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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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PRESENTS ~Raiden's Day~
こちらは、以前のHPで2001年11月21日にUPしたものです
ライちゃんの発生日記念に。

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◇◆◇

 冬が、また一歩近付いて来た。
 "食欲の秋"もそろそろ終盤か…と思いきや、まだまだ満たされない食欲の持ち主の発生日が、目前となっていた。

「腹減ったぁ~~」
 澄み切った高い空を見上げつつ、思わずそう零れた言葉。けれど、それに答える声は一つもなかった。要は、周囲に誰もいなかったから、なのだが。
 御腹が空いた、と言う感覚で無意識に腹部に添えられた手。ただ、奇妙な感覚が脳裏を翳めると、思わずその手が擦るような動作に変わる。
「…あれ…?」
 ふと零れた声。勿論、それを聞いている者は誰もいない。

◇◆◇

 十一月も半ばに入った頃のこと。
 不意にかかって来た電話で、意識がふと現実に戻った。
 暗闇で目を開け、枕元の時計を手に取る。その時刻、完全なる真夜中。
「…んだよ…」
 不躾な電話の音に文句を零しつつ、ヘッドライトを灯して電話を取る。
「もしもし!?」
 こんな不躾な時間の電話なのだから、当然声も荒立っている。けれど、受話器越しに聞こえた声に、大きな溜め息が零れた。
『あぁ、吾輩だ。悪いな、こんな時間で。寝てただろう?』
「…デーさん?んもぉ…寝てたよぉ…」
『悪い、悪い。吾輩も、なかなか時間が取れなくてな。やっと電話をかける時間が取れたのがこの時間なんだ』
 電話に出た彼もまた連日の仕事の疲れもあって、流石に上機嫌、とはいかなかった。
 だが電話の向こうの相手…デーモンも、忙しい中を縫っての電話であることは良くわかっていたのだ。だから、闇雲に怒ることも出来ない。しかも、相手は自分よりも年上の、大学の先輩と来た。尚更無下にすることも出来ないのは、長年の習性である。
「…で、どうしたの?」
 大きな欠伸を噛み殺しつつ、そう問いかける。
『あぁ。御前とライデンの発生日のパーティーのことで電話したんだ。今回は吾輩が幹事なんだ。そこで、御前も来るよな?』
「俺…?あぁ、呼ばれたなら行くけど…良いの?」
 ぽりぽりと鼻の頭を掻きながら、そう答える。
 かつての構成員たちが、発生日ごとに御祝いのパーティーをやっていることはわかっていたが、そこに人間である自分が呼ばれても良いのだろうか、と言う素朴な疑問。
 彼のその問いかけに、デーモンは小さく笑いを零した。
『まだ、接触しているだろう?ライデンと。それに、御前を呼ぶのはライデンからの強い要望もあるらしいぞ』
「…そう」
 決して、気が乗らない訳ではない。
 かつての媒体である(未だに時折接触はあるが)ライデンが、発生日に自分を呼んでくれたことも嬉しい。
 けれど……。
「…行けたら行くけど…ちょっとわからないや」
『忙しいのか?』
 はっきりしない態度に、デーモンが問いかける。その声に、僅かに心配する色も感じられた。
「ん…ちょっとね」
 受話器を持っていない手が、無意識に腹部へと添えられ、擦る仕種を始める。
 このところ、少し調子が悪い。よりによって、それが御腹なのだから、まさに都合が悪い。
『大丈夫か?』
 何かを察しているのか、デーモンの声が問いかける。
「うん、大丈夫。取り敢えず、前日までには連絡するよ。それでも良いかな?」
『あぁ、わかった。用意はしておくからな』
----じゃあ、な。
 その言葉を最後に、電話は切れた。
 受話器を戻しながら、再び大きな溜め息を零す。
 そして。
「…あんたは…大丈夫?」
 ふと、問いかけた声。けれど、その声に返って来る言葉はなかった。
「折角の発生日の主役なんだから、無理すんなよ」
 遠く飛ばす意識波に、そんな言葉も乗せる。
 媒体であるが故の、気遣い、だった。

◇◆◇

 発生日前日。
 この日、実家に戻っていたライデンの元から呼び出しがかかったゼノンが、雷神界の神殿へと向かっていた。

「…どしたの?その格好は…」
 突然の呼び出しに嫌な予感を感じていたのだろう。眉を顰ながら問いかける先にいる部屋の主は、ベッドの中に収まり、上体だけを起こしてゼノンを迎え入れた。
「ん…ちょっとね…」
 気まずそうな表情を浮かべつつ、ベッドの中に隠れている手がもそもそと動いている。
「…御腹、調子悪いの?」
 擦るような動きを目に留めたゼノンの声。
「ん…何て言うんだろう。痛い、って言う訳じゃないんだけど…何か変、って感じ。違和感って言うの?ほら、明日俺の発生日のパーティーがあるじゃない?デーさん、バイキングにしてくれる、って言ってたから…ちょっと気になってさ…」
 誰よりも食いしん坊のライデンのこと、発生日の御馳走が食べられないのは悔しいのだろう。だからこそ、前以て対処すべく、ゼノンを呼んだのかも知れない。
「もぉ…こんなぎりぎりで言わないでよ…どうせ、もっと前から変だと思ってたんでしょ?」
 その様子から察するに、多分昨日今日の話ではない。そう思って問いかけた言葉に、ライデンは気まずそうに眉を寄せた。
「…だって…俺もそうだけど、あんたも忙しいでしょ?大したことないし、暫く様子見…と思ってたんだけど…何か、全然回復した感がなくってさ…」
「そんなところで遠慮してどうするの…」
 溜め息を吐き出しつつ、上掛けの中へと手を差し入れ、その腹部へと手を触れる。
 そうして暫し、その気を探る。
「…まぁ…疲労と風邪気味が原因みたいだから、大したことはないみたいだけど…無理は駄目だよ。取り敢えず、今日は安静。薬出すからね、それを飲んで、ちゃんと休んでね」
 そう言って薬を処方して貰うべくメモ書きをしながら、ライデンの様子を伺う。
 考え事をしているのか…その心ここにあらず、と言った表情。
 メモを書き終え、廊下で待ち構えていた官吏たるフィードにそれを渡して医局へ届けて貰う旨を伝えて戻って来ると、ゼノンは椅子を引き寄せてベッドサイドへと腰を下ろす。
「…どうかした?」
「…ねぇ…湯沢のところ、行ける?」
 暫く考えていたことがそれだったのか、上目遣いでゼノンへと視線を向けるライデンに、当然ゼノンは首を傾げる。
「…湯沢くんのところ?行けない事はないけど…どうして?」
 問いかけた声に、ライデンは小さく息を吐き出す。
「このところさ、湯沢から何となく不安定な波動が流れて来るんだよね。それも気になってさ…何だか俺も落ち着かないし…」
 数日前から感じている波動。いつになく酷く弱々しい波動の為、相手が何を言っているのかを感じ取るまでには至らない。けれど、明らかにそれは病的な何かを孕んでいたのだ。それもまた、疲れと体調不良の一因であった。
「…そう言うこと」
 溜め息を吐き出したゼノン。確か人間界にいるデーモンから、発生日のパーティーに湯沢も誘っていると聞いてる。もし、湯沢も体調が悪いのなら…ライデンと同じなのかも知れない、と。
「わかったよ。石川にも連絡入れて見に行って貰うし、俺も様子を見に行くから。御前は心配しないでちゃんと休んで」
 そう言いながら、ライデンをベッドへと押し込むと、その頭をそっと撫でる。
「もう直ぐ薬が来るから、それ飲んで大人しくね。フィードにも良く言っておくから」
「了解」
 にっこりと微笑むライデン。その笑顔に、ゼノンは小さな溜め息を吐き出していた。

 その日の夕方を回った頃、人間界のとあるマンションの一室に現れた、小さな異物。それは、ゆっくりと光を集積し始め、そして時間をかけて、一体の悪魔型を作り上げた。
 その悪魔は他ならぬゼノン。ライデンに頼まれた通り、彼の媒体である湯沢の様子を見にやって来たのだ。
 勿論、ゼノンが訪れたのは、湯沢のマンション。そのベッドには、まだ夕日も沈んでいない時間であるにも関わらず、潜り込んで丸くなっている主の姿があった。
『…湯沢くん?』
 そう呼びかけると、上掛けの膨らみが僅かに動いた。そして、声の主を確認するかのように、ゆっくりと顔が覗いた。
「…あれ?ゼノン…?どうしたの?」
 珍しい来客に、湯沢は上体を起こしてゼノンを見つめた。
『御免ね、寝てた?体調悪いんじゃないかってライデンが心配してたから、様子見でね。ちょっと触らせてね』
 ライデンの捕えた波動も満更アテが外れている訳ではなかったと思いながら、ベッドへと歩み寄るゼノン。そして、湯沢が答える前にその手を伸ばして額へと触れる。
 熱はない。それは一安心、と思いながら、腹部へと触れる。そして暫く探ると、溜め息を一つ。
 恐らく…症状はライデンと同じ。仕事が立て込んで疲れている状況で、身体でも冷やしたのだろう。
『病院行った?』
「…まぁ、一応ね。行かないと他の奴等に迷惑かかるでしょ?薬もあるから、心配しなくても良いのに…」
 そう言いつつも、誰かが傍にいる、と言う安心感は感じていた。
「ライデン…大丈夫?」
 ふと、湯沢の口を付いて出た言葉。ライデンが感じ取っていたのと同じように、湯沢もまた、ライデンの不調を感じ取っていたのだろうか。
『大丈夫。薬飲ませて来たから』
 ゼノンはそう言いながら、くすっと笑った。
『御互いが御互いの不調を感じ取って体調崩してたら、笑い話にもならないんだからね?石川に連絡入れてなかったでしょ?心配してたよ。もう直来ると思うから、ちゃんと看病して貰って。明日、楽しみなんでしょ?』
「まぁ…ね」
 小さな溜め息を吐き出し、湯沢は大人しくベッドへと潜り込む。
 湯沢とて、発生日のご馳走を楽しみにしていなかった訳ではない。むしろ、楽しみにしていたと言っても過言ではないのだ。
 だからこそ、ゼノンの気遣いは予想外だがちょっと嬉しかったりもする。
 その頭にそっと手を置いたゼノンは、小さく息を吐き出す。
『調子悪かったら、ちゃんと誰かに連絡取ってよ?』
 以前なら…主たる悪魔と一緒に、同じ屋敷で暮らしていた。だからこそ、具合が悪くなれば直ぐに見抜かれていたし、直ぐに看病もして貰っていた。だからこそ、長引くこともなかった。けれど、今はそうも行かない。恋人たる石川も家は違うし、仕事も別々。どちらかがちゃんと連絡を入れなければ、具合が悪いこともわからないのだ。だからこそ、ライデンも湯沢の心配をしていたのだ。
 たった一人で…寂しい想いをしているのではないか、と。
『俺が言うのはどうかと思うけど…石川だって、他人じゃないんだよ?そう言う時は遠慮しないで、ちゃんと連絡すること。長引く方が、周りに迷惑かけるんだからね?』
「…わかってるよ、御免」
 小さな溜め息は、その想いを察してのことか。
『石川が来るまで、傍にいるから。ゆっくり休んでね』
 柔らかいその声。そして、そっと頭を撫でるその仕草に、懐かしい匂いを感じた。
 促されるように眠りに落ちていくその意識の片隅で…笑っている悪魔の顔が浮かぶ。
 深い深い眠りの淵で…小さな倖せを感じていた。

◇◆◇

 発生日の当日。その日は、朝から一日、とても天気が良かった。
 デーモンが用意したライデンの発生日のパーティー会場は、例によって例の如く、人間界の屋敷。
 一足先にゼノンと共に屋敷に現れたライデンは、昨日まで具合が悪かったとは思えない程回復し、上機嫌であった。天気が良かったのも、その影響だろうか…と思うくらい。
「バイキング♪バイキング♪」
 待ちに待った御馳走を目の前に、喜び勇んでいるライデン。その姿に、幹事であるデーモンは小さな笑いを零す。
「まぁ、もう少し待ってろ。まだこっちも全員揃っていないしな。直に湯沢も来るだろうから」
 皇太子たるダミアンと、魔界に残っていたエース、ルークはもう直来ると連絡が入っている。そして心配していた湯沢だが、昨夜遅くにデーモンの元に入った連絡では、多分行けるから、と言うことだった。だからこそ、こうして用意をして待っているのだ。
 そうこうしているうちに、魔界組は無事に到着し、後は湯沢を待つのみ。だが…予定の時間を既に回っているが、未だ、湯沢の姿は現れない。
「…大丈夫、かなぁ…」
 昨日の姿を思い出し、僅かながら心配の表情を浮かべたゼノン。けれど、それを横で見ていたライデンは、にっこりと微笑んでみせた。
「大丈夫、大丈夫。何せ、バイキングだよ?このチャンスを放っておける訳ないじゃないの。それに、石川くんに看病して貰ったんでしょ?だったらきっと治ってるよ。俺もすっかり良くなったし」
「まぁ…御前がそう言うのなら…」
 誰よりも相手をわかっているはずのライデンの言葉に、ゼノンも気持ちを落ち着かせるかのように、大きく息を吐き出した。
 そして、それから数十分後、待ち人は現れた。
「御待たせ~!御免ね、遅くなって~」
 上機嫌で飛び込んで来た湯沢。
「おっそ~い!」
 真っ先に声を上げたのは、当然ライデン。
「まぁまぁ。それじゃ、始めようか」
 苦笑しながらそう言ったデーモンの声に、一同そのつもりで乾杯の用意を始めた。
 しかし。
「あのさぁ…ちょっと良い?」
 ふと、遮ったのは湯沢。
「どした?」
 問いかけた幹事の声に、控え目な一言。
「…急なんだけど…まだ、招待したい客がいるんだ。一緒に良いかな…?」
「客…?」
 誰もが怪訝そうに眉を顰た、その瞬間。
 玄関の方から、クラッカーの大音量。そして。
「発生日、おめでとう~!!」
「…御前ら…」
 呆然とする悪魔たちの前、湯沢を筆頭に、見慣れた媒体の一団が揃った。
「折角の発生日だし、俺だけ呼ばれてるのも何だしね。浜田さんは流石に無理だったけど、どうせならみんなで御祝いしようと思って」
 控え目にそう言った湯沢の言葉に、媒体たちが各々持ち寄って来た差し入れを翳す。
「追加でちゃんと持って来ているから、量の問題なら御心配なく!」
 その言葉に、思わずデーモンも笑いを零した。
「…まぁ、問題ない、か。料理も酒も、こっちも沢山用意してあるしな。部屋に入れないこともないから…この際、みんなでやるか」
 その言葉に、沢山の笑顔が零れる。
「よし!それじゃあ、改めて!」
 人数分のグラスに注がれたシャンパンが、一斉に持ち上げられた。
 そして。
「発生日、おめでとう!」
 その声に答える笑顔が、二つ。
「有り難う!」
 こうして、主たちと媒体の全員が揃ったのは、初めてだったかも知れない。
 予期せぬ出来事の中で、久し振りに全員が感じた安堵感。そして、共に発生日を迎えられた幸福感。
 一生モノのその絆は、何物にも変えられない宝物。
 素晴らしい一時は、誰の胸に残る記憶となった。


 何よりも素敵なプレゼントを、アナタに。
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