聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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QUIET SNOW
吹き荒ぶ冷たい風を押し退けるかのように、目映い光のイルミネーションで街が飾られている。
今年もまた、この季節がやって来た。
冷たい指先に息を吐きかけ、温めるように手を擦り合わせながら、木々に飾られた電飾を見上げる姿が二つ。どちらも天然の綺麗な金色の髪をしていて、整った面差しと他の人々よりも頭一つ高い身長もまた、行き交う人々の目を引いていた。
一人は、白いコートを纏い、長いストレートの金髪を腰まで流した、ヴァイオレッドの瞳。そしてもう一人は、黒いコートを纏い、緩いウエーブの背中までの金髪を襟足で結わえた、碧色の瞳。
彼等は、人間界に姿を現した天界人たち、であった。
「何だか…可哀想になってきますね」
木々の電飾を見上げながらそうつぶやいたのは、ヴァイオレッドの瞳。彼の名をラファエルと言う。
彼の隣で同じように見上げるもう一名…碧色の眼差しの彼、ミカエルが、小さな溜め息を吐き出していた。
「彼等は…今頃、どうしているんだろうね」
ぽつりとつぶやいたその言葉の意味を察することが出来たのは、きっとラファエルだったから、だろう。視線を彼に向けたラファエルは、人目を引く程の繊細な美しさを称えた微笑を浮かべた。
「気になりますか?」
「まるでならないと言ったら、嘘になるだろう?御前だって…」
「まぁ…そうですけれどね」
くすっと、笑いを零すラファエル。けれど、その傍らのミカエルは、相も変わらず険しい表情のまま、だった。
「人間たちは…どう思っているんだろうな。折角、命拾いしたと言うのに、この始末だろう。己らの住む地を傷つけ、自ら生命を縮める行為を繰り返しながら、それに気がつかない。自ら、破滅への道を進んでいることに気がつかない彼等に…差し延べられた神の手は、本当に見えているんだろうか…」
その視線の前には、電飾に飾られた、木々の姿。その耳には、彼等から発せられる、悲鳴のような声。植物の声が聞こえない人間たちには、到底気づくはずもない悲鳴である。
「ある意味、彼等は正しかったのかも知れませんね。人間たちに期待するよりも…絶望を見届けること。それが、この地球の為、なのかも知れませんね。実際、自分の目で現実世界を見て、改めてそう思いますよ」
そう零すラファエルの表情は変わらない。けれど、それが彼の胸の傷を隠す意味であることを、ミカエルは知っていた。だからこそ、彼の笑いを止めることが出来なかった。
木々を見上げながら立ち尽くす二名の傍を通り過ぎて行く人々の姿が徐々に少なくなり、いつしかその場には、彼らだけになった。
遠くから聞こえる、華やかなメロディー。その響きが、奇妙なほど、悲しく思えた。
『貴殿等、目立ち過ぎてるぞ』
背後から聞こえたその声に、ハッとしたように振り返った二名。
いつの間にか、木々に凭れるように佇む悪魔が、その視界には映っていた。
精神波のみで、時折通り過ぎる人々の目には映っていない、その悪魔。かつてのように、その顔に戴く紋様の色は青ではなく、赤く変わっている。けれど、その波動は、確かに彼等が見知っている悪魔だった。
「…これは、デーモン閣下」
回りに気づかれないよう、彼等もまた、精神波に近い波動に言葉を乗せ、悪魔に届けた。
「こんなところで会うとは、奇遇ですね。どうなさったんですか?」
微笑みを浮かべてそう問いかけるラファエルに、悪魔は苦渋の笑いを零した。
『貴殿等の波動を捕えたからな、珍しいと思って、観察しに来たんだ。それにしても、人間共に姿を見せ、その存在に交わろうとするとは、偉い進歩だな』
「…我々の行動を嘲笑いに来たと言う訳か。さぞかし良い気分なんだろうな」
ラファエルとは違い、ミカエルの表情はあからさまに悪魔を疎ましく思っているようだった。けれど、彼のその素直な性格を良く知っている悪魔は、くすくすと笑いを零していた。
『立場逆転、だな。貴殿がそう思うと言うことは、今まで自分がそう言う目で我々を見て来たと言うことだな。まぁ、我々は貴殿たちのように鼻には付かないがな』
「何とでも言えば良い」
不機嫌をあからさまにぷいと横を向くミカエル。その様子を目を細めて眺めていた悪魔は、やがてその表情をゆっくりと変えた。
『さて…それでは、見解を聞こうか。貴殿等は…この惑星に住まう知的生物を…どう見た?貴殿等の熱望した通り…生きている価値があると思うか?』
そう問いかける声に、二名の視線が悪魔へと向いた。
問いかけた悪魔の表情は…寂しそうであり、切なそうに見えた。けれど、それは目の錯覚なのか、その眼差しは酷く冷めている。
『聞こえるだろう?この惑星の悲鳴が。痛めつけられ、傷つけられても尚、彼女は…地球は、知的生物を駆除することはなかった。それは、貴殿たちの意志であり…神の意志だ。神の支配下に置くことで、知的生物を守ろうとした。けれど、それが本当に地球の為になると、今でもそう思っているのか?』
「…我々がそう思わなければ…一体、誰が彼等を救う為に手を差し伸べる…?」
ふと零したミカエルの言葉は、酷く苦しげに聞こえた。
「貴君が言いたいことはわかっている。彼等の生命を救い、生かすことが、どう言う結末に繋がるのか…我々とて、この姿を見れば想像は付く。けれど…我々が見捨てたら…誰が彼等に、救いの手を差し伸べる?誰が…彼等の最後の救いとなるのだ?」
それは、彼等なりの苦しみ。
切り放すことは、いつでも出来たはず。けれど、一度差し伸べた手を降り払うことは、彼らの道理に背くべきこと。それが、慈愛と言うものなのだと。
『不便なモノだな。天界人と言うものは』
天界人とて、その内なる残虐性を垣間見せることもある。しかしながら、神の使いとして気高く称えられて来た彼等には、それを現実だと思わせてはいけないのだ。
全て、彼等の理想の世界を築く為に。
『だがな、我々は、破滅への布石を撒き終えたんだ。この先、幾ら頑張ったところで、行き着く先は破滅、だ』
「…例え、その未来を変えることが出来なくとも、最善は尽くす。それが、我々に与えられた職務だからな」
そう言い残すと、ミカエルは踵を返して足を進めた。
「ラファエル、わたしは先に帰るぞ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、彼の黒いコートは闇へと融けていった。
そして、その場に残ったのは、白いコートを着たラファエルと、意識体の悪魔一名。
「…気分を害されました?」
ミカエルの後ろ姿を見送ったラファエルは、改めて悪魔と向き合った。
『いや。ミカエル総帥の性格を考えれば、別に腹も立たんさ』
くすっと笑いを零す悪魔に、彼も小さく微笑んだ。
『ある意味…ミカエル総帥の言うことも正しいのだろうな。我々は悪魔と言う立場で、元々人間どもからは厄介者扱いされていたのだから、今更嫌われたところで痛くも痒くもないが…貴殿等はそうはいかないんだからな』
悪魔のその言葉に、ラファエルはその微笑みを僅かに押さえ、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「もしも…わたしたちが、貴君等と同じ扱いであったのなら…ミカエルも、意固地にはなっていなかったでしょうね。彼は、誰よりも真面目で、素直過ぎる程素直ですから。彼等の羨望や憧れ、淡い期待を裏切れなかった。だから…彼もまた、この地に捕われてしまったんです」
そうつぶやいた眼差しが、酷く悲しい色を浮かべていたことに、悪魔は気がついていた。けれど…悪魔と言う立場上、手を差し伸べることは出来ない。
あくまでも、彼は敵なのだから。
『神は…何故に、貴殿たちをこの地に遣わせたのだろうな。知的生物などに期待をするなと、幾度も与えた我々の警告を無視して、貴殿たちを犠牲にしようとでも思っていたんだろうか?危機が迫れば、自分はあっさりと手を引き、貴殿たちだけをこの地に縛り付けて。それが、神のやり方か?』
幾度も警告を与えた悪魔たちとしては、その身勝手な神のやり方が気に食わないだけであって、天界人である彼等が憎い訳ではない。だからこそ、敢えて口にはしないものの、気の毒でならないのだ。
けれど、彼は笑ってみせた。
「きっと…それが、我々に与えられた試練、なのですよ」
『…忠実と言うか…馬鹿と言うか…』
にっこりと微笑む彼の姿に、悪魔も呆れたような溜め息を一つ吐き出す。
けれど、それが彼等なのだ。神の化身とも言われた、慈愛の天使たち。だからこそ、純真無垢な白き翼が良く似合っていたのかも知れない。
『まぁ…今後、この世界がどうなるかは、貴殿たちのやり方一つだ。悔いのないようにやれば良い。吾輩がきっちりと見届けてやろうぞ』
にやりと笑いを零す悪魔に、彼は微笑んだ。
そして、消えかけたその姿に、一言を問いかける。
「貴君たちは…この地に来たことを…この地を侵す知的生物たちの中で生活したことを、後悔しましたか?」
その言葉に、悪魔は消え去ろうとしていた意識を留めた。
そして。
『…いや。むしろ…良かったと、思っているさ』
行く末の破滅を見た悪魔の金色の瞳が、にっこりと微笑んだ。
『この地球を傷つけたことは許せないが…それは、誰か一名の責任ではない。むしろ、今生きている者たちは、昔から行なわれて来たその行為に罪悪感さえ感じないだろう。けれど…その心の全てが、死んでしまった訳ではない。我々の声が聞こえた者たちも、確かに存在している。吾輩は、世の中から比べればほんの僅かなその人間たちに出逢えたことは、嬉しく思うぞ』
柔らかな眼差しは、悪魔の本心だったのだろう。だからこそ悪魔は、最後までこの地に留まることを決めたのだ。
それが…彼の心に、小さな救いとなった。
「…有り難う、ございました」
にっこりと微笑み返した彼に、悪魔は笑った。そして、姿を消した。
その場に残された彼は、再び電飾で飾られた木々を見上げた。
悪魔の出現で、その悲鳴はとても小さくなった。それは、悪魔たちが、地球に住まう生物たちの救いであったことを、あからさまにしていた。
彼は手を伸ばし、木の幹に触れた。
冷たい感触の奥に、確かに生命の躍動を感じる。ほんの僅かな生命の音に、彼は細やかな倖せを感じた。
触れた手の温もりは、息づく生命たちにとって癒しの力となった。
天界へ戻って来たラファエルは、己の執務室で、先に待っていたミカエルに出迎えられた。
「デーモン閣下と…何を話して来たんだ?」
コートを脱ぐ間もなくそう問いかけられたラファエル。眼差しを動かしてみれば、自分をじっと見守る碧の眼差し。
コートをかけながら大きく息を吐き出したラファエルは、ソファーに腰を据えるミカエルの正面に座り、にっこりと微笑んでみせた。
「たいしたことは話していませんよ。ただ、世間話をね」
自分と違い、ミカエルはまだ、地球が神に見放されたと言うことは知らない。自分たちが犠牲にされていることを知らないのだ。だからこそ…悪魔との話を、正直に話すことは出来なかった。
いつもと変わらずに微笑むラファエルに、ミカエルも何かは感じ取っていた。けれど、それをラファエルに問いかけることはなかった。
ラファエルが語らないことは、自分が関わることではないと知っているから。
小さな吐息を吐き出したミカエルは、その思いを閉じ込めるかのように、にっこりと微笑んでみせた。
「我々が悲観していては、何も始まらないな。ならば…せめて、残された時間を有意義に過ごせるようにしないとな」
「…ミカエル…」
もしかしたら…ミカエルは、全てを知っているのかも知れない。ふと、ラファエルにそんな意識が過った。
ラファエルが隠し通して来た神の不在。それをいつの頃からか知っていて…それでも尚、その生き方を変えなかったのかも知れない。
いつか…また、神が戻って来てくれることを信じて。
くすっと、ラファエルが微笑んだ。
「…そうですね。彼等に負けないように…わたしたちも、精一杯力を尽くしましょう」
敢えて何も言わず。その気持ちをミカエルも察してくれたのか、微笑みを返した。
天界人たちと別れた彼の目の前に、ハラリと舞い落ちてきた白いカケラ。
「…ん?」
思わず空を見上げると、鈍色の空から、それは絶え間なく落ち始めていた。
「雪、か…」
はらはらと舞い落ちる雪。それを、ただじっと見つめる悪魔。
そして、その瞳がすっと細められた。
----なかなかやるな、彼奴等…
くすっと零れた小さな笑いは、舞い落ちる雪に溶けていった。
汚れを知らない真白な雪は、ナニモノにも染まることはない。
それは、天使が地上を浄化する為に振り撒く結晶。
笑った悪魔には、その意図がわかったのだろう。
雪は、奇跡の結晶であると言うことを。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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