聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
Healing time
朝からの雨。細かい雨は、見た目以上に身体を冷やす。
午前中から報告だの会議だのであちこち移動し、夕方漸く執務室に戻って来た時には、かなりの肌寒さを感じていた。
「雨、まだやまないね。でも空は少し明るくなったな」
報告書を持って来たラルにそう声をかけられたのは、執務室の主たるルーク。
「そうね。あちこち行ってすっかり冷えちゃったよ…」
そう言いながら、指先で鼻を擦る。その声も少し鼻声だった。
「大丈夫?温かいの淹れようか?」
「あぁ、有難う」
報告書に目を通し始めたルークに代わり、ラルが温かい御茶を淹れてくれた。そのカップを両手で包み込むように持ち、一口啜る。
「…あ~、沁みる~」
「…じじくさ…」
くすくすと笑うラルに、ルークは再び鼻を擦る。
「良いじゃんよ。沁みるモンは沁みるの」
「風邪ひくなよ。それ見終わったら、さっさと帰って温まりな」
「ん、そうするよ」
何だかんだ言っても、心配してくれる昔からの仲魔。上層部な仲魔たちとはまた少し違った、旧知の友。着かず離れずの距離感は、心地好くもある。
「お、日が出て来た。あぁ、でもまだ降ってるな…」
窓から外を覗いたラルの声に、ルークも背後の窓を振り返る。
「"狐の嫁入り"、だっけ?」
「は?何それ」
「え?知らない?」
「初耳」
きょとんとする顔は…本当に知らなかったのだろう。
「昔から言うじゃん。天気雨の事を、"狐の嫁入り"って…」
「あんたの昔は、何処の昔だかわかんないの。ってか、狐って何よ?まずそれが何なのかわからないし、何処の話?天界なの?人間界なの?魔界だったら俺だって知ってるだろうから、そのどっちかでしょ?そのね、自分の認識を全員が共有出来てると思わないこと」
そう指摘され、確かに…と口を噤む。
天界、魔界、人間界。勿論、過ごした時間の長さは魔界が一番長いとはいえ、生まれてから天界を離れるまでに刷り込まれた記憶は決して消えることはない。そして、戦うことから一番遠いところにあった人間界もまた、今までとは違う認識を育てた。そう考えれば、確かにルークの知る認識は共通ではない。そしてそれを、遠慮もせずにきっぱりと伝える姿は、やはり昔からの仲魔だから、だろうか。
「…で、何?"狐の嫁入り"って」
改めて問いかけるラル。そこでルークは少し考える。
「いや…人間界で狐って言う動物がいてね、神様の遣いなんだけど、その狐が嫁入りする時に天気雨が……って、俺もそこまで詳しく知らないや…」
「何だよ、詳しく知らないのかよ」
苦笑するラルに、ルークは眉を顰める。
「しょうがないじゃん。そんなのはね、学校で習うもんでもないの。何となく聞いてたって言うか…」
「って言うか、何?神の遣い?そんなの崇めてんの?」
「まぁ…人間界ってのはね、ある意味神のカオスよ」
そう言いながら…思わず笑ってしまう。
その中に、自分たちもいた訳で…少なくとも、媒体も本気で神を崇めてはいなかったとは思うが…それでも諸々便乗することはあったはず。現実はそんなものだろう。
現実を知るのは、ある意味絶望を知らせるようなもの。そんなものは…平和に暮らしている媒体たちは、多分一生知らなくても良いこと。だから、ルークも媒体には神に関することは敢えて伝えていなかった。それでも過ごせるのなら、何の問題もないのだから。
「…で?その話の続き、まだするの?」
多分、これ以上話は盛り上がらない。そう察したラルの言葉に、苦笑する。
「いや、もうおしまい。報告書見たら俺も帰るから。後はまた明日ね」
「了解。じゃ、気を付けて帰れよ」
そう言い残し、ラルは執務室を後にする。
雨はまだ降っていた。先ほどよりも少し曇ったが、もう直に雨もやむだろう。
帰路に着くまでには、やんでくれると有難い。そう思いながら、御茶を飲みながら報告書に目を通す。
そしてルークが帰り支度を始めた時には、雨がやんだ空は雲一つなかった。
ルークが執務室を出たのは、職務終了時間の直後だったはず。だが、屋敷に帰ると、リビングには既に待ち悪魔がいた。
「…早くないですか?俺も定時で上がって来たんですけど…」
思わずそう零したルークに、笑いが返って来る。
「普段真面目に職務を熟していれば、何の問題もない。時間に縛られないのは、大魔王の特権だね。特権はね、有効活用しないと」
「特権って…職権乱用じゃないんですか?」
苦笑しながらそう返すと、大魔王たるダミアンはくすくすと笑う。
「まぁ、どちらでも一緒だね」
そうは言うものの、それが黙認されるのは、やはり普段の職務態度がしっかりしているから。ルークにも、それは十分わかっている。
「それで、今日は…」
察してはいるものの、一応問いかけてみる。
「改めて聞くのかい?折角の癒しタイムだよ?」
予想通りの答え。だが、今日はちょっと…ルークとしては、乗り気ではない。
「…えっと…済みません、ちょっと体調が…」
そう言った直後、鼻がムズムズして、くしゃみを一つ。
「どうした?確かに少し鼻声のようだが…風邪でもひいたかい?」
首を傾げるダミアンに、ルークは小さな溜め息を一つ。
「まだそこまでではないと思うんですけど…ちょっと鼻が…」
指先で鼻を擦りながらそう答える。まだ症状は鼻がムズムズするくらいだが、ダミアンにうつしてしまう訳にはいかない。そんな想いで口にした言葉だったが、ダミアンはそれを一笑する。
「ひき始めなら、それほど心配する必要もあるまい。温かくしてゆっくり休めれば良いのだろう?長居はしないよ」
「…はぁ…」
ダミアンにしてみれば、久し振りの癒しタイム。長居はしないまでも、居座るようだ。
共に食事を取り、半ば有無を言わさず…と言った状態で、自室へと一緒に向かう。そして徐ろにベッドへと向かったダミアンは、枕とクッションを背に当ててヘッドボードに凭れると、そこにルークを呼び込む。
「おいで、ルーク」
「………」
その魅惑的な姿に、抗うことは出来ず。小さく息を吐き出したルークは、呼ばれるままにベッドへと上がる。すると、足を延ばして座るその間に、背を抱くように同じ向きにルークを座らせると、そのまま包み込むように上掛けで包んだ。
「ほら、一名で眠るよりも温かいだろう?」
笑いを含んだ声でそう囁かれ、思わず赤くなる。
ダミアンが求めるのは"癒し"。どんな状況であれ、ルークと共に過ごせればそれで良いのだ。それを改めて感じ…小さく笑いを零す。
「温かいです」
素直にそう言ったルークに、ダミアンはにっこりと微笑む。
背中から伝わる熱。確かに、一名でいるよりもずっと温かい。そして、背中に感じる呼吸と鼓動が、とても心地好い。食後でおなかも満たされているので、ついつい…欠伸が零れる。
「…重くないですか…?」
完全に背を預けているので、それが少し気になる。けれど、ダミアンは寧ろしっかりとルークの身体を抱き抱える。
「大丈夫だよ。その重さも御前がここにいることを感じられるからね。何の問題もない」
「…そうですか」
ルークも思わず苦笑する。
背を預けられる安心感。そして、包み込まれる安堵感。全身で感じる温もりは、まさに愛情そのもの。
そんなことを思いつつ…ふと、夕方のことを思い出す。
「…そうだ。ダミ様なら知ってます?"狐の嫁入り"」
「うん?狐…?」
流石に唐突過ぎたか。そう思い、改めて話をする。
「夕方、天気雨が降ったでしょう?執務室にラルが来ていて、天気雨を"狐の嫁入り"って言ったら、そもそも魔界に狐はいないから、狐そのものを知らなかったんです。自分の常識を全員が共有出来ていると思うな、って説教されて、"狐の嫁入り"の説明もさせられたんですけど、俺も上手く説明出来なくて…と言うか、詳しくは知らなくて」
「成程ね。ラルの説教も納得だね。わたしも、つい人間界の話を持ち出してしまうことがまだあるが…伝わらないことも多いからね。良い説教だね」
大魔王陛下に説教を褒められたと聞いたら、ラルはどんな顔をするだろう。そう考えると、ちょっと笑いが零れる。
「今日はほぼほぼ雨だったが、夕方から天候も回復したね。その途中で確かに天気雨が降っていたが…"狐の嫁入り"は、晴れている状態で雨が降ることではなかったかな?」
「…そうなんですか?じゃあ、今日のは違うんだ…」
「まぁ、わたしも詳しくは知らないから、はっきり断言は出来ないけれどね……そうだ」
ダミアンは徐ろに上掛けから片手を出すと、その掌に一冊の本を呼び出した。
「わからないなら調べよう」
そう言うと、もう片方の手も上掛けの上に出し、ページを捲る。どうやら、呼び出した本は辞書のようだった。
「"狐の嫁入り"とは…『闇夜に山野で狐火が連なっているのを、狐の嫁入りの提灯行列に見立てて言ったもの。狐の行列とも言う』と書いてあるね。それから、『日が当たっているのに、にわか雨の降ること』だそうだ。『二者とも、狐に化かされていると錯覚して、このような呼び方が生まれたと思われる。二つ目は夕方などに天然現象としてよくあることだが、一つ目については、実際の灯を誤って見たか、異常屈折の光を錯覚した体験が、この種の伝承を生んだのであろう』と記載されているね。まぁ、余り現実的ではないね」
そう言って辞書を閉じる。そんな姿は、まさに教師のようで…と言うか、人間界の世仮では教師だったのだから、間違いない姿なのかも知れないが。
そんなことを考えつつ、くすっと笑いが零れる。
「何だか…ダミ様カッコイイですね。流石、って感じ」
「そうだろう?これでも、まだ記憶は残っているからね」
ダミアンも笑いながら、その手から辞書を消す。そして改めて、両手でルークを抱き締める。
「"狐の嫁入り"ではないが…何なら御前が嫁に来てくれれば良いのだけれどね」
肩口で、そう零された言葉。そして、愛おしそうに寄せられた頬。
それが、叶わぬ願いであることは重々承知。けれどそれでも、愛おしいと思う気持ちは変わらない。
「…嫁には行けませんけど…貴方の"癒し"でいられるように…ここに、いますから」
穏やかに、そう言葉を返すルーク。
幾度も悩んだけれど、結局ここにいることが一番居心地が良い。ならば、全て受け入れてしまえば楽になる。それが、ルークが見つけた答えだった。そしてそれが、御互いが倖せである為の、一番の方法ならば。
「じゃあ…十分、堪能しないとね」
そう言って、ルークの髪にそっと口付ける。だが、ルークを気遣ってか、今日はそれ以上は求めない。その潔さもまた、流石と言えば流石。
「まぁ、今日のような雨は、身体を冷やすからね。外を出歩いていたのなら尚更、無理はするものじゃない。早い段階で、しっかり温まって治すのが一番だよ」
「…そうですね…」
倖せな温かさに包まれて、眠気が襲って来る。このまま眠ってしまったら、背中を預けているダミアンは身動きが取れないだろう…と、ルークは身体を動かし、ダミアンの横へと移動する。そして改めて、ダミアンの手を握った。
「…泊まって行ってくれます…?」
甘えるように見上げるルークに、ダミアンはくすっと笑う。
「良いよ」
その笑顔に、ルークも笑みを零す。
二名で並んで横になり、その温もりを倖せだと思いながら、眠りに落ちる。
それが、何よりの薬だった。
翌朝。目が覚めたルークは、そのまま一緒に眠ってしまったダミアンの服(着替えをせず、来たままの恰好)が皺だらけになってしまった、と慌てたが…それもダミアンは一笑する。
「気にしない、気にしない。御前が元気になれば、それで良いんだよ」
そう言って笑うダミアン。
赤面しつつ…つい、顔が綻ぶ。
天気は晴れ。束の間の癒しタイム。
早めの対処ですっかり元気になったルークに、ダミアンもまた、笑顔が零れていた。
PR
COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
カテゴリー
最新記事
(06/23)
(10/08)
(10/08)
(09/30)
(09/10)
(09/10)
(08/06)
(08/06)
(07/09)
(07/09)
アーカイブ
ブログ内検索