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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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flower syrup
本日UPの新作です
ジェイルさんの御誕生日&御発生日記念で。

拍手[4回]


◇◆◇

 日差しが、とても眩しい。
 顔を上げて空を眺めれば、真っ青な空。
「…良いね」
 良い天気に、心が弾む気がする。
「さ、御仕事御仕事」
 仕事が楽しいか、と聞かれれば…まぁ、楽しい。そう答えるしかない。
 長年続けて来た仕事。慣れで熟せる職種ではないが、ある程度マンネリ化している気がしなくはない。
 取り敢えず今は、自分を奮起させるしかなかった。

◇◆◇

「はい。遅くなったけど、これ発生日のプレゼントね」
 急に訪ねて来たかと思ったら、そう言って箱を手渡す。
「あぁ…有難う…」
 当然、相手は面食らっている。そんな顔を見たいとの期待もあった。
 箱を開けると、笑いが零れる。
「出た、フラワーリース」
「飾ってやってね」
 くすっと笑いながら、相手の顔色を窺う。別に嫌がっている様子はないので…まぁ、大丈夫か、と。
「エースの時と、花違う?」
「うん。季節で咲く花が違うからね。あと、イメージで作るらしいよ。この前のはエースのイメージ。これは、ルークをイメージしてのフラワーリース」
「そうなんだ。有難うね」
 薄いブルーを基調とした、華やかさを際立てたリース。確かに、ルークのイメージによく合っていた。
 会ったことのない相手に、自分がどう思われているか。それが垣間見えた気がする。
「ねぇ、ジェイル…あんたの彼女ってさ、俺たちのことどう見てんの…?」
 思わずそう問いかけると、彼、ジェイルは首を傾げた。
「どう言うこと?」
「いや…ほら、エースは知ってるのかも知れないけどさ、俺はあんたの彼女に会ったことないじゃん?俺に、どんなイメージ持ってたのかな、と思ってさ…急に、プレゼント貰っちゃったりしてるから…」
「あぁ…そう言うこと」
 ルークの言わんとすることがわかり、ジェイルは笑いを零す。
「まぁ…俺の言ったイメージかな。俺が判事になってからさ、王都にいることが多くなったじゃない?そしたらさ、あんたたちとの付き合いも増えるからって」
「へぇ。気ぃ遣ってくれたのね。でも…負担じゃないの?彼女の…さ」
 ルークの言葉に、ジェイルは再び首を傾げる。
「どう言うこと?」
「だって、これ一つ作るのだって、大変でしょ?今までなかった接点が増えたから、ってさ…そんなに気遣ってくれなくても大丈夫だよ?この分だと、ダミ様も入れたらあと四つも作らなきゃいけなくなるよ?それも後半はさ、同じ月に二名ずついるんだよ?大変じゃん?」
「…まぁ…そうだね。彼女から言い出したから…と思ってたんだけど…気ぃ遣ってくれてたのかな…」
 確かに、今まではジェイルが彼らの元へ来ることがあっても、彼女のことには触れなかった。種族柄、誰とでも親しく…と言うことが苦手なことは皆知っていたので、無理強いはしなかった。
 ジェイルの方も、彼女といることは苦ではない…と言うよりは、寧ろ一緒にいたいと思っていたので、彼らの集まりに参加していなくても問題はなかった。たが今年は彼女の方から、フラワーリースを作ることを提案して来たので、そのまま受け入れていたのだ。
 ただ…ルークの言う通り、彼女からの提案だったとしても、それが負担に変わることもある。そうなった時に…彼女は、どうするだろう…?
 考え始めたジェイルを前に、ルークは小さく笑いを零す。
「まぁ、ゆっくり考えなよ。次はあんたの発生日だしさ、無理することもないだろうしね。あんたのパーティーも…どうする?こっちで準備しても良いけど…?」
 ルークの言葉に、ジェイルはふっと顔を上げた。
「あぁ…っと…パーティーは良いや。フラワーリースのことは…話してみるよ。途中で嫌になったって言われたら、残りのメンバーには謝っておくから」
「別に、強制されて作ってるんじゃないんだからさ、謝らなくても大丈夫だと、俺は思うけど?貰えなくて拗ねる年でもないしね。あ、俺は喜んでた、って伝えといて。有難うね、って」
 彼女にベタ惚れのジェイルのこと。彼女をほったらかしにして仲魔内のパーティーには出ないだろうとは思っていたが、やはりそれに関しては悩む間もなく断られた訳だが…想定内ではあるので、また別の機会に祝えば良いだけの話。それよりも、彼女がどう答えるか。その方が気になるところ。
「うん。伝えて置くから。じゃあ、また」
 そう言い残し、ジェイルはルークの執務室を出て行った。
「…さて、ダミ様の発生日は…どうかな?」
 くすっと笑うルーク。その答えは、その時になってみないとわからないことだった。

◇◆◇

 仕事を終え、自宅に帰って来たジェイル。すると、いつものように出迎えてくれたのは、伴侶とも言える彼女。
「リース、ルークに渡して来たよ。有難う、って喜んでたから」
 そう告げると、ブルーグリーンの眼差しがすっと細められた。どうやら、喜んでいるらしい。
「…次は、いつ?どんなヒト…?」
 小さく問いかけられ…ジェイルは、少し考えながら、ソファーへと腰を下ろす。そして彼女の手を取ると、自分の膝の上にと促した。
「ねぇ…大変だったら、無理しなくても良いけど…?」
 彼女が腰かけると、ジェイルがそう口を開く。だが、その途端…彼女の表情が、すっと曇った。
「…いらない、って…言われたの…?」
 そう問いかけられた。明らかに、ショックを受けているように見える。
「違うよ。エースもルークも、凄く喜んでたから」
 そう言って、まず彼女の気持ちを宥めた。そして彼女の身体を抱き寄せながら、言葉を続けた。
「ルークがね、喜んでくれていたんだけど…君の負担になるんじゃないか、って心配してくれたんだ。ほら、結構手の込んだリースじゃない?この先、同じ月に二名ずつだからね、大変だろう、って」
 そう。エースもルークも、決して迷惑だとは思っていない。ただ、この先の予定を心配しているだけ。それを伝えただけのつもりだったのだが…彼女の表情は変わらない。
 元々、口数が少ない上に、表情も余り変わらない。出逢った時からそうだったので、ジェイルにしてみれば別にその辺は気にするところではないのだが…流石に、機嫌が宜しくないのは頂けない。そう思っての言葉だったのだが…どうやら、その気遣いは無用だったようだ。
 小さく息を吐き出したジェイルは、今度は小さく笑う。
「…次の発生日はね、俺、だから」
「…ジェイル…?」
 ふと、彼女の眼差しに光が戻った。
「そ。だから…好きに作って」
 笑ってそう言うと、彼女もくすっと笑った。
「…良いのがあるの。蜜も、薄っすら甘くて」
「そう。じゃあ、それで」
 別に、無理をしている訳ではない。彼女は、彼女なりに…ジェイルの立場も、心配してのことだったのだろう。それを察したジェイルは、ただ、受け入れることにした。
「楽しみにしてるよ」
 その頬に、軽く口付ける。
 珍しく上機嫌な彼女は、くすくすと笑いを零した。
 そんな、ささやかな倖せで良い。今、その倖せを護れるのなら。

 そうして…自身の発生日までの間、毎日御機嫌な彼女の姿を、御機嫌なジェイルが眺めていた。

◇◆◇

 ジェイルの発生日の当日。
 いつもの通り、執務室で仕事をしていたジェイルは、ドアをノックする音に顔を上げる。
「はい?」
 返事を返すと、ドアを開けて入って来たのは副大魔王たるデーモン、だった。
「どうしたの?閣下が来るなんて」
 思わぬ来訪に、きょとんとした表情を見せたジェイルに、デーモンは手に持っていた紙袋を持ちあげて見せた。
「発生日おめでとう、な。パーティーしないからって、みんな仕事入れてしまっていたから、吾輩が届けに来たんだ」
「別に良いのに。俺だって、彼女のリースしかあげてないのに」
「まぁ、大したものじゃないから、心配するな」
 くすっと笑いを零すと、紙袋をジェイルへと手渡した。
「有難うね。今御茶淹れるよ」
 そう言いながらデーモンをソファーへと促し、御茶を淹れに立つ。
 その姿を眺めながら…ふと、視線を向けた先に…フラワーリースを見つけた。
「あれも、彼女が?」
 問いかけた声に、御茶を持って来たジェイルも視線を向ける。
「そう。今朝、発生日の御祝いに、ってくれたの」
 くすっと笑いながら答えると、ソファーから立ち上がったデーモンは、直ぐ傍まで行ってじっくりと眺める。
「エースの発生日の時も思ったんだが…凄いな。手間かかってるんだろう?」
「まぁ、それなりにね。でも、趣味みたいだから」
「そう、か」
 返事を返しながら…見覚えのある花に、興味が沸いた。
「なぁ、これって…ツツジ、か?」
「ツツジではないけど、似た花みたい。何処から仕入れて来たのか知らないけど、蜜が薄甘いんだって喜んでたよ。俺も味見させられたけど、ツツジの味わかんないし」
 笑いながらそう言うジェイルに、デーモンはソファーに戻りつつ、こちらも笑いを零した。
「そうか。吾輩は世仮で吸ったなぁ、ツツジの蜜。薄ら甘くて…子供の頃の話だがな。まぁ、ツツジは魔界にはないだろうが…まさか、似た花があるとは思わなかったが」
 流石、風の民。きっと何処からか見つけて来たのだろう。
「ルークの発生日にも、作ったんだろう?執務室に飾ってあったぞ」
「うん。後から持って行ったよ。そしたら、変に心配されちゃったけどね」
「心配?」
 首を傾げたデーモンに、ジェイルは持って来た御茶を一口啜る。
「手が込んでるから、彼女の負担なんじゃないか、って。無理しなくても良いって言われたから、彼女にもそう言ってみたら…機嫌を損ねた」
「…それはどう言う…」
 イマイチ、状況がわからない。
 無理しなくても良い、と言われて機嫌を損ねるとは。それはつまり…負担ではない、と言うことになるのだろうか。
 デーモンがそんなことを考えていると、ジェイルは小さく笑う。
「もう完全に、趣味の世界みたいだから。寧ろ、楽しんでるみたい。無理しないで=作らなくて良い、って思ったみたいでね。まぁ、今は機嫌も直ったから…今後も嫌でなければ受け入れてあげて」
 ジェイルと彼女のやり取りを想像して、笑いを零したデーモン。
「そうか。まぁ、御前たちのことは吾輩たちが口出しをすることでもないからな。あんなに立派なリースだから、みんな喜ぶと思うぞ。執務室に飾ると華があるからな。そうだ。なら…吾輩の時は、"赤い花"が良いな」
 笑いながらリクエストをするデーモンに、ジェイルも笑う。
「OK。"赤い花"ね。伝えて置くよ。リクエストしてくれると楽しみにしてくれてるのが伝わって良いかもね」
 その笑顔は、見ていても楽しくなるくらい嬉しそうで。それだけで、彼らが倖せなのだと感じた。
「今日は、水入らずでゆっくり楽しめな」
 そう言葉を送り、ソファーから立ち上がる。
「うん、有難うね。みんなにも宜しく伝えといて」
「あぁ」
 御機嫌なジェイルに見送られ、デーモンはその執務室を後にした。
 再び、一名になった執務室で…ジェイルは飾ってあるリースの前へと歩み寄る。
 見れば見る程…確かに手が込んでいて、手間がかかるだろうと想像出来る。そこまで手間をかけてくれる想いが…何よりも嬉しい。
「…良かった」
 今更ながらに、みんなに喜んで貰えることが嬉しい。
 その想いが、自然と笑顔に変わっていた。

 その夜の、二名だけのパーティー。
 彼女が彼の為にと用意した、沢山の花。朝はなかったその花々に、自然と笑顔が零れる。
「有難うね」
 何度目かの御礼。けれどおざなりの言葉ではなく、その言葉の全てに、愛おしい想いを込めて。
 ふわっと綻んだ彼女の笑顔。
 その笑顔が、一番のプレゼントだった。
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