聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Spoil 前編
道を歩いていてふと視界に飛び込んで来たのは、仲良さそうに楽し気にいちゃつくカップル。
別に、それが羨ましかった訳ではなかったけれど…今の自分には、酷く縁遠い。
何となく空を見上げる。その青い色が、とても眩しい。
「…そういや…最近キスもしてねぇな…」
思わず零れた言葉に、自分で苦笑する。
「よっしゃ、気晴らし気晴らし」
笑いを零しながら、颯爽と再び歩き始めた。
顔を合わせるのは数日振り。別に久し振りでもないのだから、積もる話がある訳でもない。ただ、出来れば余りヒトに知られたくない話がある時は、ここへ来て吐き出す。それがルーティーンになりつつあった。
「いらっしゃい。今日は泊り?」
近い場所でもない上に仕事が終わってから訪れているので、必然的に時間は遅い。仕事に余裕があれば泊まらせて貰うことが最近は多かった。
「ゼノンは来ない?」
ここへ来てから姿は見ていない。一応問いかけてみると、くすっと小さな笑いが返って来た。
「別に来るとか聞いてないよ。このところ忙しいみたいでね。通信画面では顔を見るけど、実際に来るのは最近はあんたぐらい」
「…そっか。そうだよな…意外とあちこち忙しく動いてるからね。じゃあ、泊まっていこうかな…急だけど大丈夫?」
「全然オッケー」
持て成すことに関して、ここは何の問題もない。流石、王宮。
そんなことを考えながら、専属の官吏が入れてくれた御茶に手を伸ばす。
「…で?どした?」
様子を窺いつつ、そう問いかける声。勿論、無理に聞き出そうとしている訳ではないが、ここなら吐き出せる、と言う空気があった。
「ねぇ、最近いつキスした?」
「…はい?」
思いがけない切り出し方に、一瞬きょとんとした表情を浮かべる。だが直ぐにソファーへと背を預け、腕を組みながら考える。
「え~、キスぅ?…それ聞いてどうすんのさ……ってか、どの程度の?」
「…程度を聞くんかい…」
戸惑いの度合いが一瞬なことに苦笑しつつ、そこは照れないで言葉を続ける。
「がっつりのヤツ」
「…がっつり、か……えっとね……え?いつだろう??」
よくよく考えると…近々が思い出せない。その現状に、思わず前のめりになりつつ、自分でも唖然としているようだった。
「え?ちょっと待って。思い出せないんだけど……あんたは?」
「…俺も思い出せねぇ」
思いがけず同士。そう思いながら、笑いを零す。
「ちょっと、あんたもそんなに御無沙汰なの?俺も休暇把握してる訳じゃないけど…ゼノン、そんなに来てない訳?」
問いかけた声に、少し首を傾げた姿。
「え~?まぁ、前よりは間が空くようになったけど…そこそこ来てるよ?たださ、最近ゼノンが帰って来ると、ララが纏わりつくんだよね…多分ゼゼの様子を聞きたいんだろうけどさぁ、彼奴も士官学校にいるから、これと言って新しい話もないのにさ。ずっとくっついてるんだよね…そのうち俺も眠くなるしさぁ…寝る時はララは自分の部屋に戻るけど、なんか…その後直ぐにいちゃつく、ってのもさぁ…睡魔に負けるのも、年なんかな…昔は明け方まで平気だったのにさぁ…?」
そう話す姿は、眉間に皺が寄っている。つまり、納得のいく状況ではないと言うこと。
一番安定しているだろうこの二名でそうなのだから…一番不安定な自分が、暫くキスもしていない状況は、多分有り得なくもないのだろう。
「じゃあ…今一番いちゃついてんのは、デーさんとエース、ってことか…一番傍にいるしね…」
「そりゃぁねぇ…」
既に、苦笑しか出ない。
その絆の強さは、彼らも良く知っている。だから冷やかしなどではなく、今わざわざ話題に乗せる必要もないくらい、仲が良い、と言うこと。
その現状を改めて考えながら…自分の現状を思い出す。
そして。
「…俺としてはさぁ…ララに邪魔されるって言ったって、あんたとゼノンとは正式に伴侶な訳だからさぁ、一緒にいるところだって平気で見せられるじゃん?それだけでも羨ましい訳だよ。別にね、ダミ様は気にしてないんだ?あのヒトは、その辺はあんまり神経質にならないから。まぁ、流石に他悪魔前でいちゃつくことはないけど…」
「俺だって他悪魔前でいちゃつかないよ?雷帝としての品位だとかさぁ、苦情来ると困るしさぁ」
そう。それに関しては、何よりも伴侶たるゼノンが一番心配していること。だからこそ、自分では大人しくしている…と思っている。
「まぁそうね。別にあんたが下品だとか全然思ってないけどさぁ、威厳を保つには必要だよね。ダミ様は特に…ね」
自分は、正当な立ち位置にいる伴侶ではない。その負い目はずっと頭の片隅にある。勿論、それを後悔している訳ではないし、迷っている訳でもない。今でも誰よりも好きで、愛している。仲魔内には、今でも堂々とそう言える。
ただ純粋に…普通の恋悪魔として、キスしたり、触れ合ったり、甘えたり甘えられたり。愛されたいし、愛していたい。ただ、それだけ。
「まぁ…さ、みんなどれくらいキスしてんのかな~って聞きたかっただけよ。あんたがそんなに御無沙汰だなんて思わなかったし、あんたも別にそんなに年中キスしてる訳じゃないってわかったし」
くすっと、笑いを零しながらそう零す。
「それだけなら良いけどさ、あんまり変なこと言い出すとみんな心配するよ?ほら、エースとかさ、あんたが愚痴零すと直ぐに別れろとか言うんでしょ?」
心配そうに眉を寄せて首を傾げるその姿に、苦笑する。
「あれはただの過保護。何か知らないけど、変に心配するんだよね。だから、ここに来た時しか愚痴は零さないようにしてるの。あんたは俺の愚痴に左右されないし、洩らさないでいてくれるしね。悪いとは思ってるんだけど、感謝してるのよ?」
「俺は良いんだけどさ。あんたが来ると俺も気晴らしになるし、重大な何かにならない限りはゼノンにも言わないしね。まぁ、都合良く利用してよ」
ヒト知れず気晴らしになる場所がここならば、特に咎めもしない。
その意を汲んでくれるだけで有難い。それは心底感謝していることだった。
「別に心配かけたい訳じゃないし、別れたい訳でもない。現状だってそこそこ満足。ただ、もちょっといちゃつきたかっただけよ。まぁ、年甲斐もないって言われたらそれまでだけど」
「愛されている、って言う実感は、確かに欲しいよね。折角巡り合えた相手だもの」
くすっと笑いながら、目を細める。
その想いの強さと、深い愛情。沢山の想いを背負って来たからこそ、巡り合えたことに意味がある。伴侶が運命の相手であると、そう言い切れる。そんな姿はとても羨ましい。
「…俺も…運命の相手、なのかな…」
ソファーに背を預け、天井を見上げる。
「そうだよ、って言ってあげられれば良いんだけど…こればっかりは、はっきり言いきれなくて御免ね。でも、ほら。赤い糸って、目に見えないじゃん?自分がそうだ、って強く思っていれば、きっとそうなると俺は思うんだけどな…」
同じようにソファーに深く凭れてそう零す姿に、思わずくすっと笑いが零れる。
「ホント、あんたってそう言うとこ純粋だよね。願えば叶うって…なかなか率直に言うのは照れる年だけどね」
笑いながらそう零した言葉に、向かい合う相手はソファーから身体を起こす。
「年は関係ないじゃん?だって、俺は親父にそう言われたよ?好きになってはいけない相手はいない、って。俺にそう言った時は、親父は俺の今の年よりもっと上だったし?」
「…見た目に寄らず、純粋な一族な訳ね…」
「見た目って何だよ~」
「はいはい、見た目も可愛い可愛い。まるっと小動物チックで」
「ちょっと~!俺の扱い雑過ぎ~」
頬を膨らませて不貞腐れたような顔をするものの、怒っている訳でもない。その証拠に、直ぐにくすっと笑う。
「でもさ、きっとあんたのその純粋さがさ、ゼノンを救ってくれたんだよね。ホント、あんたたちは運命の相手だよね」
「…あんたもそうじゃないの?ダミ様があんたを救ったんだと、俺は思ってたんだけど?」
そう言われ…ドキッとして、思わず口を噤む。
確かに…魔界へ降りたとは言え、受け入れて貰えなければ今ここにはいない。おまけに、かなり目をかけて貰った自覚もある。そう考えると…確かに、救われたのかも知れない。
「まぁ…そう、ね。あの時、ダミ様に出逢えたから…今の俺があるんだしね。そう考えたら…そうか。運命の相手、ね」
それが正しかったかどうかは、正直今でもわからない。だが、あの時出逢っていなければ…御互いに、今の姿ではなかっただろう。それは納得した。
「…甘えてみれば?あんたに甘えて貰えるの、待ってるかもよ…?」
「甘える、って…ちょっと…俺ら幾つよ」
「え~?別に良いじゃん。甘えて良いのは幾つまで、って年が決まってる訳じゃないじゃん。キスしたかったらキスしたい、って言えば。俺は…言うし」
「近々が思い出せねぇって言ったの誰だよ」
「それはしょうがないじゃん。忙しい時は不可抗力。いつもは違うし」
「はいはい」
そんな話にちょっと照れ臭くなって、笑いが零れる。
先ほどの話も含め。純粋な上に実に素直。だからと言って頼りない訳ではなく、立派に仕事を熟せている。だからこそ、こうして国を跨いでまで愚痴を零しに来る気にもなるのだろう。
やはり、大事な仲魔だから。
「…たまには言ってみ?」
様子を窺いながら、くすっと笑ってそう声をかける。
「……考えとくわ」
果たして、自分に言えるだろうか。そう思いながら、言葉を返す。
「健闘を祈る!」
笑う声は、少し、背中を押してくれた気がした。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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