聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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SMILE 3
話を終えた二名が皇太子の執務室の奥にある小部屋から出て来ると、そこには主たる皇太子のダミアンと、軍事局のルシフェル参謀長の姿があった。
「話は終わったかい?」
にっこりと問いかけるダミアンに、デーモンは頭を下げる。
「…はい。済みませんでした…」
未だ、緊張の色全開のデーモンの姿に、彼はくすっと笑うと、同じように頭を下げた。
「文化局の研究室に属しております、ゼノンと申します。自己紹介もせず、突然の訪問に、場所を提供していただき有難うございました。おかげで…きちんと話が出来ました」
「そう、それは良かったね。またおいでね」
「有難うございます」
相変わらず、にっこりと微笑むダミアンに、彼もにっこりと笑顔を返す。そんな姿を横に、デーモンはいつもと同じ表情で口を開く。
「…下まで、送って参ります」
そう言って、彼を連れ、執務室の外へ出る。そこで、大きく息を吐き出す。そして足を進めながら、隣を歩く彼へと視線を向けた。
「…御前、物怖じしないな」
「まぁ…緊張はするけれどね。でも、折角の機会だからね。別にコネを作ろうとかそう言うことじゃないけれど、顔ぐらい売っておこうかとね」
「流石だな」
くすっと、笑いが零れた。漸く、少し吹っ切れて来たような姿。その笑顔の前に、彼も笑いを零す。
「次は、御前だからね。俺は、いつでも話を聞くから遠慮しないで吐き出しに来て良いから。だから…頑張って」
「…あぁ。有難うな。何かあったら…また、寄らせて貰う」
「何かなくてもおいでよ。一緒に御茶でも飲もうよ」
「あぁ、わかった」
些か強引かと思ったが…彼のその誘いに、デーモンは笑いを零した。
碧色の眼差し。その癒しとも言える眼差しを前に、何処か安らぎを覚えた。だからこそ、心を開く勇気が持てたのだろう。
御互いに…その笑顔が、心の糧となった。
二名が出て行った背中を見送ったダミアンとルシフェル。そして、ルシフェルから零れた溜息。
「…全く、貴殿と言う方は…」
「良いじゃないか。上手く纏まったようだしね」
にっこりと微笑むダミアン。勿論、最初から上手く纏まるという保証があった訳ではない。けれど、何となく…大丈夫だと、感じたから。
「それに…面白そうじゃないか。ゼノン…と言ったね、文化局の。ちょっと、調べてくれるかい?」
「…もう、そのつもりですよ」
溜息を吐き出しつつ、ルシフェルは執務室を後にする。そして入れ替わるように、デーモンが戻って来た。
「…ルシフェル様は…?」
その姿がないことに、デーモンは首を傾げる。
「あぁ、野暮用でね。今し方戻って行ったよ。すれ違わなかったかい?」
「…えぇ…」
既に、自分の職務に戻っているダミアン。その姿を前に…デーモンは、大きく息を吐き出す。
そして。
「…あの…少し…御話を…宜しいですか…?」
「…何だい?」
ダミアンの、透明な蒼い瞳が、真っ直ぐにデーモンを見つめた。
その眼差しは…デーモンが入局して来てからずっと、向けられていた眼差し。
----納得していただけなければ…それまで、だな…
意を決したように再び息を吐き出すと、そのまま言葉を続けた。
それは、今までの仕事のこと。周囲の反応のこと。そして…未来が見えないことが、一番の悩みであることも。
デーモンのその告白を、ダミアンは真っ直ぐに視線を向けたまま、黙って聞いていた。
そして、デーモンの言葉が途切れ、大きく息を吐き出して視線を伏せると、漸く口を開く。
「…御前が言いたいのは、それで全部かい?」
「……はい」
話の後半は、半ば愚痴のようなもの。呆れられただろうとの不安はある。けれど、口をついて出た言葉は、最早取り返しはつかない訳で。
覚悟を決め、ダミアンへと視線を向けた。
するとダミアンは執務机の引き出しから書類を一束取り出しながら、口を開く。
「やっと、話してくれたね。御前がいつ言い出すかと待っていた節はあるのだが…まぁ、調べはついているよ」
「……はい?」
ダミアンの言っている意味が良くわからない。そんな表情のデーモンへと、取り出した書類を差し出す。
「ウチのルシフェルは優秀でね。御前が言い出す前から、一部の輩の御前への風当たりが強いことはわかっていたんだ。まぁ、言ってしまえば"嫉妬"、だね。我々のような若造は、一度は通る道だよ。勿論、わたしだって皇太子と言う身分だが、親父の直属の部下からは良い顔をされない時もある。それは当然のことだと、わたしは思っているんだ。何の苦労もなく、生まれながらに皇太子の身位を持っている訳だから、必死に働いて来た者たちには気に入らないだろうとね。わたしが今までに経験して来た苦労だとか、そんなことは関係ないんだ。ただ、気に入らないだけでね。だから、そんなところで張り合おうとは思わない。ただ、それを納得させられるよう、どう向かい合うか、だと思うよ」
ダミアンの言葉を聞きながら、デーモンは渡された書類を捲る。そこには、どの部署の誰それの言動で気になるところが書かれており、デーモンが気付いていないくらい些細な部分も記載されている。そんなところまで見られていたのか…と、デーモンの方が驚きであった。そしてダミアンの言葉もまた、デーモンの予想外で。
「…ダミアン様も…苦労されているんですか…」
「まぁ、ね。だから、経験者として…御前に問う。御前は、どうしたい?」
そう問いかけられ…ドキッとする。
「どう、とは…」
思わず問い返すと、神経質そうに両手の指を組み、再び真っ直ぐにデーモンへと視線を向ける。
「一つの選択肢として…御前が望むなら、彼らを更迭することは可能だ、と言うことだ。まぁ、それなりの職務態度だからね。代わりの者を簡単に補充出来るから、いなくても困ることはない。そしてもう一つの選択肢は…このまま、耐えること。そして、彼らを見返すくらいの姿を見せること。簡単に言えば、二択だね。まぁ、御前が辞める、と言う選択肢もなくはないが…それはわたしが許可しないからね」
にっこりと微笑まれ…息を飲む。
辞めることは、選択肢ではない。つまり…権力を最大限に利用するか、自力で強くなるか、のどちらかなのだ。
「…わたしはね、デーモン。御前を選んだことを、間違いだとは思っていないんだ。御前は、ここに来ても何を目指して良いのかわからないと言ったけれど、必ず何かを目指さなければいけないのかい?最初にわたしは、御前に何を求めた?こう言ったら何だが…いきなり大役など求めてはいないんだよ。経験を積んで、そこで目指すものを見つけても遅くはない。何処の局でもそれは同じだろう?強くなりたいと軍事局に入ったからと言って、みんながみんな、トップを目指す訳じゃない。自分の力量を知っていれば、それは当然だ。だからこそ、色々な役割があるんじゃないのかい?」
ゆっくりとそう伝えられ…考えを巡らせる。
ダミアンから最初に求められたのは…"友達"としての、役割。だが、例え傍に仕えたとしても…身位の違いが、無意識に壁を作った。そして、自分で距離を作った。何も話せないまま…勝手に現状に苦しみ、勝手に耐え、勝手に限界を迎え…そして、現在に至る訳で。本来求められていた役割を蔑ろにしていたのは、デーモン自身。
そう考えると…溜息しか、出て来ない。
彼に言われ…向かい合う覚悟を決め、今ここに立つ。それもかなりの決意を持ってのことだったが…改めて、その気合など…本来なら、必要のない物だったことを、思い知った。
ダミアンは…何もかも、見透かしている。その上で…デーモンの出方を、ずっと見ていたのだ。
悩める"友達"を…どう救い上げようかと、考えながら。
「…どうして…吾輩、だったのですか…?」
以前も、聞いた気がする。けれど、改めてそれをダミアンに問いかけた。
「歌が聞きたいだけならば…わざわざ、補佐として迎え入れる必要はなかったはずです。"友達"としての役割も、同様に。それなのに、どうして…ですか?」
不安げな表情。けれど、ダミアンはにっこりと笑って見せた。
「楽しいんじゃないか、とね。主席で卒業出来るくらいなんだから、博識だろう?色々、話がしたかったんだよ。同年代と、ね」
ある意味、それも直観力。
もっと、肩の力を抜いて。自分の、直感を信じて。前へ、進もう。
大きく、息を吐き出すデーモン。そして、真っ直ぐに顔を上げた。
「更迭は、なさらなくて結構です。吾輩が自力で…見返してやります」
その言葉に、ダミアンはくすっと笑った。
「そう。御前がその気になったのなら、わたしがちゃんと…御前を、護ってあげるからね。思う存分、やって御覧」
「…ダミアン様…」
本来なら、皇太子は護られるべき存在であり、自分よりも下である補佐を護る必要性はない。けれど、その想いは…大事な、"友達"であり、"仲魔"であるから。
自分の実力は、自分が一番わかっている。けれど、それだけではない。
支えて貰えることで、もっと強くなれるから。
「御前が、安心して笑えるように。御前が"いるべき場所"を、わたしがちゃんと護ってあげるからね。だから……」
ふと、ダミアンが口を噤んだ。そして、その表情もほんの少し、変わった気がした。
何とも言えない、その表情を前に…デーモンはダミアンの正面から横へと、場所を移動する。そしてその直ぐ傍までやって来ると、ダミアンの手を取り、躊躇うこともなくその場に跪く。
そして。
「…御心配なく。貴殿が、もう良いと突き放されるまで…"友"として、貴殿の、傍にいます」
「…デーモン…」
恭しく、その手の甲へと口付ける。そして顔を上げ、ふわっと微笑んだ。とても穏やかで…とても、柔らかい微笑み。初めて見る、優しい笑顔。
「…馬鹿だね、デーモン。"友達"には、忠誠を誓う口付けではないだろう?」
くすっと笑ったダミアンは、デーモンの手を取るとそのまま立ち上がらせる。そして自分も立ち上がると、そっと、その身体を抱き寄せた。
「"友達"には…信頼の抱擁、だよ」
頭一つ背の高いダミアンは、笑いながらデーモンの頭の上にそっと手を置くと、ポンポンと軽く叩いた。
「改めて…宜しく頼むよ、デーモン」
「…こちらこそ…宜しく御願いします」
照れたように笑いを零すデーモン。
それは、まさに…至極の微笑み。
デーモンには、前へ進む自信と勇気。そして、安心感を。ダミアンには、強い絆と、大切な"友"を。
需要と供給、と言う訳ではないが…御互いが、御互いを護る為に。それは義務感ではなく、御互いを尊重し合える関係である為に。
身位を超えた役割が、そこにあるように。
御互いにとって…その微笑みが、掛け替えのない至極の笑顔、だった。
その日の執務終了後。未だ執務室に残っていたダミアンの元へ、再びやって来たのはルシフェル。
「…御待たせ致しました」
そう言って差し出された書類。それは、昼間頼んだ"彼"の調査書だった。
その書類にざっと視線を通すダミアン。それを眺めながら、ルシフェルも口を開く。
「"彼"は…"ゼノン"は、多少変わり者ではありますが、大きな弊害はないかと。自然発生ですが経歴も綺麗です。ただ…」
「ただ?」
顔を上げたダミアンに、ルシフェルは苦笑する。
「実力はあるようですが、本魔は戦うことは嫌いなようです」
「…苦手、ではなくて嫌い、なのか?」
戦闘が得意ではない、と言う意味で苦手だという話は良く聞くのだが、嫌い、と称すことは余りない。戦士たるルシフェルが苦笑いをする理由もそんなところなのかと問いかけたダミアン。
「えぇ。彼は生粋の"鬼"なので、本質としては戦闘向きなのですが…戦うことを拒んでいるようです。なので"鬼"にしては珍しく、戦線から最も遠いであろう文化局にいるのではないかと。まぁ、だからと言って反旗を翻そうとしている訳でもないですし、変に卑屈になっている訳でもないようなので、特に問題はないですね。寧ろ、穏やかで癒しの能力を持っているようなので、貴殿とも…仲良くなれそうですよ」
くすっと笑うルシフェル。そんなルシフェルに、にっこりと笑うダミアン。
「良いね。これから…楽しくなりそうだ」
それは、未来への希望。
入局した時期が早かった為、今までは同年代の仲魔などいなかったダミアンだが、ここに来て漸く士官学校を卒業した同年代の魔材が伸びて来ている。
その、実に楽しそうに笑うダミアンを前に…ルシフェルも、目を細めて笑みを零す。
大切な、魔界の"生命"とも言える皇太子。この先の未来が、希望で溢れるように。
自分が何処まで、それを見届けられるかはわからない。だからこそ…今、この微笑みを、絶やさないように。その為に、尽力を尽くす。
誰かの笑顔の為に。その、沢山の想いが重なる。
そして、時が刻まれていく。
大切な"仲魔"の、笑顔を護る為に。模索しながら、前へ進んでいく。
精一杯の…想いを、込めて。
My life for your smile.
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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