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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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flower smile
本日UPの新作です
ダミアン陛下の御発生日記念で。

拍手[5回]


◇◆◇

 今年もまた、その日がやって来た。
 日付が変わったばかりの真夜中。私邸を出て、郊外の森の中にある別宅へと向かう。
 鬱蒼とした森は、そこに何があるかを完全に隠してくれる。夜であるなら尚更、近寄ろうとする者はいない。そんな状況なのだから、そこに大魔王の別宅があることを知っているものは、恐らく殆どいないだろう。それは安全を確保する為には好都合だった。
 そして、森の入り口…別宅はもう目の前、と言うところで、まさか…誰かに会うとは、思っていなかった。

「……ダミアン様?」
 声をかけられ、ドキッとして振り返る。そこには、こちらも驚いたように目を丸くしているゼノンがいた。
「どうされたんです…?こんな時間に…」
「…それを聞きたいのは、こっちも同じだよ」
 そう言いながら…少しだけ、考える。
「この先にあるのは…わたしの別宅、だ。どうして御前がここにいるんだい?」
 そう問いかけると、ゼノンも少しだけ何かを考えたようで…その後で小さく笑った。
「残業の帰り道です。散歩も兼ねて、少し遠回りして帰ろうと思って…まさか、ダミアン様の別宅があるとは思わず…済みません、驚かせてしまって…」
「そう、か。そんな偶然があるとはね」
 偶然にしては出来過ぎていると思わなくもないが…ゼノンの顔を見る限り、本当に偶然だったのだろう、と思える。
 ふと、持っていた時計に視線を向けたゼノンは、にっこりと微笑んだ。
「もう、発生日当日ですね。おめでとうございます」
「あぁ、有難う」
 屋敷の使用魔たち以外から当日に祝の言葉を受けたのは、どれくらい振りだろうか。
 そう思いながら…言葉を続けた。
「…寄って行くかい?御茶ぐらいなら用意出来るが」
「…御予定があったのでは…?」
 予定がなければ、こんな時間に従者も付けずに一名でフラフラ出歩いているはずはないだろう。恐らく、そんな想いで問いかけたのだろう。けれど、予定と言っても…ただ、ぼんやりする為に来ただけなのだから、予定らしい予定でもない。
 そう思い、ダミアンはくすっと笑う。
「気にしなくても大丈夫だよ。特に…予定があった訳ではないから」
「…では…御言葉に甘えて…」
 にっこりと笑いを返すゼノンに、ダミアンも笑いを零す。そしてゼノンを促し、別宅へと足を踏み入れたのだった。


 ダミアンの別宅、とは言うものの、正確に言えば父親たる前大魔王の所有物であったその別宅は、ダミアンの生家でもあった。ある意味聖域に近いので、今まで誰も連れて来たことはなかった。
 真夜中とは言え、出迎える執事と使用魔は驚くこともなく、ごく当たり前のように彼らを出迎えた。
「…良くこちらに…?」
 ダミアンからも、他の構成員からも、この別宅の話は聞いたことがなかったゼノンは、前を行くダミアンにそう問いかける。すると、少し振り返ったダミアンが返事を返す。
「いや。殆ど帰っては来ないね。まぁ…ここ数年は、年一では必ず来るかな」
 そう言いながら、リビングへと到着すると、そのままソファーへと促され、ダミアンの正面に腰を下ろしたゼノン。
 リビングとは言え…当然、大魔王所有の屋敷。彼らの屋敷のリビングの、軽く数倍の広さはあるだろうか。思わず、見渡してしまう。
 だが、ゼノンのそんな興味津々の眼差しを微笑んで眺めながら、ダミアンは使用魔が用意した御茶に口を付けている。
 リビングをぐるっと一周見回したゼノンは…最後にふと目を止めた。
 壁にかかる、大きな肖像画。見覚えのない…美しい、金の巻き毛の女性。何処か、目の前のダミアンに似ている。
「…もしかして…生母様、ですか…?」
 思わず問いかけた声に、小さく笑う声。
「…そう。わたしの母、だ。尤も…記憶はないけれどね」
「………」
 そう言われ、思わず口を噤んだゼノン。
 以前聞いた話によると…ダミアンを産んで直ぐに亡くなったはず。
 と言うことは…今日は、命日でもある。
「…済みません、余計なことを聞いたようで…」
 果たしてそれが、触れても良いことだったのか。それは、ゼノンにはわからなかった。なので、謝った訳だが…ダミアンはそれでも笑っていた。
「気にすることはない。それが、宿命だったのだと思えば…ね。ライデンもそうだったね?」
「…はい。ライデンの生母様も…産んで直ぐに…」
「迷いどころだね。発生日を楽しむかどうか。まぁ、ライデンは…楽しそうだけれどね」
 確かに。ゼノンの伴侶たる、今や雷神界の雷帝たるライデン。彼の母親もまた、ライデンを産んで直ぐに亡くなったと聞いた。そしてゼノンも一度だけ、その肖像画を見た記憶がある。
 黒髪の美しい、赤き紋様を戴いた美しい悪魔。前雷帝の…ライデンの父親の、最愛の伴侶。
 だがやはり、ライデンには母の記憶はない。けれど、母のいない寂しさを感じさせないほど、愛情に溢れた父王のおかげか、発生日に憂う姿は見たことがなかった。
 そして、今目の前にいるダミアンは…と言うと……その顔に、憂いはなかった。
「…毎年…この日にこちらに…?発生日のパーティーが必ず一日遅かったのは…そう言うことだったんですか…?」
 問いかけた言葉に、ダミアンの視線がゼノンへと向く。そして、肖像画へと向いた。
「…そう。ルークには、前にばれてしまったんだが…ここに呼んだことは一度もない。まさか御前と過ごすことになるとも思わなかったけれどね」
 そう言いながら、感慨深げに肖像画を見つめる眼差しに、ゼノンは何と言葉を返して良いのか…と考える。
 だが、そんなゼノンの想いには触れず…ダミアンは、そのまま言葉を続けた。
「昔…まだ、わたしが皇太子として職務について間もない頃…その時の発生日に、ここを出てから初めて、戻って来たんだ。そうしたら、親父もいてね…毎年ここへ来ていたらしい。その時に初めて…親父の想いを聞いたんだ。わたしの発生日は、最愛の伴侶たる母の命日だが…わたしが生まれたことに感謝している、と。だから、素直に発生日を喜べば良いのだとね。それが本心かどうかはわからないが…わたしも、素直にこの日だけはここにいようと決めたんだ。ここに来ることが、親父と母と三名で、親子に戻れる日なのだと。まぁ…その親父も、もう眠りについてしまったからね。今は、わたし一名で母に会う日になったのだけれど…ね」
 そう言いながらも、何処か嬉しそうで。ダミアンが仲魔からの祝福よりも一名になることを選んだ理由に、ゼノンも納得せざるを得なかった。
 親子、水入らず。そこに踏み込んでしまったことは…全く以って、不躾だったと。
「…直ぐに、御暇します」
 慌てて立ち上がろうとしたゼノンだったが、ダミアンはそれを制した。
「誘ったのはわたしだから。遠慮せず、ゆっくりして行くと良い」
 そう言われてしまっては、帰る訳にもいかず。浮かせた腰を再びソファーへと降ろすと、再びダミアンが口を開く。
「ルークには話をしたんだけれどね…御前たちに言わなかったのは、言ってしまえば気を遣うだろう?もういい加減、発生日当日にわたしが一日休暇を取ることは恒例になっているから、わたしも気を遣わなければ良い話なんだけれどね…まぁもう少し、黙っていても良いかと思ってね。一つや二つ、秘密があっても良いだろう?」
 にっこりと笑うダミアン。今日はいつも以上に饒舌なのは、きっとこの場所だから。
 滅多に出会えない機会なのだから…と、ゼノンも割り切ることにした。
 そうして、明け方近くまでダミアンの"話し相手"となったゼノン。少し遠回りをして散歩しながら帰るつもりが…すっかり長居となってしまったのだった。

◇◆◇

 ダミアンの発生日の翌日の夕方。恒例のパーティーは、予定通り。
 ライデンと共にダミアンの私邸へとやって来たゼノン。他の仲魔たちは既に到着していた。
「今日はジェイルも来れたんだ」
 ライデンがそう言う通り、エースの発生日振りのジェイルの姿がそこにある。
「まぁね。ちゃんと"例のモノ"もあるしね」
 既にこの年の発生日の定番となっている"例のモノ"…ジェイルの彼女の御手製のフラワーリース。ゼノンが見たのはエースの発生日当日に見たものと、ルークの執務室に飾ってあったもの。だがデーモンの話によると、ジェイルの執務室にも発生日のフラワーリースが飾られているとのこと。ライデンに至ってはエースの発生日に見ただけで、ルークやジェイルの執務室のモノは、まだ現物を見てはいなかった。
「綺麗だったよね、エースの花冠。ダミ様も被るの?」
 冗談半分に笑いながらそう言ったライデンに、窓際で煙草の煙を燻らせていたエースが眉を寄せる。
「誰だよ、冠だなんて言ったの…御前じゃなかったか?」
「え~?気の所為じゃない?」
 くすくすと笑うライデン。そして話を逸らすようにダミアンの元へと向かう。
「この度は御招き頂き有難うございます。発生日、おめでとうございます」
「あぁ、有難う」
 雷帝として、一国の王への挨拶。が、直ぐに素に戻る。
「で、どんなリースですか?」
 無邪気なその笑顔に、ダミアンは笑いながら振り返る。
「デーモンとルークがいるところに飾ってあるよ。今回も見事だよ」
 そう言われ、ライデンとゼノンはダミアンの背後へと視線を向けた。
 そこに飾られていたのは、白を基調とした中に、ところどころ色の入った花を飾ったフラワーリース。そしてその中で目を引くのは、薄いピンク色の、大きな百合の花。
「すげー!」
 傍へ駆け寄って、デーモンやルークと共にじっくりとリースを眺めるライデンを眺めながら…ゼノンはダミアンへと視線を向けた。
「…あの花…」
「…母が、好きな花、だ」
 目を細め…感慨深げにリースを見つめるダミアン。
 ゼノンも、前日ダミアンの別宅で見た肖像画の中で、同じ花を見た記憶があった。だからこそダミアンに声をかけたのだ。
「…リースの希望、伝えたんですか?」
 デーモンはリクエストをしたと聞いていたので、思わずそう尋ねる。だが、ダミアンは軽く首を横に振った。
「…いや、何も。ジェイルも知らないはずだ。誰にも言っていないしね。多分、ウィロメナの感性の為せる業、なんだろうね」
 誰にも話したことのない、生母の好きな花。偶然とは言え、その花をリースにと仕立ててくれたことが、嬉しかった。
 そんな表情を見せるダミアンに、ゼノンも小さく笑いを零す。
「好評ですからね、彼女のリース。エースもルークも、本魔のイメージと良く合ってますし。話に聞くと、ジェイルの執務室にあるものも、イメージが合ってるそうですから」
「次は御前だね。どんなリースになるか、楽しみだね」
 にっこりと微笑むダミアン。
「俺のイメージって、どうなんでしょうね?ジェイルがどう伝えるか、にもよりそうですけど…」
 自身のイメージが思い浮かばず、苦笑するゼノン。だが、ダミアンは暫くゼノンを眺め…そして再び笑った。
「優しい花、だね。きっと」
「…アバウトですね…」
「そう言うな。平和主義者のイメージだよ」
「…平和主義者、ですか…」
 その言葉に、再び苦笑するゼノン。
 誰よりも残虐な"鬼"でありながら…イメージが平和主義者、とは。その、天と地とも差のある理想と現実は…多分、誰が見てもそうなのだ。
 それが、ゼノンと言う悪魔。
 そして、今目の前でくすくすと良く笑う悪魔も、魔界の頂点たる大魔王。穏やかなその笑顔の裏の憂いは、いつ消えたのか。
「さ、ダミ様。みんな揃ったし、そろそろ始めましょう?」
 にっこりと笑うルークが、ダミアンの背後からその腕に自分の腕を絡めてそう声をかける。
「そうだね。では…」
 ルークに促され、皆がグラスを手に取る。
「では、僭越ながら吾輩が…」
 デーモンが口を開き、グラスを掲げた。
「ダミアン陛下の発生日に、乾杯!」
「乾杯!」
「有難う」
 ダミアンの象徴でもある、穏やかでありながら、華やかな笑み。
 珍しく全員揃ったその発生日は、とても楽しかった。

 皆が帰って、静けさの戻った私邸。尤も…ルークだけは、未だに居座っているが。
 すっかり片付いたリビングの片隅…飾られているリースの前で、小さな溜め息が一つ。
「どうした?」
 その溜め息を聞きつけ、問いかけたダミアンの声。
「…ゼノンと、何話していたんですか?妙に楽しそうだったんですけど…」
 ダミアンとゼノン。余り見ない組み合わせで盛り上がる話は何だったのだろう。ルークが気になるところはそこだった。
「何、って…」
 ルークには秘密の話。なので、一瞬どう返そうかと考えたダミアンだったが…直ぐにくすっと笑う。
「こんな素晴らしいリースを作れる才能に、感服していたんだよ。ゼノンの発生日には、どんなイメージのリースになるだろうね、とね」
「…確かに、気になりますよね。どんなイメージで作るのかな」
 くすっと笑いを零したルーク。
 恐らく…ルークなら、嘘は言っていないが軽く胡麻化したとわかるだろう。だが、それには敢えて触れなかった。
 何よりも、ダミアンを信頼しているから。ダミアンが打ち明けないのなら今はそれで良いのだと。
「さて、それでは…部屋を変えようか?」
 ルークが居座る意を察し、そう切り出したダミアン。
「…寝かせませんよ」
 ダミアンの耳元でそう囁き、くすっと笑うルーク。流石のダミアンも、その笑顔には勝てない。
「少しは労わってくれよ。わたしも一つ、年を取ったんだから」
「奇遇ですね?俺もちょっと前に一つ年を取りましたよ?だから、遠慮しません」
 ニヤリと笑うと、ダミアンの手を取って先に歩くルーク。
 実に男前。そう思いながら、笑ってルークに従うダミアン。
 それはそれで。ここにも、倖せが溢れていた。
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