きな欠伸と共に、その瞼が閉じる。くすっと笑ったデーモンは、身体を寄せ、その瞼にそっと口付ける。
「…御休み」
「……御休み…」
 甘い夜を、最後まで共に堪能する。
 何だかんだあったが…それはそれで、良い発生日だったと。
 眠りに落ちる瞬間まで、倖せに満ちていた。
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