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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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LOST 1
こちらは、本日UPの新作です
 4話完結 act.1

拍手[5回]


◇◆◇

 "鬼"として生きる。生まれながらに背負ったその運命には、逆らうことは出来ない。
 多分…自分は、間違って"鬼"として生まれたのではないか。そんなことを考えるものの…考えたところで、運命は何も変わらない。
 子供の頃は良かった。そんな運命など、深く考えずとも生きていけた。
 けれど、ある一定の時期から…そんな暢気なことを言っていられなくなった。
 彼がぶつかった壁は……とても、高かった。

◇◆◇

 初めての研修が終わった。
 終了後の山のような課題を出し終えると、次の研修をまた考えなければならない。まぁ、研修自体は、彼にとっては大きな問題ではなかった。勿論、次の研修も同じ局を選ぶ予定なので、そこを目指す分には何の問題もない。やってみたい研修課題など、沢山あるのだから。
 ただ一つ、問題があるとすれば…。
「…ゼノン、御待たせしました」
 ぼんやりと空を眺めていた視線が、背後から聞こえたその声で呼び戻される。
「…レイラ。終わったの?」
「えぇ。たいした話ではなかったですから」
 そう言いながら、隣に立つ姿。同地区出身の彼らの頭には、揃って角がある。つまり、彼らは同族の"鬼"であった。そして三十分程前。同級生に呼び出された仲魔たるレイラ=クーヴェイが戻って来た訳だが…いつもの様子とは、何処か違う気がする。
「…何かあった?」
 問いかけた声に…その眼差しが、ゼノンへと向いた。
 酷く醒めた…碧色。いつも穏やかなレイラ=クーヴェイにしては珍しく…何処か荒立っている感じもある。
 だが、そんな眼差しも一瞬。大きな溜め息を吐き出すと、ゆっくりと話を切り出した。
「…ゼノンは…"儀式"の相手、決めました?」
「…いや、決めてないけど…レイラは決めたの?」
「決めた、と言うか…半分、押し付けられた、と言うか…」
 その口調も、いつになくはっきりしない。だが、押し付けられた、と言うことは…まぁ、相手は半ば決まったのだろう。
「さっきの相手?」
「…まぁ…」
 碧色の瞳と赤の紋様を頂いた"鬼"と言う容姿は同じだが…やや強い印象を与える紋様と襟足で結んだ薄茶色の髪のゼノンに比べて、笑顔も柔らかく、少し伸びたショートカットのプラチナの髪のレイラ=クーヴェイは、見た目の上では"鬼"を忘れるくらい華憐な印象を与えていた。だが、実際はゼノンよりも"鬼"の特性は強いのだが、見た目の印象から声をかけられることは極めて多かった。
 だがしかし。彼らは"鬼"である。そしてその特性は極めて残酷。血を好み、肉を喰らう。その本性があるが故に…簡単に、恋悪魔を作ることが出来ない。故に、これから彼らに訪れる"儀式"にも大きく影響する。
 魔族が強大な能力を維持する為に、肉体の成長と精神の成長を結びつける。その為に必要な"壁"を乗り越えることを通称"儀式"と呼ばれているが…その"壁"を、彼らが越える為には…必然的に、相手を、喰らう。
「…説明は、したの?」
 小さく問いかけた声に、レイラ=クーヴェイはくすっと笑った。
「しましたよ。それでも良いから、って…運が良ければ生き延びられると言っていましたけれど…どうなんでしょうね。無駄死にすることも厭わないだなんて…そこまで執着される理由はわかりませんけれどね。まぁ…本魔が良いというのなら、そうさせていただきます。折角の機会なので」
「…そう」
 視線を伏せ、溜め息を吐き出すゼノン。その姿に、レイラ=クーヴェイはすっと笑いを収めた。
「…幻滅、ですか…?」
 そう問いかけられ、ゼノンは顔を上げる。真っ直ぐに向けられた碧色の眼差し。その冷たい色は…絶望、か。
「まだ、本当の"鬼"になったことはないです。でも…"儀式"ではきっと、わたしは"鬼"になります。何の罪もない彼を、喰い殺す。最低の、生き方ですよね。その道を選んだわたしを…貴方は、幻滅しますか?」
 重い声。当然、レイラ=クーヴェイにも迷う心がある。だからこそ…ゼノンに、問いかけたのだろう。
 同じ運命を背負った、"鬼"として。
 そしてゼノンもまた、同じ岐路に立たされている。
「…俺たちが、生きていく為に…必要なことだって言うことはわかっているよ。"儀式"を終えなければ、オトナにはなれない。必ず通らなければならない道なら…自分が納得する道を、進むしかない。だから、俺はレイラに対して幻滅はしないよ。俺だって…きっと、同じだもの」
 レイラ=クーヴェイだけではない。"鬼"である以上、皆同じ道を通る。ただ、持って生まれた"鬼"に特性により、残虐性に差が出るだけで。
「…ゼノンは…どうするつもりですか…?」
 残虐性を秘めた、自分の能力が嫌い。以前からそう言っていたゼノン。"儀式"はゼノンにとって、何よりも大きな壁なのだろう…と思いながら、問いかけてみる。
「まぁ…出来ることなら、"儀式"なしでオトナになりたいところだよね。見た目はそんなに変わらないだろうし…これ以上、余計な能力もいらないんだけど…」
 それがゼノンの本音。成体にならずに済むのなら、それに越したことはない。けれど、世の中そうはいかない。魔力も一定の基準を満たしていれば、何処の局でも問題はないはず。けれど、オトナになる、と言うことはそれだけではない。一名では乗り越えられない"壁"があるからこその"儀式"なのだが…その"壁"はあくまでも精神的なもの。何をしたら越えられる、と言う明確な定義はない訳で…要は半ば精神論なのだ。一応、肉体の成長と精神の成長を結びつける、と言うことが大義名分ではあるが…曖昧なことこの上ない。
 大きな溜め息を吐き出したゼノン。
「俺はもう少し考えるよ。何か良い方法があるかも知れないし」
 そんな良い方法などないことは重々承知だが…嫌なことは出来る限り先延ばしにしてしまおう。ゼノンにしては珍しい選択肢だが、状況が状況だけにレイラ=クーヴェイも文句は言えなかった。
 小さな吐息を零し、そしてほんの少しだけ、笑みを浮かべた。
「いつか……わたしたちの想いが、報われると良いのですけれどね…」
 想う相手がいるのなら、尚更。切ない恋心は、残念ながらゼノンには未だ無縁だった。
「そうだね。御前は特に…ね。恋悪魔に関しては、俺は別に何の期待もないから」
 この先も、きっと…本気で好きになれる相手など、存在しない。端っから希望など持たない方が、絶望しなくても済む。最悪、儀式の一度だけ、乗り越えれば。そんな想いは、ずっとゼノンの心の中にあった。
 勿論、レイラ=クーヴェイもゼノンのその気持ちは十分わかっていることだった。だからこそ…フォローの言葉も見つからなかった。

◇◆◇

 ゼノンがレイラ=クーヴェイから儀式の相手の話を聞いてから数日間、彼は学校を休んだ。そして再び登校して来たレイラ=クーヴェイは、いつもと特に変わりはない。けれど…
「彼奴、成体になったな」
 ぼんやりとその姿を眺めていたゼノンの背後からそう声をかけて来たのは、寮でゼノンと同室のテオ=ホリィ。彼もまた、鬼の種族であった。尤も、"天邪鬼"である彼は、種族としての凶暴性は殆どない。そんな理由もあり、彼らよりもずっと前に成体となり、規律違反の朝帰りをこっそりと繰り返す、ある意味強者でもある。
「何日か、学校休んだんだろう?俺たちが学校に行っている間に、何処かの部屋に清掃が入ったらしいから…喰われたんだろうな」
 天邪鬼らしく、何処か嘲笑の色を乗せたテオ=ホリィの言葉に、ゼノンは小さな溜め息を一つ。
「…お前の言い方は良くないけど…でもお前がそう言うなら、そうなんだろうね…」
 言い方は、確かに皮肉げで。けれど、的を射ていると思うこと自体…ゼノンも、察していたことだったのだろう。そう、自分で感じていた。
「…で?あんたはどうする?レイラ=クーヴェイが成体になった、って言うことは、あと"凶暴な鬼"はあんただけじゃない?」
「まぁ…ね」
 確かに。他の階級にも"鬼"は在籍しているが、彼らほどの凶暴性はなかったはず。中には角はあるが"鬼"の能力を持たない者もいるくらいだった。希少価値があると言えばそうなのだが、ゼノンにしてみれば有難迷惑な話でもある。
「…相手、いるの?」
 そう、問いかけられる。思わず視線を向けると…テオ=ホリィは、真顔で真っすぐに前を向いたまま。ゼノンの方を見てはいない。
「…いないよ。知ってる癖に…」
 寮の同室なのだから、年中自室にいるゼノンに相手がいるかいないかぐらいの察しはつくだろう。そう思いながら答えたゼノンの言葉に、テオ=ホリィの視線がふっとゼノンへと向いた。
「俺が、相手しようか?」
「……はい?」
 思いがけない言葉に、怪訝そうに眉を潜めたゼノン。
「冗談でしょ?だってお前は、もうとっくに…」
「そう、だから、だよ。だから、あんたに言ってるの。どうせ、拘りはないんでしょ?だったら…"鬼"である方が、都合が良いかと思ってね。あんた程じゃないけど…俺だって、ちょっとやそっとじゃ死にゃしないから」
 くすっと笑う顔。
 同室になってから、ずっと見て来たゼノンと言う悪魔。"鬼"にしては物静かで大人しい。と言うよりは…目立たないように生きているのだろう。
 自分の中の"鬼"を、活性化させない為に。
 はっきり言えば、テオ=ホリィとは全く違う生き方。だからこそ、仲魔だが余計な手出しをするつもりはなかった。だが、儀式を前に足踏みしている姿を目の当たりにして…その考えが変わった。
 凶暴な"鬼"の相手を、自ら進んで申し出る相手は殆どいない。レイラ=クーヴェイの相手が奇特だと言ってしまえばそれまでだが…滅多に出会えない相手であるからこそ、失うことは何よりの負担になるはず。
 ゼノンがその"壁"を自分の意思で越えられないであろうことは、ずっと見ていてわかっていた。"鬼"のクセに、戦うことを恐れる。自分が自分でなくなることが怖い。そんな"鬼"は、今まで見たことがなかった。だから…半分は、興味本位。ゼノンが抱えている本物の"鬼"を、見てみたかった。
 そしてもう半分は…自分の中の"鬼"への自信。自分も"鬼"なのだから、そう簡単に死ぬはずはない。しかも、ゼノンとは違って、既に成体になっている。その能力も、最大限に引き出せるはず。そんな、安直な想い。勿論、そこに何の確証もない。純粋に能力の大きさだけを比較するのなら、純血であり"凶暴な鬼"たるゼノンの本来の能力を知っていれば到底敵わないはずだが…若さ故にそこまでの認識は足りなかった。
 ただ…だからこそ、突っ走れるのかも知れない。
「どうする?次の研修、半年先だよね。初めての研修は実践は大したことないが、次の研修は前とは違う。何処の局でもなかなかハードだって言うじゃないか。文化局だって、戦地に立って戦うことは経験するんだろう?成体になったからって、直ぐに能力が上がる訳じゃない。身体と能力が馴染むまで時間がかかる。まぁ、あんたならそれで熟せない研修じゃないが…早ければそれに越したことはない。いつまでも引き延ばすよりは、さっさと決断した方が良いと思うけど?」
「…そう言われてもね…」
 突然の展開に、当然ゼノンは困惑の表情を浮かべている。
「…多分…彼奴も、同じだったんじゃないか?」
「彼奴、って…」
 テオ=ホリィが視線を向ける先には、もう誰もいない。けれど、それが誰を指す言葉だったのかはわかった。
「"鬼"ってだけで…色々、敬遠されるからな。運良く相手が見つかったのなら、便乗してしまえば良い。相手からの申し出なら、尚更。でもあんたは誰よりも慎重で…誰よりも、臆病だ。放っておいたら、きっと成体にならないまま士官学校を卒業しそうだしな。そのまま入局出来なくはないだろうが…能力の格差は明確だ。絶対、上には行けない。あんたは、上を目指したいんだろう?だから、俺が相手してやるって言ってるんだ。"鬼"の方が、気が楽だろうからな」
 にやりと笑うその顔は…いつもの天邪鬼としての嘲笑はない。
「…どうする?」
 問いかけられ…ゼノンは一つ、息を飲んだ。
 確かに、テオ=ホリィの言う通り。この申し出を逃したら…きっと、そんな命知らずな申し出をする相手など巡り逢えないだろう。
 だからこそ…レイラ=クーヴェイも…。
「……わかった。ホリィに…お願いする。ただし…俺は、自分がどうなってしまうのか…わからないんだ。もし、お前を…殺してしまったら……そう思うと…」
 不安で一杯の顔。けれどテオ=ホリィは、その顔を一笑する。
「簡単には死なないって言っただろう?俺も"鬼"だって。あんたはまだ"鬼"として不完全。でも俺は成体だから。その差を、嘗めんなよ?」
「…ホリィ…」
 その手を伸ばし、ゼノンの頭にそっと手を触れる。
「心配、すんな」
「……有難う」
 たった一言の重み。例え、それが興味本位であったとしても…同じ"鬼"として、同士として。素直に…何よりも、有難いと思った。


 運命の時は…酷く、残酷だった。
 テオ=ホリィの部屋へと一緒にやって来たゼノン。そしてそのまま、儀式へと向かう。
 順調だと思っていたのは…大丈夫だと思っていたのは、途中まで。
 自分の身体の下にある、テオ=ホリィの体温。呼吸。そして"生きている"、と言う生々しさ。それを実感した途端…ゾクッとした。
 身体の奥底から…意識の奥底から、何かが引き摺り出されるような…そんな感覚。
「…ゼノン…?」
 呼びかけられた声に、視線を向ける。
 儀式と言う名目だが、実質肉体的な関係に他ならない。そこにあるのは…ただの"欲望"。
 "相手を喰らいたい"、と言う…"鬼"としての、本能的な欲望。
 ゴクリ、と喉が鳴る。
「…大丈夫?」
 問いかけられた声が…とても、遠い。
「ゼノン…?」
 心配したテオ=ホリィがその手をゼノンの頬へと伸ばし、指先が触れた瞬間。その手が、払い退けられた。
「ゼ……!?」
 豹変した、"鬼"の顔。それは、ゼノンの"鬼面"に他ならない。
 いつの間に。そう問いかける間もなく、その手がテオ=ホリィの顔を押さえつける。呼吸さえ儘ならない状態になり、目を見開いたその顔に向けて再び振り下ろされた手。
 猛烈な衝撃と痛み。だが、"鬼"であるテオ=ホリィの意識はまだ落ちない。
 目の前の"鬼"は…既に、見知っている悪魔ではなかった。その時になって初めて、テオ=ホリィは自分が軽率だったと後悔した。
 剥き出しになった首筋に狙いを定めたように、徐ろに咬みつく。それは愛撫ではなく…確実に、急所を狙っていた。
----…喰われ…る……
 意識が遠くなりかける。けれど、それを許さないかのように、再びその手が振り下ろされる。
 血に塗れたその首筋に、触れられた唇。そして、傷口を塞ぐかのように舌を這わせる。その一瞬だけは、感覚としての快楽が呼び起こされる。だが、それを堪能する間もなく…再び、喰らいつく。そして、手が振り下ろされる。
 幾度となく繰り返されるその行為に、いつしか痛みも快楽も感じなくなった。
 そこにあるのは…ただ一つ。
 奇妙な……達成感、だった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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